医学のあゆみ
Volume 260, Issue 8, 2017
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特集 間質性肺炎のMDD(multi-disciplinary discussion)
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座談会 間質性肺炎のMDD診断
260巻8号(2017);View Description Hide Description本特集では,特別企画として「間質性肺炎のMDD 診断」と題して座談会を開催しました.ご参加いただいた先生方が所属される(非常勤含む)神奈川県立循環器呼吸器病センターでは,生検を毎年60 ~70 件行い,MDD 診断を行っています.今回は第1 部で事前に収録した実際のカンファレンスの模様を,第2 部で座談会として特集ご企画の小倉高志先生を司会に,臨床医の立場から馬場智尚先生,画像医の立場から岩澤多恵先生,そして病理医の立場から武村民子先生にご参加いただき,第1 部でのカンファレンスの内容も振り返りながら,MDD 診断の重要性と課題について語っていただきました. -
Pro:MDDは間質性肺炎の適切な診断をするために必要である
260巻8号(2017);View Description Hide Description特発性間質性肺炎(IIPs)国際集学的合意分類(2002)では,臨床画像病理診断が推奨され,特発性肺線維症(IPF)の国際ガイドライン(2011),IIPs の改定国際分類(2013)では,IIPs の診断に多分野による集学的検討(MDD)を実施することで診断の確信度が高くなり推奨されている.とくに非特異性鉗子値性肺炎(NSIP)と分類不能型IIPs では重要である.また,過敏性肺炎の診断時にも重要とされている.MDD は間質性肺炎の適切な診断をするために必要である. -
Con:MDDは間質性肺炎の診断時にかならずしも必要ではない
260巻8号(2017);View Description Hide Description2013 年に改定された特発性間質性肺炎(IIPs)の国際多分野声明では,間質性肺炎の診断には間質性肺炎に精通した臨床医,放射線科医,病理医による多分野連携的な討議による診断(MDD)が必要とされている.しかし,現在までのMDD に関する種々の研究は,診断の一致率や経験年数の層別化,疾患別の診断精度などにおいて各分野の専門医によるMDD の重要性を十分に証明したとはいい難く,さらなる研究が必要である.MDD は間質性肺炎の診断時にかならずしも必要ではないが,臨床医は種々の情報を統合して自らの診断と治療方針の精度を高める必要がある. -
病理医からみた間質性肺炎のMDD診断
260巻8号(2017);View Description Hide Description間質性肺炎の診断においては臨床画像病理診断(MDD)が推奨され,このMDD により診断の一致率および確信度が向上することが知られている.間質性肺炎の病理診断ではある一時期の肺の状態を肺のごく少領域を評価できるにすぎず,MDD診断による多方面からの再評価・議論は診断の正確性向上に重要である.MDDでは呼吸器病理診断の精度向上のみならず,診断の標準化や教育的側面などさまざまな効果が期待できる.その一方で,呼吸器を専門とする病理医不足や,過敏性肺臓炎などの診断基準の確立していない疾患に対するとらえ方など,解決しなければいけない課題も存在する.本稿では,病理医からみた間質性肺炎のMDD 診断を概説する. -
MDDにおいて画像診断医がめざすもの
260巻8号(2017);View Description Hide Description間質性肺炎の診療において画像診断医が果たすべき役割は多岐にわたるが,なかでも予後不良な形態学的パターンであるUIP パターンの所見の有無を判断することが重要である.“胸膜直下かつ肺底部優位,蜂巣肺形成”の古典的パターンを満たさずとも末梢胸膜直下で胸壁に垂直な短線状影を拾い上げることで細葉辺縁や肺静脈に沿った早期の線維化病変を認識すること,局所の不均一性に注目することによって組織学的UIP パターンの診断に近づくことは可能である.しばしば合併する肺癌は画像を丁寧に観察することで比較的早期に指摘可能であるが,しばしば回答を求められる,UIP パターンを呈するなかでの二次性間質性肺炎の推定,近い将来の急性増悪のリスク,初期段階での予後予測などはまだ研究途上にある.画像診断医は詳細に画像を検討することで画像が示す組織学的背景を読み取りMDD を通じて臨床に還元することが可能と考える. -
慢性過敏性肺臓炎におけるMDD診断の役割―特発性肺線維症と比較して
260巻8号(2017);View Description Hide Description慢性過敏性肺臓炎は原因抗原の長期間曝露により肺線維化が進行する疾患である.とくに慢性過敏性肺臓炎の原因の大半は鳥関連であり,環境調査・抗原回避試験・吸入誘発試験などが診断に有用である.しかし,とくに潜在性発症型では画像所見が特発性肺線維症と類似するため両者の鑑別が困難で診断に難渋する場合も多い.慢性過敏性肺臓炎は抗原回避により予後の改善が期待できるため,可能な範囲で肺生検などの病理診断を施行したうえで積極的に臨床医・放射線科医・病理医の専門医による集学的検討(MDD 診断)を行うことが重要である.一方で,慢性過敏性肺臓炎においては特発性肺線維症と比較してMDD 診断の一致率が低いとの報告もあるため,つねに鑑別診断のひとつとして考えておくことが必要である.今後,慢性過敏性肺臓炎の病態の解明とともに,診断方法の標準化,および多施設で共通したMDD 診断が行えるシステム構築などが望まれる. -
膠原病関連の間質性肺炎におけるMDD診断―問題点と今後の課題
260巻8号(2017);View Description Hide Description特発性間質性肺炎(IIPs)とくに特発性肺線維症(IPF)の診断においては,呼吸器内科医,放射線科医および病理医の3 者によるmulti-disciplinary discussion(MDD)診断が一致率も高く,重要であると報告されている.しかし,診断が確定した膠原病関連の間質性肺炎や膠原病的背景を有するIIPs 症例におけるMDD 診断の有用性はいまだに確立していない.IIPs と比較し,膠原病関連の間質性肺炎では関節痛や皮疹などの臨床症状に加え,画像所見では上肺野も含めた広範な分布を示す症例も少なくない.また,外科的肺生検組織ではリンパ濾胞の形成や高度の形質細胞浸潤を伴うこともある.さらに,細気管支炎やリンパ増殖性疾患など間質性肺炎以外の多彩な肺病変の合併も考慮すべきである.したがって,IIPs の他の臨床病型と比較すると非典型的所見が多くunclassifiable IIPs に分類される症例も多いと推察される.このような症例においてMDD 診断ではどのように記載すべきか,またどのような共通用語を用いるべきかなど問題点も多い.本稿では実際にMDD 診断を実施した膠原病的背景を有するIIPs(unclassifiable IIPs)症例を例にあげ,その問題点と課題を考察する.
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連載
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- グローバル感染症最前線-NTDs の先へ 20
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2030 年の国際目標に向けたグローバルファンドの役割
260巻8号(2017);View Description Hide Description“21 世紀型パートナーシップ”とよばれ,イノベーションを期待されてきたグローバルファンドは,2002年の創設から2015 年までに1,700 万人の命を救い,世界のHIV,結核,マラリアによる死亡,新規感染の減少,そしてミレニアム開発目標の達成に大きく貢献した.2030 年に向けた国際目標“三大感染症流行の終息”を達成するには援助資金と国内予算を確保し,それらの資源を最適化し,インパクトを最大化する必要がある.目標達成に向け,グローバルファンドには資金調達のみならず,より戦略的な資金活用,国内予算の増加や持続可能性の強化に向けた支援,脆弱国に対する戦略的支援,強靱で持続可能な保健システムの強化,ユニバーサル・ヘルス・カバレッジへの支援,人権・ジェンダー平等の擁護・促進などの役割も期待されている.グローバルファンドではパートナーとともに2017~22 年新戦略を策定し,今後3 年間の投資計画として130 億米ドルの増資を得て,あらたなサイクルがスタートした. - 性差医学・医療の進歩と臨床展開 6
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肥満とやせの性差
260巻8号(2017);View Description Hide Description肥満のピークは,これまで男性では中年層(40~50 歳代)にみられていたが,近年はライフスタイルの変化に伴い10 代や20 代の肥満が増加傾向にあり,若年化している.一方,女性では50 代以降で肥満者の割合が増加してきており,この男女差の背景には性ホルモンの影響に加えて日本人のライフスタイルの変化も大きくかかわっていると考えられる.加えて高齢者の肥満も男女ともに徐々に増加傾向にある.やせに関しては若年女性(20 代)でとくに多くみられ,近年では30 代以降でもやせの増加が広がってきている.この背景には食行動などのライフスタイルにかかわる心理的・社会的要因の関与が示唆されている.また,高齢者では有意な性差は認めないが,やせも認められ,加齢に伴うホルモン環境の変化や慢性炎症に関与する炎症性サイトカインなどさまざまな要因が関与していることが指摘されている.
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TOPICS
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- 加齢医学
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- 腎臓内科学
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- 内分泌・代謝学
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FORUM
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- ゲノム医療時代の遺伝子関連検査の現状と展望 6
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