Volume 257,
Issue 11,
2016
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あゆみ 腎臓発生学と再生医学への応用
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医学のあゆみ 257巻11号, 1125-1125 (2016);
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医学のあゆみ 257巻11号, 1127-1132 (2016);
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◎腎臓は尿の産生や血圧の調節など生命の維持に必須の器官であるが,一度機能を失うと再生しない.透析患者数は増加の一途をたどり,画期的な代替法の誕生がまたれている.糸球体および尿細管からなる約100 万個のネフロンを人工的に再構築できれば問題解決の糸口となる.近年,ヒトiPS 細胞から三次元の糸球体・尿細管形成能をもつネフロン前駆細胞の誘導が可能となった.とはいえ,多能性幹細胞から誘導できる前駆細胞の数は限られており,再生医療の実現化には十分な細胞数を確保する方法の開発が必要である.しかし,生体内でのネフロン前駆細胞の増殖能(数)と生存期間(時間)は限られており,分化能を維持したまま増幅する培養法は確立されていなかった.著者らは蓄積された腎臓発生学の知見を応用し,細胞外因子を適切な濃度で組み合わせることにより,in vivo における数と時間の限界を越えたin vitro でのネフロン前駆細胞の増幅に成功した.増幅された細胞は三次元のネフロン構造を再構築できる分化能を維持しており,マウスES 細胞およびヒトiPS 細胞由来のネフロン前駆細胞の培養法にも応用できることが判明した.本稿では,ネフロン前駆細胞誘導法および増幅法の最近の進歩を概説するとともに,腎臓の再生医療に向けた解決すべき問題について議論する.
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医学のあゆみ 257巻11号, 1133-1139 (2016);
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◎ヒトの腎臓は最大で200 万個のネフロンから構成される複雑な三次元組織である.ネフロンは腎臓機能の最小構成単位であり,血液を濾過して尿を排出する過程で,蛋白質やグルコースの再吸収,体内水分量の調節,電解質濃度の調節などを担う.成人の腎臓にはネフロン前駆細胞が存在しないため,慢性腎不全などの腎疾患によりネフロンが機能を失うと,それが自然に再生されることはない.そこで近年,ヒト多能性幹細胞の分化制御を利用して,腎臓を人工的につくりだす研究が世界中で進んでいる.今回著者らは,ヒト多能性幹細胞から腎臓の前駆細胞を分化誘導し,それを三次元で培養することで腎臓オルガノイドを作成することに成功した.作成した腎臓オルガノイドはすべての腎臓組織をもち合わせたうえ,ヒト腎臓発生を試験管内で模倣する系であり,将来的には新薬の腎毒性テストや,腎病態モデルの確立,細胞療法などに応用が期待できるものであった.
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医学のあゆみ 257巻11号, 1141-1145 (2016);
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◎末期慢性腎不全はその根治的な治療法が少なく,人工多能性幹細胞(iPS 細胞)を用いた腎疾患に対する再生医療開発が解決策のひとつとして期待されている.現在,実験動物を用いた腎臓発生機構の解明や腎構成細胞に分化しうる前駆細胞の同定に伴い,ヒト多能性幹細胞から腎系譜細胞を分化誘導する多くの試みもなされている.そして,iPS 細胞由来の腎前駆細胞を中心とした特定の腎細胞を分化誘導することによる細胞療法の開発,疾患モデル作製研究への展開,さらに立体構造構築に向けた動きなどが加速している.今後,腎臓発生機構のさらなる解明と分化誘導研究の知見のさらなる蓄積によって,ヒトiPS 細胞から高効率に特定の腎構成細胞を分化誘導する方法が開発され,臨床応用をめざした研究の発展が期待される.本稿では,iPS 細胞を用いた腎疾患に対する再生医療開発に向けた今後の展望について概説する.
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医学のあゆみ 257巻11号, 1146-1150 (2016);
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◎臓器移植医療は恒常的・絶対的なドナー臓器不足という課題を内包する.そこで移植用臓器を人工的につくりだす研究に注目が集まっている.人工的臓器作製にはさまざまなアプローチが考えられるなかで,著者らは動物,とくにブタをプラットフォームとして利用する臓器作製の研究に取り組んでいる.幹細胞生物学,組織工学,発生工学,再生医学などの技術や知識を駆使して,ヒトに移植しうる遺伝子改変ブタの臓器を作製することや,遺伝子改変ブタの体内でヒト細胞に由来する臓器を作製することが著者らの目標である.このような研究のさきに存在する,医療技術・システムの完成イメージは,“異種再生移植”とでもいうべきものになるであろう.本稿ではこれらの研究の背景,現状,課題について,著者らの最新知見をもとに概説する.
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医学のあゆみ 257巻11号, 1151-1155 (2016);
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◎全身に酸素を絶え間なく供給するために,成人では1 日に2,000 億個もの赤血球が骨髄でつくられる.高所などの低酸素環境や出血時には赤血球の産生量がさらに増大する.赤血球造血を促進するサイトカインはエリスロポエチン(Epo)であり,Epo は尿細管間質のREP 細胞(renal erythropoietin-producing cell)でつくられる.慢性腎臓病ではREP 細胞が筋線維芽細胞に形質転換し,Epo 産生能を失うため,腎線維化と腎性貧血が進行する.したがって,尿細管間質の理解は腎臓病の病態解明に直結するといえる.しかし,尿細管間質細胞は均質な細胞集団ではなく,その役割や分化様式がさまざまであるものの,適切な分類法が確立されていないことが研究の障壁となっており,ネフロンに比べて研究が遅れている.最近,モデル動物やES/iPS 細胞を用いた腎臓発生・再生の技術開発が進み,尿細管間質細胞の発生学的起源として後腎組織に加え,神経堤細胞や骨髄間葉系幹細胞が提唱されている.
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医学のあゆみ 257巻11号, 1157-1162 (2016);
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◎高等動物の組織には血管網と神経網が張りめぐらされ,それぞれの組織の機能を支えている.多くの組織で血管と末梢神経束が伴走しており,その機能的相互作用を支持していると考えられる.たとえば,血管(とくに動脈)由来の神経成長因子・酸素などが併走する末梢神経束の維持に寄与している一方,動脈に投射した交感神経は血管収縮に寄与している.これまでの研究から,こうした血管と末梢神経束が伴走する分岐パターンが構築されるためには主に以下の3 つのモデルが考えられる.①神経束の分岐パターンに併走して血管の分岐パターンが構築される.②血管の分岐パターンに併走して神経分岐がガイドされる.③血管と神経束が共通のシグナルによって分岐パターンが決定される.本稿では,いくつかの臓器特異的な血管-神経ネットワーク構築に関するこれまでの研究成果をもとに,腎臓における血管-神経ネットワーク構築について考察する.
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医学のあゆみ 257巻11号, 1163-1168 (2016);
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◎未踏領域と考えられてきた幹細胞を用いた臓器再生への挑戦が現実味をおびてきた.従来の再生医療研究がめざしていたのは,人工多能性幹細胞(iPS 細胞)などの多能性幹細胞から疾患治療に有益な“細胞”をつくり出すことであった.しかし,“細胞”を用いた細胞療法の有効性は多くの疾患において未確定であり,その臨床的意義は将来性への希望的期待の範疇であるにすぎない.一方,臨床的有効性が明確である移植医療における最重要課題がドナー臓器の絶対的不足への対応であることは明らかである.著者らは,ヒトiPS 細胞由来の肝内胚葉細胞を材料として血管内皮細胞と間葉系細胞との共培養によるヒト器官原基の人為的創出法を開発した.そしてヒト器官原基移植(organ bud transplantation)によるホスト生体内における機能的な臓器創出が有効な治療手法となることを明らかにした.本法は従来のオルガノイド培養や組織工学手法とは一線を画する複合組織創出技術であり,さまざまな器官の再生医療応用のみならず,あらたな医薬品開発のためのツールとしても応用が強く期待される.本稿では,著者らが確立した器官原基の人為的構成法と腎臓などへの他器官への応用について概説するとともに,今後の再生医療応用における出口戦略の構築へ向けた開発イメージを共有し議論を深めたい.
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注目の領域
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医学のあゆみ 257巻11号, 1174-1178 (2016);
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◎高齢者の多い介護施設でもっとも多く発生するインシデントは,皮膚裂傷(skin tear)である.比較的短期間で回復する事例が多いため安易に受け止められる傾向があり,従来,正確な実態が不明瞭であった.皮膚裂傷は高齢者の四肢を中心に発生し,表皮や表皮および真皮が分離して生じる外傷性創傷と定義される.その分類は日本語版STAR(skin tear audit research)スキンテア分類システムに準じ,著者らは平成23 年(2011)11月から13 カ月間に,介護老人保健施設はっ田でヒヤリハット報告された30 事例(平均年齢84 歳)を解析した.STAR 分類別事例数はカテゴリー1a が5 例(17%),カテゴリー1b が9 例(30%),カテゴリー2a が3例(10%),カテゴリー2b が6 例(20%),カテゴリー3 が7 例(23%)であった.皮膚裂傷は介護行為中に四肢に発生することが多かったが,発生要因が不明な場合も少なくなかった.対策として,皮膚裂傷の発生回数に応じて症例ごとにアームウォーマーやレッグウォーマーの色分けを行った.その結果,皮膚裂傷の発生件数が明らかに減少した.介護者が目的意識をしっかりもつことができ,皮膚裂傷を生じやすい事例が一見して明確化された点が重要であった.
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速報
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医学のあゆみ 257巻11号, 1179-1180 (2016);
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輝く 日本人による発見と新規開発 29
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医学のあゆみ 257巻11号, 1181-1186 (2016);
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フォーラム
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パリから見えるこの世界 45
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医学のあゆみ 257巻11号, 1187-1191 (2016);
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書評
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医学のあゆみ 257巻11号, 1192-1192 (2016);
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外国人にやさしい医療―言葉の壁をこえて 6
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医学のあゆみ 257巻11号, 1193-1195 (2016);
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第80 回日本循環器学会学術集会レポート 3
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医学のあゆみ 257巻11号, 1196-1198 (2016);
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◎性差医療とは,発症に男女差がある,病態が男女で異なる,発症率は同じでも臨床的に差がある,あるいは治療効果に差があるといった疾病において,それぞれの性を考慮して疾病の予防,診断,治療を行う医療である.2010 年に日本循環器学会がはじめて「循環器領域における性差医療に関するガイドライン」を発表し循環器診療への貢献が期待されたが,いまだその認知度はかならずしも高いとはいえない.循環器疾患のなかでも心筋梗塞,心不全などの心疾患や脳血管疾患はイベント発生頻度が高く,社会的影響も大きいことから,大規模な疫学研究や一次・二次予防に関する臨床介入試験が多数実施されているが,性差に基づく解析は十分とはいえず,日本人女性についてのエビデンスはきわめて乏しい状況といえる.歴史的に性差医療の概念がもっとも早く確立したのはアメリカであり,その中心となったのが循環器疾患であった.本セッションでは“女性の心臓病”にかかわる臨床研究の第一人者であるMerz 教授を迎え,循環器領域における性差医療を広範な観点から概説していただき,加えてわが国における循環器疾患の性差について5 名の先生に議論していただいた.
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TOPICS
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 257巻11号, 1169-1170 (2016);
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免疫学
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医学のあゆみ 257巻11号, 1170-1172 (2016);
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疫学
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医学のあゆみ 257巻11号, 1172-1173 (2016);
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