Volume 263,
Issue 7,
2017
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特集 糖尿病性腎症重症化予防にむけて
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医学のあゆみ 263巻7号, 557-557 (2017);
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医学のあゆみ 263巻7号, 559-562 (2017);
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糖尿病性腎症は,慢性的な高血糖により引き起こされる,細小血管障害による腎障害である.尿中アルブミンが300 mg/gCr を超える顕性腎症期に腎機能の低下を認めはじめるが,微量アルブミン尿や顕性蛋白尿を呈さずに腎機能低下を認める例もあり,糖尿病に罹患しながら,加齢に伴う細動脈硬化など,高血糖により引き起こされた腎臓病とは異なる病態が併存している患者群も存在する.高血糖状態では,糖代謝異常や終末糖化産物により活性酸素の産生増加を生じ,糸球体の各種構成細胞にダメージを引き起こす.HbA1c 6.5%以下を目標値とした強化治療において,糖尿病性腎臓病の発症・増悪が有意に改善されており,また治療により微量アルブミン尿や顕性アルブミン尿の寛解を示す研究が複数報告されている.糖尿病性腎臓病の予後改善のためには,血糖管理のみならず血圧管理を含めた,糖尿病の各段階における早期かつ積極的な介入が望まれる.
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医学のあゆみ 263巻7号, 563-568 (2017);
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慢性腎臓病(CKD)は末期腎不全(ESKD)ならびに心血管疾患(CVD)のリスクであり,腎疾患重症化予防はESKD ならびにCVD の予防対策である.CKD の有病率は高く,有効なCKD 対策を進めていくには,一般住民と医療従事者,行政から医療機関に至るまで,広い視点に立って相互に連携して行う医療連携が必要である.腎健診受診者へは,これまでの尿蛋白定性(+)以上から,(±)も保健指導の対象とすることで,生活習慣病を有するCKD 発症のハイリスク群におけるCKD の発症予防や早期発見,重症化予防につながる.生活習慣病を有する患者にCKD 発症がみつかった場合は,CKD の原因疾患を精査しその原因の治療を行うとともに,重症度に応じた管理を行っていく.FROM-J 研究により,かかりつけ医に通院するCKD 患者においては,生活食事指導を含む強化指導によりとくにCKD ステージ3 における腎機能悪化速度の抑制が認められ,薬物療法によらない生活食事指導のCKD の重症化予防の効果が証明された.今後はCKD 療養を担う腎臓病療養指導士を育成し全国で療養指導にあたるとともに,エビデンスをもとにCKD 診療のガイドラインが更新されることで,全国でのCKD 診療が普及し重症化予防に貢献できることが期待される.
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医学のあゆみ 263巻7号, 569-573 (2017);
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糖尿病性腎症を有する患者数はわが国の糖尿病患者の4 割に及び,糖尿病性腎症からの透析導入阻止はまさに喫緊の課題である.2012 年に“糖尿病透析予防指導管理料”が新設され,透析予防診療チームによる教育・支援が一定の効果を上げつつあるなか,糖尿病性腎症重症化予防に資する食事療法やその指導法に関心が高まる.糖尿病食事療法としての一般原則を踏襲しつつ,糖尿病性腎症に対する食事療法では,腎症病期の進行とともに総エネルギー量とたんぱく質量をダイナミックに変化させていくとともに,食塩摂取制限やカリウム制限などを適宜加える.食事療法による糖尿病性腎症の重症化抑制効果のエビデンスは十分に確立されていないものの,臨床的に有効とされるいつくかの療法をどのように指導するかについても活発に議論が続けられている.本稿では糖尿病性腎症重症化の予防に資する食事療法の考え方とエビデンスに加えて,有効かつ実践可能な栄養指導の方法について概説したい.
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医学のあゆみ 263巻7号, 574-577 (2017);
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糖尿病性腎症に対する治療は,心腎連関を断ち切り,末期腎不全への進展ならびに心血管疾患の発症抑制をめざして行う.腎機能の悪化因子は,持続する高血糖,高血圧,脂質異常,肥満,高尿酸,喫煙など多数あり,それらの多くは動脈硬化症の危険因子と共通している.心腎連関を断ち切るためには,これら多数の危険因子を食事・運動・薬物療法を含む包括的治療により適切に管理する必要がある.包括的治療を有効に進めるには,腎症の早期診断ならびに,医師・看護師・栄養士・薬剤師・運動療法士などから構成される診療チームによる個々に応じた治療計画と,その実践が重要である.
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医学のあゆみ 263巻7号, 578-584 (2017);
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糖尿病性腎症による新規透析導入を減少させるためには,生活習慣改善と適切な医療の提供が不可欠である.健診で糖尿病性腎症と判断されるが未治療の者や治療中断者に対して受診勧奨を徹底するとともに,腎症の病期に合わせた保健指導を徹底することが重要である.重症化予防プログラムは,国保などの医療保険者のもつ健診やレセプト情報を分析し,対策の必要性を地域で共有したうえで,介入の必要な対象者を抽出し,受診勧奨,保健指導につなげるプログラムである.重症化予防対策は日本健康会議の主要な目標として掲げられ,自治体の取組みを加速させている.厚生労働省・日本医師会・日本糖尿病対策推進会議の連携協定を締結し,本プログラムの実施を推進しているほか,自治体に対するインセンティブ制度に組み込んだ.地域において,行政,かかりつけ医,専門医療機関が連携して取組みを進めることが肝要である.
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医学のあゆみ 263巻7号, 585-590 (2017);
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平成22 年度より広島県呉市国民健康保険(国保)において実施した“糖尿病性腎症等重症化予防事業”について,その経緯と方法,結果について記述する.医療保険者を事業主体とし,主治医や他の医療関係者との連携により,生活習慣行動強化への支援により,糖尿病性腎症から人工透析への移行を遅延するという試みである.事業参加者の血糖値およびeGFR はおおむね維持改善し,人工透析移行者数は減少傾向にある.本事業は,その効果・効率性が評価され,2013 年6 月には“日本再興戦略”において,すべての健康保険組合などに対して,データヘルス計画の作成と事業実施などを求めることが閣議決定されるモデル事業のひとつとなった.
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医学のあゆみ 263巻7号, 591-595 (2017);
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糖尿病性腎症による透析患者の増大を受け,各都道府県で糖尿病性腎症重症化予防プログラムが策定され,市町村単位で実施されつつある.透析新規導入患者数が国内最多と推計されている徳島県でも,2014 年から徳島県医師会糖尿病対策班を中心に糖尿病性腎症重症化予防対策が検討されてきた.県医師会が中心となり,二次医療圏単位での保険者と医師会との連絡会が開催され,顔のみえる対策を進めている.対象を腎症2 期以降の糖尿病患者とし,対策の中心に減塩やタンパクの過剰摂取の抑制をめざした栄養指導におき,栄養士のいない診療所においても,専門医療機関との連携以外に,市町村の保健師や徳島県栄養士会栄養ケアステーションから派遣される管理栄養士による栄養指導を行えるよう進めている.今後,どのようにアウトカムを評価し,プログラムの有効性を実証するかが課題である.
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医学のあゆみ 263巻7号, 597-602 (2017);
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糖尿病性腎症は透析導入原疾患の第1 位を占めており,末期腎不全に至った際の患者の予後や生活の質(QOL),医療費を考慮すると,糖尿病性腎症の進展抑制は現代医療において重要な課題となっている.微量アルブミン尿,顕性蛋白尿を認め,徐々に腎機能が低下する典型的な糖尿病性腎症をみるほか,顕性蛋白尿を認めないもののすでに腎機能低下をきたしている糖尿病症例が存在することが明らかになってきた.近年,臨床的に糖尿病がその発症や進展に影響している慢性腎臓病(CKD)を総称して,糖尿病性腎臓病(diabetic kidneydisease:DKD)ととらえる概念が普及してきた.DKD 進展抑制はこれまで血圧・血糖管理などの保存的療法が主であったが,SGLT2 阻害薬,インクレチン関連薬(GLP-1 受容体作動薬,DPP-4 阻害薬),PHD阻害薬,Nrf2 刺激薬,CCR2 阻害薬などの新規薬剤による腎保護効果が報告されてきており,今後の治療の選択肢として期待される.
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連載
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テレメディシン ― 遠隔医療の現状と課題 10
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医学のあゆみ 263巻7号, 608-612 (2017);
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◎政府が2017 年6 月に発表した未来投資戦略では,「かかりつけ医による対面診療と組み合わせた遠隔診療により,効果的・効率的な医療の促進」することが提唱され,来年の診療報酬改定でもひとつのトピックスである.オンライン医療が普及するためには,医療現場の課題を解決し,患者の利便性だけでなく,医師にとっても有用で,かつアウトカムの向上や医療の削減につながる三方よしの仕組みにしていく必要がある.われわれは福岡市で医師会,市とともに「ICT を用いたかかりつけ医強化推進事業」を開始し,実証を通じて効果検証を進めている.現時点で,外来医療,在宅医療ともに対面診療を補完する形式でのオンライン医療は有用性・効率性が認められつつあり,さらに検証を進めていきたい.
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救急医学―現状と課題 NEW
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医学のあゆみ 263巻7号, 613-613 (2017);
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救急医学―現状と課題 1
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医学のあゆみ 263巻7号, 614-621 (2017);
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◎救急医学の学問体系は,多発外傷,広範囲熱傷,あるいは急性薬物中毒などの外因性救急疾患を中心とした初療室や集中治療室,手術室での対応や病態の解析に主眼がおかれていた.しかし,社会の変化とともに,それらに加えて多疾患を有する高齢者内因性救急疾患への対応,増加する救急患者への対策や地域メディカルコントロールへの関与,ドクターカーやドクターヘリ,災害医療などの病院前治療などへの積極的なかかわりが期待されるようになった.また,高齢者救急が増加するなか,人生の最終段階(終末期)となった救急患者に対して救急医療を実践する救急医がどのような対応をすべきか,真剣な議論が必要である.一方で,次代の救急医学を担う救急医が,どのような課題を抱え,そしてそれを支援するための手法も議論しなければならない.救急医がおかれている職場環境の改善や,男性医師だけでなく,女性医師が救急医として活躍できる体制を構築することも喫緊の課題である.
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TOPICS
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小児科学
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医学のあゆみ 263巻7号, 603-604 (2017);
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消化器内科学
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医学のあゆみ 263巻7号, 604-605 (2017);
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血管生物学
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医学のあゆみ 263巻7号, 605-607 (2017);
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FORUM
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生殖倫理の現況と展望 8
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医学のあゆみ 263巻7号, 622-626 (2017);
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