Volume 258,
Issue 13,
2016
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あゆみ 輸血学最新トピックス
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医学のあゆみ 258巻13号, 1163-1163 (2016);
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医学のあゆみ 258巻13号, 1165-1169 (2016);
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◎血液製剤のHBV,HCV,HIV のNAT スクリーニングは,2014 年にこれまでの20 検体プールの検査から高感度の個別検体の検査に移行した.これにより,輸血によるHCV 感染は起こる可能性がほとんどないはずであるが,医療機関からは以前と変わらず多くの感染疑い報告が出されており,少なからず院内感染が起きている可能性がある.HIV 感染はきわめてまれになるであろう.HBV の場合はさらにHBc 抗体の判定基準の変更(2012)と相まって,確定される輸血HBV 感染は数年に一度の頻度のレベルまで少なくなることが期待される.NAT をすり抜ける汚染血液中のウイルス濃度はきわめて低いので,以後のほとんどの輸血感染は,血漿量の多い血小板,または新鮮凍結血漿の輸血によって起こると予想される.また,輸血によって伝播される総ウイルス量も非常に少ないので,発症または感染が明らかになるまで3 カ月以上の期間がかかることも多くなると予想され,輸血後の検査時期に注意すべきである.
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医学のあゆみ 258巻13号, 1171-1175 (2016);
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◎輸血療法は一種の臓器移植で重大な副作用を伴う危険性があり,大規模・中規模施設を中心として輸血管理体制が整備されてきた.一方,超高齢化社会を迎える医療情勢のなか,医療提供体制が在宅へとシフトしており,輸血療法も例外ではない.しかし,在宅での医療を担う小規模施設の輸血管理体制,外来輸血・病院外輸血には明確な指針がないのが現状である.厚生労働省の委託を受け日本輸血・細胞治療学会が実施した全国調査により,①小規模施設では職員配置など困難もあるが,仕組みの整備により改善可能な問題点がある,②外来輸血では帰宅後の副作用対策について問題点がある,③病院外輸血では検査実施体制,輸血実施体制,輸血副作用体制など整備すべき課題が多い,ことがわかった.すでに各都道府県合同輸血療法委員会などでは有用な活動内容が公開されており,それらを有効活用しつつ,今後の学会活動により啓発をはかる必要がある.
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医学のあゆみ 258巻13号, 1177-1182 (2016);
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◎アルブミン使用の適応となる病態について理解し,適正使用を推進する目的で2015 年6 月に日本輸血・細胞治療学会から「科学的根拠に基づいたアルブミン製剤の使用ガイドライン」が発表された.このガイドラインは「Minds 診療ガイドライン作成の手引き2014」に準じて作成され,病態別の推奨度とエビデンスが示されている.臨床の現場でアルブミンが多く使用される,出血性ショック,重症敗血症,重症熱傷ではアルブミンを用いても入院期間や死亡率などを改善しないこと,とくに脳虚血(頭部外傷)ではアルブミン使用で死亡率が有意に増加するため,アルブミンの使用を推奨しないことが明示されている.ただし,一時的な循環動態の改善,合併症の減少や臓器機能の改善などの効果を期待する場合の使用は弱い推奨として認めている.肝硬変に伴う腹水やそれに伴う合併症,凝固因子の補充を必要としない治療的血漿交換療法のように,臨床効果が示されているものはアルブミンの使用が強く推奨された.また,他の輸液製剤での代替が困難な場合には“他の血漿増量剤が適応とならない病態”としてアルブミンの使用が認められている.
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医学のあゆみ 258巻13号, 1183-1188 (2016);
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◎“輸血機能評価認定制度(I&A)”は,施設が適切な輸血管理を行っているかどうかを日本輸血・細胞治療学会が定めた第三者(視察員)が点検(inspection)して認証(accreditation)する制度である.2016 年1 月に制度が刷新された.新制度の特徴は,「輸血療法の実施に関する指針」「血液製剤の使用指針」などの公的な指針やガイドラインに準じ,標準的な輸血医療を実践するための必須事項としたことである.それに伴い,チェックリストの項目数は,約620 から78 へ,そのうち認定基準項目数は34 に削減された.輸血医療全般を対象とした専門家による外部監査は当制度のみであり,受審の意義は大きいと思われる.指針などでは具体的な方法の記述が乏しいもの(輸血検査や業務実施・記録など)についても現場レベルでの妥当性が評価され,問題点改善を促す内容だからである.また,現認定施設へのアンケートでは輸血実施・管理体制の向上のみならず,チーム医療や輸血に従事するスタッフの意識向上にもつながることが示されている.今後は2 年ごとのプログラム更新を通じて,より充実した内容へと改善し,経済的なインセンティブ導入を含めた認定施設の価値向上をはかる予定である.
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医学のあゆみ 258巻13号, 1189-1193 (2016);
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◎ 2015 年9 月,わが国初の再生医療等製品としてヒト骨髄由来間葉系幹細胞の製造販売が承認され,2016年2 月,テムセル(R) の商品名で発売された.テムセル(R) は非血縁者の骨髄血から得られた間葉系幹細胞を拡大培養したもので,ステロイド抵抗性急性GVHD に対するあらたな治療薬として期待されている.テムセル(R) は液体窒素の入った専用の保冷庫に納められ,医療施設に届けられる.使用時,恒温槽で急速解凍後,所定量の生理食塩水を注入し調整する.アレルギー防止の予防薬の前投与を行い,赤血球輸血セットにつなぎ静脈投与する.投与前,投与中,投与終了後のバイタルを測定する.再生医療等製品を取り扱う部門についての通知や指針は存在しない.テムセル(R) の取扱いは,造血幹細胞移植に用いる臍帯血や末梢血幹細胞の取扱いに類似していることから,輸血部門や細胞処理部門がテムセル(R) を取り扱うことが望ましいと考える.
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医学のあゆみ 258巻13号, 1194-1196 (2016);
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◎ 2000 年代になり,造血幹細胞移植のみならず,免疫細胞療法,再生医療が盛んに行われている.造血幹細胞移植における細胞調製や細胞の品質,安全性に関して注目されながらも,そのおもな担い手である医師,検査技師などは,実施する資格は医師の裁量ということで曖昧であった.このたび,日本輸血・細胞治療学会と日本造血細胞移植学会は共同で,これまで細胞調製を担当してきたおもなスタッフであった医師,臨床検査技師,衛生検査技師や臨床工学技士などの医療系国家資格を有する技能者を対象に,細胞治療認定管理師制度を立ちあげ,スタッフの養成,認定および支援をすることで,細胞治療の品質と安全性を高める試みがはじまった.本稿では,この新しい制度・取組みを紹介する.
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医学のあゆみ 258巻13号, 1197-1202 (2016);
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◎近代医学で同種血輸血の果たした役割は大きく,いまでも代わりはみつからない.一方,同種血は臓器移植であるため,抗体産生の可能性がある,完全な感染症の排除は困難であるなどの問題が残る.同種血の危険性は限りなく低くなったとはいえ,不必要な輸血は避ける必要がある.また,少子高齢化により献血者数は年々減少しており,血液製剤の不足という深刻な社会問題もある.別の視点から考え,自分の血液(自己血)で同種血の代わりとすれば同種血に頼らなくてすむ.緊急手術での大出血には間に合わないが,予定手術での出血への対処であれば作戦がたてられる.これが自己血輸血の考え方である.これまで回収式・貯血式が普及していたが,2016 年度に希釈式がようやく保険適応として認可された.希釈式では全身麻酔導入から手術開始までの短時間に自己血採血・希釈液輸液を行う.急性医原性血液希釈状態を作成して手術にのぞみ,術中に薄い血液を出血させ血球成分喪失を実質的に軽減させようという目論見である.麻酔科医の関与,術中麻酔管理の複雑さ,術中出血量の見極めと採血量設定の難しさなどの課題は多くある.しかし,全成分血が確保できる点で非常に特長がある.他の自己血法と組み合わせれば,同種血輸血回避の可能性はさらに高くなる.
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医学のあゆみ 258巻13号, 1203-1207 (2016);
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◎胎児貧血は予後不良であるため,子宮内の胎児に輸血を行うことがある.これを胎児輸血という.母児の血液型不適合やウイルス感染(とくにヒトパルボウイルスB19)がおもな原因である.一般に超音波ガイド下に臍帯静脈を穿刺して胎児の採血や輸血を行うが,妊娠週数が早いときなどは胎児腹腔内に輸血を行うこともある.貧血のスクリーニングには胎児中大脳動脈の血流速度を測定する非侵襲的方法があり,これで貧血の可能性が高いときには臍帯穿刺をして胎児血を調べ,必要な輸血量を計算する.胎児輸血にはある程度の経験が必要であるが,胎児輸血を行うことで児の生存率が飛躍的に改善する.きわめて有効な治療法であるため,ハイリスク妊娠ははやめに胎児輸血が可能な施設へ紹介し,適切なタイミングと安全な手技で治療を行う必要がある.
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連載
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グローバル感染症最前線-NTDs の先へ 7
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医学のあゆみ 258巻13号, 1214-1222 (2016);
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◎ブルーリ潰瘍は皮膚に大きな潰瘍をきたす.ハンセン病は外見の変化および神経障害など多彩な症状を起こす.そして結核はおもに肺に感染し,ときに命を奪うことのある感染症である.それぞれ違う症状を呈するが,ともに抗酸菌が原因となる感染症である.一見,異なるようにみえるこれら疾患であるが,感染症対策を講じるなかで抱える課題は共通することが多い.それは抗酸菌の性質で説明できることもあるが,またそれ以外の要素が関係することもある.またまだ解明されていないことも多い.今後の抗酸菌感染症対策に期待されるのは,①確実な予防法の確立,②簡易な,かつ感度・特異度の高い検査法の発見,③簡便な治療法の確立,である.また,それをサポートするような質の高い患者サーベイランスが必要である.社会的側面もある疾患であり,正しい知識の啓発を通し,偏見・差別をなくしていくことも,また重要である.
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フォーラム
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医療機関のダイバーシティ 5
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医学のあゆみ 258巻13号, 1223-1225 (2016);
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医学のあゆみ 258巻13号, 1226-1227 (2016);
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医学のあゆみ 258巻13号, 1228-1229 (2016);
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TOPICS
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神経精神医学
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医学のあゆみ 258巻13号, 1209-1210 (2016);
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医用工学・医療情報学
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医学のあゆみ 258巻13号, 1210-1211 (2016);
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免疫学
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医学のあゆみ 258巻13号, 1212-1213 (2016);
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