医学のあゆみ
Volume 260, Issue 1, 2017
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【1月第1土曜特集】 ミトコンドリア研究UPDATE
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- 基礎研究の進展
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ミトコンドリアDNAのユニークな複製メカニズム
260巻1号(2017);View Description Hide Description細胞小器官ミトコンドリアは,独自のゲノム,ミトコンドリアDNA(mtDNA)をもつ.mtDNA に生じたたった1 塩基の置換変異やmtDNA のコピー数低下といったmtDNA に生じる異常がミトコンドリア病の発症原因となったり,さまざまな疾患と関連していることはよく知られている.近年の一連の研究から哺乳動物において2 つのθ(シータ)型複製機構に由来するmtDNA 複製中間体が存在することが提唱されて約30 年間信じられていたmtDNA 複製モデルは大幅な修正を迫られ,mtDNA 複製の研究は世界的にも高い関心を集めている.なかでもリーディング鎖DNA が連続的に合成されていく一方で,ラギング鎖は一過的にRNA で形成され,後にDNA に置き換わるという前例のない複製機構の発見は,mtDNA 複製がこれまで考えられてきたよりもはるかに複雑な系であることを示唆しており,興味深い.mtDNA 複製を理解することは,mtDNA 異常に起因する疾患の分子メカニズムを考えるうえでも重要であり,さらなるmtDNA の基盤的研究が必要である. -
ミトコンドリアtRNA修飾の機能と疾患
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionヒトミトコンドリア(mt)DNA には22 種類のtRNA がコードされており,これらが同じくmtDNA にコードされた13 種類の蛋白質を翻訳するために使用される.ミトコンドリアtRNA は転写された後,さまざまな化学修飾を受けることで成熟し,その本来の機能を発揮する.したがって,tRNA 修飾の欠損はしばしば疾患の原因になることが知られている.著者らのグループは,ミトコンドリア脳筋症においてミトコンドリアtRNA のアンチコドン修飾が欠損していること,さらには修飾欠損が翻訳精度の低下をもたらし,ミトコンドリアの機能低下につながることを明らかにしてきた.この例はRNA 修飾の欠損が疾患の要因であることを示した最初の例であり,RNA 修飾病(RNA modopathy)という新しい疾患の概念を提唱した. -
ミトコンドリア形態変化の生理的意義
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionミトコンドリアは内膜と外膜からなる二重膜構造をもつ細胞小器官である.酸素呼吸やさまざまな物質の代謝に加えてアポトーシスやCa2+応答など細胞内応答の制御にも関与している.生細胞観察を行うと,ミトコンドリアが細胞内で活発に動き分裂と融合を繰り返す様子を観察できる.ミトコンドリアの形態は分裂と融合のバランスによって制御されており,3 つグループのGTPase 群が融合と分裂を制御している.またこれらの遺伝子欠損マウスや関連疾患の解析から,個体内におけるミトコンドリアの融合と分裂の機能が解明されつつある.最近,ミトコンドリアの膜とその内部の遺伝子は協調的に制御されていることも明らかになり,共生を起源とする独特なオルガネラの特性が理解されつつある.本稿では,哺乳動物細胞のミトコンドリアの動的制御の分子機構と,その個体における意義の最近の進展について概説する. -
小胞体-ミトコンドリア接触場の形成制御とアルツハイマー病
260巻1号(2017);View Description Hide Description細胞内の膜系オルガネラは,動的なネットワークを構築することによって相互に機能を補助・補完しあっている.近年,膜接触はオルガネラ間ネットワークのなかでもっとも注目される研究分野であり,とくにミトコンドリア-小胞体間の膜接触部位(mitochondira-associated ER membrane:MAM)に関する研究はめざましく進展しつつある.しかし,MAM の制御機構や疾患における生理機能など,いまだ不明な点が多い.著者らは以前,ミトコンドリア膜型ユビキチンリガーゼ(MITOL)がMAM の繋留因子であるMitofusin-2 を活性化して,MAM の形成を促進することを報告した.さらに最近,アルツハイマー病(AD)におけるMAM の生理機能を検証したところ,MAM がアミロイドβの凝集性の制御に関与してADの発症を抑制している可能性を見出した.本稿ではMAM の構造と機能ならびに疾患における生理的重要性について,最新の知見を含めて解説する. -
ミトコンドリア消失機構の分子基盤
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionマイトファジーは,ミトコンドリアがオートファジーによって除去されるミトコンドリアの品質管理機構である.余剰なミトコンドリアや膜電位を失ったような病的ミトコンドリアが,マイトファジーによって処理される.マイトファジーは赤血球の最終分化におけるミトコンドリア除去などの生命現象にかかわっている.また,マイトファジーの破綻は病的ミトコンドリアの残存を促し,パーキンソン病(PD)などの疾患病態にかかわっている. -
ミトコンドリア蛋白質の配送機構
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionミトコンドリアは1,000 種類以上の蛋白質から構成され,そのほとんどが核ゲノムにコードされている.これらの蛋白質は,サイトゾルで前駆体として合成された後,正確かつ効率よくミトコンドリア内に取り込まれ,外膜,膜間部,内膜,マトリックスへと仕分けられる.1990 年代以降,こうしたミトコンドリア蛋白質配送の経路と関与するトランスロケータ(膜透過装置)を中心とする40 種類を超える因子の解明が進み,配送システムの全体像が明らかになってきた.ミトコンドリア外膜のTOM40 複合体はほとんどのミトコンドリア蛋白質のミトコンドリアへの配送の入口として機能するトランスロケータである.著者らはin silico の構造予測とin vivo 部位特異的光架橋法を組み合わせて,TOM40 複合体のサブユニット配置,さまざまな前駆体蛋白質を膜透過させる仕組みの解明に成功した. -
ミトコンドリアDDS研究のあゆみ―ミトコンドリア標的型ナノカプセル“MITO-Porter”が拓く未来医療
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionミトコンドリアの機能異常は種々の疾患(進行性変性疾患,糖尿病,ミトコンドリア遺伝病,など)を誘発することが報告されている.これらの疾患を治療するためには,疾患細胞ミトコンドリア内部へ治療分子を送達するdrug delivery system(DDS)が必要不可欠である.これまでに,ミトコンドリアを標的としたDDS がいくつか報告されてきたが,疾患治療を実現するレベルには達していない.とくに,蛋白質や核酸などの高分子は堅固なミトコンドリア膜を突破することが難しく,蛋白質治療・遺伝子治療の実現は非常に困難な状況にある.本稿ではミトコンドリアDDS について,低分子化合物,蛋白質,核酸など,さまざまな分子の送達戦略を概説する.また,ミトコンドリア標的型ナノカプセル“MITO-Porter”による薬物送達戦略に関する著者らの最新の研究成果(ミトコンドリアを標的とするナノ医薬品開発・遺伝子治療戦略)も紹介する. -
呼吸鎖複合体Ⅰアセンブリー機構とミトコンドリア病
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionミトコンドリア呼吸鎖複合体Ⅰは,電子伝達系の最初の役割を担う,呼吸鎖のなかで最大の複合体である.哺乳類においては,ミトコンドリアDNA にコードされた7 種のサブユニットと,37 種にも及ぶ核にコードされたサブユニットから構成され,その分子量は980 kDa にも及ぶ.機能を発揮する成熟した複合体を形成するには44 種類ものサブユニットを組み立てるための複雑なプロセス(アセンブリー機構)が必要となる.複合体Ⅰ欠損症はミトコンドリア病の原因としてもっとも多く,遺伝子診断に至っていない例も多いが,近年,アセンブリー機構の破綻を原因とする患者報告があいついでいる.また,これらの患者細胞の解析やプロテオミクスの応用などによりアセンブリー機構に必須の蛋白(アセンブリーファクター)が数多く見出されている.複合体Ⅰのアセンブリープロセスは複雑で解析が困難であるが,その解明がミトコンドリア呼吸鎖異常症の病因診断,そして分子病態に基づいた治療法開発をもたらすことを期待する. -
ミトコンドリアに局在するプロテアーゼのあらたな機能
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionミトコンドリアに局在するプロテアーゼについて,傷害やミスフォールディングなどによる機能不全蛋白質の分解やミトコンドリア移行シグナルの切断といった機能に着目した研究が行われてきた.しかし,近年,ミトコンドリアマトリックスに局在するプロテアーゼLon がミトコンドリアDNA(mtDNA)結合蛋白質TFAM の分解を介してmtDNA の転写維持に寄与していることが明らかになるなど,ミトコンドリア局在プロテアーゼの“あらたな機能”に着目した研究が注目されている.また,近年のゲノム解析技術の進歩から,これらミトコンドリアに局在するプロテアーゼと疾患との関係も明らかになってきた. - 臨床への展開
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ミトコンドリア病の病因研究の現状
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionミトコンドリア病の病因は多様であり,ミトコンドリアDNA と核DNA 上の遺伝子群の変異がある.近年の次世代シークエンサー(NGS)の応用により網羅的な解析が格段と進んでおり,両者のDNA 解析ともにNGS が主体になりつつある.一方で,複雑なミトコンドリア機能の解析には患者由来の組織や細胞が必要であり,それらを収集して基礎研究者とともに病因・病態研究を進めていくことが重要である.わが国のミトコンドリア病研究は臨床医と基礎研究者が連携して行う体制ができており,今後の成果が期待できる. -
ミトコンドリア代謝・酸化ストレスの分子イメージング
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionミトコンドリア機能・代謝障害および酸化ストレスは,ミトコンドリア病や多くの神経変性疾患の病態に関与していることが基礎研究から示唆されているが,これまで生体での評価は困難であった.最近のPET,SPECT,MRI による分子イメージング技術の進歩によって,患者生体における局所的な病態変化を直接的・非侵襲的に評価することが可能となってきている.著者らは分子イメージングによって,ミトコンドリア心筋症患者におけるミトコンドリア代謝の変化,パーキンソン病(PD)や筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者における病態関連脳部位での酸化ストレスの増強,ミトコンドリア病(MELAS)の脳卒中様発作における病態の進展機序を明らかにしてきた.これらの知見は,ミトコンドリアや酸化ストレスを標的とした治療法の開発が重要であることを示唆している.今後の分子イメージングの発展が,ミトコンドリアがかかわる疾患における病態解明や治療薬開発を促すことが期待される. -
突然変異型ミトコンドリアゲノムを含有するモデルマウス
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionミトコンドリアゲノム(mtDNA)の突然変異が,ミトコンドリア病のみならず,糖尿病,神経変性疾患,不妊症,癌,老化などの原因になる可能性が示唆され,変異型mtDNA 分子種を起点とした病態発症機構の存在が注目されている.mtDNA の突然変異によって誘導される多様な病理の理解や効果的な治療法の探索には,変異型mtDNA 分子種を含有するモデル生物の作製と活用が必須となる.本稿では,これまでに作製されている変異型mtDNA分子種を含有するモデルマウスと,それらの表現型について紹介したい. -
疾患モデルiPS細胞を活用したミトコンドリア病研究
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionミトコンドリア病はミトコンドリアの異常が原因で発症する疾患群の総称であり,これらの遺伝学的要因の大部分はミトコンドリアに固有のDNA(mtDNA)の異常によるものである.著者らは変異型mtDNA をもつミトコンドリア病患者から疾患モデルとなる人工多能性幹細胞(iPS 細胞)を作製し,変異型mtDNA に起因するミトコンドリア呼吸機能の低下が細胞初期化および分化を強く抑制することを発見した.また,著者らは同一の患者に由来する健常iPS 細胞株(100%健常型mtDNA)および疾患iPS 細胞株(100%変異型mtDNA)を作製することに成功し,これらのiPS 細胞株を用いたミトコンドリア病の病態再現や創薬研究を進めている. -
遺伝子から探るパーキンソン病病態へのミトコンドリアの関与
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionパーキンソン病(PD)の発症機序においてミトコンドリアの関与の可能性はミトコンドリア毒物へのドパミン神経の脆弱性から注目され,剖検脳における呼吸鎖複合体Ⅰの発現低下により確認された.さらに,PD 原因遺伝子PINK1,Parkin の分子レベルの研究から,これら遺伝子がミトコンドリアの品質管理にかかわること,その障害がドパミン神経変性を導くことが明らかとなった.新規に同定された原因遺伝子CHCHD2 はミトコンドリア蛋白質をコードするが,モデル動物の解析から,CHCHD2 は呼吸鎖複合体の電子伝達の維持と電子の漏洩からくる活性酸素種の発生を抑制することが明らかとなった.CHCHD2 変異患者の病理解析から,ミトコンドリア障害が蛋白質代謝をも障害することが示唆され,CHCHD2 の研究によって,PD 病態をあらわすキーワードである“ミトコンドリア機能異常”と“異常蛋白質蓄積”とをつなぐあらたな展開が期待される. -
MELASに対するタウリン補充療法
260巻1号(2017);View Description Hide DescriptiontRNA のアンチコドンあるいはその近傍塩基の化学修飾は,コドンの正確な翻訳に重要な役割を果たす.ミトコンドリア病MELAS ではtRNALeu(UUR)をコードするミトコンドリアDNA の一塩基置換によりアンチコドン一文字目のタウリン修飾が欠損し,wobble 塩基の翻訳が障害される.MELAS の変異ミトコンドリアをもつサイブリッド細胞にタウリンを添加するとミトコンドリア機能が改善し,高用量のタウリン内服(12 g/day)により2 例のMELAS 患者で長期間にわたり脳卒中様発作が抑制された.こうした非臨床および臨床試験成績に基づいて,タウリン補充療法のMELAS 脳卒中様発作に対する再発抑制効果と安全性を検証する目的で,医師主導による多施設オープン第Ⅲ相治験が実施された.10 例中6 例で42 週の観察期間中に脳卒中様発作再発が完全に抑制された.重篤な副作用もなく,タウリン補充療法の有効性と安全性が示された. -
ミトコンドリア機能改善薬MA-5によるミトコンドリア病の治療
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionミトコンドリア機能異常によるATP の減少,酸化ストレスの増加とアポトーシスなどにより引き起こされるミトコンドリア病は,確立した治療法のない難治性疾患である.著者らは,新規のインドール系化合物Mitochonic acid 5(MA-5)がミトコンドリア病患者由来細胞で,ATP を増加させ,酸化ストレスを減少させて細胞生存率を改善することを見出した.MA-5 はミトコンドリア内膜蛋白質Mitofilin/Mic60と結合することで,ミトコンドリア内膜クリスタ構造の維持とComplex V/ATP synthase のオリゴマー形成によりATP 産生を効率化することでATP を増加させると考えられた.ミトコンドリア病モデルマウスMitomice にMA-5 を長期投与すると,心臓と腎でのミトコンドリア呼吸鎖機能が改善し,短命なモデルマウスの寿命が延長する効果を認めた.これまでにない作用機序のMA-5 はミトコンドリア病の新規治療薬となる可能性がある. -
ミトコンドリア病に対する生殖補助医療
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionミトコンドリア病に対する予防策として生殖補助医療があらたな選択肢を提供しうる.古くから実施されてきた出生前診断に代わり体外受精の受精卵から一部の胚細胞を採取し,遺伝子解析を行う着床前遺伝子診断があらたな選択肢である.疾患発生以下のヘテロプラスミー比率を有する胚を選択するが,安全域の胚を選択するうえでの不確定要素を考慮して,ホモプラスミーで発症する疾患,とくにLeigh 脳症が適切な対象となる.一方,第三者の提供卵子を用いて,核を入れ替えて疾患発症を回避できる児を出産させる方法として,卵子核移植が海外では実施に至っている.この方法には紡錘体移植と前核移植の2 方法がある.今後,児の長期予後も含め,経過観察とデータ集積が求められている. -
ミトコンドリア病薬剤開発の現状―創薬ターゲットと開発戦略を中心に
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionミトコンドリア病の病態解明とともに,日本および欧米における薬剤開発は活発となっており,現在22 の企業や研究機関にて,16 種類の治験薬の臨床試験が行われている.薬剤型でみると,サプリメント型の補充療法から低分子型化合物による内服・注射薬,最近では遺伝子治療も現れるようになってきた.創薬ターゲットとして作用機序について分析すると,①抗酸化・抗炎症作用,②血管拡張作用,③呼吸複合体修正作用,④代謝調節作用,の4 つに分類することができ,ミトコンドリア病におけるエネルギー代謝の重要性が示されている.日本においては4 つの創薬ターゲットに対し独自の治験薬による臨床試験が行われており,欧米同様に活発に取り組む姿勢がうかがえた.また,開発戦略では欧米がベンチャー主体で複数の臨床試験を展開しているのに対し,日本では大学や公的研究機関が公的資金により行う特徴があった.今後,日本においてもより高い開発力が必要になると考えた. -
ミトコンドリア病の遺伝カウンセリング
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionミトコンドリア病は,病型により原因や発症年齢,臨床経過,遺伝形式が異なる.患者・家族は疾患の受容や遺伝学的検査の選択,血縁者への情報共有,結婚や挙児の方針への影響など,遺伝に関連する課題を抱える可能性がある.遺伝カウンセリングは,疾患の遺伝学的関与による種々の影響を人びとが理解し,それに適応していくことを助けるプロセスである.遺伝カウンセリングに来談する相談者の背景はさまざまで,希望は多岐にわたる.正確な遺伝医学的評価のためには,相談者の立場や家系内の疾患に関する正確な情報を把握することが必須である.疾患について理解することは,相談者が自律的な意思決定を行うための土台となる.表現型の多様性やミトコンドリアDNA 変異の遺伝学的特性など,疾患の特徴に留意し,相談者にとって十分でわかりやすい情報提供,遺伝学的検査の意義や血縁者への情報共有についての検討,心理社会的支援を行う必要がある.適切な遺伝カウンセリングの提供は,患者・家族の適応支援の一助となるであろう. -
ミトコンドリア病に対する医療体制の現状と課題
260巻1号(2017);View Description Hide Descriptionミトコンドリア病の医療は正確な診断に基づいた特異的な治療を行うことが理想である.しかし,ミトコンドリア病は“多様性”という特徴があるがゆえに,正確な診断のためには疾患(検査)専門家の関与が必須であり,集約的な診断システムを構築して対応している.また,臨床症状が多臓器に及ぶため,担当医師団がチームとして活動することが多く,そのコーディネート役として小児科医と神経内科医の役割が重要である.最近は新しい薬剤の臨床試験がはじまっており,日頃患者をみる難病基幹病院とともに,疾患専門家のいる難病専門診断治療センターや臨床試験実施にかかわる病院ネットワークが重要になる.
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