Volume 267,
Issue 6,
2018
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特集 生体リズムを基盤とした時間医薬科学の展開
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医学のあゆみ 267巻6号, 427-427 (2018);
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医学のあゆみ 267巻6号, 429-433 (2018);
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生体リズムの異常で生じる睡眠障害やその他の病気を根本的に是正するためには,体内時計の最高位中枢器官である脳内の視交叉上核(SCN)を標的とした創薬が重要である.著者らは生体リズム調整薬の開発に向けて,SCN 神経シグナル回路を構成するG 蛋白質共役受容体(GPCR)とその下流のG 蛋白質シグナル制御因子(RGS)を同定した.創薬の可能性という点においては,著者らが見出した目覚ましG 蛋白質シグナル制御因子(RGS16)が,ヒトでも複数のゲノムコホート解析において朝型を規定することが示され,その上流に位置するGPCR に興味が集まるなか,その担い手として新規のオーファン受容体Gpr176 を提示したことに創薬的な意味がある.Gpr176 はGz という特殊なcAMP 抑制性三量体G 蛋白質に共役するGPCR であり,末梢には発現せず中枢時計にのみ強く発現するGpr176-Gz-RGS16 シグナルを標的とした創薬研究が期待できる.
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医学のあゆみ 267巻6号, 434-438 (2018);
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生物が内在する時計システムである概日時計は,生物が示す約24 時間の生理リズム(概日リズム)を作りだす.とくに,睡眠覚醒リズムは概日時計の特徴を強く反映することより,睡眠覚醒リズムの異常を指標とした順遺伝学がきわめて有効である.著者らはヒトにおいて,家族性睡眠相前進を示す家系より時計遺伝子の新規バリアントを同定し,睡眠のタイミングが早まる分子メカニズムについて詳細な解析を行ってきた.とくに転写抑制因子として機能する時計蛋白質PERIOD やCRYPTOCHROME の翻訳後修飾を介した蛋白質分解制御が概日時計の位相決定に重要な役割を果たすことがわかってきた.本稿では,睡眠相後退の家系で発見された時計遺伝子の新規スプライスフォームや大規模遺伝子多型関連解析の結果などを紹介する.
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医学のあゆみ 267巻6号, 439-444 (2018);
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恒常性(ホメオスタシス)は,外部環境や体内で引き起こされる変化に対応して生体内環境を安定に保とうとする,生命活動の維持にとって必要不可欠な性質であり,概日時計はまさにその一翼を担うと考えられる.恒常性維持には多様で複雑な仕組みが想定されるが,近年の研究からすくなくともその一部が同一のリン酸化シグナル伝達経路を介して制御されている可能性が浮上してきた.なかでも,恒常性制御に深く関わっている概日時計と睡眠や代謝との関連性についてはこれらに共通した制御機構の存在が示唆されており,医学的にもホットトピックのひとつにあげられる.本稿では,最近急速に研究が進んできた恒常性維持に関わるリン酸化酵素SIK3 と,その伝達経路を介した多様な生命活動の制御,さらに進化の過程を通じて保存されてきた概日リズム,睡眠,エネルギー代謝に一部共通した制御メカニズムが存在する可能性について,最新の知見を紹介しながら議論する.
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医学のあゆみ 267巻6号, 445-450 (2018);
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哺乳類の体温は24 時間周期の日内変動を示す.この体温リズムは,睡眠や代謝などの生理機能と密接に関わる.しかし,これまで体温リズムの制御機構はほとんど未解明であった.著者らは優れた実験動物であるキイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を用いて温度選択リズムの制御機構の解明をめざしている.これまで著者らは,ショウジョウバエの成虫が24 時間周期で体温リズムを形成することを発見し,さらにハエの体温リズムの形成に関わる神経ペプチド受容体を同定した.驚くことに,この受容体のマウスホモログはマウスの体温リズム制御においても重要な役割を果たしていた.以上の結果は,恒温動物である哺乳類と変温動物であるハエの間で,体温リズムの制御機構が進化的に保存されていることを示す.この研究をもとに今後,ハエや哺乳類の体温リズムの制御機構のさらなる解明が期待される.
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医学のあゆみ 267巻6号, 451-455 (2018);
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著者らは,悪性度の高い乳がんモデルとしてマウス乳がん細胞4T1 を対象に,概日時計機構と腫瘍組織中のがん幹細胞様細胞(CSC)の動態変化との関係について検討した.その結果,マウスに移植した4T1 腫瘍中で高いアルデヒド脱水素酵素(ALDH)活性を示す細胞数に概日リズムが認められた.このリズムは低いALDH 活性を示す細胞からのWnt10A による周期的な刺激により,腫瘍中での高いALDH 活性を示す細胞数の概日リズムが引き起こされていることが示唆された.腫瘍組織中の高いALDH 活性を示す細胞数の概日リズムを指標にしたALDH 活性阻害剤の投薬時刻により,腫瘍増殖が有意に抑制された.本研究で得られた知見は,ALDH 活性の概日リズムを指標とするCSC を標的にした難治性乳がんの新規治療法開発につながる可能性がある.
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医学のあゆみ 267巻6号, 457-461 (2018);
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ヒトは加齢とともに,おもな睡眠の間にトイレのために起きなければならなくなり,60 歳以上では60%以上の方がこの夜間頻尿の症状を有している.夜間頻尿は下部尿路症状のなかで最も悩み深い症状のひとつであり,効果的な治療・予防が求められている.しかし,その原因は多因子にわたり,複雑にからみあっているため,満足のいく治療が困難なのが現状である.一方,その病態を単純化すると,①睡眠障害,②夜間尿量の増加,③機能的膀胱容量の低下,の3 つの要素となる.本稿では,夜間頻尿をこの3 つの要素の日内リズム障害ととらえ,体内時計の観点から夜間頻尿の深淵にあるものを覗いてみたい.
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医学のあゆみ 267巻6号, 463-468 (2018);
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東西に長距離移動をすると時差ボケに悩まされることが多い.時差は,実験室において明暗リズムのスケジュールを変化させることにより模倣できる.近年のマウスを用いた実験によると,明暗リズムを8 時間進めた場合は順応に1 週間から10 日程度要するのに対し,8 時間遅らせた場合は3~4 日程度で順応する.さらに,8 時間進めた場合は,全身の概日リズムを統率する組織である視交叉上核の時計遺伝子の発現リズムが1 週間程度にもわたって減弱する.このように,前進と後退の時差に対する適応時間には著しい非対称性があり,また時差に伴って,にわかには理解できない遺伝子発現ダイナミクスが生じる.このような複雑な現象を理解するためには,数理モデルを用いた理論的考察が有効である.本稿では,体内時計を記述する簡単な数理モデルを紹介し,そこから得られる一般的な知見について解説する.また,理論的考察から時差ボケを回避する実用的な方法を予言することができ,その実証実験についても紹介する.
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連載
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移行期医療 ― 成人に達する/達した患者への医療 17(最終回)
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医学のあゆみ 267巻6号, 475-478 (2018);
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地域包括ケアシステムは機能するか 4
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医学のあゆみ 267巻6号, 479-484 (2018);
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それぞれの地域における地域包括ケアシステムが機能するかどうかは,“4 つの助(自助,互助,共助,公助)”や,“地域マネジメント”が機能するかどうかにかかっている.その鍵を握ると考えられるのがソーシャルキャピタルである.その定義や介護予防における実証研究を紹介しながら地域包括ケアとのかかわりについて述べる.
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 267巻6号, 469-470 (2018);
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麻酔科学
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医学のあゆみ 267巻6号, 470-472 (2018);
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臨床検査医学
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医学のあゆみ 267巻6号, 473-474 (2018);
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FORUM
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がん教育の現状と課題 5
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医学のあゆみ 267巻6号, 485-487 (2018);
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パリから見えるこの世界 73
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医学のあゆみ 267巻6号, 488-492 (2018);
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