Volume 263,
Issue 10,
2017
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特集 バソプレシンV2受容体拮抗薬のすべて
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医学のあゆみ 263巻10号, 821-821 (2017);
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医学のあゆみ 263巻10号, 823-826 (2017);
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バソプレシンは血圧,浸透圧調節に関与する古くから知られているペプチドホルモンであり,V1a,V1b,V2 の3 つの受容体を介して,血管平滑筋収縮,糖新生,血小板凝集,そして自由水再吸収といった多彩な作用をもつ.心不全患者においてバソプレシンは浸透圧非依存性に分泌が亢進しており,V1a を介した後負荷増大,およびV2 受容体を介した水吸収による前負荷増大はいずれも,うっ血,心機能低下増悪に関与している.バソプレシン濃度は心不全の独立した予後予測因子であり,またバソプレシン分泌に伴い発現する低ナトリウム(Na)血症も重要な予後不良因子であることが報告されている.わが国で開発された新規水利尿薬であるトルバプタンはV2 受容体に拮抗することで自由水再吸収を抑制し,心不全患者治療におけるあらたな期待となっている.
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医学のあゆみ 263巻10号, 827-832 (2017);
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著者のaquaretic(水利尿薬)の着想への経過,研究経過を述べる.著者はループ利尿薬連用の低ナトリウム(Na)血症患者の治療への外科医からの要望をaquaretic 開発と受け止め,著者の利尿薬についてのいくつかの理論的・実験的研究より,vasopressin analogue ではない経口薬としてのnon peptide vasopressin V2receptor antagonist の開発が可能であるとの考えを持つに至った.このアイデアを大塚製薬(株)社長(前会長)に直接話す“一期一会”の機会があり,同社の非常な努力により,vasopressin receptor cloning より早く,世界初のaquaretic が完成した.以上について,著者のたどった道を述べる.
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医学のあゆみ 263巻10号, 833-837 (2017);
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欧米によって行われたランダム化プラセボ対照試験であるACITVE-HF 試験,EVEREAT 試験,SECRETHF試験,TACTICS-HF 試験について,研究目的,研究デザイン,対象,結果をそれぞれまとめた.これらの結果から,総じてプラセボ群よりも体重減少効果は有意であった.しかし,呼吸困難感の改善は,最近行われた2 試験からはプラセボ群に比べて有意ではなかった.本来,トルバプタンは全身的な体液貯留を対象にその有用性を検証すべきと思われるが,肺水腫を主病態とする呼吸困難を一次エンドポイントに主眼をおいていることに問題がある可能性が示唆された.今後のさらなるエビデンス構築のためには,研究のあり方をこれらの結果を踏まえて考えることが大切である.また,これらの研究結果から忘れてはならないのは,トルバプタンはいずれの研究においても,その投与により有意に臨床的うっ血を改善していることである.
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医学のあゆみ 263巻10号, 838-842 (2017);
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あくまで,“単なる利尿強化薬”の位置づけから登場したトルバプタンであるが,わが国における心不全診療で使用経験が積み重ねられるに従い,試験構築の主眼は,患者背景として急性心不全あるいは残うっ血,エンドポイントとしてうっ血解除あるいは腎機能障害(WRF)に向けられた.わが国で行われた前向きランダム化試験のほとんどは,“急性心不全におけるトルバプタン早期導入”に関する試験である.その結論は,通常治療群に比べトルバプタン群でうっ血解除が大きく,WRF が少ないというものであった.一方,K-STAR 試験は,WRF を併発しうっ血が残存する心不全症例において,トルバプタン追加群で尿量が多く,腎機能の悪化が抑制されることを示した.うっ血が残るほど心不全再入院率が上がるとの報告より,残うっ血と心不全予後との関連が強調されはじめたいま,トルバプタンがもっとも必要とされる患者像を軸に,次なる臨床試験が展開されるであろう.
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医学のあゆみ 263巻10号, 843-847 (2017);
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臨床の現場でもようやくトルバプタンの使用が定着してきた感があり,しばしば外来での長期投与も行われるようになった.一方で,海外の大規模試験ではかならずしも良好な長期予後を示すことができず,実臨床での使い心地と乖離する感もいなめない.わが国の現場では自然に最適な患者選択が行われている可能性があり,大規模試験では一定数の無効例が含まれている可能性がある.反応性の予測方法に関してはいろいろな報告がある.最終的にはトルバプタンの作用部位である集合管の機能が温存されていることが必要不可欠であり,尿浸透圧や尿中アクアポリン2(AQP2)値などで確認できる.反応群に限定した前向き大規模試験の結果が期待される.
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医学のあゆみ 263巻10号, 848-851 (2017);
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トルバプタンは心性浮腫を適応症として2011 年に上市された後,医薬品医療機器総合機構(PMDA)の要請もあり,市販後調査が3,000 例を目標に施行された(「サイドメモ」参照).この薬剤は,うっ血性心不全の急性増悪期に他の利尿薬に効果不十分な場合に投与するという適応で,わが国においては低ナトリウム(Na)血症の規定がない,世界でも珍しく広い適応となっていることから,市販後調査のデータはたいへん貴重なものである.当初はいったん利尿がつき,うっ血が改善したならば投与を中止することが当然のように考えられていたため,この市販後調査も投与開始から2 週間までを調査対象としたものである.もっとも,2 週間を超えて投与したときにボランティア的にその後のデータを入力いただいている事例もある.最終的に2015 年まで3,350 人のデータをいただいた.著者らはこれをSamsca post-Marketing surveillance In heartfaiLuEr(SMILE study)と命名して,論文発表に努めている.
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医学のあゆみ 263巻10号, 852-855 (2017);
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トルバプタンは現在の『肝硬変診療ガイドライン2015(改訂第2 版)』において,ループ利尿薬,抗アルドステロン剤との併用条件下で低ナトリウム(Na)血症,腹水の改善に有効であるため,適応を慎重に選んで投与することが推奨されている(推奨の強さ:1,エビデンスレベル:A)1).基本,早期導入の薬で,いかに肝硬変症患者の腎機能を悪化させず維持するかが重要になっている.
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医学のあゆみ 263巻10号, 856-862 (2017);
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常染色体優性多発性囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)は,もっとも頻度の高い遺伝性腎疾患である.遺伝子の発見から病態生理の解明が進み,囊胞増大を抑制するとされる新しい治療薬(バソプレシン受容体拮抗薬)が開発され,現在多くの患者に使用されはじめている.臨床試験では,トルバプタンは偽薬群に対して3 年間の両腎容積(TKV)増加ならびに腎機能低下を抑制し有効性が示された.さらに最近報告されたあらたな臨床試験では,男性,PKD1 truncating 変異,ADPKD class 1C~E では早期投与が推奨される結果が示された.本稿ではADPKD の病態,トルバプタンの臨床試験,適応,投与の実際まで概説する.
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連載
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テレメディシン―遠隔医療の現状と課題 12
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医学のあゆみ 263巻10号, 869-874 (2017);
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◎生活習慣病では食生活の改善が重要なことは周知のとおりである.一方で,食事療法は継続の難しさも指摘されている.近年身近となったヘルスケアアプリを用いることで,患者の食生活に関連する課題を解決できる可能性がないかと考え,栄養専門職の食事指導におけるヘルスケアアプリの利用状況に関する話題を取りあげた.調査に回答した栄養士の約6 割が,情報源やセルフモニタリングの目的で食事指導にヘルスケアアプリを利用していた.患者にもヘルスケアアプリの利用を推奨していたが,実際に登録したデータはあまり活用されていなかった.ヘルスケアアプリの利用は患者の関心も高いため食事管理に活用できると考えられるが,利用環境の整備,セキュリティ,アプリの質の確保などの課題が残る.
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救急医学―現状と課題 3
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医学のあゆみ 263巻10号, 875-881 (2017);
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◎日本の救急外来において,急性中毒患者は増加している.しかしこれを裏づけるデータはない.外国においては急性中毒患者の登録が行われているが,日本では行われていない実情がある.自殺者は人口動態統計で把握することができ,一酸化炭素中毒を用いた自殺は減少傾向にある.一方,2008 年に起こった硫化水素自殺では,インターネットによる情報の拡散で多発した.今後もインターネットによる中毒の流行に注視しなければならない.また,世界中でテロが多発しているなかで,2020 年に東京オリンピックを開催する日本ではテロ対策に追われている.拮抗剤・解毒薬の配備が急務であるが,日常で汎用されることがないため高額になるなどの問題がある.
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TOPICS
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血液内科学
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医学のあゆみ 263巻10号, 863-864 (2017);
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産科学・婦人科学
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医学のあゆみ 263巻10号, 864-866 (2017);
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生理学
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医学のあゆみ 263巻10号, 866-868 (2017);
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FORUM
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生殖倫理の現況と展望 10
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医学のあゆみ 263巻10号, 882-885 (2017);
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パリから見えるこの世界 63
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医学のあゆみ 263巻10号, 886-890 (2017);
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