医学のあゆみ
Volume 264, Issue 5, 2018
Volumes & issues:
-
【2月第1土曜特集】 近未来のワクチン─開発研究の潮流と課題
-
-
- 総論
-
近未来ワクチン:開発研究の新展開
264巻5号(2018);View Description Hide Description近未来のワクチン開発において,ゲノムを中心としたオミックス技術を駆使した病原性因子研究から,網羅的ワクチン抗原探索,そして分子疫学との融合,抗原の製造,最適化,動物モデルにおけるユニークな技術があらたに導入されてきている.あらたなアジュバントやメカニズム,粘膜や皮膚などへの投与法の研究や,デリバリー,デバイス技術,安全性の検証手法の向上が進んでおり,今後は細胞性免疫を誘導できるワクチン,ワクチン効果を判定する方法や,簡便かつ安価な効果判定系の開発などが望まれる.一方,ワクチン接種によって起こる副作用,とくにまれに起こるものに関する対策は喫緊の課題である.ヒトのサンプルを用いた臨床研究によるバイオマーカー探索,たとえば血清のプロテオーム,メタボローム,マイクロRNA の解析が有効と期待される. -
わが国の感染症ワクチンにおける“真の”ワクチンギャップの解消とアンメットメディカルニーズ
264巻5号(2018);View Description Hide Description予防接種は予防医学の中心を担うものとして,世界的に評価され実施されてきた.多くの先進国では,接種するだけではなく,サーベイランスを充実させその結果を評価することで問題点を改善し,あらたな課題(アンメットメディカルニーズ)を浮き彫りにし,その課題に対して研究,開発を実施している.わが国においても他の国とほぼ同数のワクチンが接種可能となり,見かけ上のワクチンギャップは解消したようにみえる.しかし,ワクチンの効果を最大限発揮させ,安全かつ有効に接種するには課題が多い.本稿では,真のワクチンギャップの解消と感染症ワクチンのアンメットメディカルニーズについて,疫学的見地から検討する. - ワクチン技術とサイエンスの新潮流
-
抗体医薬の代替としての治療ワクチン
264巻5号(2018);View Description Hide Description抗体医薬の多くは低分子化合物が標的とはできない標的分子を制御することで,画期的な治療効果をもたらしたが,高価であるために限られた疾患でしか使用できない.治療ワクチンは,標的分子(の一部)と異種蛋白質のコンジュゲートを免疫することで安全に標的分子への抗体産生を誘導する.抗体医薬に匹敵する治療効果が得られることから,近年,種々の標的分子への治療ワクチンが開発され,前臨床試験および臨床試験が行われている.安全性を高めるために,標的分子由来のペプチドでワクチンを作製することにより,T 細胞活性化に基づく自己免疫反応を回避するなどの工夫がされている.より有効で安全な治療ワクチンを開発するためにさらに研究を進める必要があるが,治療ワクチンは安価で製造することができるため,実用化されれば幅広い疾患において,これまでの低分子化合物で達成できなかった有用な治療薬となると期待される. -
がん抗原探索技術の基礎と臨床―次世代シーケンサーを活用したがん抗原の同定
264巻5号(2018);View Description Hide Descriptionチェックポイント分子PD-1 やCTLA-4 による免疫抑制作用を阻害する抗体治療の臨床効果は,それまでがん免疫に懐疑的であった人たちまでにも,がん免疫の存在とがん治療における重要性を確信させるものであった.生体に備わるがん免疫応答をがん治療に応用しようとする試みは1890 年代から提唱されており,腫瘍免疫に関する研究が進められていた.その中心のひとつが,がん治療のターゲットとなる分子,がん抗原の探索である.近年,バイオインフォマティクス技術の発達によりがん抗原の探索技術が大幅に進歩し,がん抗原はより詳細に,網羅的に探索が可能となってきている.本稿では最新のがんワクチン抗原探索技術と,それを応用した臨床試験を紹介する. -
ワクチンアジュバントと粘膜ワクチンの基盤となる自然免疫細胞解析
264巻5号(2018);View Description Hide Descriptionさまざまな感染症を予防するためにワクチンは非常に重要であり,ワクチン開発によってこれまで私たちは重篤な感染症を克服してきた.ワクチン接種により免疫応答が誘導されるが,効率的な免疫応答がなければ有効な免疫記憶は成立しない.アルミニウム塩をはじめとしたアジュバントは自然免疫を活性化させる物質で,ワクチンにとって必要不可欠なものである.近年では,従来の注射型ワクチンだけでなく,次世代ワクチンとして粘膜ワクチンが注目されている.粘膜ワクチンは,全身性の免疫応答のみならず,粘膜局所での免疫応答も誘導することから,効率的な感染防御応答を誘導できるため,感染症に対する有効なワクチンと考えられている.さらに,免疫グロブリンA(IgA)は粘膜免疫応答にとって重要な役割を担っており,その誘導機構が明らかとなってきた.本稿では,著者らの知見を含めて概説する. -
免疫・ワクチン応答を左右する腸内環境因子としての栄養と腸内細菌
264巻5号(2018);View Description Hide Description近年,生体の栄養状態が免疫応答の強弱や性質を規定する重要な要素であることがわかってきた.これまでは経験則に基づく個体レベルの知見が主であったが,現在ではその作用機序について分子・細胞レベルで解明されつつある.とくにビタミンや脂質は栄養素としてだけではなく,免疫制御因子としての重要性が明らかにされてきており,B 細胞やT 細胞を介した獲得免疫と樹状細胞やマクロファージ,好中球などを介した自然免疫における特有の作用が示されている.また腸内細菌に関しても,古くからIgA 抗体の産生に腸内細菌からの刺激が必要であることは知られていたが,最近ではT 細胞についても,特定の腸内細菌が特定のT 細胞サブセット(例:Th17 細胞,制御性T 細胞,Th1 細胞)を誘導することが明らかになってきている.さらには,そのメカニズムの一端として特定の腸内細菌により産生される代謝物の免疫制御機能についても知見が集積してきている.本稿では,腸管免疫システムを中心に免疫・ワクチン応答を左右する腸内環境因子としてのビタミン,脂質,腸内細菌に着目し,著者らの知見を交えて概説したい. -
粘膜ワクチンの潮流と課題
264巻5号(2018);View Description Hide Description多くの病原体は呼吸器・消化器・生殖器などの粘膜面を介して宿主に感染する.そこで生体は全身性免疫システムとは区別される粘膜に特有な粘膜免疫システムを構築し,外来異物に対して第一線の監視・防御機構を備えている.粘膜面を介した抗原投与は全身系と粘膜系の両方に抗原特異的免疫応答を惹起するため,これを応用した粘膜ワクチンは,感染症を“侵入口”で防ぐことができ,低侵襲性かつ効果的に二段構えの防御免疫が誘導可能なワクチンとして近年注目されている.また感染症だけでなく,肥満などの生活習慣病に対する粘膜ワクチン開発の試みも行われており,幅広い疾患での適用が期待される.その一方で,ワクチン抗原の粘膜組織への有効な送達技術や安全性など考慮すべき課題もある.本稿では,粘膜免疫システムの特徴を概説し,そのユニーク性を駆使した経口・経鼻ワクチン開発を中心に,最新の研究成果を紹介する. -
エボラ出血熱に対するワクチン開発の進展
264巻5号(2018);View Description Hide Description安全性と有効性の高い各種ワクチンが開発され,普及することによって,多くのウイルス感染症を予防できるようになった.一方,高病原性鳥インフルエンザ,SARS(重症呼吸器症候群),MERS(中東呼吸器症候群),ジカ熱,エボラ出血熱などの新興ウイルス感染症に対するワクチン開発は精力的に進められているものの,その多くはいまだ実用化に至っていない.2014 年から2015 年にかけて西アフリカでエボラ出血熱が大流行した.このアウトブレイクを契機にエボラ出血熱に対するワクチン開発と治験が大きく進んだ.本稿では,実用化が期待されているいくつかのエボラワクチンの開発状況について概説する. -
ウイルスベクターを用いたワクチン開発
264巻5号(2018);View Description Hide Descriptionワクチンはさまざまな感染症から人類を守る強力なツールであるが,多種多様な感染症の特性に応じた開発が必要であり,ワクチンで予防あるいは治療可能であることが示唆されながらもいまだに実用化に至っていないケースも多い.有望なワクチン開発法として昨今注目を集めているのは,すでに安全性および免疫誘導能が実証されているウイルスをベクターとして人為的に外来抗原を導入した組換えウイルスを用いる方法である.ウイルスベクターとしては広く接種されている麻疹ウイルス,水痘ウイルスなどのワクチン株や,遺伝子治療に用いられるアデノウイルス,センダイウイルスといったさまざまなウイルスが研究開発されており,対象疾患に応じて選択し,またそれらを組み合わせることも可能である.すでに臨床試験を終え実用化されているものから今後の活用に期待がもたれるものまで,いくつかのウイルスベクターについての概説を通じて,新世代ワクチン開発の展望を垣間みることができる. - 各種ワクチン開発の潮流と課題
-
ノロウイルスワクチン開発
264巻5号(2018);View Description Hide Descriptionわが国のノロウイルス感染症患者は推計年間100~300 万人に上り,わが国の経済的ダメージは深刻である.抗ウイルス薬,ワクチンなどに対する要望は高く,ヒトに感染するノロウイルス(HuNoV)に対するワクチンの開発が切望されている.しかし,HuNoV は,培養細胞で増殖させることができず,感染モデル動物も存在しなかった.この状況は,HuNoV のワクチン開発上最大の障壁として40 年以上にわたり立ちはだかっていた.近年,HuNoV の増殖培養系や複製機構の研究成果が実り,リバースジェネティックスによる感染性ノロウイルス作製,組織血液型抗原に対する結合阻害アッセイ系の構築,ヒト腸管オルガノイドによるHuNoV 増殖培養系の構築などの成果が得られ,ワクチン開発に向けた評価基盤研究の著しい進展が認められた.このような成果により,複数の製薬メーカーが参入し,2017 年11 月時点では,多様なHuNoV ワクチン開発が行われている. -
新しいインフルエンザワクチン開発
264巻5号(2018);View Description Hide Descriptionより効果の高いインフルエンザワクチンが求められており,そのためには新しいアプローチが必要である.インフルエンザの感染阻止には粘膜免疫の誘導が必要であるが,現行のワクチンにはその能力がない.感染を阻止するためには感染の場である上気道粘膜上に感染を阻止しうる免疫を誘導する必要がある.感染を阻止することが可能な粘膜免疫を誘導するワクチンが,経鼻インフルエンザワクチンである.新しいインフルエンザワクチンとしての経鼻インフルエンザワクチンについて,また欧米ですでに承認され,国内での承認がまたれる経鼻弱毒生ワクチンと,わが国で開発が進んでいる不活化経鼻ワクチンについて新しい有効性の指標が必要である. -
多剤耐性緑膿菌に対する免疫療法―緑膿菌V 抗原ワクチンの開発
264巻5号(2018);View Description Hide Description近年,社会問題化している多剤耐性菌のひとつである緑膿菌は,抗菌薬に対してさまざまなメカニズムを用いて耐性を獲得している.これに対抗するために抗菌薬に頼らない治療法の開発が必要とされている.本稿ではそのひとつである免疫療法,とくに緑膿菌のワクチン療法について述べる.緑膿菌ワクチン開発の研究は50 年以上前から続いているが,いまだに臨床使用されているものはない.さまざまな抗原を用いたワクチンが研究されてきたが,著者らは,そのなかでも重症緑膿菌性肺炎に関係が深いといわれるⅢ型分泌装置を構成する緑膿菌V 抗原(PcrV)をターゲットにしたワクチンの開発を進め,動物モデルでの有効性を報告してきた.今後,ヒトでの臨床使用を視野に入れて,適切な投与方法やアジュバント,複数の抗原の併用などの検討などが必要である. -
粘膜免疫誘導型の結核ワクチン開発―ワクチンベクターとしてのヒトパラインフルエンザ2 型ウイルスの可能性
264巻5号(2018);View Description Hide Description世界人口の約3 割が結核菌に感染しているが,感染直後の発症率は10%以下であり,多くの場合,長期間感染非発症の状態となる.すなわち,潜伏感染の状態で発症を抑えることができれば結核撲滅も可能となる.しかし,現在開発が進んでいるワクチンのほとんどが非感染者に対する感染予防ワクチンであり,感染者における潜伏感染および再活性を標的とするものではない.また近年では,結核感染のhallmarkである肉芽腫の質と病態の悪化に関する報告が多数あり,肺局所の肉芽腫形成に対する粘膜面での免疫誘導能もワクチン開発では注視すべきである.本稿では,呼吸器粘膜に感染するヒトパラインフルエンザ2 型ウイルス(HPIV2)をベクターとする粘膜免疫誘導型ワクチンのコンセプトを紹介する.リバースジェネティクス法を用いたHPIV2 は,発現させたい抗原を組み込んだリコンビナントウイルスを容易に作製できる.その結果,結核菌の生活環のなかで発現する各ステージの抗原を組み込むことで,効果のあるあらたな結核予防・治療ワクチンの開発が期待できる. -
グローバルに開発が進むNPC-SE36 マラリアワクチン―BK-SE36 マラリアワクチンの臨床開発
264巻5号(2018);View Description Hide Descriptionハマダラカによって媒介されるマラリアは貧困病のひとつであり,熱帯熱マラリア原虫によるマラリアはサハラ砂漠以南のアフリカ諸国を中心に年間40 万人の犠牲者をもたらしている1).犠牲者では5 歳以下の児童が60~80%を占めるといわれており,小児のマラリア予防はグローバルヘルスの最大の関心事のひとつである.効果的なマラリアワクチンはマラリア制圧の切り札となるであろうが,開発は困難を極め,まだ薬事承認されたものはない.マラリアワクチン開発が困難である理由については,生物学的かつ免疫学的に論じた『医学のあゆみ』(259 巻2 号198 頁)を参照されたい2).SE36 マラリアワクチンはその防御効果が期待されるが,本稿ではこれまでの臨床試験の経緯と,薬事承認をめざした臨床試験のグローバルな展開の予定について述べる.また,ワクチン効果に関連した最近の研究成果を紹介する. -
グローバルHIV コントロールに向けたワクチン開発
264巻5号(2018);View Description Hide DescriptionHIV感染症の制圧には,グローバルな視点での感染拡大抑制に向けた取組みが必要であり,早期診断・治療に加え,ワクチン開発が重要課題である.その開発は難航しているものの,おもに抗体誘導ワクチンおよびT 細胞誘導ワクチンの開発に向けての研究は着実に進展している.本稿では,HIV ワクチン開発研究の近況を紹介する. -
生活習慣病に対するワクチンの開発
264巻5号(2018);View Description Hide Descriptionワクチンは古くから実践されてきた治療法であるが,近年さまざまな疾患へと応用されており,アルツハイマー病のアミロイドβやタウを標的としたワクチン治療の基礎研究・臨床試験なども行われている.著者らも高血圧・糖尿病などの生活習慣病に対するワクチンの開発研究を進めており,毎日の内服薬から年に数回のワクチンによる治療の実現をめざしている.これらの内因性蛋白(ホルモン)を標的としたワクチンでは体液性免疫を活性化して抗体産生を促すことが主目的となるため,抗原,キャリア,アジュバントの適切な選択が求められる.生活習慣病に対するワクチン治療の臨床的メリットとしては,薬物アドヒアランスの改善があげられる.とくに高齢者における薬の多剤併用(ポリファーマシー)の増加により,飲み忘れや服薬管理の必要性が高い患者が増加しており,薬剤を減らすことによって得られる社会的なメリットは大きいと考えられ,今後の開発の進展が期待される. - 最新トピック
-
ワクチンの安全性試験の理論的構築
264巻5号(2018);View Description Hide Descriptionマーカー遺伝子を用いた安全性評価においては,その評価基準の設定が重要となる.著者らは,遺伝子発現と接種製剤との関係について,ロジスティック回帰分析法に基づく安全性評価システムの構築に取り組んでいる.全粒子不活化インフルエンザワクチンを毒性参照ワクチンとし,試験ワクチンのマーカー遺伝子発現がどれだけ毒性参照ワクチンに近似したものであるのかを評価することで,その毒性を客観的にマーカー遺伝子発現により評価する方法である.この手法を用いることで,試験検体の毒性を評価することが可能となると考えている.著者は,ワクチンの安全性を評価する新しい方法として,既存の安全性試験に加え,遺伝子発現プロファイルの変動を指標とした新規安全性試験法を用いることで,安全性の評価や予測が可能であるか検討している.近年,化学合成医薬品や化学物質の安全性評価法として,従来の一般毒性評価や病理解剖学的評価に替わるマイクロアレイなどの遺伝子発現解析を用いた新しい評価法の開発が進められている. -
ワクチンの有効性・安全性のバイオマーカー
264巻5号(2018);View Description Hide Descriptionワクチン接種後の副反応は,局所での発赤や疼痛,全身の発熱など軽微なものが多い一方で,アナフィラキシーや自己免疫疾患など重篤なものもまれに存在する.これらの副反応の多くが過剰な免疫応答に起因すると考えられているが,過剰な免疫応答が生じるメカニズムは不明であり,副反応をあらかじめ予測する検査法なども存在しない.著者らはこれまでの研究から,血液の細胞外小胞内のマイクロRNA が,ワクチン成分に対するマクロファージなどの細胞の応答の強さと非常に強く相関することを発見した.マウス動物モデルを用いた実験においても,あらかじめ血液を採取し,血液の細胞外小胞内のマイクロRNA を調べることで統計的に有意にワクチン接種後の炎症応答の強さを予測することができた.このような炎症応答はワクチン接種後副反応の原因のひとつと考えられていることから,今後,血液の細胞外小胞内マイクロRNA をバイオマーカーとした副反応予測検査法が開発されると期待される. -
ワクチン接種と稀ながら発生する副反応
264巻5号(2018);View Description Hide Descriptionわが国の予防接種後副反応疑い報告には医療機関報告と企業報告があり,厚生労働省,独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA),国立感染症研究所が共同して調査と情報整理を行っている.集計結果は,厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会の合同開催で検討され,検討結果は厚生労働省のホームページに公表されている.稀ながら発生する副反応については,1 例ずつの詳細な検討のみでは因果関係に関する解析が困難な場合が多いことから,疫学調査などによる検討が実施されている. -
感染症新薬・ワクチン開発におけるGHIT Fund の取組み
264巻5号(2018);View Description Hide Description人間と感染症の戦いはまだまだけっして終わっていない.日本が有する研究開発能力を感染症対策のためにいかすことは,国際貢献のみならず安全保障の観点からもきわめて重要といえる.グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)は,外務省,厚生労働省,製薬企業,そしてビル& メリンダ・ゲイツ財団の共同出資によって2013 年に設立された,グローバルヘルス分野の製品開発に特化した非営利・国際機関である.GHIT Fund は,途上国で蔓延する感染症に対する医薬品,ワクチン,診断薬の研究開発を支援しており,早期研究から臨床試験にわたって,合計68 件のプロジェクトに対してこれまで投資を行っている(医薬品:48 件,ワクチン:15 件,診断薬:5 件).現在進行中のワクチン開発のプロジェクトとして,マラリアやデング熱を対象とした案件などがある.今後,日本が感染症に対抗すべく創薬開発をさらに推進し,保健医療の面から国際的貢献を果たしていく役割はきわめて大きい.
-