Volume 263,
Issue 2,
2017
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特集 ポドサイト障害―腎障害における新たな視点
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医学のあゆみ 263巻2号, 145-145 (2017);
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医学のあゆみ 263巻2号, 147-149 (2017);
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近年,さまざまな病態生理においてエピゲノム調節機構の重要性が注目されている.最近の報告では,ヒストン修飾やDNA メチル化,miRNA などによるポドサイトのエピゲノム調節が,慢性腎臓病(CKD),とくに糖尿病性腎症の病態において,重要な役割を果たしていることが示唆されている.ポドサイトは基本的には非分裂細胞であるため,癌をはじめとした分裂細胞におけるエピゲノム変化とは,その形成や維持システムにおいてまったく異なっていることが予想される.今後,ポドサイトのエピゲノム調節について,さらに詳細な機序の検討が進められ,あらたな腎臓病治療の現実的なターゲットとなることが期待される.
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医学のあゆみ 263巻2号, 150-153 (2017);
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細胞は,生体内外で起こるさまざまな物理化学的ストレスに日常的に曝されている.ストレスというと悪いものという印象を与えるが,生理的ストレスは,それらの刺激に対する適応能力を高め,防御的に働くことが知られており,生体機能の維持・改善における細胞生物学的ストレスの重要性が認識されている.ポドサイトにおいてもさまざまなストレスに対する適応機構(内因性レジスタンス;「サイドメモ」参照)が存在し,通常はポドサイトの恒常性維持に働いているが,過度または長期にわたるストレス(病的ストレス)は内因性レジスタンスの破綻を招き,糸球体病変形成の原因となることが近年明らかとなってきている.どの程度・期間までが生理的ストレスで,どこからが病的なストレスとなるのか,その境界は細胞種や条件(環境)によって異なるため難しいが,本来備わっている適応応答をうまく応用することが,今後ポドサイト障害に対するあらたな予防・治療戦略となるものと思われる.
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医学のあゆみ 263巻2号, 154-158 (2017);
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ミトコンドリアは,生体内のエネルギー産生の場である.一方,糸球体上皮細胞のポドサイト(podocyte)は複雑な立体構造を呈するととともに糸球体濾過膜を形成し,その障害は巣状分節状糸球体硬化症(FSGS)を代表とする病態へとつながっていく.ポドサイトには,ミトコンドリアが多く存在することからも,ポドサイトの形態・機能維持には十分なエネルギーを要することが想定される.実際にミトコンドリアDNA の変異によってFSGS は発症し,また核遺伝子にコードされたミトコンドリア蛋白の遺伝子異常でもFSGS が発症することが報告されている.さらに,遺伝子変異が原因の先天的ミトコンドリア機能の異常だけでなく,糖尿病性腎症におけるポドサイトでは,後天的にミトコンドリア機能に異常が起こっていることもわかってきた.現在,ミトコンドリア病に対するさまざまな薬剤が開発されつつあり,ミトコンドリア機能異常が関与する腎疾患を正確に診断することができるようになれば,治療の可能性は大きく広がるものと考えられる.
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医学のあゆみ 263巻2号, 159-163 (2017);
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糸球体足細胞(ポドサイト)は,血液濾過障壁のひとつとして重要な役割を担っており,ポドサイト障害により高度の蛋白尿を呈することとなるため,ポドサイトを保護することが各種腎疾患において重要な治療目標となる.ポドサイトは神経細胞同様,終末分化細胞であり,その細胞内ホメオスターシスを維持するために,細胞内蛋白質やオルガネラの品質管理機構が重要である.こういった細胞内品質管理機構のひとつとして,オートファジーが知られている.オートファジーはリソソームを分解の場とする蛋白質分解機構の一種であり,酵母からヒトに至る真核生物がもつ機構である.オートファジーの基本的な役割は,飢餓状態におけるエネルギーやアミノ酸の供給,異常な蛋白質や障害された細胞内小器官の除去である.ポドサイトにおけるオートファジーの重要性は,ポドサイト特異的オートファジー欠損マウスを用いた実験により検討され,さまざまな腎疾患に対して,ポドサイトオートファジーがポドサイト保護的に働くことがわかってきた.オートファジー活性化は新規の治療標的になる可能性を秘めている.
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医学のあゆみ 263巻2号, 164-168 (2017);
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ポドサイト障害は,早期の糸球体障害から認められる.ナトリウム(Na)利尿ペプチドは心不全の治療やマーカーとして利用されるのみではなく,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系に対する拮抗作用を有することから,動物モデルにおいては種々の臓器障害に対して保護的であることが報告されてきた.Na 利尿ペプチド受容体は集合管・遠位尿細管に加え,ポドサイトにおいても発現している.近年,Na 利尿ペプチドは従来のRAA 系への細胞内カルシウム(Ca)流入を抑制することが報告され,新しい機序解明が期待されている.ANP およびBNP の受容体であるグアニリルシクラーゼA(GC-A)受容体をポドサイト特異的に欠損させたマウスは,RAA 系の負荷を加えるとアルブミン尿が増加する.その機序として,スリット膜関連蛋白であるネフリン,ポドシンの減少と,TPRC6 やp38MAPK の活性化,アポトーシス増加が関与することが明らかとなってきた.
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医学のあゆみ 263巻2号, 169-173 (2017);
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ポドサイトは最終分化細胞であり,成熟ポドサイトの増殖能力はきわめて限定されている.ポドサイトの数は加齢とともに減少していき,またさまざまな糸球体疾患によりポドサイトに傷害が起こると,死滅あるいは尿中への脱落によりポドサイト数の減少が加速する.一部のポドサイトが失われると,残存ポドサイトが代償的に肥大し正常糸球体構造を保ちうるが,ポドサイト密度の低下が限界を超えると,糸球体硬化となる.以上の伝統的考察に加え,最近Bowman 囊上皮細胞やレニン産生細胞など,他の細胞が生後にポドサイトに変換される可能性が報告されている.これらが真実であれば,ポドサイト数を保全する観点からは朗報であるが,さらなる検証が必要である.
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医学のあゆみ 263巻2号, 174-180 (2017);
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APOL1 遺伝子変異はアフリカ系アメリカ人の腎機能障害,とくに巣状糸球体硬化症(FSGS)を説明する遺伝子変異として2010 年に同定された.その遺伝子変異は数千年前に起こり,異型APOL1 がアフリカ睡眠病の病原原虫であるTrypanosoma brucei の感染防御に働くことでサハラ以南のアフリカで急速に自然選択された.現在では,アメリカにおけるFSGS の1/3 にかかわること,HIV 関連腎症の発症と組織型の決定に重要な遺伝子変異であること,そして原疾患を問わない腎機能障害のリスク因子であることが明らかとなっている.APOL1 はエンドサイトーシスにより原虫に取り込まれ,イオンチャネルとしてリソソーム膜,ミトコンドリア膜などの透過性を亢進して原虫死を誘導する.腎では,ポドサイトで感染防御機序と同様にさまざまなオルガネラに作用し,エンドサイトーシス経路,オートファジー経路を停滞させて細胞を障害する.また,ポドサイト独自の機序として,細胞膜上でインテグリンαVβ3,可溶性ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体と複合体を形成して,糸球体基底膜からの剝離を誘導する.本稿では,APOL1 遺伝子変異の同定,疾患概念の確立と拡大,そしてAPOL1 の生理機能とポドサイト障害機序を紹介する.
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医学のあゆみ 263巻2号, 181-185 (2017);
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糸球体は,安定した濾過のために構築されたといえるほど,合理的な形態と機能を有する.この構築の維持のために,糸球体を構成する細胞間で情報伝達が行われていることがわかってきた.ポドサイトは濾過障壁を形成する中心的細胞であるが,ポドサイトの障害によりこの情報伝達回路は機能低下を起こし,結果として糸球体構築は崩れる.ポドサイト障害から糸球体硬化へのプロセスにはいまだ不明な点も多いが,障害されたポドサイト局所周囲の壁細胞や内皮細胞,メサンギウム細胞になんらかの反応を促すことが知られ,これがポドサイト障害による糸球体硬化の機序と考えられる.一方で,これを濾過障壁のリモデリングという創傷治癒機転とみなすと,蛋白尿を抑止する合目的な生体反応とも考えられる.ポドサイト障害を理解することは,糸球体という特殊な微小環境に起こる創傷治癒機転と,それにかかわる分子を明らかにすることでもある.
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連載
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臓器移植の現状と課題 12
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医学のあゆみ 263巻2号, 192-200 (2017);
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◎臓器提供(ドナー)不足は,世界的に深刻な問題である.最近のゲノム編集技術の開発により,多種類の遺伝子が抹消,挿入されたブタが開発された.抗凝固,抗炎症,副刺激経路の阻害など,免疫抑制療法の工夫により,霊長類への臓器(心臓,腎臓,肝臓,肺)移植の成績が向上した.ヒトへの感染症が危惧されたブタ内在性レトロウイルス(PERV)のリスクは高くない.さらに,PERV 関連遺伝子を不活性化したクローンブタ作出が報告された.ドナーブタは,病原性微生物フリーとして管理され,定期的に感染症のモニタリングが行われる.国際協力のもとでガイドライン(法,規制)を整備し,臨床試験の準備が進められている.
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テレメディシン ― 遠隔医療の現状と課題 6
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医学のあゆみ 263巻2号, 201-206 (2017);
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◎治療効果のエビデンスが認められたモバイルヘルスが続々とリリースされている.アメリカのWellDoc,ニュージーランドのSPARX などである.なかでも,WellDoc のアプリケーションを2 型糖尿病の成人が使用するとHbA1c値の改善に効果的であることが統計的に有意であると認められ,その結果,アメリカのFoodand Drug Administration(FDA)に薬事承認され,医師が患者に対して“処方するアプリケーション”として認められたことは,モバイルヘルス業界において大きなターニングポイントといえよう.また,海外だけでなく,禁煙治療やNASH(非アルコール性脂肪肝炎)に取り組む株式会社キュア・アップや,糖尿病管理アプリに取り組む東京大学の脇 嘉代医師など,モバイルヘルスの開発は日本国内でも進んでいる.2014 年末に薬事法から薬機法へと改正され,医療用ソフトウェアも薬機法の承認に対象となったことによって,医療用アプリが保険償還される未来も遠くないと考えられる.今後のモバイルヘルスの発展について,ますます期待できよう.
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TOPICS
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再生医学
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医学のあゆみ 263巻2号, 187-188 (2017);
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細菌学・ウイルス学
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医学のあゆみ 263巻2号, 188-189 (2017);
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消化器内科学
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医学のあゆみ 263巻2号, 190-191 (2017);
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FORUM
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生殖倫理の現況と展望 4
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医学のあゆみ 263巻2号, 207-210 (2017);
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パリから見えるこの世界 61
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医学のあゆみ 263巻2号, 211-215 (2017);
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