Volume 263,
Issue 8,
2017
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特集 人工知能と医療のハーモニー
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医学のあゆみ 263巻8号, 629-629 (2017);
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医学のあゆみ 263巻8号, 631-635 (2017);
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この文章はIBM Watson Health のwhite paper を翻訳したものです.ゲノム医療,または精密医療はIBM とElsevier が2014 年に出版した論文(IBM Genomic MedicineOverview Article. Elsevier Oct;2014.)のテーマでした.その出版物のおもなテーマは,遺伝子配列を読み取るコストの急速な削減がもたらす,医療における大きな変革についてでした.遺伝子のシークエンスコストは低下していましたが,結果として得られる遺伝子情報の分析はいぜんとしてコスト効率が悪く,大規模なゲノム医療の実現のための重要な課題でした. そしてコグニティブコンピューティング(cognitive computing)の技術,およびその技術がもたらすパワーが,急速に進化するゲノム医療の分野において課題とされていた大量な構造化および非構造化データの分析・洞察を得るためのひとつの可能性として提案されました. それから3 年後,がん統計がかつてないほど悪化している時期にあって,その多くの予測が現実となっています.2015 年には世界中で880 万人ががんで死亡し(全世界の死者の1/6),あらたな症例は今後20 年間で約70%増加することが見込まれます.そのようななかでがん領域における精密医療(precisionmedicine)は,遺伝子データを活用する直接的な利点という点では,代表選手ともいえる存在となっています(図1).
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医学のあゆみ 263巻8号, 636-640 (2017);
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2017年5月,人工知能AlphaGo(アルファ碁)は,ささやかな贈り物を残して人類との闘いから引退した.囲碁界に突如現れた人工知能,それがAlphaGo である.しかし人類最強の棋士に三連勝した人工知能も,“意味”を理解することはなかった.そして今,棋士がその“意味”を読み解くことで,囲碁界は新しい時代への扉を開こうとしている.将棋界もまた,人工知能と対戦しながら育った世代の台頭により,空前のブームが引き起こされている.今後,医療界においても,人工知能が流入してくるのは時間の問題である.先んじて人工知能の影響を受けた囲碁界と対比しつつ,医療人工知能を取り巻く最近の動向と,実際の取組みを紹介し,医療における人工知能の注意点と展望を述べる.どれほど人工知能の性能が上がっても,患者の気持ちを理解する人間の医師が必要であり,深淵な医療および医学に挑戦する医師の価値は変わらない.人工知能を道具として正確に認識し,正しく使いこなすことが求められている.
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医学のあゆみ 263巻8号, 641-645 (2017);
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近年,ニューラルネットワークを多層化したパターン認識技術である深層学習が盛んに研究されており,その高いパターン認識精度を活用した画像認識,音声認識から,囲碁や将棋などにおける戦略探索まで,幅広く応用されてきている.とくに画像認識の分野においては,一般画像の識別から医用画像などの医療情報やゲノム情報の解析にその応用範囲が広がっており,より実用的かつ社会的貢献が可能な課題への取組みが進みつつある.本稿では,医用画像およびゲノムデータに対する深層学習を用いた解析において,著者らの研究グループで行っている皮膚病理画像解析法,2017 年に『Nature』で発表された皮膚病変からの良性・悪性の自動判別法,眼底画像からの網膜の血管および視神経乳頭の同時研究検出法,ハイスループットDNA シークエンサーデータからの変異検出法の4 例の紹介から,現状の適用について述べる.
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医学のあゆみ 263巻8号, 647-651 (2017);
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次世代シークエンサー技術(NGS)により,低コスト・短期間でゲノムシークエンスが可能となっており,がん患者のゲノム情報をシークエンスし,臨床的に翻訳・解釈して患者に返すこと,すなわち“臨床シークエンス”が現実化し,シークエンスの重点が“学術研究”から“医療実践”へ移ろうとしている.一方で,得られるゲノム情報量が多くなればなるほど,そこからがんの発症や進展にかかわるドライバー遺伝子変異を正しく選び出して診療に結びつける作業に時間と労力を要することになる.著者らのグループは,2015 年よりIBM との共同研究を開始し,NGS 解読後のメディカルインフォマティクスに医科学研究所独自の解析パイプラインと併用する形で,人工知能Watson for Genomics(WfG)の解析パイプラインを導入した探索的臨床研究を行っている.本稿では著者らの取組みを概述する.
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医学のあゆみ 263巻8号, 653-657 (2017);
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厚生労働省は平成29 年(2017)2 月の「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」において,精神科の早期退院の目標を示した.当院では以前より入院期間の短縮をめざし,クリニカルパスを用いた標準化医療を進めてきたが,病状や家族背景,経済事情など個々に違いがあるため,すべての患者の入院期間の短縮は困難であった.これをできるだけ実現するためにはカルテ情報をすべて把握する必要があるが,精神科のカルテ情報は入院回数の多さや長期にわたる入院期間などのため膨大であり,それらの内容をすべて把握することは困難であった.そこで,人工知能(AI)MENTAT(メンタット)を臨床応用することとなった.MENTATは,IBM 社の WATSON テクノロジーを活用したデジタルヘルスソリューションである.電子カルテに入力されたテキストデータを,Watson Explorer による自然言語解析技術を用い,統合失調症の治療や看護,退院調整,再入院などに関係する数十項目の悪化因子を抽出し,これらをほかの同疾患患者のデータと比較することで,患者個々に合わせた医療提供の問題点が明らかにできる.今後,機能拡張によりAI が精神科境域においても必要とされていくと考える.
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医学のあゆみ 263巻8号, 658-662 (2017);
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新規医薬品の開発には,10 年以上の長い年月と数百億円以上の巨額のコストがかかるといわれる.とくにここ数十年では,研究開発費の伸びに対し新薬の承認数が横ばいという状況となっており,製薬業界は,世界規模での開発期間の長期化・高コスト化という深刻な問題に直面している.したがって,医薬品開発プロセスの効率化による開発期間・コストの抑制が製薬業界にとっての急務であり,人工知能やインシリコシミュレーションなどの情報技術を駆使した創薬,いわゆる“インシリコ創薬”に大きな期待が寄せられている.当研究室でも,医薬品開発プロセスの初期段階である医薬品候補化合物(リード化合物)の探索,すなわちバーチャルスクリーニングや,発見した医薬品化合物候補について活性の向上や副作用の抑制をめざして最適化を行うインシリコシミュレーションなどに取り組んできた.本稿では,とくに,当研究室で開発したバーチャルスクリーニング技術について紹介する.
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医学のあゆみ 263巻8号, 663-667 (2017);
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人工知能の利活用はあらゆる分野に大きな影響を及ぼし,とくに医療健康分野ではゲノム医療,医療情報,画像診断,創薬,看護,介護などに革命的変化が近未来に生じると予想され,医療者はその影響を逃れえない.倫理的・法的・社会的課題の課題検討対応が急務である.未曽有の高齢化を迎える日本において,人間と人工知能が協調(ハーモニー)する医療が将来に実現することを望みたい.
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連載
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テレメディシン―遠隔医療の現状と課題 11
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医学のあゆみ 263巻8号, 675-679 (2017);
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◎Personal Health Records(PHR)のなかでも,血圧値は家庭での自己測定が重視され,遠隔医療との親和性が高いといわれている.とくに高血圧治療ガイドラインでは診察室血圧より家庭血圧が重視されており1),PHR を活用した血圧管理への臨床的有効性に期待が高まっている.また医学界でもその応用が進んでおり,その医学的価値が認められ,医療施設や研究,たとえば琉球大学の離島高齢者の見守りにPHR と血圧計を使った遠隔医療の実証研究2),糖尿病領域においては東京大学医学系研究科健康空間情報学講座の臨床研究3,4)などで活用されはじめている.しかし,医療機器や電子カルテとの連動性や診療報酬制度の評価など,まだ多くの課題があることも同時に指摘されている.また,一般のサービスでは,スマートフォンやパソコンを介しデータ伝送・グラフ表示するPHR サービスが増加しており,オムロンでは2010 年頃よりこれらサービスに取り組んできた.本稿では,オムロンヘルスケア株式会社が開発したサービス「WellnessLINK®」(2010),「MedicalLINK®」(2012),スマートフォンアプリ「OMRON connect」(2016)の紹介を通じて,今後どのようなPHR が遠隔医療に求められるのかを考えてみたい.
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救急医学―現状と課題 2
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医学のあゆみ 263巻8号, 681-687 (2017);
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◎“ドクターヘリ”は正式な法律用語ではないが,まことに言い得て妙の言葉としてすっかり定着している.ドクターヘリの一番肝腎な点は“医師の迅速な搭乗”である.これが確保されないかぎりドクターヘリとはいえない.ドクターヘリは“平常時に機能してこそ大災害時にも機能する”という阪神・淡路大震災の反省から生まれた.いまや社会に不可欠のインフラとして,2017 年3 月31 日現在,全国41 道府県に51 機が配備すみであるが,ここまでくるのに2 つのバリア,すなわち“国民の関心の低さ”と“悲しむべき地方財政の状況”を克服する必要があった.東日本大震災ではじめて大量出動したが,多くの課題も明らかとなった.ドクターヘリ推進議員連盟の後押しを得て,航空法施行規則第176 条の改正や防災基本計画への位置づけが実現できた.ドクターヘリは救急医療や災害医療のほか,へき地医療や小児・周産期医療にも貢献しているが,あらたに救急自動通報システム(D-Call Net)と連携して交通事故死傷者を減少させる研究が進行中である.2016 年8 月,史上はじめてドクターヘリの“事故”が発生した.安全運航は永遠の課題である.
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TOPICS
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泌尿器科学
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医学のあゆみ 263巻8号, 669-671 (2017);
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免疫学
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医学のあゆみ 263巻8号, 671-672 (2017);
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神経精神医学
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医学のあゆみ 263巻8号, 672-673 (2017);
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FORUM
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生殖倫理の現況と展望 9
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医学のあゆみ 263巻8号, 689-693 (2017);
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医学のあゆみ 263巻8号, 694-695 (2017);
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医学のあゆみ 263巻8号, 696-698 (2017);
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