Volume 265,
Issue 9,
2018
-
【6月第1土曜特集】 アレルギー研究最前線
-
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 703-703 (2018);
View Description
Hide Description
-
基礎研究の最前線Ⅰ:T 細胞,自然リンパ球
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 707-712 (2018);
View Description
Hide Description
アレルギー性疾患は全世界で患者数が増加傾向にあり,病態の解明とその制御が喫緊の課題である.アレルギー性疾患のなかでもアレルギー性気道炎症は,マウスを用いた疾患モデルが確立しており,精力的な基礎研究が行われている疾患のひとつである.近年の研究から,ヘルパーT 細胞の多様性や可塑性が疾患の病態形成に深く関与していることが明らかになった.さらに,2 型免疫応答を誘導するあらたな細胞集団として2 型自然リンパ球(ILC2)が同定された.また,単なる物理的バリアとして考えられていた粘膜上皮細胞が,“上皮サイトカイン”を発現することで積極的に2 型免疫応答誘導に関与していることが明らかになるなど,アレルギー性疾患の病態解析は日進月歩で発展している.本稿では,著者らの研究室で精力的に研究を行っている記憶型病原性Th2(Tpath2)細胞に焦点を当て,同細胞集団が慢性アレルギー性気道炎症の病態形成にどのように関与しているかを概説する.さらに,上皮サイトカインの一種であるIL-33 と記憶T 細胞のクロストークによる気道炎症病態形成機構について紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 713-718 (2018);
View Description
Hide Description
IL-4 はB 細胞に作用してIgG1 とIgE 抗体産生を誘導する重要なサイトカインであり,Ⅰ型アレルギーはIgE 抗体によって制御されている炎症性免疫反応である.2 型ヘルパーT 細胞(TH2)は,アレルギー炎症にかかわるサイトカインIL-4,IL-5,IL-13 を産生するT 細胞サブセットとして,アレルギー病態の形成にかかわるとともに,IgE 抗体の産生を制御するIL-4 の産生源はTH2 と考えられていた.ところが,IgE 抗体もIgG1 抗体と同様,抗体産生に特化した役割をもつヘルパーT 細胞サブセット,濾胞性ヘルパーT 細胞(TFH細胞)がその制御にかかわることが明らかにされるにつれ,IgE 抗体産生におけるTH2 の関与はないと考えられるようになった.その一方で,TFHはTH2 から分化する,あるいはTH2 はTFHから分化するという論議もなされており,TFHとTH2 の関係は不明な点が多い.そこで本稿では,アレルギー反応やIgE 抗体産生におけるTFHとTH2 の関係を論議していきたい.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 719-723 (2018);
View Description
Hide Description
CD69 分子はC-タイプレクチンファミリーに属する膜型糖蛋白質であり,白血球の活性化マーカーとして知られてきた分子である1-3).ヒトの喘息や好酸球性肺炎患者の肺組織においてはCD69 発現細胞が多く存在することが古くから報告されており,CD69 分子の発現と肺・気道炎症との関連が示唆されてきた3).また,著者らはCD69 分子は単なる活性化マーカーではなく,機能分子であることを数多くのマウス実験で証明し報告してきた3-7).しかし,「CD69 分子が活性化白血球の単なるマーカーではなく特別な機能を有する分子である」との知見はようやく認識されるようになってきたにすぎない.本稿では,CD69 が単なる活性化マーカーではなく,機能分子として働いていることを示すデータを紹介するとともに,その作用機序,臨床応用を含めた今後の展望について概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 724-728 (2018);
View Description
Hide Description
制御性T 細胞(Treg)は,アレルギー(2 型免疫応答)を含むさまざまな免疫応答を抑制することで生体の恒常性維持に寄与している.近年,Th2 反応を選択的に抑制するTreg サブセットが存在し,それらはTh2細胞分化に必須の転写制御機構を利用することでTh2 反応を抑制することが明らかにされた.また,粘膜組織においては無害な環境由来抗原によって誘導されるTreg がTh2 反応制御に重要である一方,アレルゲンに対しては抗原特異的Treg が誘導されず,このことがヒトのアレルギー疾患の発症に寄与することが示唆された.一方で,2 型炎症環境下においてはTreg がIL-4 を産生するTh2 様細胞にリプログラムされて炎症を促進するという報告もなされ,アレルギー疾患におけるTreg の多面的な役割が注目されている.本稿では,これら最近の知見について概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 729-735 (2018);
View Description
Hide Description
細胞がアポトーシスに陥ると,細胞膜を構成するリン脂質の分布が変化し,それまで細胞膜の内側に存在していたホスファチジルセリン(PS)が細胞膜の外側に表出する.PS を表出するようになった細胞は,アポトーシス細胞として免疫細胞に速やかに貪食される.粘膜上皮組織では,細胞のターンオーバーが盛んに行われており,アポトーシス細胞は“垢”として体外に排出されることで,生体の恒常性を保っている.本研究を通して著者らは,粘膜組織で発生したアポトーシス細胞が単に貪食されるためだけの存在ではなく,制御性T 細胞を調節して免疫応答をコントロールしていることを明らかにした.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 736-742 (2018);
View Description
Hide Description
制御性T 細胞(Tregs)は免疫寛容の中心的な役割を担っている.とくにナイーブT 細胞から誘導される末梢性Treg(pTreg)は消化管に多く,経口免疫寛容や食物アレルギーの抑制に関与すると考えられている.一方でTregs は過剰な免疫応答を抑えるツールとして,免疫疾患における養子移入療法への適用が期待されている.試験管内において抗原特異的に誘導された誘導性Treg(iTreg)を自己免疫疾患,アレルギー疾患の治療あるいは移植臓器への寛容に用いることが試みられている.しかしiTreg は胸腺由来Treg(tTreg)に比べFoxp3 発現が不安定であることが知られており,臨床における安全で有効的な養子免疫療法の確立のために,安定的なiTreg を作製する方法を確立する必要がある.著者らはDNA 脱メチル化酵素TET の発現を増強することでFoxp3 遺伝子座のエピジェネティック変化を誘導しiTreg を安定化する方法を開発した.この手法により移植片対宿主病(GVHD)のような重篤な炎症性疾患も制御できることが示された.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 743-748 (2018);
View Description
Hide Description
「国民の約半数がなんらかのアレルギーをもつ」といわれるほど大きな社会問題となっているアレルギー性疾患は治療満足度が低く,病態形成機構のさらなる理解と根治療法の創出が望まれている.著者らのグループが2010 年に2 型自然リンパ球(ILC2)を抗原刺激に依存せずに多量の2 型サイトカインを産生する新規の免疫細胞として報告して1)から約8 年が経過しようとしている.その間,ILC2 はこれまでTh2 細胞だけでは理解が難しかった病態形成機構に対する矛盾や疑問を解く細胞として精力的に研究されてきた.現在ではILC2 は多様なアレルギーモデルにおいて,Th2 細胞同様に病態形成の主体となりうることが明らかになっており,ILC2 の過剰な活性化を抑制することがアレルギー性疾患の治療や発症予防につながるのではないかと期待されている.本稿では,これまでに示されてきたILC2 の活性化機構やその性質について概説した後に,その抑制機構についても最近の知見を紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 749-754 (2018);
View Description
Hide Description
肥満細胞は気道や腸管の粘膜下,または皮膚などおもに外界と接触する組織に存在している骨髄由来の細胞であり,寄生虫や細菌感染では防御的に働くが,一方で多くのアレルギーの原因となることが知られている.2 型自然リンパ球(ILC2)もまた,寄生虫感染では防御的に働くが,活性化しすぎるとアレルギー反応を重症化・慢性化させることが示唆されている.肥満細胞もILC2 もアレルギー発症の要因となり,それらの活性化をいかに制御するかがアレルギー治療への鍵となる.本稿では,まずアレルギー反応における肥満細胞やILC2 の役割について概要を述べ,近年明らかにされた肥満細胞によるILC2 の活性化を介した寄生虫感染に対する新規防御メカニズムを述べる.さらには,このメカニズムを利用したアレルギー反応に対する新規治療法確立の可能性についても考察したい.
-
基礎研究の最前線Ⅱ:上皮細胞,炎症細胞など
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 757-761 (2018);
View Description
Hide Description
気管支喘息は気道を場とした慢性アレルギー疾患であり,有病率が高く,その社会・経済的損失はきわめて大きい.病態の主座である気道は,吸入される環境因子につねに曝されており,実際に複数の疫学研究によりアレルゲン,大気汚染物質などの環境因子が喘息の発症・増悪に関与することが明らかにされた.さらに近年の基礎研究により,これらの環境因子は気道上皮細胞や樹状細胞を介して,喘息の病態形成に影響を及ぼすことが示された.気道上皮細胞は,細胞表面に発現する多くの自然免疫系受容体で環境因子を感知し,サイトカインやケモカインを産生することにより,喘息の病態形成に深く関与する.産生された上皮由来サイトカインは樹状細胞や2 型自然リンパ球(ILC2)とのクロストークを介してTh2 細胞分化を促進する.本稿では,近年明らかとなった気道上皮細胞や樹状細胞による環境因子認識機構を中心に概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 762-766 (2018);
View Description
Hide Description
IgE はⅠ型アレルギー反応を誘導し,寄生虫や毒素に対する防御応答に重要な抗体である.その一方で,過度なIgE 産生および環境中の無害な抗原に対する異常なIgE 産生は,アレルギー性の喘息,鼻炎,皮膚炎,そしてアナフィラキシーショックの原因となる.したがって,IgE 産生は厳密に制御される必要がある.近年,IgE の産生源であるIgE+ B 細胞の体内動態が詳細に解析され,IgE+ B 細胞は通常,長期生存する記憶細胞(メモリーB 細胞と長期生存プラズマ細胞)には分化しないという変わった性質をもつことが明らかにされた.さらに,IgE+ B 細胞が発現する抗原受容体である膜型IgE が,抗原非存在下に自発的なシグナル伝達を誘導することで,B 細胞の短命化を進めてIgE 産生を抑制することが明らかとなってきた.本稿では,この膜型IgE によるIgE 産生の制御メカニズムを解説し,アレルギー発症とのかかわりを紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 767-772 (2018);
View Description
Hide Description
これまで好塩基球はその希少性やマスト細胞との類似性から,しばしば免疫学領域における研究対象から除外されてきた.しかし近年,好塩基球除去抗体や好塩基球欠損マウスなど研究ツールの急速な発展により,好塩基球が各種病態においてマスト細胞とは異なるユニークかつ重要な役割を果たすことが明らかとなった.現在では,好塩基球はアレルギー,感染症,自己免疫疾患などさまざまな病態を誘導・制御するキープレイヤー的存在として位置づけられている.本稿ではとくにアレルギーに焦点を当て,ヒト疾患とマウスモデルから得られた最近の知見を紹介し,皮膚,気道,消化管などの各種臓器組織,またアナフィラキシーなど全身性のアレルギー炎症病態において好塩基球が果たす多彩かつ重要な役割を概説したい.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 773-778 (2018);
View Description
Hide Description
マスト細胞はアレルギー応答に中心的にかかわる免疫細胞のひとつであり,その機能は多くの生体内分子により巧みに調節されている.本稿では,マスト細胞の制御にかかわる分子として,脂質メディエーターとその動員酵素であるホスホリパーゼA2(PLA2)を取りあげる.著者らを中心としたPLA2分子群の欠損マウスの包括的解析を通じて,マスト細胞に発現している複数のPLA2が,それぞれ固有の脂質代謝を動かすことによってアレルギー応答を多様に制御することが明らかとなってきた.本稿では,PLA2によって始動する脂質代謝によるアレルギーの制御機構について,マスト細胞をキーワードとしてこれまでの報告を整理してみたい.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 779-784 (2018);
View Description
Hide Description
近年,アレルギー性疾患の患者数は増加傾向にある.とくに先進国においてこの傾向が顕著であることから,環境要因の関与が示唆されている.最近では大気中の微細粒子である黄砂やPM2.5 のアレルギー性炎症の発症や増悪への関与が取りざたされているが,疫学的な研究からも,大気中の微細粒子の増加がアレルギー性炎症の発症と増悪に関与することが報告されている.マウスを用いた基礎研究から,このような微細粒子は免疫系を刺激するアジュバントとして機能し,好酸球の活性化やIgE 誘導を促進すると考えられている.しかし,どのような機序で微細粒子が免疫系を刺激し,さらにどのような因子がアレルギー性の免疫応答を惹起するのかについては詳細には明らかにされていない.本稿では,微細粒子吸入により誘導される肺特異的な免疫応答について,著者らの知見を含め紹介したい.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 785-788 (2018);
View Description
Hide Description
腸内細菌叢の変化が宿主の健康・疾患とかかわることが多くの研究により明らかにされている.腸内細菌叢の異常は,炎症性腸疾患のような腸管に異常をきたす疾患だけでなく,関節リウマチ,多発性硬化症,糖尿病など数多くの疾患との関与が示唆されている.本稿では,アレルギー疾患・気管支喘息の発症における腸内細菌叢の役割についておもに概説する.帝王切開か経腟分娩か,抗生物質の使用の有無,居住環境などいくつかの因子が腸内細菌叢の変化に影響を与え,アレルギーの病態に関与するとされている.とりわけ,出生直後の腸内細菌叢の変化がその後の獲得免疫系やアレルギー疾患の発症に影響を与えるとされ,本稿ではヒトおよびマウスにおける最新の知見を交え説明する.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 789-792 (2018);
View Description
Hide Description
概日リズム(サーカディアンリズム;circadian rhythms)とは,地球の自転に基づくさまざまな環境変化に合わせて種々の生理活動(睡眠・覚醒行動,血圧,体温,自律神経活動,ホルモン分泌など)が約24 時間周期で変化する現象である(Circadian:ギリシャ語でCir-はおおよそ,Dian-は1 日という意味).たとえばコルチゾールは,毎日,休息期後半(ヒトでは早朝)にモーニングサージとよばれる血中濃度の著明な上昇をきたし,細胞の代謝を活性化し日中の活動に備えさせる.このように概日リズムは,光や気温,捕食者の活動など日々の周期的な環境変化に対応してわれわれの生理活動を最適化し,限られたリソース(エネルギー)を有効に使うため進化の過程で生み出されたと考えられている.この概日リズムを生みだす仕組みが概日時計である.著者らは,概日時計がマスト細胞の活性化制御に深く関与していることを見出した.本稿ではそれらの成果について紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 793-797 (2018);
View Description
Hide Description
アレルギー疾患および関連形質において,多様な人種の集団を用いた大規模なGWAS メタ解析が行われ,多くの関連領域および遺伝子が同定されている.また,発現情報やエピジェネティクスのデータベースを用いたそれらの機能解析も行われている.2017 年に報告された気管支喘息,アレルギー性鼻炎,アトピー性皮膚炎の大規模メタ解析では,49 カ所の新規の関連領域が同定され,関連バリアントは,Th17,Th1,Th2,制御性T 細胞,CD4+CD8+ memory T 細胞,NK 細胞,B 細胞に特異的な調節領域により多く存在していることが示された.さらに,6 つの候補遺伝子(CD86,CCR7,F11R,PHF5A,RGS14,TARS2)については,薬剤のリポジショニングの可能性も示唆された.今後,ゲノム情報に加え,トランスクリプトーム,エピゲノム,マイクロバイオーム情報を活用することによりアレルギー疾患の治療の最適化と予防が進むことが期待される.
-
アレルギー疾患研究,臨床研究
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 801-805 (2018);
View Description
Hide Description
上気道におけるアレルギー疾患の患者数は増加しており,アレルギー性鼻炎に至っては国民の40%近くが罹患しているといわれている.好酸球性副鼻腔炎は上気道アレルギー性疾患の代表的な疾患であるが,手術後も再発が多くステロイドの使用頻度が増加し治療に難渋することがある.著者らは特異的な機能をもつ病原性Th2 細胞がアレルギー性鼻炎の発症や好酸球性副鼻腔炎の病勢に関与している可能性を見出した.その特徴としてはメモリーCD4 T 細胞におけるIL-25 やIL-33 の受容体の発現が重要であり,有病者はそのサイトカインに反応して多量のIL-5 産生を認める.病原性Th2 細胞は抗原特異的免疫療法の効果とのかかわりも示唆されており,新規治療法やバイオマーカーへの応用も期待される.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 806-811 (2018);
View Description
Hide Description
ペリオスチンは,細胞外マトリックス蛋白質とマトリセルラー蛋白質としての二面性を持った蛋白質である.ペリオスチンの,とくにマトリセルラー蛋白質としての特性が,アレルギー炎症の発症機序において重要や役割を果たしていることが明らかとなっている.また,ペリオスチンは,アレルギー疾患における2 型炎症とリモデリングを反映するバイオマーカーとしても注目されている.成人喘息では,①2 型炎症反応とリモデリングを反映するバイオマーカー,②吸入ステロイド剤(ICS)に対する抵抗性を示すバイオマーカー,③IL-4/IL-13 拮抗薬をはじめとする2 型炎症反応阻害薬の有効性を示すバイオマーカー,としての特徴をもっている.さらに,喘息以外でもアトピー性皮膚炎,副鼻腔炎,アレルギー性結膜炎におけるバイオマーカーとしての可能性が示されており,臨床における有用性が現在検討されている.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 812-817 (2018);
View Description
Hide Description
皮膚角層の蛋白質であるフィラグリンの遺伝子変異がアトピー性皮膚炎の発症因子として報告されて以降,アトピー皮膚炎における表皮バリア機能の重要性が認知され,表皮バリアの機能異常により外来抗原の生体内への透過性が亢進する結果,経皮感作が成立し,アレルギーマーチの発症起点となっているとの仮説が立てられた.小児において保湿剤の外用がアトピー性皮膚炎の発症が抑制された報告はこの仮説を指示する一方,さまざまな基礎研究や疫学調査から,バリア障害だけでは皮膚炎の発症に至らないことも明らかになり,免疫異常や細菌叢,痒みや多様な遺伝的背景,生活歴などがバリア障害と密接にかかわりながらアトピー性皮膚炎の病態を形成することが明らかになりつつある.本稿では,バリア異常を中心に,その他の多様な因子のかかわりについて,最新の知見を概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 818-821 (2018);
View Description
Hide Description
皮膚科領域でも生物学的抗体製剤を用いた治療法が花盛りである.2010 年に乾癬の治療薬として登場したインフリキシマブ,アダリムマブは重症乾癬患者のquality of life(QOL)を大きく変えた.また,悪性黒色腫に対しても2014 年にニボルマブ,2015 年にイピリムマブ,2017 年にペムブロリズマブがつぎつぎと認可され,根治切除不可能な患者の予後が大きく改善された.このように生物学的抗体製剤は強い薬効をもち,対象となる疾患の治療,予後にパラダイムシフトをもたらしてきた.2018 年,アトピー性皮膚炎を対象とした生物学的製剤の第一号としてデュピルマブが認可された.今後も続々とアトピー性皮膚炎を対象とした生物学的製剤の治験が進んでおり,その登場はいまや目前となっている.本稿では,その現状についてまとめる.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 822-826 (2018);
View Description
Hide Description
鶏卵アレルギーの発症予防に関して,かつては授乳中の母親の摂取回避や離乳食での鶏卵摂取開始を遅らせるなどの対策が推奨されたが,ランダム化比較試験のシステマティックレビューでは効果がないことがわかった.逆に,アトピー性皮膚炎などの湿疹がある患者では,離乳期に鶏卵摂取を遅らせると経皮感作を受ける時間が長くなり,鶏卵アレルギーに罹患する危険性が高まる.そこで,離乳期早期に鶏卵摂取を開始することで鶏卵アレルギーの発症率を低下させることを実証するため複数のランダム化比較試験が行われた.安全にその効果を実証できたのは日本のPETIT 研究だけであったが,多くの研究から明らかになってきた鶏卵アレルギー予防の戦略は,早期摂取が望ましいが,大量に与えることは危険で微量から開始することである.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 827-831 (2018);
View Description
Hide Description
アルテルナリア,クラドスポリウム,ペニシリウム,アスペルギルスなどの空中浮遊真菌は,吸入アレルゲンとして喘息の発症・重症化にかかわるとされる.さらに皮膚あるいは粘膜の常在真菌であるカンジダ,マラセチア,トリコフィトンなども感作アレルゲンとなる.これらの真菌に感作されている比率は重症喘息患者で高く,また真菌胞子飛散数と喘息の増悪にも関連がみられるなど,真菌が喘息の重症化にかかわっていることが示唆されている.その背景にはIgE 依存性の機序だけでなく,真菌由来のプロテアーゼやβグルカンなどがpathogen-associated molecular pattern(PAMP)として作用し,気道炎症や気道過敏性亢進をきたすなどの機序も関与する.
-
Source:
医学のあゆみ 265巻9号, 832-837 (2018);
View Description
Hide Description
EGPA は重症喘息の約3%に合併し,通院中の中年以降の喘息患者の約0.6%に認める.好酸球性副鼻腔炎と重症喘息が先行し,著明な好酸球増多と全身の虚血症状で発症する.発症要因は不明であるが,一部ではワクチンとの関連が疑われている.ステロイドとシクロホスファミドの併用が治療の基本であるが,末梢神経障害や心障害にはIVIG 治療が奏効する,抗IL-5 治療が増悪を抑制しステロイド減量も示すことから,Mepolizumab が2018 年内には保険適応となる予定である.