Volume 265,
Issue 7,
2018
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特集 進化するHIV 感染症とAIDS の治療
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医学のあゆみ 265巻7号, 545-545 (2018);
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医学のあゆみ 265巻7号, 547-552 (2018);
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いまから37 年前の1981 年,世界で最初のAIDS 発症例がアメリカCDC より報告された.1983 年,AIDS の病原体が主としてヒトCD4 陽性T リンパ球を標的として,細胞傷害性を有し,逆転写酵素をもつ一本鎖RNA のレトロウイルスの一種であることが報告されるや,HIV 特有の酵素を標的にした分子標的治療薬が続々と開発された.現在では5 つのクラス,計20 種類を優に超えた治療薬が開発されている.HIV 感染症治療は,①抗HIV 薬3 剤以上を併用した多剤併用療法で開始すること,②血中ウイルス量の検出限界以下への抑制維持を目標とすること,③治療により免疫能が改善しても治療を中止しないこと,を原則としている.これらの原則に基づいた治療が功を奏し,かつて“死の病”であったHIV 感染症/AIDS は,今やコントロール可能な“慢性感染症”と再定義されるようになり,感染者の平均余命は非感染者のそれとほぼ同等となっている.
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医学のあゆみ 265巻7号, 553-556 (2018);
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HIV(AIDS ウイルス)が細胞に侵入する際に用いるレセプター(CD4 およびCCR5/CXCR4 などのケモカインレセプター),あるいはそれに結合するウイルス側のエンベロープ蛋白(gp120,gp41)を標的とした薬剤は侵入阻害薬と総称される.現在,HIV 侵入阻害薬に分類される薬剤では2 種類が臨床で用いられている.ひとつはenfuvirtide(T-20,融合阻害薬)であり,もうひとつはmaraviroc(MVC,CCR5 阻害薬)である.そのほかにCXCR4 阻害薬やgp120 を標的とした感染阻害薬もこの範疇に含まれ,研究・開発が進められている.本稿ではそれらの薬剤の特性(利点および問題点)について考えるとともに,最近の新規薬剤の開発状況についても簡単に紹介する.
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医学のあゆみ 265巻7号, 557-561 (2018);
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1981 年に世界ではじめて報告のあったAIDS は,1983 年には病原体であるHIV-1 が発見された.治療法が登場するまでこの感染症は世界に拡がり,国連合同エイズ計画(UNAIDS)によると,2016 年までにAIDS に関連する原因により世界で約3,500 万人の命が奪われたとされている.1987 年に世界ではじめて承認された抗HIV 薬であるAZT の登場以来,多くの抗HIV 薬が開発され,1997 年頃から開始された多剤併用療法は優れた臨床効果を示し,HIV 感染症は慢性疾患とよべるまでになった.HIV-1 は感染細胞での増殖能に優れ,しかも高変異性を特徴とする.このHIV の特徴を大きく形づくるのが逆転写酵素(RT)である.本稿ではRT と,今でも抗HIV 療法で重要な位置づけにあるRT 阻害薬につき概説する.
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医学のあゆみ 265巻7号, 562-566 (2018);
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インテグラーゼ阻害薬は,HIV-1 DNA が宿主染色体DNA に組み込まれるのを阻害する作用機序の抗HIV薬で,2007 年アメリカ食品医薬品局(FDA)承認のラルテグラビル(RAL),2012 年のエルビテグラビル(EVG),2013 年のドルテグラビル(DTG)が治療に用いられている.強い活性や安全性,使いやすさのゆえに,HIV 治療のキードラッグの第一選択薬として治療ガイドラインに推奨掲載されており,汎用されている.本稿では下記の点に分けて概説した.①現在承認され,市販されているインテグラーゼ阻害薬の種類,②インテグラーゼ阻害薬の作用機序,③in vitro 活性と薬剤耐性プロファイル,④臨床での安全性,有効性と薬剤耐性プロファイル,⑤臨床での用法・用量と代謝,⑥今後の進展.インテグラーゼ酵素,および酵素・ウイルスDNA・阻害薬の複合体の立体構造と複合体からの阻害薬の解離については「サイドメモ1,2」に記した.
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医学のあゆみ 265巻7号, 567-573 (2018);
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HIV-1 プロテアーゼはウイルスの複製に必須の酵素である.このことから,抗ウイルス剤として特異的な阻害薬のデザインに格好のターゲットとして,1980 年代後半よりプロテアーゼ阻害薬(PI)の開発が開始された.同時期にHIV-1 プロテアーゼの結晶構造がはじめて報告されたことが,この開発をさらに助長したのはいうまでもない.1995 年,最初のPI,サキナビルが臨床応用され,その後わずか約10 年で,10 種類(わが国では9 種類)のPIs が臨床で使用可能になった.構造学的な知見の集積と,それをもとにした化合物のデザイン・合成およびそれら化合物の評価のループは,既存の薬剤より活性が高く,かつ耐性株にも活性を維持し,薬剤耐性が著しく遅延するなどの薬剤の開発を可能にしてきた.一方で,副作用が少なく,服薬しやすいなど(サキナビルは1 日3 回,1 回当り3 錠の服薬が必要であったが,もっとも新規のPI,ダルナビルは1 日1 回1 錠の服薬ですむ),臨床面でも大きく改善がはかられた.しかし改善の余地はまだ多く,残された課題にさらに立ち向かっていかなければならない.
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医学のあゆみ 265巻7号, 574-579 (2018);
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1996 年に強力なプロテアーゼ阻害薬1 剤と逆転写酵素阻害薬2 剤を組み合わせた多剤併用療法が可能となって以降,HIV 感染者の予後は劇的に改善し,合併症のないHIV 感染者では非感染者と同等レベルの生命予後を期待できるようになった.抗HIV 薬の開発も時代とともに進んだ.2000 年代前半まではより高い抗ウイルス効果を求めて開発が進んだ一方で,それ以降はより飲みやすく,長期内服しても安全な薬剤を求めて薬剤開発が進められ,現在は,患者背景や生活スタイルに適した薬剤の選択が可能となっている.また,現時点では内服による治療が標準的であるが,1 カ月または2 カ月に1 回の筋肉注射で治療を行うことで,毎日の内服から解放されるような治療法に関しての治験が進んでいる.現在の治療の先には,HIV 感染を治癒させる治療法が期待されるものの,しばし時間がかかりそうである.本稿では,HIV 感染者が健康で長生きできるために進展してきた抗HIV 療法の変遷を臨床医の視点から解説した.
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医学のあゆみ 265巻7号, 580-584 (2018);
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逆転写酵素を阻害するジドブジンの発見により,HIV-1 感染症に対する抗ウイルス化学療法が開始されて以来,種々の逆転写酵素阻害薬,プロテアーゼ阻害薬,そしてインテグレース阻害薬がつぎつぎに開発された.その結果,作用機序の異なる薬剤を複数併用する抗レトロウイルス療法(ART)が確立したことで,薬剤耐性ウイルスの出現を抑え,感染者の血中ウイルス量を検出限界以下に維持し続けることが可能となった.さらに最近では,複数の薬剤をまとめた合剤が開発され,服薬が1 日1 回1 錠ですむようになった.このように,ART はほぼ完成の領域に達した感があるものの,より完全な治療法の確立を求めて新薬の臨床開発がいまもなお積極的に行われている.このなかには,既存の抗HIV-1 薬とは作用機序(標的分子)が異なるもの,同じ作用機序ではあるが,より強い薬効と低い毒性を有するもの,そして月に1 回程度の投与で十分な効果のある長時間作用型注射薬などがある.とくに長時間作用型注射薬については,抗HIV-1 維持療法への適用と,曝露前予防投与への道を開くものとして,大きな期待が寄せられている.
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医学のあゆみ 265巻7号, 585-595 (2018);
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抗HIV 療法の展望には2 つの方向性がある.強力な抗HIV 薬の選択肢が増え,さまざまな治療薬の組合せが登場している.そのなかでとくに注意すべきはgenetic barrierの高いdarunavir/ritonavi(r DRV/rtv)またはdolutegravi(r DTG)を key drug とした,単独または 2 剤療法という方向性である.単独療法はウイルス抑制が安定した維持療法の1 つとして試みられ,DRV/rtv では約80% で成功(ウイルス抑制継続)し,薬剤耐性変異も軽度なものであった.DTG では約90%で成功したが,一部重要な薬剤耐性が誘導された.これらをもとに,DRV/rtv+3TC またはDTG+3TC が試みられた.3TC が加わることで,両剤において95% 以上が成功し薬剤耐性が誘導されないという素晴らしい結果であった.今後の症例の積み重ねが期待される結果であった.DRV/rtv+3TC またはDTG+3TC の初回治療も検討され,症例数は少ないが期待できる結果であった.他の方向性は新薬である.DTG と構造式がほぼ同等のcabotegravir,bictegravir があらたな選択肢として使用可能となり,また認可前ではあるが新規NRTI としてEFdA も非常に期待される薬剤である.
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連載
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Sustainable Development を目指した予防医学 8
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医学のあゆみ 265巻7号, 602-606 (2018);
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誰もが“いつまでも元気に暮らしたい”と考えている.病気やけがを避けること,すなわち予防はいつの時代も大きなテーマであった.経験論から統計学により効果のある薬剤を選択することで医学は飛躍的に発展した.そして統計学は予防も科学の領域とすることに成功したが,長期間の観察を要する一次予防や0 次予防ではようやくエビデンスを整え,効果を発揮できる時代になりつつある.千葉大学では個人と医療介護機関が情報を共有するシステムとしてSHACHI を開発し,そこに蓄えられたデータを予防医学のエビデンスとして使っていくSHACHI-Brain を完成し,運用をはじめたところである.近年,急速に実用化が進められているAI を用いて,SHACHI-Brain のデータを活用できる環境を完成した.
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移行期医療 ― 成人に達する/ 達した患者への医療
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医学のあゆみ 265巻7号, 607-607 (2018);
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医学のあゆみ 265巻7号, 609-613 (2018);
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◎医療の著しい進歩により,重症疾患や難病の子どもが長期間生存することができるようになった.小児がん全体の子どもの5 年生存率は8 割を超えている.先進諸国では,慢性的に身体・発達・行動・精神状態に障害をもち何らかの医療や支援が必要な思春期の子どもや青年が同年代の1 割以上を占め,共通の課題となっている.わが国では一定程度以上の重症度を示す慢性疾患をもつ子どもと家族への支援事業として,小児慢性特定疾患治療研究事業が行われてきた.また,日本小児科学会は厚生労働省研究班と協力して,疾患群や疾患ごとの移行医療プログラムを作成中である.本稿では,慢性疾患をもつ子どもや青年の移行期医療の課題と解決に向けた今後の取組みを示す.移行問題は小児期発症の慢性疾患をもつ青年・成人患者と家族に最適の医療を提供するために生じる現在の課題であり,移行期に受ける医療の最終的な決定権は患者側にあることを忘れてはならない.
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TOPICS
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免疫学
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医学のあゆみ 265巻7号, 597-598 (2018);
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腎臓内科学
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医学のあゆみ 265巻7号, 598-599 (2018);
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細菌学・ウイルス学
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医学のあゆみ 265巻7号, 600-601 (2018);
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FORUM
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Choosing Wisely キャンペーンとは 5
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医学のあゆみ 265巻7号, 614-616 (2018);
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医療社会学の冒険 2
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医学のあゆみ 265巻7号, 617-621 (2018);
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