Volume 257,
Issue 8,
2016
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あゆみ 補体関連疾患の新局面
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医学のあゆみ 257巻8号, 815-815 (2016);
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医学のあゆみ 257巻8号, 817-821 (2016);
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◎補体は宿主を外敵より守るために自然免疫のなかで非常に重要な役割を果たしている.近年では獲得免疫動員のためにも補体の関与が報告されている.補体の活性化が逸脱すると,宿主に障害を与えたり特定の病態を増悪させたりすることが知られている.このため,補体の活性系に対して各種の補体制御因子が存在する.宿主の補体制御機能を超える補体の活性の発生や補体制御機能の異常な発生により,宿主に重大な問題が発生する可能性がある.一方で補体成分の欠損により,外敵への防御機能の低下や,自己免疫疾患で問題になる免疫複合体の処理能力の低下など,さまざまな病態が発生することが知られている.つまり活性化とその制御のバランスが重要なシステムとなっている.本稿ではこの後の章の理解が深まるように,補体の活性系とその制御系の基本的事項について解説するとともに,補体の古典的役割に加えて最近の知見についていくつか取りあげて概説する.
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医学のあゆみ 257巻8号, 823-826 (2016);
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◎非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)は,血小板減少,溶血性貧血,急性腎障害を三徴とし,末期腎不全に至る重篤な疾患である.近年,補体関連遺伝子の異常による補体第二経路の異常活性化が原因であることが解明されつつあり,病態解明が急速に進んでいる.治療は血漿療法が中心であったが,病態の解明とともに抗補体療法が適応となり,エクリズマブによるaHUS 治癒と寛解維持,またその忍容性が報告されている.わが国においても,2016 年に日本腎臓学会と日本小児科学会からaHUS の診療ガイドが公開され,本疾患の認識が広まると考えられる.本稿ではわが国aHUS 診療ガイドの概説,また最近の進展について概説する.
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医学のあゆみ 257巻8号, 827-831 (2016);
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◎発作性夜間血色素尿症(PNH)は,PIGA 遺伝子に後天的変異をもつ造血幹細胞がクローン性に拡大する造血幹細胞疾患である.ヒト化抗C5 抗体エクリズマブが開発され,PNH 溶血をきわめて効果的に抑制し,PNH患者の予後とquality of life(QOL)を劇的に改善した.しかし,本邦の例の約3~4%にエクリズマブがほとんど効果を示さない不応例が存在する.現在,より安価で患者負担が少なく,有効で安全性の高い新規抗補体薬の開発が進められている.標的候補としてはC5 レベル,C3 レベル,第二経路増幅ループなどがあげられるが,いずれが最適かは今後の研究を見守りたい.
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医学のあゆみ 257巻8号, 832-836 (2016);
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◎IgA 腎症(IgAN)患者の腎糸球体ではC3 が沈着しC1q は沈着しないことから,補体第二経路との関連が特徴とされてきた.しかし,血清中の補体の経時的変動やレクチン経路の働き,factor H などの制御因子の関与が解明されるにつれ,血清中の補体も病態に深く関与していることが明らかになっている.一方,補体活性化物質の同定も進んでおり,とくにIgA の糖鎖を認識するレクチン経路の活性化が組織学的にも増悪因子であることもわかってきた.また,患者の尿中にはfactor H,C3,C5b-9 などが排泄されており,病態とよく相関している.最近,補体系が栄養状態や脂質異常などの影響を受けることが明らかになったが,IgAN は長期的な観察が必要な疾患で,その補体系解析の際には患者背景を詳細に把握する必要がある.
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医学のあゆみ 257巻8号, 837-842 (2016);
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◎C3 腎症(C3 glomerulopathy)は近年定義されたあらたな疾患群で,dense deposit disease およびC3 腎炎(C3 nephritis)が含まれる.膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)の病態解明を進めていく過程で確立されてきた概念で,その原因は補体第二経路(alternative pathway)の制御異常である.古典経路やレクチン経路は関与しておらず,腎病理像は免疫グロブリンの沈着なしにC3 の沈着だけを認めることが特徴である.診断を確固なものとするためには補体検査が重要で,補体第二経路に関連した遺伝子や自己抗体などを調べる必要がある.また,これらの検査をもとに,症例ごとに病因に沿った治療が今後重要となる.現在,補体制御のための治療薬が開発され,臨床の現場ですでに用いられはじめている.C3 腎症に対しても臨床試験が進行中であり,難治性疾患克服への期待が高まっている.
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医学のあゆみ 257巻8号, 843-847 (2016);
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◎抗補体療法は血液疾患をターゲットとして実用化され,神経疾患については自己抗体と補体が関与する自己免疫性神経疾患が対象となっている.現時点での対象疾患は,①抗アクアポリン4(AQP4)抗体と補体により中枢神経障害をきたす視神経脊髄炎(NMO),②抗アセチルコリン受容体抗体と補体により神経筋接合部障害をきたす重症筋無力症(MG),③抗ガングリオシド抗体と補体により末梢神経障害をきたすギラン・バレー症候群(GBS),の三者である.NMO,MG についてはこれまで小規模試験で抗C5 抗体エクリズマブ治療の有効性が示され,現在,第Ⅲ相国際共同臨床試験が進行中である.GBS については従来行われていた免疫グロブリン大量静注療法へのエクリズマブadd-on 試験が,わが国およびイギリスで進行中である.
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医学のあゆみ 257巻8号, 849-853 (2016);
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◎認知症のなかではアルツハイマー病(AD)の占める割合がもっとも多いが,発症前診断や根治薬開発には至っておらず,病因論的には大枠はとらえられつつあるものの,その本質はまだみえてこない.AD の原因物質とされるアミロイドβ(Aβ)の発見とほぼ時を同じくして老人斑に補体の沈着が報告されたことで,AD は一種の慢性炎症というとらえ方もされるようになった.その後,抗炎症薬での臨床トライアルが開始され,CR1の遺伝子多型がAD リスク因子であるとの報告もなされ,ますます補体はAD 病態に深くかかわっていると考えられている.さらに著者らは,おもに肝で産生されていると思われていたC3 がAD での血液補助診断に使える可能性を報告した.また最近の報告では,C3a がAD 脳障害の本質に深く絡み,C5a ワクチンが治療に応用できる可能性がモデルマウスで報告されている.
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医学のあゆみ 257巻8号, 854-860 (2016);
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◎膠原病に分類される疾患の多くでは,発症に自己免疫現象が関与し,その病態形成の過程に補体が少なからず関与することが示されている.膠原病への補体の関与を論じるにあたり相反する2 つの観点がある.1 つは補体の活性化による炎症の惹起と組織の破壊であり,もう一方は自己免疫現象の回避である.後者の機序は補体系はアポトーシス細胞などを由来とする自己抗原のクリアランスにも作用し,その能力が損なわれるとそれらの自己抗原に対して自己免疫応答が誘導されてしまうというものである.本稿では膠原病への補体の関与について,補体系のバランスの破綻が病態に強く反映される全身性エリテマトーデス(SLE)を中心に,各補体経路の役割と病態との関連について概説するとともに,疾患モデル動物や臨床試験で試行されている抗補体薬の可能性について紹介する.
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医学のあゆみ 257巻8号, 861-866 (2016);
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◎遺伝性血管性浮腫(HAE)は顔面や四肢,腸管や喉頭など全身のさまざまな部位に突発性・一過性の浮腫を生じる遺伝性疾患である.従来,C1 インヒビター(C1-INH)遺伝子異常によるHAEⅠ型,Ⅱ型が知られていたが,2000 年にC1-INH 遺伝子異常を認めないHAEⅢ型が報告され,その一部の原因として凝固第 因子遺伝子異常が同定された.さらに特記すべきは,ブラジキニンB2 受容体拮抗薬,カリクレイン阻害薬など新しい作用機序のHAE 治療薬がこの数年の間につぎつぎと登場してきたことである.このような進歩を臨床の現場に確実に還元するためには,わが国においてもHAE 患者の実態を把握する必要がある.著者らはNPO 法人血管性浮腫情報センターを2011 年に設立し,わが国では唯一の患者レジストリーを進めている.このようなHAE をめぐる新局面を中心にHAE の概要を説明したい.
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医学のあゆみ 257巻8号, 867-872 (2016);
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◎補体とは一見何の関連性もない顔面の形成不全を特徴とする3MC 症候群という疾患がある.3MC 症候群の家系の詳細な遺伝学的解析の結果,最近,その原因遺伝子が補体レクチン経路に関連するCL-K1(COLEC11)とMASP1 遺伝子であることがわかり,実際にこれらの遺伝子に変異がみつかっている.このことから,CL-K1 とMASP-1/-3 は複合体を形成して,外来の微生物の糖鎖構造に結合し補体を活性化するレクチン経路としての役割に加えて,顔面の形成においても重要な役割を果たしていることが容易に想像できる.CL-K1 とMASP-1/-3 のレクチン経路を介した生体防御的な働きを縦糸とすると,まだその機序が未知である形態形成における役割を横糸で,織り成す布の意味について論じてみたい.
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フォーラム
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近代医学を築いた人々 52
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医学のあゆみ 257巻8号, 879-879 (2016);
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外国人にやさしい医療―言葉の壁をこえて 4
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医学のあゆみ 257巻8号, 881-884 (2016);
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第80 回日本循環器学会学術集会レポート 1
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医学のあゆみ 257巻8号, 885-887 (2016);
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◎近年の循環器疾患に対する治療のめざましい進歩の結果,その多くが治療可能になった.しかし,あらゆる循環器疾患の最終像としての側面をもつ“心不全”に関しては,日本を含め全世界で罹患患者数は増加しており,さらなる発展が期待される.医療レベルの発展には,先進的な質の高い基礎研究と,その研究結果を応用するためのトランスレーショナル研究および臨床研究への展開が必要であり,そのためには基礎と臨床を有機的に融合させる必要がある.本セッションでは,海外よりEuan Ashley 博士およびMichelle D. Tallquist 博士を招聘し,心不全領域における世界最先端の知見を講演していただくとともに,国内で同領域をリードする5 人の演者に,現在各施設で行われている基礎および臨床のさまざまな研究成果や今後の展望について発表していただき,20 年後を見据えた将来の心不全診療のあり方について活発な討論が行われた.
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TOPICS
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癌・腫瘍学
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医学のあゆみ 257巻8号, 873-874 (2016);
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糖尿病・内分泌代謝学
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医学のあゆみ 257巻8号, 874-876 (2016);
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救急・集中治療医学
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医学のあゆみ 257巻8号, 876-877 (2016);
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