Volume 263,
Issue 4,
2017
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特集 ヒトインプリンティング疾患
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医学のあゆみ 263巻4号, 279-279 (2017);
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医学のあゆみ 263巻4号, 281-286 (2017);
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ゲノムインプリンティングとは,父由来遺伝子と母由来遺伝子のうち,一方のアレルが選択的に発現する現象で,インプリント遺伝子の発現異常はインプリンティング疾患を惹起する.各疾患座位では複数のインプリント遺伝子がドメインを形成しており,遺伝子発現はインプリンティング制御領域(ICR)によってシスに制御されている.ICRは,両アレル間でDNAメチル化状態が異なるが,このメチル化の差異は配偶子形成過程で性特異的に確立し,受精後のゲノムワイドな脱メチル化から保護され体細胞で維持される.インプリンティング疾患の発症原因は,①遺伝学的変化,②片親性ダイソミー(UPD),③ICRのメチル化異常,の3 つに大別され,遺伝学的変化は子へ伝わるが,UPDとICRメチル化異常は伝わらない.Beckwith-Wiedemann症候群(BWS)は,胎児性腫瘍を伴う過成長症候群で,その原因はKvDMR1低メチル化,H19DMR高メチル化,父性UPD,CDKN1C変異,11p15構造異常であり,原因ごとに症状と腫瘍発生リスクが異なる.そのため遺伝子解析に基づいた腫瘍スクリーニングが重要と思われる.
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医学のあゆみ 263巻4号, 287-295 (2017);
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14番染色体インプリンティング領域には多数のインプリンティング遺伝子が存在し,2カ所のメチル化可変領域(DMR)により発現が制御されている.Kagami-Ogata症候群(OMIM #608149)は,14番染色体父性片親性ダイソミー,本領域母由来アレルの欠失,DMRの過剰メチル化(エピ変異)により生じる.疾患特異的なベル型・コートハンガー型小胸郭,特徴的顔貌(豊かな頰,突出した人中など)のほかに,羊水過多,胎盤過形成,腹壁異常,精神運動発達遅延,哺乳不良を高頻度に認める.Kagami-Ogata症候群と鏡像関係にあるTemple 症候群(OMIM #616222)は14番染色体母性片親性ダイソミー,父由来アレルの欠失,DMRの低メチル化(エピ変異)により生じる.出生前後の成長障害,新生児期・乳児期の筋緊張低下,小さな手が特徴的であり,思春期早発症の合併が多い.
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医学のあゆみ 263巻4号, 296-300 (2017);
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Prader-Willi症候群(PWS)はインプリンティング疾患のひとつであり,筋緊張低下,発達の遅れ,過食,肥満などを呈する.15q11-13領域に存在するインプリンティング領域が疾患発症責任領域であり,父性由来染色体上の欠失,15番染色体母性片親性ダイソミー(UPD(15)mat),エピ変異などの機序により発症する.片親性ダイソミー(UPD)発症機構のひとつにトリソミーレスキュー(TR)があり,異数性,すなわち染色体の数的異常を有する配偶子が関与する.女性の加齢とともに異数性を有する卵子が形成されやすくなることがよく知られている.また,近年では生殖補助医療(ART)の普及も著しく,ARTが子どもの健康に与える影響についても関心が高まっている.本稿では,高齢出産とART が,異数性を有する卵子形成を介したUPD(15)mat発症のリスクであるかどうか,という点について考える.
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医学のあゆみ 263巻4号, 301-306 (2017);
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Silver-Russell症候群(SRS)は,出生前後の成長障害と特徴的な身体所見により特徴づけられる疾患である.2015 年,“Expert Consensus Statement on the Diagnosis and Management of Silver-RussellSyndrome”が開催され,その内容が“Diagnosis and management of Silver-Russell syndrome:firstinternational consensus statement”として『Nat Rev Endocrinol』に掲載された.その要諦は以下のとおりである.臨床的に以下の6項目(①SGA 出生,②生後の成長障害,③相対的頭囲拡大,④前額部突出,⑤左右非対称,⑥摂食障害)のうち4項目が認められればSRSと診断する.SRS発症原因としては,7番染色体母性ダイソミー,H19/IGF2 IG-DMRの低メチル化(エピ変異),母由来11p15.5領域の重複,母由来CDKN1C の機能亢進変異,父由来IGF2の機能低下変異,14番染色体母性ダイソミーおよび関連疾患(Temple 症候群),その他(16番染色体母性ダイソミー,20番染色体母性ダイソミー,種々の領域のゲノムコピー数異常)があげられる.今後,SRSの研究が伸展し,あらたな疾患成立機序の解明や新規治療法の開発につながると期待される.
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医学のあゆみ 263巻4号, 307-312 (2017);
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偽性副甲状腺機能低下症Ⅰ型(PHP-I)は,副甲状腺ホルモン(PTH)抵抗性を呈する稀な内分泌的疾患である.従来,臨床的にはPTH抵抗性に加え,Albright’s hereditary osteodystrophy(AHO;丸顔,肥満,低身長,短指症,皮下骨腫,知的障害)を有するPHP-Iaと,AHOのないPHP-Ibに分類され,遺伝学的に前者はGNAS変異,後者はGNASメチル化異常によるものとされてきた.しかし,臨床像と遺伝学的異常が一致しない症例は少なくない.近年,分子遺伝学的解析が盛んに行われるようになり,本疾患の(epi)genotypephenotypecorrelationsが明らかにされてきている.またあらたなGNAS構造異常に起因するPHP-Iが報告されている.本疾患は,臨床的にも分子遺伝学的にも非常に興味深い内分泌疾患であり,ヒトインプリンティング疾患でもある.
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医学のあゆみ 263巻4号, 313-316 (2017);
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6q24関連糖尿病は新生児一過性糖尿病(TNDM)の70%を占める.低出生体重(SGA)であるのが特徴である.生後まもなく発症しインスリン治療を必要とするが,生後18カ月までに軽快する.6番染色体長腕6q24部位に存在するインプリント領域のPLAGL1/ZAC1 遺伝子は通常父由来アリルから発現しているが,本症はPLAGL1 の過剰発現によるとされ,父由来アリルの増幅(29%),父性片親性ダイソミー(41%),母由来アリルの低メチル化(30%)のいずれかの機序で発症する.いったん寛解後,約半数が思春期以降に糖尿病の再発をきたす.再発6q24関連糖尿病は非肥満,自己抗体陰性,若年発症で,他の若年発症優性遺伝性糖尿病(MODY 型糖尿病)との鑑別が困難である.また,かならずしも新生児期に糖尿病をきたしているとは限らず,SGA出生のMODY型糖尿病では考慮する必要がある.
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医学のあゆみ 263巻4号, 317-321 (2017);
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哺乳類においては,ゲノムインプリンティング機構が存在するために,精子のみあるいは卵子のみで発生に至る単為生殖は不可能である.しかし近年,ヒトにおいて,インプリンティング疾患と類似した表現型を呈し,単為生殖胚と正常胚とのモザイクと思われる症例の報告があいついでなされている.これらは全染色体に及ぶ父性あるいは母性片親性ダイソミー細胞と正常細胞のモザイクであり,前者ではBeckwith-Wiedemann症候群,後者ではSilver-Russell症候群の表現型を呈し,加えてほかのインプリンティング疾患様の症状もさまざまな程度に併せもつ.今後,SNPアレイをはじめとする遺伝子解析技術の発展に伴い,症例の蓄積と,さらなる病態の解明が期待される.
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医学のあゆみ 263巻4号, 322-327 (2017);
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生殖補助医療(ART)の普及とともに,これまで非常にまれであったインプリンティング異常症の発生頻度が増加していることが指摘されている.エピジェネティックな分子機構で制御されるゲノムインプリンティング(遺伝子刷り込み)は,対立遺伝子を選択的に片親性発現を示す現象であり,アレル特異的メチル化領域(DMR)のメチル化が刷り込みの本体と考えられている(メチル化インプリント).ARTでは,メチル化インプリントが獲得される時期である生殖細胞や,受精後にDNAメチル化がダイナミックに変化する初期胚を操作するため,ART操作によるメチル化への影響が懸念されている.本稿では,インプリンティング異常症とARTとの関連性およびその特徴について概説するとともに,近年報告が増えている疾患責任DMR以外にメチル化異常を認めるマルチローカスインプリンティング異常症(MLID)について紹介する.
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連載
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臓器移植の現状と課題 14
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医学のあゆみ 263巻4号, 335-341 (2017);
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◎脳死下臓器提供数は年々増加しており,2016 年には64 事例とこれまで一番多くの提供数があった.しかし,諸外国の提供数と比較しても,現在待機している移植希望者数と比較してもこの提供数ではけっして多いとはいえないのが現状である.その課題として,臓器提供者数が少ないのはなぜか,提供する施設の負担が大きすぎるのではないかなどの問題があげられるが,それを解決するため,厚生労働省をはじめとした行政や,研究班,各関連学会などが連携して移植医療を推進しはじめている.国民の「臓器提供をしたい」という最後の意思を尊重することと同時に,日本での救急・急性期の終末期医療のあり方を考慮する時期にきているのかもしれない.今後も行政,関係学会などが連携し,さらなる対策を行い,移植医療の推進を発展させることを期待したい.
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テレメディシン―遠隔医療の現状と課題 8
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医学のあゆみ 263巻4号, 343-347 (2017);
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急性心筋梗塞は現在でも心室細動や心不全で死亡をきたすことがある重篤な疾患である.根本的な治療としては,一刻も早く閉塞した冠動脈部位の再灌流によって心筋壊死を救うことである.患者が病院へ搬入されてからこの再灌流までの時間をdoor to balloon(DtoB)timeとよぶ.日本はもとより世界各地でこのDtoBtime の短縮の取組みが行われてきており,多くの報告がなされている.本稿では,モバイルクラウド心電図をドクターカーの現場出動態勢に組み込んだ地域の取組みを紹介する.これはいわば消防(救急搬送という病院前)と病院での専門的治療を,テレメディシンによってつなぐシステムである.これによって,DtoB timeを約15分短縮することに成功した.今後は,地域全体にこのモバイルクラウド心電図を配備することによって症例の集約化,ならびに急性心筋梗塞の予後向上が期待されている.
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TOPICS
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神経精神医学
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医学のあゆみ 263巻4号, 329-330 (2017);
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 263巻4号, 331-332 (2017);
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脳神経外科学
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医学のあゆみ 263巻4号, 332-333 (2017);
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FORUM
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生殖倫理の現況と展望 6
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医学のあゆみ 263巻4号, 349-351 (2017);
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医学のあゆみ 263巻4号, 352-353 (2017);
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医学のあゆみ 263巻4号, 354-356 (2017);
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