Volume 260,
Issue 7,
2017
-
特集 中枢神経疾患における細胞治療
-
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 561-561 (2017);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 563-567 (2017);
View Description
Hide Description
脳卒中に対するつぎの治療ターゲットとして,脳卒中により脳組織壊死が生じた後に脳神経機能回復を促進させる治療法の開発が切望されている.創傷後の治癒再生過程では,①創傷直後から約2 日間の炎症期,②その後2 週間程度続く増殖期,③さらにその後の成熟期が存在し,それぞれの時期の最適化が創傷治癒に重要であることが知られているが,脳卒中後の再生過程においても同様に①発症直後から約2 日間の炎症期,②発症後2 週間程度の増殖期,③その後に続く成熟期が存在すると考えられており,それぞれの病期をターゲットにした細胞治療開発が世界中で続々と開始されている.
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 568-572 (2017);
View Description
Hide Description
パーキンソン病(PD)は中脳ドパミン神経の脱落を特徴とする神経変性疾患である.おもな治療はL-DOPA製剤による内服治療であるが,内服治療だけではコントロールが難しくなった段階での他の治療選択として,細胞移植治療が期待されている.欧米では1980 年代より中絶胎児脳組織をドナーソースとした細胞移植治療が試験的に行われてきた.有効例では長期的な効果が認められ,場合によっては内服が不要になった症例も報告されている.しかし,ドナー組織の供給が十分得られないという問題や倫理的な問題のため,一般的な治療になるには至っていない.中絶胎児の代替として,多能性幹細胞からドナーであるドパミン神経を誘導し,細胞移植に利用しようという研究に注目が集まっている.すでに培養の技術や移植技術などは臨床応用可能なレベルにほぼ到達しており,PD に対する幹細胞を用いた細胞移植治療が臨床応用される日も近い.
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 573-577 (2017);
View Description
Hide Description
2016 年,外傷性脳損傷患者を対象とした細胞移植治療(治験)がスタートした.本治験は受傷後1 年以上経過した運動障害を有する外傷性脳損傷患者を対象に,サンバイオ(株)が開発した細胞医薬品“SB623”を定位脳手術によって投与し運動機能の改善を主要評価とした二重盲検比較対照第Ⅱ相試験である.偽手術群に加え,2.5×106,5.0×106,10×106個のSB623 投与群の4 群を設定し,それぞれ1:1:1:1 の割合で無作為割付けされる試験デザインは,本医薬品の有効性・安全性の評価を厳格に行うためである.わが国では本学を含めて5 施設,海外も含めると計30 施設が参加する国際共同試験である.本学において国内第一例目の手術を実施した.実施経験を踏まえて治験の概要,治験実施までの流れ,細胞移植手術の手順,期待される効果とその機序,さらに今後の展望について概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 579-582 (2017);
View Description
Hide Description
神経幹細胞は増殖する自己複製能と,ニューロン,オリゴデンドロサイト,アストロサイトへ分化する多分化能を有しており,脊髄損傷に対する有力な移植細胞のソースとして注目されている.これまで神経幹細胞を作製するために,胎児組織から採取したり胚性幹細胞から誘導したりしてきたが,倫理的な問題により臨床応用への使用は困難であった.しかし,体細胞から初期化因子を導入してiPS 細胞を作製し,その後神経幹細胞を誘導することが可能になり,その細胞を脊髄損傷の動物モデルに移植すると,組織学的にも機能的にも有意な回復を得られることがわかってきた.その一方で,iPS 細胞は人工的に作製した細胞であるため,移植後腫瘍化などの危険性も認められることが明らかとなった.iPS 細胞を臨床応用にもっていくためには,有効性と安全性の両側面から引き続き検討が必要である.
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 583-588 (2017);
View Description
Hide Description
脳卒中に対する細胞治療の有効性を判断するには,治療の目的に合致するアウトカム指標を定めることが必須である.障害の回復の評価においては評価の階層性(①impairment,②disability,③handicap)に基づき,評価項目の選択はその特徴や変化に対する感度などの限界と臨床的意義を考慮したうえで行われることが望まれる.同時に,評価の信頼性を高めるための工夫も必要となる.近年のニューロリハの方法論に関する大規模なrandomized controlled tria(l RCT)の研究の一次評価項目としては,上肢機能としてFugl-MeyerスケールおよびWolf Motor Function Test やAction Research Arm Test などの課題遂行時間の測定,下肢機能として歩行速度が採用されている.細胞治療においては,中枢神経系の機能修飾後の可塑的変化と機能回復の因果関係が検証できる可能性がある.障害のみならず,脳機能を関連づけて評価することも考慮されるべきであろう.
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 589-593 (2017);
View Description
Hide Description
サンバイオ(株)は,健康成人骨髄液から採取した間葉系幹細胞に,一過性にNotch-1 を遺伝子導入して作製した再生医療等製品,SB623 の開発を行っている.このSB623 には神経栄養因子や成長因子を分泌する働きがあり,脳の虚血や外傷などによる損傷後の神経修復に寄与できると考えられる.SB623 の安全性および有効性を評価するため,18 例の慢性期脳梗塞患者を対象とした第Ⅰ/Ⅱa 相臨床試験をアメリカで実施した.移植1 年後までの効果を評価したところ,SB623 は慢性期脳梗塞に対し安全かつ有効であることが示唆された.現在はアメリカおよび日本での第Ⅱ相試験を実施しており,とくに日本では再生医療等製品に対するあらたな枠組みのなかで,いち早く患者に届けられるよう臨床開発を加速させている.
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 594-599 (2017);
View Description
Hide Description
細胞治療に関するレギュラトリーサイエンスとして,再生医療に関する法律・制度やガイダンスなどを理解しておくことは重要である.再生医療に関する法律には,①製造販売に関する薬機法と,②臨床研究・自由診療に関する再生医療等安全確保法,がある.薬機法に基づく再生医療等製品は4 つの製品に対する5 つの効能・効果または性能があり,薬機法であらたに導入された条件および期限付承認を取得した製品もある.細胞治療の開発では“再生医療等製品(ヒト細胞加工製品)の品質,非臨床試験および臨床試験の実施に関する技術的ガイダンス”などを参考に,再生医療等製品に特有の課題に対応する必要がある.あらたにはじまった先駆け審査指定制度では3 品目の再生医療等製品が指定を受けている.
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 600-604 (2017);
View Description
Hide Description
脳梗塞による後遺症は多くの国民の日常生活に重大な支障を及ぼしており,その介護やケアに要する医療費は年々増加している.しかし近年,中枢神経再生医療に関する研究が急速に進歩しており,とくに細胞治療はこれまで困難であった脳梗塞の後遺症を回復させるためのブレークスルーとして期待され,実際に多くの臨床試験が国内外で報告されている.現在,脳梗塞の治療は以前とは劇的に変化するターニングポイントを迎えつつあるといって過言ではない.しかし,脳梗塞がcommon disease であるがゆえに,治療のドラスティックな変化のありようが予期せぬ社会との摩擦を生む可能性もある.この件で非常に参考となるのが,再生医療に先行している遺伝子治療分野である.ヒトゲノム計画(human genome project)では研究がはじまった当初から科学者の間で大きな関心事となったのが,倫理的・法的・社会的課題(ethical, legal andsocial implications:ELSI)であった.脳梗塞を含む中枢神経系疾患に対する細胞治療分野でも臨床応用に関する機運が高まっている今こそ,再生医療とその倫理的・法的・社会的問題の考察とが歩調を揃えつつ前進すべきときであると考えられる.本稿では脳梗塞に関する細胞治療について,医療経済学的問題と倫理学的問題の観点から考察を加える.
-
連載
-
-
グローバル感染症最前線-NTDs の先へ 19
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 609-617 (2017);
View Description
Hide Description
J-GRID は,①感染症の研究拠点に相応しい国内の大学・研究機関を一定数選抜し,そのインフラを強化するとともに,それぞれが,新興・再興感染症が発生している,あるいは発生する可能性の高い国に研究拠点をつくる,②研究拠点をネットワーク(NW)化し,NW のオペレーションと支援にあたるセンター,感染症研究NW 支援センター(Center of Research Network for Infectious Diseases:CRNID;後に推進センターと改称)を理化学研究所に設置する,という2 つの柱から成り立っている.基礎研究に軸足をおきグローバル・ヘルス(「サイドメモ」参照)を意識したユニークなプログラムであったと考える.2005 年度に文部科学省委託事業として発足,2009 年度に第1 期を終了した.J-GRID は第2 期(2010~2014 年度)の英文名Japan Initiative forGlobal Research Network on Infectious Disease に由来するが,crisp な響きとgrid がネットワーク(NW)隠喩であるために俗称としてすっかり定着したので,本稿では第1 期から現在までを通してJ-GRID とよぶことにする.「かつてないプラットフォームができた.J-GRID は科学技術外交のお手本,長期にわたり実施すべき」(第1 期),「第1 期で設置した海外研究拠点を活用してめざましい成果をあげ,国内外の感染症研究に大きく貢献している」(第2 期)という高い評価を経て,日本医療研究開発機構(AMED)のなかに組み込まれ第3 期に入った.第2 期をもってJ-GRID から退場した著者がこの稿を担当することは相応しくない,第3 期の現役にお願いしたいとご企画の北 潔先生に申し入れたが,“お前は10 年もJ-GRID の責任者をやってきたから何とかせよ”と諭された.第2 期まではすらすらと筆が運んだが第3 期をめぐっては論点を絞り込めず難航し,締切日を迎えてしまった.第3 期については皮相的な感想の域を出ていないことをあらかじめお断りしておきたい.別の機会に第3 期の当事者により論点が掘り起こされ,深められることを期待したい.
-
性差医学・医療の進歩と臨床展開 5
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 619-623 (2017);
View Description
Hide Description
認知症性疾患のうち,Alzheimer 病の発症率は女性で男性の約2 倍と高く,女性であることが危険因子のひとつとされている.その原因については,寿命の違いや遺伝子の影響,性ホルモンの違い,認知の予備力の差など複数の理由が考えられている.とくに性ホルモンであるエストロゲンには脳神経保護作用があるとされており,閉経に伴いホルモン濃度が低下することでAlzheimer 病を発症しやすくなるという仮説が立てられている.この仮説に基づき,ホルモン補充療法によるAlzheimer 病の予防が検討されているが,解決すべき課題も多く,臨床的に用いられる段階には至っていない.他にも認知症に随伴する精神症状・行動障害や介護環境,予後なども男女によって違いがあり,性別を考慮した対応が求められる.
-
TOPICS
-
-
病理学
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 605-606 (2017);
View Description
Hide Description
-
血液内科学
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 606-607 (2017);
View Description
Hide Description
-
眼科学
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 607-608 (2017);
View Description
Hide Description
-
FORUM
-
-
ゲノム医療時代の遺伝子関連検査の現状と展望 5
-
Source:
医学のあゆみ 260巻7号, 624-626 (2017);
View Description
Hide Description