Volume 266,
Issue 10,
2018
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特集 内臓脂肪と異所性脂肪
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医学のあゆみ 266巻10号, 755-755 (2018);
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医学のあゆみ 266巻10号, 757-761 (2018);
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内臓脂肪は腹腔内に存在する腸間膜および大網に存在している脂肪組織であり,門脈を介し肝の上流に位置するため,消化管から吸収したエネルギーの一時的備蓄や供給に重要な役割を果たす.しかし内臓脂肪蓄積時には,過剰な脂肪分解により糖・脂質代謝異常を惹起する.成人期以降の過栄養は内臓脂肪蓄積につながりやすく,慢性炎症,低酸素,高酸化ストレス状態となり,低アディポネクチン血症をはじめとするアディポサイトカイン産生異常を引き起こす.生体のエネルギー摂取が過剰になると,肝,骨格筋,膵,心血管系などの脂肪組織以外の臓器に異所性脂肪として蓄積し,非アルコール性脂肪性肝疾患,インスリン抵抗性,インスリン分泌障害,動脈硬化症などの病態形成にかかわる.内臓脂肪の減量により糖・脂質・血圧などの心血管疾患リスクがトータルに改善するため,より若い世代での予防的アプローチが重要となる.
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医学のあゆみ 266巻10号, 763-768 (2018);
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肥満人口の増加に伴い,わが国を含めた世界中で非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)患者数は増加している1,2).NAFLD 患者はわが国で約1,000 万人存在すると推定され,非進行性の非アルコール性脂肪肝(NAFL)と進行性の非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に大別される3).NASH は現時点では肝生検による組織診断によってのみ診断可能な疾患であり,いまだ確立された治療法がない.本稿ではNAFLD/NASH ついて最近の文献の内容を交え概説する.
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医学のあゆみ 266巻10号, 769-771 (2018);
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体重増加の過程において脂肪細胞の拡張が限界に達すると,遊離脂肪酸となって脂質が放出され,骨格筋に異所性脂肪として蓄積しインスリン抵抗性を惹起する可能性が示されてきた.その一方で,著者らの検討などから,非肥満者でも運動不足,高脂肪食,低アディポネクチン血症などが骨格筋細胞内脂質(IMCL)を蓄積させ,インスリン抵抗性を惹起する要因となっていることが明らかとなってきた.また,持久的な運動を行うアスリートでは,IMCL が蓄積しているがインスリン感受性は保たれていることが示されており(アスリートパラドックス),そのメカニズムが明らかとなりつつある.これらの研究により,東アジア人で非肥満であっても代謝血管障害を生じる根本的な原因が明らかとなることが期待される.
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医学のあゆみ 266巻10号, 772-776 (2018);
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過体重,肥満者は脂質異常症,耐糖能障害,高血圧症といった動脈硬化症リスクを合併しやすく,心臓血管病を起こしやすい.内臓脂肪型肥満では皮下脂肪型肥満に比べ,動脈硬化症リスクが重積しやすく,心臓血管病が起こりやすい.肥満症に伴うリスクの重積は従来,脂肪細胞における脂肪蓄積(正所性脂肪)とインスリン抵抗性,インスリン分泌障害のかかわりから検討されてきたが1),近年,脂肪細胞以外の臓器における脂肪蓄積“異所性脂肪(ectopic fat)”の様態に注目が集まっている.心臓血管周囲にみられる異所性脂肪は“心臓脂肪・血管周囲脂肪”とよばれる2()図 1).本稿では,循環器疾患と異所性脂肪,心臓脂肪・血管周囲脂肪の関係について最近の知見をまとめた.
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医学のあゆみ 266巻10号, 777-782 (2018);
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腹部超音波検査において高輝度膵はしばしば認められる所見であるが,以前はその臨床的意義は明らかではなかった.現在,高輝度膵となるおもな原因は膵の脂肪沈着とされている.異所性脂肪沈着として非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)が注目されているのと同様に,近年,高輝度膵もその臨床的意義が注目されるようになっている.高輝度膵を呈するものでは高血圧症,内臓肥満,脂質異常症,糖尿病,動脈硬化などの生活習慣病を合併する頻度が高い.膵に脂肪沈着が起こるとβ細胞障害,インスリン抵抗性などが出現する.その結果,膵内分泌機能や膵外分泌機能が低下し,糖尿病やメタボリックシンドロームを発症する.高齢,肥満,アルコールなどがリスク因子とされている.これらのことから生活習慣病との関連が強い高輝度膵も,NAFLD と同様に腹部超音波検査における異常所見として拾い上げ,生活習慣改善指導や経過観察が必要である.
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医学のあゆみ 266巻10号, 783-787 (2018);
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異所性脂肪は脂肪細胞以外の非脂肪細胞,とくに肝実質細胞や骨格筋細胞などの実質細胞に蓄積した脂肪を指す言葉であり,過剰な異所性脂肪蓄積による実質細胞あるいは臓器の機能障害(脂肪毒性)により,肥満に合併する生活習慣病の発症をもたらす.日本人は軽度の肥満でも糖尿病や脂肪肝の発症頻度が多いが,これは本来貯蔵すべき皮下脂肪組織に脂肪を十分に蓄積できないため,内臓脂肪組織や異所性脂肪蓄積が相対的に増加するのかもしれない.SGLT2 阻害薬やチアゾリジン誘導体は過剰に蓄積した異所性脂肪を本来貯蔵するべき脂肪組織に再分布させることにより,糖尿病の改善あるいは生活習慣病の発症・進展を予防できる可能性がある.
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医学のあゆみ 266巻10号, 789-792 (2018);
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近年,内臓脂肪と皮下脂肪の違いが明らかになってきた.内臓脂肪は側板中胚葉を発生起源としており,皮下脂肪とは起源の異なる臓器である.皮下脂肪は分化・増殖能が高いため過形成(hyperplasia)となりやすく,内臓脂肪は肥大(hypertrophy)となりやすい.さらに,内臓脂肪はカテコールアミン刺激による脂肪分解能が高く,脂肪酸取込み能が高いため,蓄積しやすく分解しやすい性質をもつ.アディポサイトカインの違いとして,内臓脂肪はIL-6 の発現が高く,肝へ流入することで慢性炎症を惹起する.脂肪細胞特異的な酸化ストレス改変マウスの解析では,脂肪細胞の酸化ストレス増加によって内臓脂肪蓄積と脂肪肝が誘導され,インスリン抵抗性となることが示された.内臓脂肪は酸化ストレスと深く関与しており,酸化ストレスを制御することで,内臓脂肪蓄積やインスリン抵抗性などの肥満病態が改善する可能性がある.内臓脂肪の性質を明らかにすることで,内臓脂肪蓄積を標的としたあらたな治療法の開発につながることが期待される.
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連載
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Sustainable Development を目指した予防医学 18
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医学のあゆみ 266巻10号, 799-804 (2018);
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WHO によれば,2016 年,5 歳以下の乳幼児死亡率は世界では1,000 人当り41 人であった.日本では3 人であるので,まだまだ改善の余地がある.国連の掲げる持続可能な開発目標(SDG)では,“新生児と5 歳未満児の予防可能な死を2030 年までになくす”ことを目標のひとつとしている.WHO の重要な役割のひとつは科学的データに基づく告知活動を展開して加盟国が自国の国民の健康向上のための対策を促すことである.実は,多くの疾患やけが,健康への悪影響は,環境を改善することで予防が可能である.糖尿病やがんなどの非感染症(NCD)も,生活習慣も含めた環境を改善することである程度予防することができる.環境中の化学物質をはじめとした汚染物質対策,タバコの副流煙対策や近年世界的に増加して対策が急務となっている自閉症,および自閉症スペクトラムに関するWHO の告知活動などについて紹介する.
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移行期医療 ― 成人に達する/達した患者への医療 11
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医学のあゆみ 266巻10号, 805-810 (2018);
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◎小児期に発症した慢性の消化器疾患を青年期あるいは成人期まで診療していくことのメリットとデメリットを十分考慮したうえで,われわれ小児科医は,慢性の消化器疾患患者をシームレスに内科医に引き渡していかなくてはならない.現状では,その時期はいつがもっともよいのか,あるいはどのような形で行うのがよいのかなどの明確な答えはみつかっていない.今後,各疾患ごとに理想的な移行期医療を検討していくことが喫緊の課題と考えられる.近年,患者数が著しく増加している小児の炎症性腸疾患における移行期医療の充実をモデルとして,さまざまな消化器疾患の移行期医療を検討していく時期に来ている.
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TOPICS
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循環器内科学
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医学のあゆみ 266巻10号, 793-794 (2018);
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 266巻10号, 794-795 (2018);
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整形外科学
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医学のあゆみ 266巻10号, 796-797 (2018);
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FORUM
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Choosing Wisely キャンペーンとは 15
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医学のあゆみ 266巻10号, 811-814 (2018);
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パリから見えるこの世界 71
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医学のあゆみ 266巻10号, 815-819 (2018);
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