Volume 260,
Issue 10,
2017
-
特集 超高齢社会における心不全診療のあり方
-
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 869-869 (2017);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 872-874 (2017);
View Description
Hide Description
日本心不全学会ガイドライン委員会は,75 歳以上の後期高齢心不全患者を対象とした「高齢心不全患者の治療に関するステートメント」を2016 年10 月7 日に公開した.ステートメントは高齢心不全を,コモン・ディジーズかつ予後不良疾患として位置づけ,心不全顕在化の予防とともに,個々の患者の併存疾患を考慮した治療を提唱している.
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 875-879 (2017);
View Description
Hide Description
加齢はそれ自体が心不全発症の重要な因子であり,収縮障害および拡張障害両方に対して大きな影響をもたらすことが知られている.高齢者においては,中年期の患者と異なり心不全を単独で発症することはまれであり,ほかの慢性疾患の合併率が高いことが報告されている.一般的に頻度の高いものとしては心房細動(AF),糖尿病,慢性腎臓病(CKD),貧血,慢性閉塞性肺疾患(COPD),うつ病,認知機能障害などがあげられる.これらの合併症は単独でも心不全の増悪因子であるが,とくに高齢者においては複数の合併症をもつことも多く,QOL および予後を悪化させる.高齢者の心不全管理においては,このような合併症に対する包括的なアプローチが重要な問題となる.
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 880-884 (2017);
View Description
Hide Description
高齢者の心不全には,収縮能の保たれた心不全(HFpEF)が多い.収縮能の低下した心不全(HFrEF)には予後を改善する標準的治療法が確立しているが,HFpEF にはそれがない.HFpEF と左室拡張不全は同義ではなく,心不全において左室収縮機能障害と拡張機能障害はしばしば同時に存在する.HFpEF の特徴は,心臓外の併存症が多く,心房細動が多く合併することである.HFpEF の治療法として,現状では高血圧の管理,至適な脈拍数の管理のほかに,慢性腎臓病(CKD)や肺疾患,貧血,鉄欠乏など体液量や最大酸素摂取量に影響する多彩な併存症の管理,心房細動の管理,運動療法による筋肉量の維持などが推奨されている.抗アルドステロン薬,アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬(ARNI),左右心房間シャントデバイスなどに期待がもたれているが,標準的治療法の確立が切にまたれるところである.
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 885-889 (2017);
View Description
Hide Description
高齢者心不全において近年,大動脈弁狭窄症(AS)が注目されている.高齢化に伴い,AS 患者の顕著な増加が予測されているからである.AS 治療の第一選択は大動脈弁置換術であるが,対象が高齢者のため周術期リスクが上昇することで手術対象から外れ,心不全の再発に苦しむ患者も少なくない.2002 年,低侵襲な治療である経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)が開発され,急速に普及している.2013 年わが国でも治療が開始され,初期成績も良好である.また,僧帽弁閉鎖不全症(MR)においても同様であり,手術リスクが高い場合,欧米ではカテーテル治療が選択されている(MitraClip(R)).本稿では,日本におけるTAVI の現状と今後の展望,およびMitraClip(R) について概説したい.
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 890-894 (2017);
View Description
Hide Description
心不全,とくに重症心不全は薬物治療だけでは太刀打ちできないことも多く,近年はデバイス治療が盛んに用いられるようになった.デバイス治療とは,体内または体外に何らかの機器を装着することで電気生理や血行動態に大きな変化を与える治療である.前者としては植込み型除細動器や心室再同期療法,後者としては補助人工心臓(VAD)が代表的である.しかし,高齢者は特有の合併症も多く,そもそもの生命予後や並存疾患の有無を考慮して,治療のベネフィットがそれを上まわり,十分な同意が得られる場合にのみ適用すべきである.VAD 治療に関しては現在のところ65 歳以上には適応がない.年齢以外に大きなリスクを認めない患者群から徐々に適応拡大が検討されていくべきであろう.
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 895-900 (2017);
View Description
Hide Description
心不全増悪による入退院を繰り返す高齢の心不全患者は多く,チーム医療による包括的管理がきわめて重要である.包括的管理には薬物治療の最適化に加え,服薬遵守率の向上,塩分・水分管理,症状モニタリング,身体活動の促進などのセルフケア支援,心理社会的支援などが含まれる.心不全の増悪は心疾患の悪化のみならず,水分や塩分の過剰摂取,服薬の自己中断,症状のモニタリング不足などが誘引となることが少なくない.したがって,在宅での適切なセルフケア実践によって,ある一定数の心不全増悪は予防できる可能性がある.それゆえに,心不全管理においては患者・家族に対するセルフケア支援が重要である.また,心不全増悪の早期予知の一手段として遠隔モニタリングが注目されている.近年のメタ解析では,在宅で測定した体重や血圧などのデータが送信され,必要に応じて医師や看護師による治療・助言が得られる非侵襲的遠隔テレモニタリングの有効性が報告されている.わが国の高齢心不全患者に対する効果も期待されるが,その活用のためにはさらなる取組みが必要であろう.
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 901-905 (2017);
View Description
Hide Description
心不全患者ではさまざまな骨格筋異常が生じ,予後や症状と密接に関連することが知られていた.とくに,高齢心不全患者の骨格筋萎縮・筋力低下(サルコペニア)はADL にもかかわる重要な問題であり,フレイルティサイクルの中心的な要因である.心不全患者においてサルコペニアの合併は約20%程度であり,予後悪化にもかかわっており,早期の発見が重要である.正確な筋量のモニターにはCT,MRI や二重エネルギーX線吸収測定法が必要であるが,ベッドサイドで簡便に行える筋周囲径測定や機能評価として筋力測定で十分に評価可能であることが知られるようになった.発症要因は複雑であり,かならずしも病態の詳細は解明されておらず,治療法も確立していない.一方で,運動療法,栄養補充療法および神経筋電気刺激などの有用性が報告されており,積極的な介入が望まれる.
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 906-910 (2017);
View Description
Hide Description
わが国は,さらに超高齢社会が進むなかで,2025 年には日本人の100 人に1 人が心不全患者になると予測され,心疾患を原因とした終末期患者が増え続けている.このような社会背景のなか,高齢者心不全患者のだれもが安心して穏やかな人生の終焉を迎えるために,緩和・終末期ケアに対する認識を深めていくことが求められている.本稿では,高齢者心不全と終末期医療のあり方について述べる.
-
連載
-
-
グローバル感染症最前線-NTDs の先へ 21
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 917-922 (2017);
View Description
Hide Description
感染症の脅威は,近年の気候変動により増大されつつある.たとえば,気候変動のひとつであるインド洋ダイポールモード現象が発生すると,東アフリカ沖の赤道付近の海面温度が上昇し,多量の水蒸気を発生させる.そして東アフリカ各地で雨量が増加し,マラリアなどの蚊介性感染症が流行する.そこで,世界保健機関では気象データに基づく感染症流行の早期警戒システムの構築を提唱している.しかし,従来の感染症流行予測は気候そのものの予測が困難であったため十分な予測期間が確保できていない.一方,海洋開発研究機構では地球シュミレータを利用し,精度の高い,数カ月から1 年先の気候変動予測を可能としている.現在,長崎大学熱帯医学研究所と海洋開発研究機構では,気候変動予測モデルをもとに南部アフリカでのマラリア流行を予測し,持続的に運用できる早期警戒システムの構築をめざしている.プロジェクト開始から2 年が経過し,気候予測をもとにしたマラリア流行予測実現へ向けて科学的裏づけが得られつつある.インフラや経済状況が脆弱な発展途上国でこそ,このような最新技術が利用されるべきと考える.
-
性差医学・医療の進歩と臨床展開 7
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 923-928 (2017);
View Description
Hide Description
運動能力に関して性差と年齢差があることは広く知られており,スポーツの競技は男女別に行われ,シニア大会も活発である.ところが,医療の世界では男女別や年齢別の診断基準や治療目標が設定されていることは少ない.しかし,世界的に確立された科学的な方法を用いて健診や臨床で使われている検査項目の基準範囲(正常範囲)を設定すると,ほぼすべての項目で性差と年齢差が認められる.また,科学的方法で設定された基準は10 年という時を隔てて設定された総合健診医学会と人間ドック学会の間でほぼ一致している.さらに,最近の欧米の予防治療ガイドラインともよく一致している.ここでは紙幅の都合上,アルブミン,収縮期血圧,LDL-コレステロール,空腹時血糖に限って性差と年齢差の実態および性差と年齢差を無視した健診や医療の問題について解説する.性差と年齢差を考慮しない健診や医療では,若者や女性での早期異常の見逃しや,高齢者での過剰診断および多剤大量処方の原因となる.
-
速報
-
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 929-930 (2017);
View Description
Hide Description
-
TOPICS
-
-
細胞生物学
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 911-912 (2017);
View Description
Hide Description
-
消化器内科学
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 912-913 (2017);
View Description
Hide Description
-
免疫学
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 913-915 (2017);
View Description
Hide Description
-
FORUM
-
-
ゲノム医療時代の遺伝子関連検査の現状と展望 7
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 931-933 (2017);
View Description
Hide Description
-
パリから見えるこの世界 54
-
Source:
医学のあゆみ 260巻10号, 934-938 (2017);
View Description
Hide Description