医学のあゆみ
Volume 263, Issue 5, 2017
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【11月第1土曜特集】 SHD(心構造疾患)治療UPDATE
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- TAVI
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大動脈弁狭窄症(AS)重症度診断におけるピットフォール
263巻5号(2017);View Description Hide Description大動脈弁狭窄症(AS)は,弁膜症のなかで一番頻度の高い疾患であり,わが国でも超高齢社会を迎え増加傾向にある.また重症AS の治療といえば,外科的大動脈弁置換術であったが,経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)が2013 年から保険適応になり,開胸外科手術が受けられないハイリスクや高齢の患者にとって大いなる福音となり,社会的にも注目されている.AS は従来より診断,重症度評価に経胸壁心エコー図検査が必須であり,ドップラー法による最大ジェット流速,平均左室-大動脈圧較差,連続の式から算出される大動脈弁口面積(AVA)を用いて評価する.しかし,以前の概念では重症度を見誤る低流量低圧較差重症AS(LF-LG severe AS)の存在や,心エコーの計測誤差が明らかになり,ガイドラインで推奨されている評価項目,診断基準も一昔前とは異なっているという,ピットフォールが存在する. -
エビデンスに基づいた大動脈弁狭窄症患者における治療選択―2017 年AHA/ACC,ESC/EACTS ガイドラインの改訂と最新のエビデンスに基づくTAVI
263巻5号(2017);View Description Hide Description経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVI)は,外科的大動脈弁置換術(SAVR)が高リスクな有症状の大動脈弁狭窄症患者に対して,より非侵襲的な治療として開発された.TAVI の登場以来,TAVI とSAVR あるいは薬物療法を比較したさまざまな大規模臨床試験が実施され,その長期成績は非常に良好であることが示された.現在,日本でも実施施設が拡大しており,良好な初期成績を収めている.また海外では,PARTNERⅡやSURTAVI といった中等度リスクの患者を対象とした試験が実施され,中等度リスクの患者に対してもTAVI がSAVR に対して非劣勢であることが示されている.これらの背景を受けて2017 年に,American Heart Association/American College of Cardiology(AHA/ACC)およびEuropean Societyof Cardiology/European Association For Cardio-Thoracic Surgery(ESC/EACTS)の弁膜症治療ガイドラインが改定され,重症大動脈弁狭窄症患者に対するTAVI の適応も大きく変更された.本稿では,2017年AHA/ACC およびESC/EACTS のガイドラインを中心に,現在までのエビデンスに基づいた大動脈弁狭窄症患者における治療選択に関して解説する. -
TAVI におけるリスク評価と適応の選択
263巻5号(2017);View Description Hide Description経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)の対象患者は高齢者であることが多く,これら特殊な患者群のリスク層別化は従来の方法では限界がある.心臓外科手術リスクスコアに加えて,frailty(フレイル;虚弱度)や併存疾患の有無を考慮した総合的判断が,TAVI の適応を考慮する際に重要と考える.OCEANTAVIレジストリーのデータを使用して,frailty を評価する項目として,①栄養状態を血清アルブミン値で,②筋力を握力で,③運動機能を歩行速度で,そして④活動性をClinical Frailty Scale(CFS)で,TAVI術後患者の予後に与える影響を検討した.また,low-flow low-gradient aortic stenosis(LFLGAS),術前右脚ブロック,腎不全,基礎呼吸器疾患,肝機能障害,悪性腫瘍の有無など,さまざまな併存疾患が予後に与える影響に関しても検討した.Frailty に関する項目では,累積1 年死亡率はfrailty が上昇するほど段階的に上昇することが示された.また,血清アルブミン値,握力,歩行速度,CFS のすべてでTAVI 後患者の予後規定因子であることが示された.併存疾患に関してはLFLGAS,術前右脚ブロック,腎不全,基礎呼吸器疾患,肝機能障害は予後と強く関連することが示された.このようにOCEAN-TAVI レジストリーから,多くの予後規定因子が確認された.今後はfrailty や併存疾患の有無を利用したTAVI 特有のリスクスコア作成と,TAVI ハイスク症例に対する治療戦略の確立が望まれる. -
大動脈二尖弁に対するTAVI の実際
263巻5号(2017);View Description Hide Description経カテーテル大動脈弁留置術(TAVI)は2013 年10 月にわが国でも保険診療による承認が得られてから約4 年が経過した.デバイスの進歩,ハートチームでの経験の蓄積により,手技の安全性は高まっている.欧米においては無作為試験やレジストリーの結果を受けて,大腿動脈アプローチのTAVI が可能な場合には,中等度開心術リスクに対してもTAVI が考慮されるまで,適応は拡大された1-3).また,当初,SapienXT では二尖弁に対するTAVI は禁忌であったが,現在では,Sapien 3,Evolut RTMともに使用可能であり,海外レジストリーでの報告では,三尖弁大動脈弁狭窄と同等の成績と報告されている4,5).今後,TAVI の適応はさらに広がっていくと予想されるが,人工弁の耐久性の問題は解決されておらず,個々の症例でのハートチームによる判断が重要になってくると考える. -
TAVI 後の至適抗血栓療法とは?―TAVI 後血栓症の視点から
263巻5号(2017);View Description Hide Description現在,経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は中等度リスク患者のFDA 承認を受け,さらに年齢が若く手術リスクの低い患者への適応拡大を目前としている.TAVI 弁の耐久性データが揃うなか,4 次元CT(4DCT)により検出される無症候性血栓症が問題視されるようになった.無症候性血栓症は外科的大動脈弁置換術(SAVR)後にもみられるイベントであるが,TAVI で頻度が多いとされている.ハードエンドポイントとの関連は有意でなさそうであるが,無症候性血栓症の長期的インパクトはいぜんとして不明であり,TAVI 後レジメンの見直しの必要性といった大きな問題に波及している.これらの問題を解消すべく,多くのTAVI 後抗血栓療法に関する無作為化比較対照試験(RCT)や観察研究が進行している.今後のさらなるエビデンス構築が求められている分野である. -
TAVI はAS 治療の第一選択となりうるのか:内科医の視点から
263巻5号(2017);View Description Hide Description経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は,これまで手術不適応症例やハイリスク症例に対して行われてきた.近年では中等度リスク症例においても外科的大動脈弁置換術(SAVR)に劣らない手術成績が報告されている.現在,低リスク症例についても臨床研究がはじまっており,ますます適応が拡大していく大きな流れができている.TAVI の適応拡大は大動脈弁狭窄症(AS)という疾患の治療の安全性を高め,疾患そのものの手術適応自体も変えていくことが期待されている.一方で適応を拡大するには,克服しなければならない課題も存在する.TAVI の治療の安全性を高めること,人工弁の耐久性,ときに致死的となるTAVI の合併症の克服,抗血栓療法,二尖弁に対する成績などが重要であろう.そこで,これらの課題について,これまでのデータとそれに基づいたこれからの展望について考える. -
TAVI はAS 治療の第一選択となりうるのか:外科医の視点から
263巻5号(2017);View Description Hide Description経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)は,高齢者大動脈弁狭窄症(AS)治療の第一選択となりうる,しかし長期耐久性は不明であり,若年者においては現時点では第一選択となりえないと考える.今後,長期耐久性が外科的生体弁と同等であることが示されると同時に,TAVI の課題である弁周囲逆流(PVL)や永久式ペースメーカー植込み(PPI)が減少すれば,若年者のAS でも第一選択となる可能性はある.TAVIが第一選択になる理由が,外科的大動脈弁置換術(SAVR)の質が低いことであってはいけない.いま,SAVR にはTAVI が登場する前に比べて,より高い質(たとえば,PVL なし,PPI なし,より大きな人工弁植込み,低侵襲アプローチによる早期回復・QOL 向上,複合手術や重症症例の成績向上,など)が求められている.これからのAS 治療においては,最高水準のTAVI と最高水準のSAVR を提供できるハートチームが,それぞれの患者にベストな治療を選択して行うべきであろう. - MitraClip
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MitraClip のこれまでのエビデンスと今後の展望
263巻5号(2017);View Description Hide Description僧帽弁閉鎖不全症(MR)は欧米では800 万人以上の患者がおり,毎年60 万人以上があらたに重度のMRと診断されている.外科手術は僧帽弁に直接介入できる治療手段であるが,十分に恩恵を受けることができない対象群も存在する.これまでの報告では,ガイドラインで外科手術の適応であっても一次性MR では約5 割,二次性(機能性)MR では約8 割の症例で施行されていない1).このようなunmet needs を解消することを目的に,弁形成術,弁置換術,弁輪縫縮術といったコンセプトのカテーテル治療が開発された.そのなかで,MitraClip system(Abbott Vascular:Menlo Park,California)による経皮的僧帽弁形成術は実臨床で施行されている唯一の治療法であり,約90 カ国で承認され,現在までに50,000 例以上に施行されている.本稿ではMitraClip のエビデンスを提示するとともに,各地域での現状,そして今後の展望について概説する. -
発生機序による僧帽弁閉鎖不全症(MR)の分類とMitraClip の作用機序―どのようなMR がMitraClip に適しているか
263巻5号(2017);View Description Hide Description器質性僧帽弁閉鎖不全症(DMR)においては,外科的僧帽弁形成手術が標準治療として確立されているため,高齢や多臓器障害などの理由で,弁形成術が困難な症例が検討対象となる.さらに逸脱幅や両尖間のギャップの大きさなどを参考にして,解剖学的にクリップによる治療が可能かどうかを判定する.また機能性MR(FMR)においては,外科手術のリスクは高く,治療成績も十分とはいえないため,MitraClipTM留置術の適応が積極的に検討される.留置手技に際しては,DMR ではクリップが両尖のギャップを潰すことで逆流を消失させるため,吸い込み血流の中央を正確に狙うことが重要であるが,FMR ではクリップが両尖全体を引き寄せることが主要な作用機序であるため,両尖の中央で多くの弁尖を挟み込むことが重要である.MitraClip による治療が適した症例であるかどうかを判定するためには,以上のような作用機序の違いを理解していなければならず,また弁形成術が発展してきた歴史のなかで,豊富な経験と知見を有する外科医から多くを学ぶことでクリップ留置術の精度は飛躍的に向上すると考える. -
MitraClip 開始前に何を準備しておくべきか
263巻5号(2017);View Description Hide Description近年,僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する経皮的僧帽弁カテーテル修復術MitraClipTMが注目を集めている.適応は有症候性MR 患者だが手術リスクが高く手術が困難であり,かつ僧帽弁が解剖学的にMitraClip把持可能な症例である.MitraClip 治療は機能性MR に対する期待が大きく,欧米のReal world のデータでもおよそ7 割の患者が機能性MR に行われている.準備でもっとも大切なことは患者スクリーニングである.とくに機能性MR では重症度を過小評価する可能性が高いことが指摘されているため注意が必要である.その他,デバイスおよび手技の理解も重要である.システム全体はクリップデリバリーシステム(CDS)とスティーラブルガイドカテーテル(SGC)から構成されている.CDS の先端にはクリップがあらかじめ装着されており,クリップはアームとグリッパーで構成されている.手技の手順は,①心房中隔穿刺,②MitraClip デバイスの挿入操作,③ポジショニング,④弁尖把持および挿入の評価,⑤クリップの留置,⑥システムの抜去,⑦必要に応じて2 個目のクリップ留置,の順に進む.この手技には,経食道心エコー(TEE)ガイド下での操作が要求される.Implanter は日頃からTEE 画像に慣れ親しむことで,より成功率の高い手技が可能となる. - 先天性・その他
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ASD/VSD/PDA closure―治療の適応と実際
263巻5号(2017);View Description Hide Descriptionわが国において構造的心疾患治療が広まるなかで,closure device(閉鎖デバイス)を用いた治療も増えつつある.カテーテル治療によるデバイス留置で修復可能な成人先天性心疾患はおもに本稿のとおりであるが,このほかにも頻度は少ないが大動脈肺動脈窓やValsalva 洞動脈瘤破裂など緊急治療を要する疾患もある.本稿では,すでに承認されている心房中隔欠損閉鎖栓,動脈管開存閉鎖栓を取りあげるが,今後ニーズが高まるであろう経皮的心室中隔欠損閉鎖術の実際についても述べる. -
最近のBPA 適応と治療成績
263巻5号(2017);View Description Hide Description慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)は器質化血栓が肺動脈を狭窄・閉塞させることで肺高血圧症をきたす難治性疾患である.治療法としては従来,根治術として開胸下に血栓を摘出する肺動脈内膜摘除術(PEA)が施行されてきたが,侵襲度は高く,また病変部位や併存疾患のため手術適応外となる症例も少なからず存在する.そのような症例に対して近年,わが国を中心にカテーテル治療であるバルーン肺動脈拡張術(BPA)が行われ,その安全性,有効性がつぎつぎと報告されている.本稿では,BPA のこれまでのエビデンスと実際の手技,わが国での治療成績を中心にCTEPH の治療について概説する. -
経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)―治療の適応と実際
263巻5号(2017);View Description Hide Description経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)は,閉塞性肥大型心筋症において心不全症状などの自覚症状の軽減が期待できるカテーテル治療である.1995 年にSigwart が『Lancet』誌に報告し1),その後ヨーロッパを中心に急速に普及した.わが国でもSigwart による報告後まもなく導入され,現在,年間300~400 件前後実施されていると推測される(日本循環器学会診療実態調査などの報告から).現在の問題点としては,①治療成績が術者の経験に依存している,②長期予後が不確かである,などがあげられる.本稿では,PTSMA の治療の適応,治療の実際および治療成績について紹介しながら,上記問題点も含め詳述する. - 新しいインターベンション
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PFO closure―最新のエビデンスと今後の展望
263巻5号(2017);View Description Hide Description卵円孔開存(PFO)に伴う奇異性脳塞栓症は若年者にも発症し,医学的にも社会的にも重要な疾患である.過去に行われたCLOSUREⅠ,PC trial などの無作為化臨床試験(RCT)の結果から,卵円孔を介する奇異性脳塞栓症の再発予防に対する経カテーテル的卵円孔閉鎖術の有効性には,科学的根拠がないとされてきた.しかし2016 年,RESPECT 試験の最終結果報告によって,経カテーテル的卵円孔閉鎖術の有効性が示され,FDA は卵円孔の閉鎖栓デバイスであるAmplatzer® PFO occluder の保険承認に至った.また,多くのメタ解析の結果からも同デバイスの有効性・安全性が示され,デバイス留置による長期的な有用性が明らかとなってきた.さらに2017 年にはGore REDUCE,CLOSE といったRCT の結果がつぎつぎと発表され,いずれもカテーテルによる卵円孔閉鎖術の有用性が示され,いままさにパラダイムシフトのときを迎えている.今後,ハイリスクPFO の患者を同定し,安全で効果的な治療を提供するためにも,脳卒中専門医と循環器内科医のコラボレーションが重要である. -
左心耳閉鎖デバイス―最新のエビデンスと今後の展望
263巻5号(2017);View Description Hide Description心房細動患者における心原性血栓塞栓による脳梗塞の多くは左心耳由来の血栓が原因であり,標準治療は抗凝固薬の内服である.長期の抗凝固療法が困難である非弁膜症性心房細動に対して,現在欧米では経皮的経カテーテル左心耳閉鎖デバイス治療が開発され,臨床応用されてきている.代表的なデバイスとして,①心腔内から心耳内に留置するWATCHMANTM device やAMPLATZERTM AmuletTM left atrialappendage occluder と,②心囊腔から心耳を結紮するLARIAT® Suture Delivery Device があげられる.手技成功率は98~99%と非常に高く,合併症の頻度も手技の成熟とデバイスの改善に伴い低下してきている.至適な患者選択とデバイスを選択することで,安全,確実かつ有効に経カテーテル的に非弁膜症性心房細動患者の脳梗塞予防が可能になってきており,日本への導入が待たれる. -
腎デナベーション―最新の知見と今後の展望
263巻5号(2017);View Description Hide Description腎デナベーションとは,腎動脈周囲を取り巻く神経を焼灼することにより降圧を得る高血圧治療のことである.除神経による降圧療法は,1924 年にAdson らによってはじめて外科的に交感神経切除術が行われたが,副作用の問題や強力な降圧薬の開発により臨床での普及はなかった.その後,インターベンションの発達とともに,カテーテル器具を用いた腎動脈周囲の神経を焼灼する技術が開発され,低侵襲の難治性高血圧に対する治療としてふたたび注目を浴びることになった.当初は,診察室の収縮期血圧で20~30 mmHg の降圧効果が得られることが示され,今後の高血圧治療の一端を担う治療として大きな期待を受けた.しかし,2014 年にデバイスの能力を厳しく問う,シャムコントロール群を設定したSYNPLICITYHTN-3 試験がアメリカで発表され,腎デナベーションに有意な降圧効果を見出せないという衝撃的な結果が出た.それまで,世界のさまざまなメーカーがデバイス開発に乗り出していたが,その結果を受けてほとんどといってよいほどの開発・治験は延期となり,臨床への進出は大きく出遅れる結果となった.しかし,SYNPLICITY HTN-3 のプラセボ効果や手技的な問題などが議論となり,もう一度その効果を確かめるべく,あらたなデザインならびにデバイスで試験が組まれた.最新のシャム群を設定した臨床試験では腎デナベーションの降圧効果がふたたび示され,あらたな展開を見せはじめている. -
僧帽弁に対する新しいカテーテル治療―最新のエビデンスと今後の展望
263巻5号(2017);View Description Hide Description僧帽弁閉鎖不全症(MR)に対する経カテーテル治療は,おもに手術リスクの高い患者の治療オプションとして登場してきた.経カテーテル治療は,すでに確立している外科的治療法を多少変更したものであることが多い.カテーテルによるデバイス治療はこれら外科的治療をより少ない手技リスクで真似て行うというのがコンセプトである.本稿では,MitraClip® による弁尖形成術,経カテーテル僧帽弁輪形成術,経カテーテル僧帽弁留置術などの現状と今後の展望につきまとめる. -
三尖弁カテーテル治療の最前線
263巻5号(2017);View Description Hide Description三尖弁疾患の大半は三尖弁逆流であり,そのなかでも機能性三尖弁逆流が主である.その原因は僧帽弁疾患などの左心系疾患,心房細動や,なんらかの原因による肺高血圧に伴う右心室拡大,三尖弁輪拡大である.三尖弁逆流の持続が予後を悪化させることが明らかになり三尖弁の早期弁修復が注目され,近年ではガイドライン上も外科的治療閾値が低下している.しかし,高度三尖弁逆流症例には開心術後症例など,手術リスクが高い症例が多く存在する.そのような症例に対してカテーテル治療が注目されており,その開発はめざましい.実際の外科手技を基盤とし発展したカテーテル治療のみならず,外科的な基盤なく開発されたものまで存在し,臨床応用されつつある.いまだエビデンスが確立されていない領域であるものの,そのデバイス研究開発の進歩はめざましい.ヨーロッパ諸国においても発展途上の領域ではあるが,現時点での最新カテーテル治療についてここで整理する.今後,わが国でも大動脈弁,僧帽弁に対するカテーテル治療のみならず,三尖弁に対するカテーテル治療の導入も期待される.
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