Volume 266,
Issue 6,
2018
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特集 精神疾患と妊娠・授乳
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 497-497 (2018);
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 499-503 (2018);
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抗精神病薬は元来統合失調症に対して開発された薬剤であるが,二世代抗精神病薬は双極性障害にも適応が広がっている.妊産婦への影響は催奇形性だけではなく,妊娠合併症(妊娠糖尿病など)や胎児の発育不全,新生児不適応症候群などに分けて考える必要があり,さらに出産後は授乳の問題,長期的な神経発達への影響(機能奇形)も評価する必要がある.多くのシステマティックレビューやガイドラインを比較すると,催奇形性について特定の薬剤によるリスクは認められないと考えられる.多剤併用に関するデータは乏しいため,妊娠前の病状の安定と薬剤の単剤化・減剤化に努めることが望ましい.母乳育児については,国内採用の抗精神病薬は,添付文書上「やむをえず投与する場合は授乳を控えること」となっているが,母乳の児への有用性を考えると,近年ではある一定の条件下では母乳育児と薬物療法の両立を模索するようになっている.
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 504-509 (2018);
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抗うつ薬と気分安定薬のリチウムを妊娠・授乳期に用いる場合については,形態的催奇形性や機能的催奇形性など胎児に与える影響および新生児不適応症候群など新生児に与える影響を把握して使用する必要がある.また,周産期に服用中の抗うつ薬やリチウムを中断した際の病状の悪化や再燃・再発の危険性については,うつ病では反復性の既往や病状の重症度に注意すべきであり,また双極性障害では産後がその脆弱な時期となることに気をつける.さらに,妊娠中の抗うつ薬の動態については妊娠後期に肝におけるチトクロームP450 の代謝活性が高まることによる影響を,またリチウムの動態については妊娠の進行による母体の腎クリアランスの増加による影響を見逃さないようにする.抗うつ薬の母乳への移行については,多くは問題とならないが,リチウムは母乳へ移行しやすく注意が必要である.実臨床にあたっては,これらの薬物の妊娠・授乳中の特徴を十分理解したうえで,薬物を使用することのメリット,デメリットを勘案することが大切である.
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 510-512 (2018);
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妊婦,授乳婦における不安,不眠はよくみられる.抗不安薬・睡眠薬には依存形成,認知機能低下,転倒・骨折のリスク上昇などの副作用があるため,原則として,出来るかぎり単剤で,必要最小量を短期間使用する.妊婦,授乳婦においては“有益性投与”が原則であり,リスク・ベネフィットを本人や夫とよく話し合い使用を決定する.また,妊娠前からあらかじめ相談しておくことが肝要である.妊婦の強い不安は児の早産,低出生体重,行動/情緒面の問題と関連する.妊娠第1 三半期における大奇形および口唇口蓋裂のリスクは否定的だが,妊娠第3 三半期の服用で,児のフロッピーインファントあるいは胎児離脱症候群が生じる可能性がある.そのため,抗不安薬・睡眠薬は出産予定日の3,4 週間前から漸減し,1 週間前の中止が望ましい.母乳中への移行はごくわずかと考えられるが,児の嗜眠に注意し,授乳中は短時間作用型の抗不安薬・睡眠薬の使用が推奨される.
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 513-518 (2018);
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形態奇形は一般妊婦の2~3%でみられるが,抗てんかん薬服用下では発生率が2~3 倍に増加する.またとくにバルプロ酸によって,児の認知機能低下,自閉症スペクトラム障害のリスクが高まる.妊娠可能女性における抗てんかん薬治療では,ラモトリジンやレベチラセタムなどリスクの低い薬剤を選択し,少量,単剤の処方を心がける.初療時よりリスクの少ない処方設計とし,調整が必要な場合は妊娠前に完了することが望ましい.バルプロ酸は形態奇形および児の神経学的発達の両面できわめてリスクが高いため,妊娠可能女性に対しては極力避け,やむをえない場合は500~600 mg 以下の少量を徐放剤で使用する.妊娠後期の薬物使用や授乳に際しては,とくにバルビツール系およびベンゾジアゼピン系薬剤による,新生児の離脱発作や傾眠などの鎮静症状に注意する.原則的に授乳は可能だが,児を注意深く観察し,哺乳力低下などがみられれば混合栄養または授乳中止を検討する.
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 519-522 (2018);
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統合失調症は治療の場の主体が入院から外来となり,治療薬も排卵機能に影響を及ぼしにくい第二世代抗精神病薬が主剤となっていることから,女性統合失調症患者が妊娠する機会が増えている.統合失調症患者の妊娠は,偶発的な妊娠が多い,服薬中断しやすい,妊婦検診に定期的に受診しない,産後に精神症状が悪化しやすいなどの課題があることが知られており,妊娠の際には,多職種の連携が重要である.産科合併症や胎児の発育には統合失調症としての行動特性が影響しており,妊娠中のきめ細やかなサポートが合併症のリスク軽減に有用である可能性が高い.
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 523-527 (2018);
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うつ病や双極性障害の女性の初発年齢は妊娠可能年齢にあたり,臨床においてはつねに妊娠・出産を念頭に薬物治療を考える必要がある.これらの患者の周産期における気分エピソードは産後にめだって出現し,しかも抑うつエピソードが多い.とくに双極性障害は周産期に気分エピソードをきたす危険性が高く,またうつ病では妊娠期には心理・社会的要因が,産後には医学・生物学的要因が発症に強く影響を与えるため,こうした特徴を把握したうえで対応にあたる.また,気分エピソードそのもの,あるいは薬物によって産科的合併症や胎児・新生児合併症をきたす危険性もあり,産科と連携していくことが望まれる.こうしたエビデンスを理解したうえで,国内外のガイドラインなども参考にして,うつ病ないし双極性障害の妊婦・授乳婦に対する向精神薬の治療をどこまで行うかを,患者やその家族に提示し,決定していく.
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 528-532 (2018);
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産褥期精神病は,出産500~1,000 回に1 回生じる,出産後に急性に幻覚や妄想などを伴って生じる,まれな精神障害である.家族歴や,後に併発する精神障害から,双極性障害との関連が示唆されている.病識が得られがたく症状も重篤であるため,閉鎖病棟を併設している精神科病院への入院につなげる必要があることが多い.発症の予測は困難であり,そのため平時より重症・緊急対応可能な地域の精神科病院との連携,あるいはその情報を整理しておくことが望ましい.状態が安定するまでは育児は困難なことが多く,その間の育児支援も要する.双極性障害の治療に準じた治療でおおむね予後は良好であるが,双極性障害発症リスクに加え,その後の出産時に再発するリスクも高く,予防的薬物治療も検討しうる.
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 533-535 (2018);
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不安障害や強迫性障害をもつ女性の多くは妊娠出産が可能な年代にあり,精神科医は妊産婦の治療にも習熟しておくべきである.妊産婦の抱く不安はかならずしも不適応的とはいえないこともあり,不安障害の過剰診断には注意すべきである.不安を取り去ろうとするばかりではなく,妊産婦が不安に向き合い,折り合っていくことを支えていく.妊産婦の強迫性障害では加害強迫が多く,母児の愛着関係が阻害されるという問題が起こりうる.妊娠中の不安は在胎週数および早産と関連し,とくに妊娠に特有の不安は強い予測因子である.パニック障害ではSGA が多い.不十分な治療が児の成長や母子の関係性に悪影響を及ぼしうることも考慮しながら,妊産婦やパートナーが納得できるような診療をこころがけたい.
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 536-540 (2018);
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てんかん患者の妊娠・出産ケアの最重要点は,妊娠よりもずっと以前に,その患者に最適な薬物(発作リスク最小,胎児へのリスク最小)にあらかじめ調整しておくことである.患者に服薬の意義を十分説明し,自己判断による怠薬を防ぐ.妊娠に先立って葉酸少量を適宜補充開始する.バルプロ酸は強い用量依存性をもって,胎児の催奇形性,認知機能への負の影響を有す.妊娠可能女性への薬物処方の原則は,①レベチラセタムやラモトリギンなど胎児への安全性の高い薬を優先的に選択する(=バルプロ酸の第一選択は避ける).②なるべく単剤で,③なるべく少量を使用する.④バルプロ酸が発作抑制に不可欠な場合には,できるだけ少量(500~600 mg 以下)を使用する.妊娠中の投与量に関しては,ラモトリギン,レベチラセタムなど妊娠中に遊離型血中濃度が低下しやすい薬物では,血中濃度を測定して適宜増量する.基本的に自然分娩が可能.授乳は多くの薬物で可能だが,一部注意を要する場合がある.
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連載
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Sustainable Development を目指した予防医学 16
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 547-554 (2018);
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人びとを取り巻く社会環境や生活環境は大きく変わってきており,その変化がヒトの健康に影響を及ぼす可能性が多く取り上げられている.人は多くの時間を室内ですごす.そのなかでも住宅は多くの時間をすごす場であり,健康を害することなく安らげる場であるのが理想である.一方,建材や新しい家具などから揮発する化学物質を起因とした住宅・生活用品由来の健康被害,シックハウス症候群はいまだ未解決といえ社会問題となっている.これらの解決に向けて千葉大学予防医学センターでは,可能なかぎり化学物質を低減したまちづくり“ケミレスタウン・プロジェクト”を実施してきた.2007 年にはじまったこの取組みは,フェーズⅠ(基盤づくり),フェーズⅡ(普及効果検証)を経て,2017 年からフェーズⅢ(深化)が開始された.柏の葉キャンパス内にあらたに2 棟の実験住宅を建設し,滞在実験のなかで室内空気環境が及ぼす健康影響を明らかにすることに加え,心と身体の健康を維持,さらに増進させ,持続可能で快適に暮らせる住環境の創造を目指す.
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移行期医療 ― 成人に達する/達した患者への医療 9
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 555-561 (2018);
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◎小児腎疾患分野においても移行期医療の確立が望まれている.とくに,ネフローゼ症候群,慢性糸球体腎炎,先天性腎尿路異常や遺伝性腎疾患などの慢性腎障害(CKD)を有する患者において小児期から成人期への継続的な治療は重要である.このような移行期医療に関する現状を把握するためにアンケート調査を施行し,小児腎疾患患者における小児期から成人期への移行期医療を円滑に進めるための移行期医療ガイドが作成された.これは,おもに小児科医と成人診療科が診療する可能性のある若年成人(AYA)世代に特化したものであるが,移行期医療の概念・意義,移行プログラム,CKD をもつAYA 世代の診断,治療や管理の仕方が包括されている.本稿では,アンケート調査の結果と移行期医療ガイドの概要に加え移行期腎疾患として頻度の高いネフローゼ症候群とIgA 腎症や慢性増殖性糸球体腎炎などの慢性糸球体腎炎患者の移行期の問題点に関して概説する.
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TOPICS
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神経精神医学
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 541-543 (2018);
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社会医学
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 543-544 (2018);
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 545-546 (2018);
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FORUM
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Choosing Wisely キャンペーンとは 13
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 562-564 (2018);
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医療社会学の冒険 4
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医学のあゆみ 266巻6・7号, 565-569 (2018);
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