Volume 262,
Issue 12,
2017
-
特集 AEDがもたらした救命のパラダイムシフト
-
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1067-1067 (2017);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1069-1072 (2017);
View Description
Hide Description
1960 年に現在の蘇生法の骨格が提唱されてから,病院外心停止の傷病者に対する治療戦略は救急医療体制に大きな影響を与えてきた.とくに,1990 年代に提案された,病院外心停止に関する統計の統一された記録様式(ウツタイン様式)は,救急医療の機能を代表する客観性指標として救急医療体制の実質的な整備に重要な役割を果たしてきた.大阪ウツタインプロジェクトは,大阪府という地域を網羅する蘇生統計記録集計プロジェクトとして1998 年より展開された.統計をとること自体が,蘇生成績の向上につながるきっかけになるとともに,全国へ展開する道を開いた.さらに,救急隊の処置の限界も明らかにされ,一般の方々への啓発の重要性を浮き彫りにしてきた.このことは,AED のもたらした救命のパラダイムシフトに結びついているのである.
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1073-1077 (2017);
View Description
Hide Description
平成28 年(2016)までのわが国において,消防機関や医療機関を除いたAED 累計販売台数は688,329 台であり,すでに破棄された97,370 台を差し引いた590,959 台が実際の設置台数に近い数値と考えられる.一般財団法人日本救急医療財団は,平成29 年(2017)8 月の時点で312,571 台のAED 設置情報を収集し,全国AED マップを作成してホームページで公開するだけでなく,専用のスマートフォンアプリケーション(QQMAP)を配信している.AED 設置台数の増加とともに,市民がAED のショックボタンを押した件数は,平成18 年(2006)の264 件から平成27 年(2015)の1,815 件まで増加した.市民による電気ショックが行われず,救急隊員によってのみ電気ショックが行われた場合の15.0%に比べて,市民が電気ショックを行い救急隊員によるショックが不要であった場合は40.7%,市民と救急隊員の両方が電気ショックを行った場合は30.5%と,高い社会復帰率を示し効果的であった.
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1078-1082 (2017);
View Description
Hide Description
海外でもAED の普及が進んでいるが,日本国内と同様にAED の普及数に比べて実際にAED が使用された症例数が少ない.また地域による格差が大きいことも指摘されている.アメリカ・シアトルやデンマーク・コペンハーゲンでは先駆的な試みが行われている.過去に起こった心停止事例の解析から適切なAED 配置を検討したり,SNS を活用してAED をただちに現場に届けるシステムを作ったり,さらに警察官のAED 使用を進めたりして,実際に救命率の改善に結びついている.また北米やヨーロッパでは,学校での心肺蘇生法やAED 使用法についての教育についても非常に熱心であり,我々が見習うべき点が多い.本稿では,海外におけるAED の普及と救命実績について述べたい.
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1083-1086 (2017);
View Description
Hide Description
日本では,2004 年に市民によるAED 使用が法的に許可されて以降,2014 年には公共の場所に設置されたAED の数は50 万台を超えており,AED を見かけることは珍しくなくなってきている.しかし,AED パッド装着や電気ショック実施は場所によってかなりの違いがあり,効果的にAED が機能している場所とそうでない場所にかなりの濃淡がある.今後は単純にAED を増やすだけではなく,効果的かつ戦略的にAED を配置することによって,日本における院外心停止患者の救命率向上を続けていくことが可能となるであろう.
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1087-1092 (2017);
View Description
Hide Description
児童生徒の学校管理下における心原性突然死はまれではあるが,両親や兄弟姉妹,学校,社会に与える衝撃はきわめて大きい.突然死の原因疾患には肥大型心筋症,QT 延長症候群など学校心臓検診で抽出できる疾患のほか,冠動脈起始異常や特発性心室細動など抽出できない疾患もあり,ハイリスク群の管理とともに,学校救急体制のいっそうの充実が求められる.また原因不明例は少なくなく,遺伝子検索を組み合わせたよりいっそうの死因解明が必要である.児童生徒10 万人当りの年間心停止発生率は0.24~0.39,突然死の発生数は年間12~30 件,10 万人当り0.1~0.17 で推移し,救命率は55%以上,とくに最近2 年間は70%を超えていた.学校管理下では目撃され,教職員による迅速な対応が期待できることから,救命できる可能性が一般より高いといえる.さらなる取組みにより学校管理下突然死ゼロが期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1093-1097 (2017);
View Description
Hide Description
2004 年7 月に日本国内で一般市民がAED を使用することができるようになってから10 年以上が経過した.2005 年2 月の第12 回泉州国際市民マラソンにおいて,国内のマラソン大会としてははじめて,レース中の心肺停止者に対してAED を使用して救命された.スポーツ活動中の心停止の頻度はかならずしも高くない.その多くには基礎心疾患が存在しているが,運動中の心停止は基礎心疾患が存在せずに生じることもある.胸郭形成が十分でない幼児,小中学生などの前胸部にボールなどの衝撃が加わると心臓震盪が生じ,基礎心疾患がなくとも心停止となることがありうる.したがって,スポーツ活動の現場に適切にAED を配備する必要がある.スポーツ現場においてどれくらいの頻度で心停止が生じているかについての詳細なデータはこれまで存在しなかった.これに対して,日本陸上競技連盟医事委員会や日本臨床スポーツ医学会が開始した取組みについて紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1098-1102 (2017);
View Description
Hide Description
わが国は,世界でもっともAED の設置が進んだ国のひとつとなったが,心停止の現場を目撃された心原性心停止でも,AED を用いた電気ショックに至る症例はわずか4%にとどまっている.急速に発達するインターネット,ソーシャルネットワークを活用することで,AED が使用される割合を高め,院外心停止例の救命率を向上させることが期待される.スウェーデンでは訓練を受けた一般市民をボランティアとしてあらかじめ登録し,心停止発生時に現場付近にいる者へ心停止情報を発信するシステムを導入し,救急隊到着前の心肺蘇生実施割合が増加することが示されている.著者らも愛知県尾張旭市で,消防と連携したシステムの実証実験を進めている.AED の普及がめざましい日本でソーシャルネットワークを活用し,救命の意思と技術を持つものと心停止の現場を繫ぐことで,救いうる命を救うことができる先進の救命体制を構築することが求められている.
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1103-1108 (2017);
View Description
Hide Description
学校管理下における死亡事故は,小・中・高等学校を通じて突然死が圧倒的に多い.その第一発見者は子どもであることが多いことから,子ども自身が発達段階に応じた救命処置を実施できるように指導することは重要である.しかし学習指導要領には,救命に関する内容が小学校にはなく,中学校および高等学校の保健体育科に心肺蘇生法に関する学習が位置付けられているが,AED については実技練習の必須内容とはなっていない.さいたま市では,平成23 年に起こった市立小学校6 年生女子児童の死亡事故を教訓に,消防と連携して教員研修を強化し,市立小・中・高等学校全164 校で,教員が指導者となる心肺蘇生法実習を推進している.また,京都大学では平成27 年度より全学部新入生約3,000 人を対象に,胸骨圧迫とAED の使い方を指導している.すべての子どもたちが心肺蘇生・AED に関する知識と技能を習得する教育体系を構築するためには,実技を含む救命教育が学習指導要領に位置付け,それを指導する教員の指導力習得を教員養成課程に含めることが必要である.本稿では,わが国の学校教育における救命教育の現状,具体的な救命教育取組の紹介と,今後の課題について述べる.
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1109-1113 (2017);
View Description
Hide Description
心停止現場に突然遭遇して一次救命処置(BLS)を行うバイスタンダーには,心身に大きな負担がかかる.『JRC 蘇生ガイドライン2015』においても,バイスタンダーのストレスの問題が取り上げられている.本稿では,バイスタンダーが抱えることの多い問題について,①BLS の手技に関する不安,②傷病者の予後に関する不安,③心的外傷性ストレス反応,④救急隊員の言動による不快感,の4 種に分類し,対処法を検討した.具体的には,BLS に関する正しい知識と手技を身につけたり,起こりうるストレス症状やその対処法を事前に知っておいたりすることが重要であり,これらの教育にはBLS に関する講習が活用可能と考えられる.また,バイスタンダーへの感謝カードの配布や相談窓口の設置も有用な対策と考えられる.救命率向上の観点からも社会全体でバイスタンダーを守る取組みが急務である.
-
連載
-
-
臓器移植の現状と課題 10
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1121-1128 (2017);
View Description
Hide Description
◎臓器移植は第三者である臓器提供者(ドナー)があってこそ成り立つ医療であり,臓器移植症例は全例を登録・集計し,その成果が広く一般に公表されなければならない.また,発展途上国などで非倫理的な臓器移植が行われているという現実から,臓器移植登録はその排除のためにも必要なことである.これが実際に行えているのは日本だけであり,1956 年に行われた最初の腎移植症例から全臓器で全症例のレシピエントとドナーが登録され,追跡されている.この登録と追跡のシステムは国際的に高く評価されている.一方で世界保健機関(WHO)は,2009 年に臓器・組織・細胞・ヒトに由来する医療材料の使用症例を登録・追跡するために,これらの国際コード化に取り組みはじめた.臓器に関しては,WHO と国際移植学会が,アジア移植学会に対し世界にさきがけてアジアでの臓器移植登録の一本化を要請し,この日本での優れた臓器移植登録の成果から,日本移植学会が中心となり2016 年から取り組んでいる.
-
テレメディシン ― 遠隔医療の現状と課題 4
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1129-1134 (2017);
View Description
Hide Description
◎わが国は世界で最初に超高齢社会を迎え,大きな変革の時代に入っている.とくに医療面では“CURE からCARE へ”,すなわち“疾病を治す時代から疾病とともに生きる時代へ”と変わった.これに伴い,これまで独立した概念であった健康と医療が融合し健康医療として一体化するとともに,医療と介護も連携から統合へと変わりつつある.そしていま,われわれは愛知県内を中心に,次世代の医療と介護をあり方を模索しながら,ふ・く・し(普通に・くらせる・しあわせ)社会の実現をめざしている.
-
TOPICS
-
-
消化器内科学
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1115-1116 (2017);
View Description
Hide Description
-
麻酔科学
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1116-1117 (2017);
View Description
Hide Description
-
脳神経外科学
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1118-1119 (2017);
View Description
Hide Description
-
FORUM
-
-
生殖倫理の現況と展望 2
-
Source:
医学のあゆみ 262巻12号, 1135-1137 (2017);
View Description
Hide Description