医学のあゆみ
Volume 258, Issue 10, 2016
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【9月第1土曜特集】 自己免疫疾患─ Preclinical State から発症・早期診断まで
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- 病因にせまる
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自己免疫疾患の病因研究としてのゲノム研究─疾患ゲノム研究の次世代シークエンシングによる変化
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎自己免疫疾患関連遺伝因子探索を中心とする疾患メカニズム解明のためのゲノム研究は,21 世紀に入って盛んに行われたゲノムワイド関連解析(GWAS)により,さまざまな自己免疫疾患に多数のリスク遺伝子・リスクバリアントが存在することを明らかにした.その成果から判明したことは,①自己免疫疾患にはそれほど強くない遺伝因子が多数かかわっていること,②遺伝因子のなかには複数の自己免疫疾患に関与するものが相当数あること,③それらのリスクバリアントがどのようにしてリスクをもたらすかの分子レベルでの説明は不完全であること,④現在の遺伝因子リストは不完全でありさらなる解明がまたれていること,である.現在の疾患ゲノム研究は次世代シークエンシング技術と一細胞解析,データサイエンスの進展により,ノンコーディング遺伝子,マルチオミクス研究,フェノームアプローチへと変貌しつつあり,未解決課題に取り組んでいる. -
自己免疫疾患の発症関連環境要因
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎自己免疫疾患の発症と関連する環境要因についてまとめた.全身性エリテマトーデス(SLE)のメタアナリシスによると,喫煙,ホルモン補充療法,経口避妊薬がリスクを高め,適度の飲酒が予防的であった.関節リウマチ(RA)のメタアナリシスでは,肥満,コーヒー摂取,喫煙がリスクを高め,適度な飲酒とビタミンD 摂取が予防的であった.シェーグレン症候群(SjS)のメタアナリシスではC 型肝炎ウイルス感染がリスクを高めた.炎症性腸疾患のメタアナリシスによると,食物繊維摂取と果物摂取が潰瘍性大腸炎,Crohn 病ともに予防的であった.日本人を対象としたエビデンスはほとんど存在せず,わが国における自己免疫疾患の予防方法確立に向け,日本人を対象とした一次予防に資する症例対照研究やコホート研究を用いたエビデンスを創出することが喫緊の課題である. -
腸内細菌と免疫疾患
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎腸管内には膨大な数の細菌群が生息しており,ヒト大腸内には数百菌種の腸内細菌が100 兆個以上も存在している.これはヒトの体を形成している体細胞数(約60 兆個)より多く,腸内細菌叢とよばれる巨大なシステムを形成している.一方,腸管は約30 m2の表面積をもち,1011個のリンパ球が存在する体内最大の免疫組織である.腸管は多くの病原体や異物の侵入経路となることから,それらに対しては生体防御機構を発揮する一方で,常在菌や食事成分由来のさまざまな抗原に対して免疫寛容状態を保つよう適切に制御されている.このような腸管免疫機構の形成には腸内細菌叢の存在が不可欠であり,腸内細菌叢と腸管免疫機構の複雑な相互作用が関係している.無菌マウスを用いた研究により,1930 年代から腸内細菌が免疫機構の形成に重要な役割を果たしていることが知られてきたが,近年,次世代シークエンサーを用いた腸内細菌叢の16S リボソームRNA 解析といったメタゲノム解析の発達により,免疫疾患を含むさまざまな疾患と腸内細菌叢の構成菌種の異常“dysbiosis”が密接に関与していることが明らかとなってきた.また,網羅的な遺伝子発現(トランスクリプトーム)解析や代謝物(メタボローム)解析,エピゲノム解析などの解析法の発展や,無菌マウスや,無菌マウスに既知の細菌を定着させたノトバイオートマウスを用いた実験系を駆使することにより,腸内細菌による免疫調節機構が徐々に明らかになりつつある.本稿では腸内細菌による免疫調節機構における最近の知見に加え,おもに自己免疫疾患と腸内細菌叢の関係について紹介する. -
自己免疫疾患のエピジェネティクス
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎エピジェネティクスとはクロマチン修飾による遺伝子転写制御システムであり,そのメカニズムにはDNAメチル化とヒストン修飾がある.一般にはDNA の低メチル化やヒストンのアセチル化により転写が亢進する.全身性エリテマトーデス(SLE)ではゲノム全般に低メチル化されていると報告されていた.現在では,全ゲノムにわたるDNA メチル化の解析によりSLE 患者のCD4 T 細胞において低メチル化が起こっている部位が明らかにされている.さらなる症例の集積と,全ゲノムSNP との対比などにより疾患の発症機序との関連が明らかとなると思われる.ヒストンアセチル化のゲノム全般にわたる解析は報告されていない.しかし,ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤による自己免疫疾患の治療の可能性が示されている. -
制御性T 細胞
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎抑制機能を有するT 細胞として,胸腺あるいは末梢で分化し,転写因子Foxp3 や表面分子CD25 を発現するFoxp3+制御性T 細胞(Treg)や,末梢で分化し,転写因子c-Maf やAhR,Egr-2,表面分子LAG3 およびCD49b を発現し,刺激によりIL-10 およびTGF-βを分泌するTr1 細胞などの制御性T 細胞が知られている.これらの細胞群は自己免疫だけではなく,腫瘍免疫や移植免疫などにおいても病態形成や治療における役割が検討されている.また,Foxp3+制御性T 細胞からTh17 細胞への変化など制御性T 細胞の安定性にかかわる現象が明らかになっており,Foxp3 や抑制機能の維持に関するエピジェネティックスや翻訳後修飾などの観点からの研究も進んでいる. - 全身性自己免疫疾患
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関節リウマチのpreclinical state
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎関節リウマチ(RA)の発症には,遺伝的要因と環境的要因がそれぞれ50%程度ずつ関与するとされている.遺伝的要因はHLA が約1/3 を占め,非HLA 遺伝子は最近の全ゲノム関連解析(GWAS)により約100 の疾患感受性遺伝子が報告されている.環境因子としてはタバコと歯周病の関与が指摘されている.一方,RA 特異的自己抗体である抗シトルリン化蛋白抗体(ACPA)は発症数年前から陽性となり,そのRA 病態における役割に関する報告が多数認められる.本稿では,ACPA の産生と病態への関与を中心に概説する. -
全身性エリテマトーデスの病因―ゲノム解析からの知見
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎全身性エリテマトーデス(SLE)の病因解明をめざし,ヒトゲノム解析が精力的に行われている.ゲノムワイド関連研究と候補遺伝子解析を合わせ,これまでに70 を超える疾患感受性遺伝子・領域が報告されている.もっとも強い疾患関連遺伝子はHLA 領域にあり,日本人ではDRB1*15:01 の関連が検出される.一方,著者らはDRB1*13:02 がSLE をはじめとする複数の膠原病に共通の疾患抵抗性アリルであることを検出している.また,SLE では末梢血単核球におけるⅠ型インターフェロン(IFN)誘導遺伝子の発現増加(IFN signature)が確立しているが,Ⅰ型IFN パスウェイに関連する多くの遺伝子が疾患感受性遺伝子として検出されているのみならず,“typeⅠ interferonopathy”と総称される単一遺伝子疾患との類似性も指摘されている.これらを含め,主要なSLE 感受性遺伝子について,研究の現状を概説する. -
悪性腫瘍合併皮膚筋炎
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎皮膚筋炎(DM)は炎症性ミオパチーのなかでも皮膚,筋肉,しばしば肺,関節などに病変が及ぶ一群をさすが,近年の研究で血清中の自己抗体が特徴的なサブセットを形成することが判明してきた.そのひとつに,悪性腫瘍合併のDM がある.はじめてDM と悪性腫瘍の合併例が報告されてから百年が経過するが,この間,無数の症例報告,数々のケースシリーズ,いくつかのメタアナリシスより傍腫瘍症候群としての悪性腫瘍合併筋炎の概念が確立され,とくにDM での合併頻度が高いとされる.本稿では悪性腫瘍合併DM の臨床的特徴を概説し,関係が深いとされる自己抗体,とくに抗TIF1γ抗体と抗NXP2 抗体,さらには抗SAE 抗体について判明している臨床的意義について詳説し,自己抗体から考える病態についても触れる. -
強皮症の自然歴と早期診断
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎線維化,末梢循環障害,自己抗体産生を主徴とする強皮症(SSc)は,有用性の高いエビデンスを有する治療薬のない難治性病態である.線維化病変や血管障害は一度完成してしまうと可逆性に乏しいことから,早期から的確に診断し,治療介入することで病態の進展を阻止するあらたな治療概念が提唱されている.皮膚硬化の顕性化に先立ってRaynaud 現象,手指腫脹,爪郭毛細血管異常,SSc 関連自己抗体が出現することから,これら臨床所見を取り込んだ新しい分類基準が提唱され,早期診断が可能になった.さらに,皮膚硬化の進展が予測される早期例を対象とした分子標的療法の臨床試験が進行中である.これらの取組みによりSSc に有効な治療の実現が期待されている. -
ANCA 関連血管炎
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎血管炎とは液性免疫・細胞性免疫の異常によって血管壁に炎症が生じる全身性の炎症性疾患であるが,antineutrophil cytoplasmic antibody(ANCA)関連血管炎(AAV)は,①免疫複合体沈着がほとんど認められない,②小血管を主体とする壊死性血管炎で,③ANCA と関連するもの,と定義される.肺胞出血や腎不全をきたすとquality of life(QOL)を損ね,予後に影響する.罹患率には人種差が存在し遺伝的影響が大きいことが示唆されるが,Genome-wide association study(GWAS)からはANCA の血清型との関連がより強いことが明らかにされた.ANCA の対応抗原は好中球細胞質のアズール顆粒中に存在するが,近年ANCA 自体が好中球や補体を活性化することで血管炎を引き起こすと考えられるようになってきた.ANCA の産生機序については依然不明な点が多いが,エピジェネティクスやneutrophil extracellular traps が関与している可能性が示唆されている.また,わが国に多い間質性肺疾患合併ANCA 関連血管炎の臨床研究からは,肺が抗体産生の場である可能性も示唆される.AAV の早期診断には診断・分類基準が重要であり,国際的に統一された基準作成のための国際共同研究の結果がまたれる. -
ベーチェット病
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎ベーチェット病(BD)の基本病態は,T リンパ球の過剰反応性に基づくサイトカインの産生による好中球の機能(活性酸素産生能・遊走能)の亢進である.特徴的な病理所見は,炎症細胞のperivascular cuffing と血栓形成傾向(thrombophilia)である.近年,新しい治療として難治性眼病変に対する抗TNF-α抗体(インフリキシマブ)が導入され,効果を上げている.また,特殊病型にも有効性が認められている.とくに,難治性の慢性進行型神経BD(CPNB)では髄液のIL-6 が持続的に上昇するが,これもインフリキシマブで制御できることが明らかになった.BD においては疾患特異的なマーカーが存在しないことから,その早期診断は困難であるが,そのなかの最重症病型であるCPNB については髄液のIL-6 をサロゲートマーカーとしての早期診断が可能である.とくに急性型神経BD の回復期には,かならず髄液IL-6 を測定してCPNB への移行の有無をチェックし,診断が確定したらできるかぎり早く十分な治療を行う必要がある. -
成人Still 病の病態と診断のポイント
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎成人Still 病(ASD)は弛張熱,関節炎,皮疹(有熱期のサーモンピンク疹),白血球増多症,リンパ節腫脹,血清フェリチン高値を特徴とする希少自己炎症性疾患である.発症の原因は不明であるが,自己抗体は通常検出されず,ウイルス感染症などを契機とした単球・マクロファージを含めた自然免疫系の炎症細胞の異常活性化による高サイトカイン血症がその本態と考えられている.ASD の診断については疾患特異的な血清学的なマーカーがなく,不明熱をきたす代表的な疾患のひとつとされ,早期診断は通常困難とされる.ただし,診断が遅れた場合や,重症例ではマクロファージ活性化症候群(MAS)や播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併し予後不良であるため,適切な鑑別を行った後に早期に治療介入する必要があると考えられる.本稿ではASDの病態に関する最新の知見と,実臨床で有用な診断のポイントを紹介する. -
シェーグレン症候群
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎シェーグレン症候群(SS)は2015 年1 月より厚労省の指定難病となった.認定を受けるには,診断が確定していること,重症度分類で重症であることが必須である.診断基準は,1999 年厚労省(旧厚生省)基準が日本では唯一の正式な診断基準である.重症度分類に関してはEULAR によるESSDAI を用いて,ESSDAI が5点以上を重症と定義している.発症機序は不明であるが,さまざまな自己抗体や自己反応性T 細胞が存在することから,自己免疫疾患と考えられている.早期診断にはドライマウス,ドライアイ,関節炎などの共通の症状や所見があればSS を疑うこと,さらに,SS の確定診断をつけるために,諸検査を早期に行うことが重要である.また,遺伝的な要因もSNP 解析などからも明らかになってきているため,家族内に膠原病や関節リウマチ(RA)の患者がいる場合には早い時期からSS の発症や合併を疑うことも必要となる. -
脊椎関節炎―体軸性脊椎関節炎のpreclinical state から発症・早期診断まで
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎脊椎関節炎(SpA)は付着部炎,仙腸関節炎,脊椎炎,ぶどう膜炎,乾癬,炎症性腸疾患などの症状を主徴とする疾患であり,近年では体軸性脊椎関節炎(axSpA)と末梢性脊椎関節炎(pSpA)とに分類される.この疾患はエビデンス構築には至ってないが,HLA-B27 などの遺伝的要因に,メカニカルストレスや腸内細菌・腸管免疫バランスが崩れることによる腸管炎症などが加わり,IL-23/IL-17/TNF pathway の活性化を介して付着部炎の発症,さらには骨新生・骨増殖へ進展すると考えられている.本稿では,SpA のなかでもとくにaxSpAに関するpreclinical state から発症・早期診断まで,その研究が先行している欧米からの報告を中心に最新事情を紹介・概説する. -
高安動脈炎の発症機序におけるHLA とサイトカインの寄与
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎高安動脈炎は大型血管炎に属する特発性の炎症性疾患である.ステロイドが有効であるが,易再燃性であり,進行例では心血管系に重篤な合併症をきたすため問題となる.HLA-B*52 は高安動脈炎の発症と関連し,高安動脈炎はHLA-B*52 の保有率が高い日本などのアジアに多い.分子構造レベルでHLA-B 分子の各アミノ酸配列と高安動脈炎発症感受性の関連を解析したところ,ポケット構造に位置する2 つのアミノ酸多型が発症と関連していた.さらに全ゲノム関連研究により,IL12B およびMLX 遺伝子領域のSNP が高安動脈炎の発症と関連することが示された.このうちIL12B 遺伝子領域のSNP は高安動脈炎の重症度や治療反応性と関連していた.IL12B がコードするIL-12/23 p40 はIL-12 およびIL-23 の共通サブユニットであり,これらのサイトカインはT 細胞やNK 細胞の成熟に関与する.IL-6,TNF-αも諸研究により高安動脈炎の病態への関与が示唆されている.これらのサイトカインを阻害する生物学的製剤が高安動脈炎の治療として試され,有効性が報告されている. -
小児リウマチ性疾患
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎小児期にみられるリウマチ性疾患は,若年性特発性関節炎(JIA),全身性エリテマトーデス(SLE),若年性皮膚筋炎(JDM)をはじめ,成人で経験されるリウマチ性疾患すべてが認められる.しかし,小児期のリウマチ性疾患はその病態の表現型が成人と大きく異なり,けっして成人疾患の“小型化”ではない.小児リウマチ性疾患の特徴として,①病期が小児期のぶんだけ長期にわたり,その時期が成長期にあたること,②成人例と比較して多臓器に障害が及ぶこと,③経過が進行性で臓器障害の程度が重いこと,④薬剤の効果・副作用に小児特有のものがあること,などがあげられる.いずれの疾患も全身性の慢性炎症の特徴を有しており,長期予後を見据えた全身性アプローチを必要とし,早期でかつ正確な診断と治療法の構築が求められている.本稿では,小児リウマチ性疾患のなかでも発症頻度が高いJIA,SLE,JDM について概説する. - 臓器特異的自己免疫疾患
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炎症性腸疾患の初期病変
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎潰瘍性大腸炎(UC)やCrohn 病(CD)は長期にわたり再燃・寛解を繰り返す難治性の疾患である.それぞれの疾患には厚生労働省の研究班により作成された診断基準があり,これをもとに確定診断が行われるが,病初期においては内視鏡検査,X 線造影検査において典型像を示さず,散在するびらんやアフタ様病変しか示さないことがあり,診断に躊躇することがある.しかし,その場合でも経過観察することにより内視鏡像が疾患の典型像へと変化していくことがあり,時間をかけた検討は重要である.とくにCD は病変の放置により短期間で狭窄や瘻孔など内科的には不可逆的な腸管合併症をきたすことがあり,病初期からの注意深い観察が必要である. -
多発性硬化症と腸内細菌叢異常
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎多発性硬化症(MS)は代表的な中枢神経自己免疫疾患で,多彩な症状を呈する慢性疾患である.MS は近年世界的な増加傾向にあるが,わが国でとくにその傾向が顕著である.自己免疫寛容の破綻が生じる機序の解明は困難であるが,患者数の増加は環境要因が決定的に重要であることを示唆する.著者らは,生活習慣欧米化(westernization),とくに食習慣の変化が腸内細菌叢を変化させ,それが免疫制御機構の破綻ひいてはMS の発症につながる可能性を提唱している.MS 患者の糞便試料を解析した結果,腸内細菌叢の有意な偏倚が確認され,MS が食生活と関連した“生活習慣病”である可能性が議論されている. -
成人1型糖尿病
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎1型糖尿病は,膵β細胞の破壊によって通常は絶対的インスリン欠乏に至る糖尿病と定義されており,自己免疫性1 型糖尿病(1A 型)と特発性1 型糖尿病(1B 型)の2 つに分類される.自己免疫性1 型糖尿病(1A 型)はHLA などの遺伝因子にウイルス感染などの何らかの誘因・環境因子が加わることで膵β細胞が破壊されると考えられている.劇症1 型糖尿病は非常に急速で,ほぼ完全な膵β細胞の破壊により生じる糖尿病であり,多くの例で膵島関連自己抗体が陰性であることから,特発性1 型糖尿病(1B 型)に分類される.1A 型と同様に遺伝因子と環境因子が成因と考えられており,とくにウイルス感染との関連が想定されている. -
乾癬のpreclinical stage から発症まで
258巻10号(2016);View Description Hide Description◎乾癬は慢性の経過をとる炎症性角化症である.病因はいまだ不明な点が多いが,多遺伝子・多因子性の複合的要因のもとに形成される表皮-免疫系の病的クロストークが乾癬の病態である.爾来,乾癬は表皮の疾患と考えられていた.近年,サイトカイン標的(生物学的製剤)療法による卓越した治療効果が明らかとなり,自己免疫疾患としての立ち位置が確立した.発症前段階としては,表皮におけるバリア破壊および表皮細胞障害が契機となる.これらによる表皮炎症に引き続く自然免疫系の賦活化,さらに獲得免疫,とくにTh17 細胞の活性化カスケードがふたたび表皮を刺激することにより角化症が形成される.この表皮-免疫担当細胞間における悪循環が病態の本態である.一方,乾癬の皮膚特異的抗原および抗原特異的T 細胞についての研究も進展している.乾癬が示す生物学的製剤の感受性スペクトラムによりBehçet 病,炎症性腸疾患,関節リウマチ,脊椎関節炎など多様な自己免疫疾患との異同やオーバーラップが病因論的に類推される.本稿では紙幅の都合で,おもに尋常性乾癬について述べる.
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