Volume 265,
Issue 2,
2018
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特集 内分泌緊急症
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医学のあゆみ 265巻2号, 117-117 (2018);
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医学のあゆみ 265巻2号, 119-123 (2018);
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下垂体卒中とは既存の下垂体腺腫に出血または梗塞が生じ,突然に頭痛,嘔吐,視力視野,眼球運動,内分泌障害,意識障害などを引き起こす病態である.下垂体腺腫には臨床症状を伴わない不顕性の出血性梗塞が認められることがあるが,これは下垂体卒中には含めない.下垂体卒中を生じる因子には高血圧,糖尿病,心臓手術,負荷試験,抗凝固療法などがあるが,下垂体腺腫の術前検査として負荷試験を行うことで,まれに出血を生じることがあるため,注意が必要である.卒中発症時には,下垂体機能低下症による,続発性の急性副腎不全を生じることがあり,その場合は,速やかなステロイド補充が必要となる.現在は重度の視力視野障害や意識障害を認める場合を除き,通常は緊急手術の対象とはならず,症状が軽度の場合は保存的加療が選択される.そして,改善が認められない場合には手術も考慮する.視野障害,眼球運動障害は手術により早期の改善が得られること多いが,内分泌機能は手術療法と保存的療法で差を認めない.
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医学のあゆみ 265巻2号, 124-127 (2018);
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甲状腺クリーゼは,甲状腺中毒症に種々のストレスが加わって多臓器不全や生体恒常性破綻をきたす致死的状態と定義される.その発症機序は不明で,診断は臨床的症状・徴候に基づいて行われる.早期の診断と治療を要する救急疾患であり,致死率は10%以上に達する.わが国で年間約250 例が発症している.診断基準と治療アルゴリズムを含む詳細な診療ガイドラインが2017 年に作成された.この診療ガイドラインによって,甲状腺クリーゼに対する診療の質の改善が期待される.
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医学のあゆみ 265巻2号, 128-132 (2018);
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粘液水腫性昏睡は,重度の甲状腺機能低下症を基盤に発症する内分泌緊急症であり,死亡率が高い.発症頻度がまれなため,本症の臨床疫学的特徴や治療実態は十分に明らかになっていない.Diagnosis ProcedureCombination(DPC)データベースを用いた解析で,149 人の粘液水腫性昏睡患者を同定し,男女比1:2,平均年齢77 歳,在院死亡率29.5%であった.また,発症頻度は1.08/100 万人/yr と推定された.約80%の患者がL-サイロキシン(LT4)単独投与であり,LT4 とL-トリヨードサイロニン(LT3)を併用した患者は,LT4 単独投与の患者よりも相対的に低い死亡率を示した(18.2%,2 例/11 例vs. 30.0%,36 例/120 例)ものの,統計学的に有意でなかった.わが国では,国際標準の甲状腺ホルモン静注製剤が未市販という治療上の問題があり,市販化が待たれる.
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医学のあゆみ 265巻2号, 133-137 (2018);
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副腎クリーゼは,副腎皮質由来のグルココルチコイド(おもにコルチゾール)の絶対的または相対的な欠乏が起こり,適切な治療が施されずに放置されると致死的となる内分泌緊急症である.既知・未知の慢性副腎不全症患者に種々のストレス(感染,外傷など)が加わり,ステロイド需要量が増加した場合と,治療目的で長期服用中のステロイド薬が不適切に減量・中止が行われた場合の発症が多い.症状は非特異的で,とくに腹痛などの消化器症状が前面にでる場合は急性腹症と診断されることもあり,積極的に疑うことが重要である.副腎クリーゼを疑った場合は,副腎皮質刺激ホルモン(ACTH),コルチゾールの測定用検体を採取後躊躇なく治療を開始することが重要で,急性期の治療は輸液とヒドロコルチゾンの静脈内投与を基本とする.長期的には,シックデイ時の対応を含めた患者教育,過量投与を回避した適切なグルココルチコイド補充療法が重要である.
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医学のあゆみ 265巻2号, 138-142 (2018);
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褐色細胞腫・パラガングリオーマ(PPGL)の経過中にさまざまな誘因により発症する高血圧クリーゼを褐色細胞腫クリーゼとよぶ.褐色細胞腫の経過中であれば診断は比較的容易であるが,無症候性例で急激に発症した場合は診断が困難で,生命にかかわることもある.クリーゼではじめて診断される事態を避けるためにも,“PPGL 高リスク群”における早期診断を心がける必要があるとともに,高血圧クリーゼではつねに本症の可能性を考慮し,早期の適切な診断に基づく特異的治療を行う必要がある.まず即効性のα遮断薬であるフェントラミンを静注,次いで点滴静注で継続する.頻脈を合併すればβ遮断薬を併用するが,単独投与はクリーゼを増悪する可能性があり禁忌である.緊急時を脱すれば選択的α1遮断薬ドキサゾシンを経口投与する.血圧コントロールが難しい場合は,カルシウム(Ca)拮抗薬,アンジオテンシン受容体拮抗薬などを適宜併用する.適切な診断・治療例の予後は比較的良好であるが,診断・治療が遅れた場合の予後は不良である.
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医学のあゆみ 265巻2号, 143-150 (2018);
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糖尿病緊急症は,①高血糖緊急症(糖尿病ケトアシドーシスDKA,高血糖高浸透圧症候群HHS)と,②低血糖症に分類される.DKA では,高度なインスリン分泌不全と過剰なケトン体生成ならびにインスリン拮抗ホルモンの増加が,HHS では著明な高血糖に伴う高度な脱水とインスリン需要の増大が病態の形成にかかわっている.DKA の治療のポイントは,脱水や電解質を補正しながら十分量のインスリンを経静脈的に投与して,血糖値は緩やかに,ケトーシスは速やかに是正することである.血糖値が200 mg/dL 程度まで低下したらインスリン投与と並行してブドウ糖溶液を投与し,ケトーシスの速やかな改善をめざす.一方,HHS の治療のポイントは,脱水の改善と誘因の除去である.高血糖の是正に要するインスリン必要量はDKA よりも少ないのが一般的であり,補液のみで血糖値の改善がみられる場合もある.低血糖症の発症時には迅速な対応が必要であり,患者や家族に具体的な対処法を指導しておくことが重要である.
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医学のあゆみ 265巻2号, 151-156 (2018);
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高カルシウム(Ca)血症と低Ca 血症はいずれも,症候性であれば適切な緊急対応が必要な病態である.意識障害と急性腎障害の場合は高Ca 血症を,テタニーと痙攣の場合は低Ca 血症の可能性を想起することが大切である.また,低Ca 血症の原因として低マグネシウム(Mg)血症が潜在する可能性にも配慮する.
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救急医学 ― 現状と課題 14
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医学のあゆみ 265巻2号, 162-169 (2018);
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自衛隊は,有事・テロなどへの事態対処,そして国際貢献活動,大規模災害対応を任務としている.これらの任務を完遂できるように,この10 年間で衛生科は,いくつかの大きな変化を経験した.事態対処時の傷者対応として,第一線救護の世界標準であるTCCC の導入や,受傷後10 分以内の応急処置と1 時間以内の外科手術を行うことを定めた「救命ドクトリン」の宣言,そして,これに向けたダメージコントロール・リサシテーション(DCR),ダメージコントロール・サージェリー(DCS)が行える体制づくりが進行中である.また,これらの任務を完遂するうえで必要な,重症患者航空搬送用資器材であるMEDVAC(CH-47 用)やM システムなどが導入されている.さらには,防衛省メディカルコントロール(省MC)体制が確立し,第1 線救護衛生員の教育が進行中である.自衛隊病院では,いろいろな理由で行えなかった救急医療が実施できるようになり,自衛隊中央病院,自衛隊札幌病院,自衛隊福岡病院では,二次救急医療が実施されている.とくに自衛隊中央病院では,年間救急車受入れ台数が3,600 台を超えて,三次救急受入への準備がすすんでいる.伊勢志摩サミットでは,厚生労働省とのコラボレーションが実現し,VIP に対するDCS が,野外手術システムを用いて可能となるよう部外病院の救急医との協働体制が構築できた.今後は,2020 年の東京オリンピックへ向けての動きが注目される.
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Sustainable Development を目指した予防医学 4
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医学のあゆみ 265巻2号, 170-176 (2018);
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アレルギー疾患の発症には,2 型免疫反応と標的臓器の過敏性が関与すると考えられる.したがって,アレルギー疾患の予防にはこの2 つの因子を調節するアプローチの点から考えると理解しやすいと思われる.臓器過敏性を標的とするアプローチは,アトピー性皮膚炎・食物アレルギーでは皮膚バリア機能の維持ならびに早期回復,気管支喘息では受動喫煙の忌避,ウイルス感染症の予防などがある.免疫系を標的とするアプローチでは,適切な時期における食物摂取による速やかな寛容誘導が注目されている.気道アレルギーについてもアレルゲン曝露の低減化による予防の効果は少なく,今後免疫療法の普及が期待される.アレルギー疾患の発症には多くの環境因子が関与しており,sustainable で費用対効果比の高い介入方法の対象をいかに選択するかが課題である.一方,最近の研究から,食品が直接的にあるいは腸内細菌叢を介して免疫系を大きく制御しうることが明らかになっている.免疫機能を適切に調節する食事習慣はすべての人が考慮してよい.
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 265巻2号, 157-158 (2018);
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病理学
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医学のあゆみ 265巻2号, 158-159 (2018);
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糖尿病・内分泌代謝学
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医学のあゆみ 265巻2号, 160-161 (2018);
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FORUM
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NEW Choosing Wisely キャンペーンとは 1
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医学のあゆみ 265巻2号, 177-181 (2018);
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パリから見えるこの世界 67
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医学のあゆみ 265巻2号, 182-186 (2018);
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