Volume 266,
Issue 3,
2018
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特集 小児在宅医療の現状と展望
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医学のあゆみ 266巻3号, 189-189 (2018);
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医学のあゆみ 266巻3号, 191-195 (2018);
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医療的ケアを要する子どもたちと家族への支援は,地方自治体の障がい児者支援施策における大きなテーマのひとつであるが,支援体制づくりはまだ緒についたばかりである.岐阜県ではこれを“障がい児者医療”と称して重点政策とし,大学における寄附講座や独自の看護師育成研修,多職種連携をめざした小児在宅医療研究会,家族支援のための在宅支援センターの設置,医療型短期入所事業所の拡大支援などを打ち出している.また飛騨市では,レスパイト利用のための独自の助成制度や医療的ケアの必要な方の職員としての雇用などに取り組んでいる.障がい児者医療,小児在宅医療を進めるうえでは,医療,福祉,教育,行政が連携し,障がい児者と家族の生活全体を“支える”必要がある.今後,全国の地方自治体がその政策を進めるうえでは,職員や首長が現場を見て,在宅生活全体をイメージし,障がい児や家族を支える意識をもつことが不可欠である.
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医学のあゆみ 266巻3号, 196-200 (2018);
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在宅療養に移行した小児についても,“地域包括ケアシステム”としてその受入れ体制の充実をはかっていく必要があるが,各地域医師会としての小児在宅ケアに関する取組みは,全体として十分整備されていない現状にある.日本医師会では,平成28 年度(2016)より小児在宅ケア検討委員会を設置し,小児の在宅医療体制の整備に向けた医師会の役割について検討を進めるとともに,平成29 年度(2017)には“都道府県医師会小児在宅ケア担当理事連絡協議会”を開催し,各地域で小児在宅ケアに対する取組みを進めていただくよう要請したところである.地域医師会の役割としてとくに重要なのは,都道府県や市町村に設置される“医療的ケア児支援のための協議の場”に参画し,医療関係部署だけでなく保健・福祉・保育・教育関係部署や,他の団体とも連携して協議を進め,地域の体制を整えていくことである.医師会の先進的事例として,大阪府医師会と愛知県瀬戸旭医師会の取組みを紹介する(「サイドメモ1,2」参照).
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医学のあゆみ 266巻3号, 201-204 (2018);
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小児科領域においても医療技術の進歩により,致死的な病態と思われた疾患の救命率が非常に高くなっている.なかには,救命はされたがさまざまな機能障害をもち,医療依存度が高く継続的にケアを受けなければならない小児も存在する.その数は増加傾向にあり,同時に入院の長期化が問題となってきた.そのため,医療ケアの必要な小児の地域在宅移行が急速に進んでいる.しかし,高齢者と比較し疾患は多様で医療ケアが多く,重度であるため介護度が高い.また制度や地域の体制が未成熟のため支援や連携が十分ではなく,需要に対し在宅医療とサービスが追いついていない実態がある.とくに小児の在宅診療を担う医療機関,訪問看護ステーションが少なく,人材の養成と参加が課題である,生活の質を担保する介護などの福祉サービス,保育・教育に対する配慮も不十分である.在宅生活を持続させるためには医療,福祉,教育の連携が重要であるが,連携のためのコーディネーターが不在で,その養成が急務となっている.
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医学のあゆみ 266巻3号, 205-210 (2018);
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小児在宅医療の課題について二次医療機関小児科の立場から論じた.三次医療機関から直接退院して在宅医療を開始した場合には,地域の医療資源や福祉資源などとの連携が十分にとられていないことが多く,地域において子どもとその家族が孤立することがある.その解決策として,地域の二次医療機関に転院してから退院して在宅医療を開始する仕組みが診療報酬で示されている.しかし,その仕組みの理解が十分とはいえない.この課題解決のためには,新小児科専門医制度における研修カリキュラムの到達目標の変更が必要である.
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医学のあゆみ 266巻3号, 211-217 (2018);
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平成30 年度(2018)の報酬改定では,医療・福祉領域において,医療的ケア児などへの支援体制づくりに向けた改定が多くなされた.それを踏まえ今後は,子どもの健康管理をICF モデルの視点で実践できる看護職,医療的ケア児などへ対応できる相談支援専門員・ケアワーカーを,全国で標準化された研修プログラムで育成すること,未経験な相談支援専門員に対し助言・相談対応ができる支援体制の構築が期待される.また,医療的ケア児などの在宅の仕組みづくりには,市町村,都道府県の関与が重要であり,あらたな社会資源の創出のために各都道府県で,医師・看護師・相談員を中心としたコンサルテーションチームを育成することが必要となる.このたびの改定は,こうした医療的ケア児などと家族が地域で暮らしやすくなるよう,社会資源を創出するための人材育成の仕組みを後押しする内容となっている.医療的ケア児などへの支援体制づくりのリーダーは,医師である.そのため,医師が看護職,福祉職の現状と課題を理解し,各地域で体制を構築することが期待される.
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医学のあゆみ 266巻3号, 219-224 (2018);
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緩和ケアとは“生命の危機に直面する疾患をもつ患者と家族のLife を支えること”にある.具体的には疾患の治療と並行してその子が抱えるつらさの評価とマネージメントを行い,これからの生活・人生を見据えたなかでその子がどのように生きていくことが幸せかを一緒に考えることである.日本では19 歳未満のがん患者のうちホスピスで死亡するのは1.3%にとどまっており,成人の11.6%と比較すると1/10 であり,最期の療養場所として病院以外の選択肢としての在宅は小児領域ではとくに重要であるといえる.在宅における緩和ケアにおいては,疾患別の特徴を踏まえてかかわることが重要である.また意思決定においては,患者家族の病状認識の確認と同時に,予後も含めた今後の見通しを関係者で共有し進めていくことが大切になる.
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医学のあゆみ 266巻3号, 225-230 (2018);
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ヘルスケアにおけるこれまでの“地域包括ケア”から,社会のあり方まで含めた“地域共生社会”へのパラダイム転換が進められている.小児領域においては,2016 年5 月の児童福祉法改正によって保健・医療・福祉・教育・保育等の関連機関の連携による“医療的ケア児”支援の必要性が明文化され,対象年齢によらない地域包括ケアの普遍化や,社会のあり方まで含めたパラダイム転換が先んじて行われていた.一方で欧米各国においては,疾病・障害・喪失・死といった否定的にとらえられがちな要素を契機として,“生老病死を地域住民の手に取り戻す”ことを目的としたCompassionate communities(思いやりに満ちた社会)という活動が,緩和ケアと公衆衛生を組み合わせた概念を背景として徐々に広がりを見せている.制度・分野ごとの縦割りを超え,地域住民や地域の多様な主体が医療的ケア児の課題についても“我が事”として“丸ごと”つながっていくことができるかどうかが問われており,その意味で医療的ケア児は“地域共生社会への水先案内人”であるといえよう.
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連載
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Sustainable Development を目指した予防医学 14
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医学のあゆみ 266巻3号, 237-242 (2018);
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インターフェロンフリー経口抗ウイルス薬によるDAA(Direct Acting Antivirals)療法は飛躍的に向上し,最新のパンジェノ型経口抗ウイルス薬グレカプレビル/ピブレンタスビル配合錠剤では1~6 型すべてに適応でき,初回治療例・既治療例ともにほぼ100%でHCV 排除が可能と報告されたが,治療不成功となった場合には難治な耐性変異が出現する可能性が危惧されている.著者らは,初期DAA のダクラタスビル+アスナプレビル併用療法でのHCV 排除不成功例(non-SVR)について薬剤耐性と強く関わるNS3~NS5 の約3 kb の領域に生じる変異を検出するため,中央値(N50)20 kb,最長40 kb 強のlong read が可能な次世代シーケンサーPacBioRSⅡで,血液試料中に混在する複数の変異株のNS3~NS5 領域を,1 分子ずつの塩基配列を繰り返しリードすることで高精度な塩基配列を取得し,薬剤耐性変異を調べることに成功した.その結果,無効例では本療法前にサンガ法では検出できない割合の変異株Y93H が混在する,あるいは検出できない状況から,投薬後にはほぼすべてに同変異が獲得されていることを明らかにした.同時にL31M/V/F/I,D168V/E/A なども投薬により排除されることはなく,症例によってはあらたな変異として獲得するなど,代表的な変異は投薬後に(MiSeq やIon Proton のようなshort read 型次世代シーケンサーでは同定の難しい)同じハプロタイプ上に存在することを確認し,薬剤非感受性変異株の増殖のみならず,あらたな変異獲得と組み合わせて多剤耐性となっていることを推察した.詳細はTakeda らの報告に記載されているが,本稿では次世代シーケンサーの原理に沿って解説し,本手法が耐性株出現のモニターに適した方法であることを提言したいと考えている.
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移行期医療―成人に達する/達した患者への医療 7
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医学のあゆみ 266巻3号, 243-248 (2018);
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◎原発性免疫不全症は免疫系に関与する分子異常による免疫異常症の総称である.330 以上の疾患を内包し,幼少時期より易感染性を呈することが多いが,自己免疫や自己炎症を主体とする疾患,成人期に明らかになる疾患も増え,またさまざまな専門領域の疾患を合併することも多い.社会経済的な問題や,精神的問題を抱えることも多い.移行期医療にあたっては,たとえば中学生から,など時期を決めて小児科・内科・関連診療科が併診にあたることが必要であり,また成人に達しても小児科免疫不全専門医が,診療支援にあたることが大切である.入院管理が必要な場合や,成人疾患の合併への配慮と治療など,内科間での連携が必要なことに加え,地域の一般内科医や,医療ソーシャルワーカー(MSW)も加わった重層的な診療連携体制が望まれる.医療の進歩から成人期を越える患者が多くなるなか,全生涯医療の実現が望まれる領域である.
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速報
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医学のあゆみ 266巻3号, 249-250 (2018);
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TOPICS
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膠原病・リウマチ学
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医学のあゆみ 266巻3号, 231-232 (2018);
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神経内科学
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医学のあゆみ 266巻3号, 233-234 (2018);
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神経科学
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医学のあゆみ 266巻3号, 234-236 (2018);
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FORUM
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Choosing Wisely キャンペーンとは 11
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医学のあゆみ 266巻3号, 251-253 (2018);
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検査部門においてChoosing Wisely が難しいのは,検査を行うとかならず“何らかの”メリットが得られる,という点であろう.画像検査は,適切なモダリティとプロトコールで良好な画質で撮影されているかぎり,異常がなかった場合は“正常であるという情報”が,前回と同じ所見であった場合は“変化がないという情報”が得られ,このような情報が得られることは間違いなく検査のメリットである.ただし,“そのメリットは検査に伴うデメリットに見合うだけの価値があるかどうか”という点に関しては,すべての画像検査が“YES”になるわけではないことが重要であり,画像検査のChoosing Wisely のポイントとなる.本稿では,医療行為のメリットとデメリットを認識し,メリットがデメリットを上まわる画像検査,すなわち“高価値(high-value)”な画像検査を賢く選択していくことに関する,世界の潮流を紹介し,日本に関する考察を行いたい.