Volume 258,
Issue 11,
2016
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あゆみ 光線力学治療の最先端
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医学のあゆみ 258巻11号, 1029-1030 (2016);
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【最近保険収載された新しい臨床応用】
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医学のあゆみ 258巻11号, 1031-1035 (2016);
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◎食道癌の化学放射線療法または放射線療法後の局所遺残・再発症例に対するサルベージ治療として,タラポルフィンナトリウム(商品名:レザフィリン(R))および半導体レーザ(PD レーザ(R))を用いた光線力学的療法(PDT)が2015 年度より保険診療として施行可能となった.粘膜下層(T1b)から筋層(T2)までの局所遺残・再発病変を対象とした治験のデータでは,88%に完全奏効が得られ,とくに粘膜下層までの病変では100%の完全奏効率を示した.安全性の面では光感受性物質を投与するため,約2 週間の遮光制限が必要となるが,重篤な有害事象はなかった.レザフィリンおよび半導体レーザを用いたサルベージPDT は従来のポルフィマーナトリウムおよびエキシマレーザを用いたPDT より遮光期間が短く,装置も安価で軽量化されており,より多くの施設に普及されることが期待される.今後は内視鏡的切除やサルベージ手術が困難な局所遺残・再発病変に対するサルベージ治療としてレザフィリンPDT が選択肢のひとつになりうる.
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医学のあゆみ 258巻11号, 1036-1042 (2016);
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◎光線力学的療法は,腫瘍集積性の高い光感受性物質と特定の波長を有するレーザーを腫瘍に照射することによって,薬剤濃度が高い腫瘍細胞のみへの殺細胞効果を示す低侵襲の治療方法である.その機序は,一重項酸素の発生による腫瘍細胞への効果とともに栄養血管の閉塞が考えられている.遮光期間が長いポルフィリン多量体(porfimer:フォトフィリン(R))と比較し,臨床で使用しやすいクロリン骨格をもつtalaporphin(レザフィリン(R))は2003 年,日本で早期肺癌を適応に承認された.悪性脳腫瘍への適応拡大をめざした日本初の医療機器に関する医師主導治験が2007 年に開始され,希少疾患のため第Ⅱ相単群での治験として,2 施設27例が登録された.初発膠芽腫で1 年生存率100%と生存期間中央値24.8 カ月という治療成績で,2013 年9月承認を受けた.市販後の臨床研究を行うとともに,効果検証のため比較試験を予定している.
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【研究開発】
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医学のあゆみ 258巻11号, 1043-1048 (2016);
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◎小関らは,“ラクトソーム”という,生体適合性材料より合成した新しいナノ径に調整されたドラッグデリバリーシステム型超分子にインドシアニングリーン(ICG)色素を取り込ませたICG ラクトソームを開発した.著者らは胃癌腹膜播種モデル,胃癌リンパ節転移モデルを確立し,ICG ラクトソームを用いた薬剤による“治療”とイメージングによる“診断”を一体化して病変の治療効率を高める“セラノスティクス(Theranostics)”としての意義を検証した.その結果,ICG ラクトソームは腹膜播種巣や転移リンパ節に特異的に集積し,ICG螢光を検出することで正確な診断が可能であった.さらに,ICG が有する光増感作用により光線力学療法を行うことで,腹膜播種モデルの予後を延長し,リンパ節転移モデルではアポトーシスの誘導や腫瘍増大抑制効果を有していた.以上より,診断に難渋する転移形式や,難治性悪性腫瘍のさまざまな病態において,ICG ラクトソームを用いたセラノスティクスは非常に有用な診断・治療法であると考えられた.
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医学のあゆみ 258巻11号, 1049-1053 (2016);
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◎超細胞特異的ながん治療は,がんに対しては強力でありつつ,患者の体にはやさしい治療になりうる.本稿では,まず分子イメージング技術のあらたな進化形である超細胞選択的がん治療,“近赤外光線免疫療法(NIR-PIT)”の化学・物理・生物学を統合した理論に基づいた開発理念について論じ,さらに従来のがん治療法と比較した優位点を,とくに本特集のテーマであり,同様に光を用いたがん治療である既存の光線力学療法との違いに焦点を当てて論じたい.加えて,NIR-PIT の治療対象となるがんの種類,病態,がんに対する免疫誘導など多様な応用法について論じ,さらに2015 年5 月より開始したNIR-PIT としては最初の頭頸部がんに対する臨床治験についても触れたい.
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医学のあゆみ 258巻11号, 1054-1057 (2016);
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◎近年,がんの光線力学治療および光線力学診断技術が飛躍的な進歩を遂げており,臨床で広く使われるようになってきた.そのなかでも5-アミノレブリン酸(5-ALA)を用いた光線力学治療・光線力学診断はとくに注目を集めている技術であろう.5-ALA を生体に投与すると,光感受性物質であるプロトポルフィリンⅨ(PpⅨ)が腫瘍特異的に蓄積することが明らかとなっている.このPpⅨは螢光を発する化合物であるため腫瘍部位の検出が可能であり,光照射によって活性酸素種を生成させるため光線力学治療も可能となる.本稿ではこれらの診療の基礎原理から,泌尿器科領域を中心とした臨床例まで概観していく.さらに新しい試みとして,この技術を応用したがんの早期診断の可能性まで紹介していきたい.
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医学のあゆみ 258巻11号, 1058-1062 (2016);
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◎従来,歯周病の治療では機械的な手段により除菌が行われてきたが,近年,歯周炎の新しい効果的な治療手段として光と色素の併用による光化学反応を利用し,歯周炎の局所で活性酸素種を発生させることによる殺菌効果を応用した抗菌(的)光線力学治療(aPDT)が注目を集めている.現状のaPDT 装置では臨床的効果はまだ不十分であり,著者らはあらたな光源としてレーザーの代りに青色や赤色LED を応用した研究を行っている.青色LED 光はその波長自身に細菌増殖抑制効果を有するだけでなく,赤色色素のローズベンガル(RB)を組み合せたaPDT により高い殺菌効果を示す可能性がある.また,aPDT の予防的な応用として,赤色LEDとトルイジンブルーを併用したaPDT により,歯垢形成が抑制されることを臨床ではじめて確認している.
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医学のあゆみ 258巻11号, 1063-1067 (2016);
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◎現在,高齢化社会を迎えた日本において前立腺がんは増加傾向にあり,進行前立腺がんにおいては根治可能な治療法がない.とくに内分泌療法および化学療法に対して耐性を獲得したがんに対する治療法の研究が課題となっている.光および光感受性物質を用いた低侵襲ながん治療法である光線力学的治療法(PDT)は,進行前立腺がんに対する新規治療法となる可能性がある.しかし,PDT はがん選択的な治療法であるものの,正常組織へも光感受性物質が集積することがわかっている.そこで,著者らは前立腺がん細胞選択的な治療法の確立をめざし,薬剤の輸送体として,複製能を欠損させたセンダイウイルス粒子(hemagglutinating virus ofJapan envelope:HVJ-E)を用いて,前立腺がん細胞への光感受性物質の選択性を高めた光線力学的治療法を検討している.本稿では,前立腺がん細胞に対する選択的なPDT の可能性について解説する.
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医学のあゆみ 258巻11号, 1068-1072 (2016);
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◎著者らは光線力学治療の原理である光増感反応を応用し,副作用を抑えた新しい頻脈性不整脈のアブレーション治療開発に取り組んでいる.現在,頻脈性不整脈アブレーション治療では,おもに肺静脈入口部から不整脈の原因である異常な電気伝導興奮の心臓への伝播を遮断するために,高周波通電による熱凝固壊死を原理とした高周波カテーテルアブレーションや,凍結融解療法を用いたクライオカテーテルアブレーションが用いられている.しかし,障害領域が周囲の重要神経や臓器に及ぶことや,熱発生による血栓が脳塞栓を生じるなどの副作用が課題である.細胞外光増感反応を応用した光線力学アブレーション(R)では,これらの重篤副作用リスクの低減が期待できる.本稿では,現状の頻脈性不整脈アブレーション治療の課題と細胞外光増感反応を用いた光線力学アブレーションの原理と臨床におけるインパクトを述べる.
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連載
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グローバル感染症最前線―NTDs の先へ 5
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医学のあゆみ 258巻11号, 1078-1084 (2016);
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◎明治維新によって開国した日本は,海外の医学に照らし合わせて日本に存在する多くの奇病や難病が寄生虫によるものと気づいた.維新後に招聘されたE. Baelz やH. B. Scheube らヨーロッパの学者が研究の先鞭をつけた.日本からは,多くの留学生がヨーロッパで微生物学,医学を学んで,成果を日本で広めた.司馬遼太郎のいう“配電盤”の役割をした人びとである.国内の寄生虫だけでなく,海外植民地における寄生虫の問題もクローズアップされた.台湾,朝鮮,満洲などに建設された医学校で,日本人研究者は現地の風土病としての寄生虫の防圧問題に取り組んだ.太平洋戦後,どん底からの自助努力と,アメリカの援助を部分的には受けながら多方面の寄生虫防圧が続けられた.こうして日本は歴史上はじめて寄生虫防圧に成功した.1960 年代からは海外での医療協力,あるいはWHO,PAHO など国際機関への協力,さらには1990 年代の橋本イニシアチブへと進んだ.ここではいくつかの寄生虫防圧史をみてみよう.
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フォーラム
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パリから見えるこの世界 48
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医学のあゆみ 258巻11号, 1085-1089 (2016);
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医療機関のダイバーシティ 3
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医学のあゆみ 258巻11号, 1091-1093 (2016);
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TOPICS
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消化器内科学
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医学のあゆみ 258巻11号, 1073-1074 (2016);
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疫学
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医学のあゆみ 258巻11号, 1074-1076 (2016);
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社会医学
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医学のあゆみ 258巻11号, 1076-1077 (2016);
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