Volume 264,
Issue 7,
2018
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特集 薬物動態学UPDATE
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医学のあゆみ 264巻7号, 569-569 (2018);
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医学のあゆみ 264巻7号, 571-578 (2018);
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ヒトの実態を模した生理学的薬物速度論(PBPK)モデルを用いた薬物動態の定量的な解析が注目を集めている.さらに,生理学的・生化学的なヒト個体間のばらつきをPBPK モデルに反映させることで,仮想患者をコンピュータ上で発生させることができるようになる.さまざまな患者背景を有した仮想患者を用いることで,薬物の濃度推移・薬効および副作用の個人間変動を予測できるVirtual Clinical Study により,臨床試験デザインの最適化や薬効および副作用発生リスクの推定が可能になると期待される.そこで,人種差によるロスバスタチンの血中濃度推移の変動,およびイリノテカンの副作用発生と遺伝子多型の関連性について,それぞれ既存の臨床報告に基づいたVirtual Clinical Study を実施した.ロスバスタチンの解析では,既存の臨床試験の被験者数が不十分であることが示唆され,またイリノテカンの解析では臨床で報告されているUGT1A1*28 およびSLCO1B1 c.521T>C と好中球減少のリスクとの関連性がよく再現できた.
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医学のあゆみ 264巻7号, 579-583 (2018);
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生体には体内時計が存在し,その本体は視神経が交差する視交叉上核(suprachiasmatic nuclei:SCN)に位置し,時計遺伝子により制御されている.たとえば,癌,循環器疾患,メタボリックシンドロームなど多くの疾患のリスクに時計遺伝子が関与している.薬の効果を規定する薬力学的側面や薬物動態学的側面で認められる標的分子,トランスポーターおよび薬物代謝酵素の日周リズムも,時計遺伝子により制御されている.こうした状況のなかで,医薬品の添付文書などに服薬時刻が明示されるようになってきた.その背景として,生体機能や疾患症状に日周リズムが存在するため投薬時刻により薬の効き方が大きく異なることがあげられる(時間薬理学).また,薬の効き方を決定する薬の体内での動き方や薬に対する生体の感じ方も生体リズムの影響を受ける.さらに,時間を考慮した製剤,すなわち時間制御型ドラッグデリバリーシステム(DDS)や時刻により処方内容を変更した製剤も臨床応用されるに至っている(時間薬剤学).そこで,体内時計の分子機構を基盤にした時間薬物動態について紹介する.
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医学のあゆみ 264巻7号, 584-589 (2018);
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腎障害や肝障害など臓器機能が低下した患者では,臓器障害のない患者と比較して特徴的な薬物動態を示すことがある.このため,臨床現場においては臓器障害に伴う血中薬物濃度の変動による薬効や毒性の変化に注意を払うべきである.近年,新薬の申請時に,腎障害や肝障害患者での薬物動態を必要に応じて調べることが求められており,それらの情報は,添付文書やインタビューフォームなどで容易に検索できるようになってきた.この情報を適正な薬物治療に活かすにはそのメカニズムにまで踏み込んだ議論が必要であるが,臓器障害による薬物動態変動メカニズムについてはいまだ不明な点が多い.本稿では腎障害時および肝障害時における薬物動態の変化と,そのメカニズムの知見について概説する.
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医学のあゆみ 264巻7号, 590-597 (2018);
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市場にある薬物すべての組合せで臨床相互作用試験を実施することは不可能であることから,薬物相互作用リスクの定量的予測法の確立は必須である.とくにトランスポーターを介した薬物相互作用を考えるうえでは,複数の膜透過過程の考慮が必要であり,複雑な解析が求められる.そのため,生理学的薬物速度論(PBPK)モデルのように全身での薬物の挙動をリアルタイムに予測するdynamic model の考え方や,それを実現化するためのモデルパラメータの精緻な決定に向けたin vitro 実験系や臨床試験デザイン,陽電子断層撮像法(PET)の活用など,さまざまな方法論の開発が進んでいる.さらには,内在性物質の挙動を観察することで,外からプローブ薬物などの投与をすることなく,代謝酵素・トランスポーター各分子種に対する薬物の影響を見積もる試みも進んでいる.本稿では,薬物相互作用のリスク予測の考え方と,予測精度を向上させるための取組みについて,とくに近年事例が増えてきたトランスポーターを介した薬物相互作用への対処を中心に紹介する.
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医学のあゆみ 264巻7号, 598-602 (2018);
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体に投与された薬物は,それぞれの臓器の内部で刻々と濃度を変化させる.それに伴い,標的となる細胞集団の活性も不均一に増減していく.きわめて狭い範囲で起こるこれら“局所”の薬物動態とその作用の推移は,薬効や毒性の仕組みを理解するうえできわめて重要である.しかしこの課題は,従来の薬物測定法では時間分解能や空間分解能に限界があること,そして生体機能を直接的に観察する系と統合することがほぼ不可能であることなどにより,達成が難しい.以上を踏まえ,本研究では,あらたな薬物モニタリングシステムを開発した.このシステムは,先端素材の“導電性ダイヤモンド”を用いた針状の薬物センサーと,細胞の電気現象をとらえるガラス微小電極を搭載する.創出した局所生体計測基盤は多様な薬物や臓器に適用可能であり,次世代の創薬や治療法の展開に貢献すると期待される.
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医学のあゆみ 264巻7号, 603-608 (2018);
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医薬品の開発において,ヒトでの体内動態を的確に評価できることが求められており,in vitro,in vivo,in silico などさまざまな実験系を用いた動態評価系が開発されてきている.本稿では,ヒトにおける医薬品の体内動態評価に欠かせない肝臓と小腸の細胞の開発状況について概観した後,in vitro で生体内を模倣する培養技術の進展について紹介する.肝臓に関しては,ゴールドスタンダードであるヒト凍結肝細胞が比較的安定に供給されている一方で,個人差に由来する細胞のばらつきを少なくし,より再現性・頑健性の高い試験法のためにさまざまな細胞の開発が進められている.小腸はヒト組織由来細胞の入手が困難である一方で,iPS 細胞から分化誘導した腸管上皮細胞や腸管オルガノイドが高い小腸機能を発現していることを示す報告が蓄積してきている.さまざまな細胞培養技術の開発と相まって,モデル動物による薬物動態評価に代わるヒト細胞を基盤としたin vitro 動態評価系の構築への期待が高まっている.さらにMicrophysiological systemとの組合せは,臓器間のin vitro 動態予測への可能性を開きつつある.
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医学のあゆみ 264巻7号, 609-613 (2018);
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医薬品が市場から撤退する主要理由のひとつとして肝障害がある.臨床でみつかる肝障害の多くは原因不明の特異体質性のものであり,前臨床段階での発見はもちろん,臨床試験でも見出すことは難しい.前臨床段階でのリスク化合物排除は製薬企業にとって重要な未解決課題となっている.肝障害は複数の機序(リスク)が重複してはじめて発症するとの考えのもと,リスク探索とこれを応用した評価試験系の構築が進められている.さまざまな評価系を並べ,それら結果を統合して予測を試みる,いわゆるmechanism integratedprediction(MIP)が主流となっている.本稿では,薬物性肝障害のリスクを判定するために重要と思われるいくつかの試験系と,予測精度を上げていくなかで考慮すべきポイントについて紹介したい.
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医学のあゆみ 264巻7号, 615-618 (2018);
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本稿では,ヒトにおける医薬品や化学物質の体内動態を説明しうる高置換率を達成したヒト肝細胞移植マウスの動物体内データを活用したヒト型薬物動態の研究事例を取り上げる.ヒト肝キメラマウスでの化学物質の血中濃度実測値をもとに動物の生理学的薬物動態(PBPK)モデルを構築し,生理学的数値をヒト化し,経口曝露時の代謝物を含めたこれらのヒトPBPK モデルを構築した.本稿でのPBPK モデルは,多くの研究者が容易に取り扱えるよう,消化管,肝および全身循環の簡素化モデルを統一的に採用してきたものである.一方,ヒト肝フラビン含有酸素添加酵素が触媒するベンジダミンのヒト動態予測には,ヒト肝移植マウスからマウス腎の酵素機能相当分を差し引く必要があった.フタル酸エステルあるいはビスフェノールA は,ヒト尿中バイオモニタリング結果から,PBPK モデルを用いて反復曝露量を逆算したところ,1 日許容数量を下まわった.サリドマイドに代表されるヒト肝シトクロムP450(P-450)が触媒するヒト不均衡性代謝物生成の評価には,一般にヒト肝移植マウスは有用であると考えられた.
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連載
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テレメディシン―遠隔医療の現状と課題 18
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医学のあゆみ 264巻7号, 624-628 (2018);
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◎電子カルテデータや,蓄積された大規模コホートデータといった医療ビッグデータの統合・活用により,個々人の病態に適合した治療や,生活習慣病といった加齢性疾患の発症予測が可能となることが予想される.また,これらデータの解析には,臨床的知識に加えて情報学的な知識と,その解析基盤の構築が肝要である.一方,創薬ビッグデータとしては,公的機関が取得した化合物情報や標的蛋白質情報,副作用情報など創薬に関連する膨大なデータの多くがインターネット等を通じて誰でも手に入る形で公開されている.それらの網羅的データを融合し,統計解析することで医薬品開発につながるような知見を得ることができる.また,医療ビッグデータから得られた知見を実臨床へフィードバックするだけでなく,創薬ビッグデータとつなぐことで,新薬開発への発展も期待できる.
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救急医学―現状と課題 9
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医学のあゆみ 264巻7号, 629-635 (2018);
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何かを創りあげていくうえでソフトとハードの充実が必要である.医療においてもそれは同様で,ソフトは人であり,ハードは環境である.この環境とは,医療機関内の施設整備にほかならない.1975 年,CT の登場で人体の横断像が得られるようになり画像診断は大きく進歩した.1990 年にはHelical CT が,1998 年にはMDCT が登場し,撮影時間の短縮,空間分解能の向上がはかられ,救急領域においても恰好のモダリティーへと進化した.とくに外傷患者での診断に関しては,いまや四肢骨折においてもCT 撮影を行うことをしばしば経験する.2011 年,ハードを充実させるために救急領域では世界ではじめて著者の救命救急センター外来初療室にIVR-CT が導入された.これにより患者の移動なしに初期診療,CT 検査,動脈塞栓術,ダメージコントロール手術が可能となった.診断と治療という異なる作業が同時に行える初療室という意味からHybrid ER とよんでいる(図1).本稿では,大阪急性期・総合医療センターHybrid ER での外傷初期診療,非外傷症例での経験を紹介しながら救急診療のイノベーションを記載したい.
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 264巻7号, 619-620 (2018);
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薬理学・毒性学
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医学のあゆみ 264巻7号, 620-621 (2018);
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脳神経外科学
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医学のあゆみ 264巻7号, 622-623 (2018);
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FORUM
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医学のあゆみ 264巻7号, 636-638 (2018);
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