Volume 266,
Issue 4,
2018
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特集 SGLT2 阻害薬による可能性を探る
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医学のあゆみ 266巻4号, 255-255 (2018);
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医学のあゆみ 266巻4号, 257-259 (2018);
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糖尿病状態で膵β細胞が慢性的に高血糖に曝されると,元より存在するインスリン生合成不足および分泌不全が助長され,血糖コントロールはさらに不良となる.こうした悪循環は“膵β細胞のブドウ糖毒性”とよばれ,臨床的にも広く知られている.経口血糖降下剤ナトリウム/グルコース共役輸送担体SGLT2 阻害薬はまさにこの高血糖毒性を解除する薬剤である.SGLT2 は腎臓の近位尿細管の上皮細胞尿細腔面に特異的に存在し,腎でのグルコース再吸収においてきわめて重要であるが,SGLT2 阻害薬は膵β細胞に負担を掛けることなく空腹時および食後血糖値を低下させ,これにともなって高血糖毒性が解除され,膵β細胞機能およびインスリン感受性の改善が認められる.
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医学のあゆみ 266巻4号, 260-263 (2018);
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SGLT2 阻害薬は,血糖改善や体重減少に加えて,大血管障害や脂肪肝などに対する改善効果も明らかになりつつあるが,神経系に対する作用も報告されている.ラットに高脂肪食負荷を行うと認知機能障害も誘発されるが,SGLT2 阻害薬の投与によりその改善が報告されている.また,高脂肪食負荷で惹起された迷走神経節や視床下部での炎症に対して,SGLT2 阻害薬はおそらく高血糖改善や糖毒性の解除を介して間接的に軽減している.糖尿病モデルラットで低下した末梢神経伝導速度をSGLT2 阻害薬が改善した研究も報告されている.心不全合併糖尿病症例における心臓交感神経の過活動がSGLT2 阻害薬開始後に改善した症例報告もある.以上のように,SGLT2 阻害薬は神経系にもさまざまな作用をもつ可能性があるが,ヒトのデータは少なく今後のさらなる検討がまたれる.
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医学のあゆみ 266巻4号, 264-268 (2018);
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EMPA-REG OUTCOME 試験やCANVAS Program が公表されてから,SGLT2 阻害薬は2 型糖尿病患者において心血管イベントを抑制することが明らかとなった.SGLT2 阻害薬は,近位尿細管にてグルコース再吸収を抑制することにより血糖降下作用を発揮するが,そのほかにも,浸透圧利尿やナトリウム利尿を介した体重減少・降圧効果・脂質改善・尿酸低下作用などがある.これらの多面的効果が複合的に作用して心血管保護効果につながると考えられる.また近年,SGLT2 阻害薬の抗動脈硬化作用や心臓周囲脂肪減少効果も注目されている.糖尿病の治療には,血糖のみならず,体重・血圧・血清脂質の良好なコントロール状態の維持を行うことが重要であり,SGLT2 阻害薬はそれらの効能を兼ね備えている薬剤である.
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医学のあゆみ 266巻4号, 269-276 (2018);
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SGLT2 阻害の腎保護は,2015 年EMPA-REG Outcome 試験,2016 年EMPA-REG のpost hoc 解析,2017 年CANVAS Program で3 年にわたり報告があいつぎ実証されてきた.本稿は,さらに今後期待されるpossible protective effects として,とくに3 つの腎構成細胞間連関の保持作用について着目し,その可能性について論じたい.3 つの連関とは,①GTB=糸球体尿細管バランスとTGF=尿細管糸球体フィードバック,②糸球体から漏出した尿蛋白→尿蛋白自身がROS やサイトカインを発生し→尿細管障害を惹起する,糸球体障害から→尿細管障害への連鎖=糸球体尿細管連関,③最近著者らが報告した尿細管から→糸球体への抗加齢分子サーチュインやNMN を介した,尿細管-糸球体連関,であり,これら3 連関とSGLT2 阻害について今後の展望を含めて述べる.
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医学のあゆみ 266巻4号, 277-283 (2018);
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脂肪肝(fatty liver)は,肝細胞におもに中性脂肪(TG)が沈着して肝障害をきたす疾患の総称であり,そのなかで,近年,非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が世界的に増加している.NAFLD はインスリン抵抗性を病態の主座とし,糖尿病や脂質異常症などの生活習慣病を合併する頻度が高く,また,その発症リスク因子であることから,全身疾患としてとらえる必要がある.近年,NAFLD に対する薬物治療の有効性を示す研究報告が多くみられるようになってきたが,そのなかで,SGLT2 阻害薬はインスリン作用を介さない血糖改善効果をもち,優れた体重減少作用が得られ,さらに糖尿病に併存する種々の合併症に対する多面的作用が報告されていることから,NAFLD に対するあらたな治療戦略として有効性が期待される.本稿では,脂肪肝のうちNAFLD に主眼をおいて最新の知見を概説し,NAFLD に対するあらたな治療戦略となりうるSGLT2阻害薬のもつ可能性について,これまでに報告されている研究報告を踏まえて言及する.
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医学のあゆみ 266巻4号, 284-287 (2018);
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Na+依存性グルコーストランスポーターSGLT2 阻害薬は,腎近位尿細管におけるグルコース再吸収を阻害し尿糖排泄を促進することで,インスリン非依存性に血糖値を降下させる新規作用機序による経口糖尿病治療薬である.その血糖降下作用により膵β細胞を保護し,さまざまな代謝的改善をもたらすため,近年SGLT2 阻害薬に心不全の予後改善や心血管事故抑制など,心保護薬,および糖尿病性腎症進展抑制など腎保護薬としての可能性に世界的な注目が集まっている.SGLT2 阻害薬には血圧降下作用や尿酸降下作用があることも知られる.血圧降下作用の本態はNa+の尿中排泄増加によるのではなく,グルコースにより尿細管内の浸透圧が上昇し,これを等張に保つため水再吸収が減少する浸透圧利尿と推定される.尿酸降下作用は近位尿細管のトランスポーターを介する機序が示唆されている.
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医学のあゆみ 266巻4号, 288-293 (2018);
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SGLT2 はGLUT と同様に癌細胞における糖の輸送にも関与している可能性が示唆されている.Warburg 効果が基盤となる癌の糖代謝においてはグルコーストランスポーターの発現機構が重要であり,肝癌を含めた癌治療のあらたな標的として期待されているが,いまだ解明されていない部分も多く,その全容解明が課題とされている.また慢性肝疾患の分野においては今後非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を背景とする発癌の頻度が増加していくなかで,糖代謝は背景肝と癌,両者の病態制御において鍵となる役割を果たすため,治療応用への検討も行われている.実際に糖尿病治療薬であるメトホルミンやDPP4 阻害薬による肝癌抑制効果が報告されている.著者らは,肝癌細胞におけるSGLT2 発現およびSGLT2 阻害薬による肝癌への糖の取込み抑制を介した増殖抑制効果,血管新生抑制効果を見出し,癌治療薬としての応用も期待している.
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連載
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Sustainable Development を目指した予防医学 15
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医学のあゆみ 266巻4号, 298-303 (2018);
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サンガ法はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)とdye terminator 反応を組み合わせた,ゲノムや遺伝子の部分塩基配列を決定する技術で,多くの研究者に利用されている.一方,遺伝子診断は保険診療内では確定診断のみに活用でき,その中心技術は現在では次世代シーケンサー(NGS)になったが,重要なvariant の再現や精度管理にサンガ法が利用される.多くの研究者が周知・熟知している技術であるが,医療現場でまれに生じる誤りに気づかない場面に出くわすことがあり,執筆に至った.サンガ法は原則を守るかぎりシーケンスエラーを起こす可能性はきわめて低い安定した技術である.誤りを生じさせる問題はおもに3 つで,第1 はプライマー上のvariant,第2 が相同性領域の存在,第3 はDNA の品質,他に,構造多型や新規配列の影響をまれに受けることがある.ヒトゲノムは2 対からなるdiploid であるが,variant の問題はヘテロ接合性消失に関わり,相同領域の存在は2 領域以上の増幅の原因で,いずれも一見するとdye terminator 反応後に塩基配列決定ができたようにみえるため,確認が不十分だと判定ミスを招く.ほとんどのexon 領域は研究の豊富さからvariant 情報も充実し,比較的配列はユニークで,構造多型上に存在する可能性も低いため,注意すべき一部のexon を除き,シーケンスエラーは生じにくい.ただ,今後展開される可能性として,exon 上の原因座位から同遺伝子全域へのvariant 検索の拡大,研究の進捗に伴いexon 外に及ぶ場合,投薬前診断,家系集積性のある未発症の子孫の発症前診断(確定診断のような病状(表現型)での判定を参考にできない)などではその精度維持はとても重要になる.また,サンガ法でエラーを生じさせる可能性のある領域はNGS でも類似した過ちを生じさせるので,注意したい.本稿は,熟知される研究者には不要であるが,ご存知ない方は周知してほしい.
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移行期医療 ― 成人に達する/達した患者への医療 8
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医学のあゆみ 266巻4号, 304-309 (2018);
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◎小児内分泌の分野において移行期医療は重要な課題となっている.小児内分泌疾患のなかには先天性疾患や遺伝性疾患,治療上クリティカルな時期が成人期への移行期間(思春期周辺)である疾患も多い.本稿では,先天性副腎過形成症とターナー女性を例にあげ,思春期周辺から成人に達した患者の診療についてガイドラインなどを引用しつつ概説した.いずれの疾患も,小児科・内分泌内科・産婦人科・泌尿器科・循環器内科など複数の科による連携が不可欠である.患者が複数診療科に継続して通院するには,疾患の理解に加え意思決定できるように自己管理意識を患者自身のなかに育てていかなければならないと考える.
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TOPICS
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再生医学
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医学のあゆみ 266巻4号, 294-295 (2018);
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神経内科学
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医学のあゆみ 266巻4号, 295-296 (2018);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 266巻4号, 297-297 (2018);
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FORUM
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Choosing Wisely キャンペーンとは 12
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医学のあゆみ 266巻4号, 310-312 (2018);
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「免疫と感染症に関する日仏セミナー」レポート
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医学のあゆみ 266巻4号, 313-316 (2018);
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書評
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医学のあゆみ 266巻4号, 317-317 (2018);
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医学のあゆみ 266巻4号, 318-319 (2018);
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医学のあゆみ 266巻4号, 320-321 (2018);
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