Volume 267,
Issue 8,
2018
-
特集 ncRNA の医科学と医療Ⅰ
-
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 563-563 (2018);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 565-570 (2018);
View Description
Hide Description
2001 年,2002 年に理化学研究所と国際FANTOM コンソーシアムが推進したFANTOM プロジェクトにより,FANTOM 1・FANTOM 2 の結果が発表された.従来100 種類程度しか知られていなかった非蛋白コードRNA(ncRNA)から,24,000 種類と全種類のRNA の過半数にあたる新規ncRNA(遺伝子)が発見された(蛋白質コードRNA は22,000 種類).それまで蛋白コード領域の2%しか機能していないとされたゲノムの80%は転写され,そのRNA のほとんどにantisenseRNA が存在する.これらのRNA をノックダウンすると転写に擾乱が起こることから,ncRNA は単に漏れ出た機能がない転写物ではなく,それぞれセントラルドグマとは別の遺伝子発現調節機能を持つことがわかってきた.その後,各ncRNA の機能に関する論文も急増し,DNA の二重螺旋構造の発表から約50 年間知られていなかったncRNA の未知の機能が,少しずつではあるが解明されている.本稿では,新しくベールを脱ぎはじめたncRNA について,著者らの研究背景とともにncRNA 大陸の発見の経緯と現状を紹介したい.
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 571-576 (2018);
View Description
Hide Description
長鎖ノンコーディングRNA(lncRNAs)は多様であり,その機能性は解明されていない.著者らは,FAMTOM5プロジェクトで得たCAGE データと複数のトランスクリプトームデータを統合し,信頼度の高い5’ 末端を含む27,919 種のヒトlncRNA アトラスと,おもなヒト初代培養細胞と組織に由来する1,829 サンプルの発現プロファイルを作成した.このlncRNA をゲノムとエピゲノムの観点から分類すると,遺伝子間領域から生じるlncRNA のほとんどはプロモーターではなくエンハンサー領域から生じていた.さらに遺伝学的データと発現データを統合すると,形質に関連した一塩基多型(SNP)に重なるlncRNA が,その形質に関連する細胞種で特異的に高い発現量を示し,これらのlncRNA の疾患への関与が示唆された.これらのデータはオンライン公開され,lncRNA の機能解明に幅広く活用できる.
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 577-581 (2018);
View Description
Hide Description
大規模なトランスクリプトーム解析の結果,蛋白質をコードしていないゲノム領域から多くの長鎖非コードRNA(long non-coding RNA:長鎖ncRNA,LncRNA)が転写されることが明らかになった.LncRNA の機能は多岐に富んでおり,クロマチン活性制御から転写制御および蛋白質輸送制御に至るまで,さまざまな生理的作用機序が報告されている.LncRNA の多くは,ほかの種類のRNA または蛋白質と物理的に相互作用することによって,細胞のシグナル伝達カスケードに直接的に影響をもたらしうることがわかっている.さらにlncRNA の発現異常は細胞増殖,腫瘍進行または転移に影響を及ぼす可能性がさまざまながん種で報告されている.それらの機能的分類はがんの研究分野において確立されつつあるが,新しい治療戦略の開発や新規診断手法の確立を行ううえで適切な候補を同定していく必要がある.本稿では最新の機能的な解析に基づいて,腫瘍抑制または腫瘍促進の観点から,がんに関連するlncRNA を概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 583-586 (2018);
View Description
Hide Description
近年,新しい転写産物群としてノンコーディングRNA(ncRNA)が注目されている.ncRNA とは,翻訳の鋳型とならず(つまりメッセンジャーRNA とは異なる),RNA そのものが生理機能を有すると考えられるRNA の総称である.重要な生理機能を有するncRNA は,当然のごとく疾患でも重要な役割を果たしている.核内構造体のひとつである核スペックルに局在する長鎖ncRNA のMALAT1 は,多様ながん種で高発現し,がんの予後不良と密接に関係する.MALAT1 は,細胞運動性遺伝子やがん抑制遺伝子p53 の転写を制御することを通じて,がんの悪性化に関与すると考えられている.近年,爆発的に研究が進むncRNA が疾患と密接に関係することを示す好例として,本稿ではがんにおけるMALAT1 の役割を紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 587-590 (2018);
View Description
Hide Description
エンハンサーはゲノムのノンコーディング領域に存在する約200 塩基長の配列である.エンハンサーは時空間特異的に遺伝子の発現を制御し,細胞分化,器官形成,恒常性の維持に必須の役割を担っている.特筆すべきことに,エンハンサー領域内に存在する一塩基多型(SNP)や後天性DNA 変異がcommon disease からがんまで幅広い病気に関わっていることが示され,エンハンサー研究が医学的・臨床的にも脚光を浴びている.驚くべきことに,遺伝子の転写と同じようにエンハンサーにも基本転写因子やRNA ポリメラーゼⅡがリクルートされ,エンハンサーそのものから両方向性にRNA が合成されていることが示された.このRNAは,蛋白質をコードしないノンコーディングRNA であり,エンハンサーRNA(eRNA)と命名された.本稿では,近年急速に研究が加速しているエンハンサーやeRNA の生物学的およびに臨床的意義についてオーバービューする.
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 591-597 (2018);
View Description
Hide Description
アンチセンス,siRNA に代表される核酸医薬品は,これまで治療が難しかった難治性疾患・遺伝性疾患に対する新しいモダリティ(治療手段)として注目を集めている.現在,製薬業界では創薬ターゲットの枯渇が大きな問題となっているが,核酸医薬品は蛋白質を標的とする従来の低分子医薬品や抗体医薬品とは異なり,“RNA”をターゲットにできる点が大きな特色である.2018 年8 月までに上市された“RNA を標的とする核酸医薬品”は,アンチセンス5 品目(Vitravene®,Kynamro®,Exondys51®,Spinraza®,Inotersen®),siRNA 1 品目(Onpattro®)の6 品目であり,臨床試験後期の段階にある候補品も数多く存在する.先行して開発が進む核酸医薬品の標的はpre-mRNA あるいはmRNA であるが,miRNA やlncRNA などの非コードRNA(ncRNA)も核酸医薬品の対象であり,今後のncRNA 研究の進展とともに創薬標的が大きく拡大していくと期待される.本稿では,今まさに花開こうとしている核酸医薬品について,基本的性質,作用機序,開発動向を紹介したい.
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 599-602 (2018);
View Description
Hide Description
SINEUPs は,人工合成ノンコーディングRNA であり,そこに含まれるレトロトランスポゾン遺伝子SINEが,標的mRNA の翻訳を促進UP することから名づけられた.世界的にRNA を用いた遺伝子治療(siRNA,mRNA,ASO 療法など)が盛んに行われているが,SINEUPs はそれらと同様の合成RNA 分子であり,作用機序は異なるものの,疾患原因蛋白質の発現量を調節する.SINEUPs は,その内部に標的mRNA のアンチセンス鎖を含むことで特異性が保たれている.特徴としては,標的mRNA の発現量を変えずに,その蛋白質への翻訳を促進し,標的mRNA が発現する細胞,組織,臓器に高い特異性を示すところである.ここでは,著者らによる標的mRNA に対するアンチセンス配列の最適化方法,ハプロ不全疾患または遺伝子減衰によって惹起される疾患に対する遺伝子治療の国内外での研究動向,SINEUPs のさらなる展望について紹介する.
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 603-608 (2018);
View Description
Hide Description
蛋白質をコードするmRNA に比べ,非コードRNA は機能・塩基長・形状の各点で非常に多様であり,機能が明らかにされていない非コードRNA も数多い.きわめて活発な研究活動の結果として,非コードRNAに関するさまざまな知見や実験データが次々に生み出されつづけており,その知識を蓄積するデータベースの開発や維持も盛んに行われている.非コードRNA 研究だけにとどまらず,ゲノミクスを用いる基礎研究,さらには核酸医薬をはじめとする次世代型創薬研究においても,これらデータベースを十分に理解し,適切に活用することはきわめて重要であろう.本稿では,数多くあるデータベースのうちのいくつかについて,長鎖非コードRNA(lnc RNA)とマイクロRNA(miRNA),環状RNA(circRNA)を中心に紹介する.
-
連載
-
-
地域包括ケアシステムは機能するか 6
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 615-621 (2018);
View Description
Hide Description
日本で介護保険制度がスタートし18 年目になった.措置から保険制度に変わり,保険者機能は要介護認定に集約された.その代り介護保険ではじめてケアマネジメントが導入され,ケアマネジメントが自立支援のプランとなっているか点検指導が行われてきた.国は2011 年に,2025 年に向けた地域包括ケアを打ち出し,2018 年からは市町村のケアプラン点検の実施率や要介護認定の改善,給付効率化などの成果にあわせて補助金を出す“保険者機能強化推進交付金”がスタートした.4 月から居宅介護支援事業所の指定権限が都道府県から市町村に移行した.市町村がケアマネジメント指導を通じて介護度改善のプランへの移行を迫る動向である.このようななかでケアマネジャーが利用者,家族の代弁ができるか? 市町村の顔色をうかがい行動するか? 市町村とケアマネジメントの職能団体が地域で連携し地域がケアする体制作りができるか? ケアマネジメントの専門性が問われてくる.
-
医学・医療におけるシミュレータの進歩と普及 3
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 623-628 (2018);
View Description
Hide Description
◎科学技術の発達にともない,technology-enhanced simulation(TES)を実践するための環境が整ってきている.コンピュータ制御型のマネキンに加え,近年ではvirtual reality(VR)やaugmented reality(AR)などを用いたシミュレータも増えてきている.さらに,シミュレーション全体をひとつの教育研修としてとらえた場合,事前・事後の学習,あるいはシミュレーション実施時の臨場感向上などの事例にもtechnology は欠かせないものとなっている.このような状況下において,TES の効果・効率を確かなものにしていくためには,単に“どのtechnology を使うか”といった教育方法だけでなく,シミュレーションの学習目標や評価方法にも着目し,“technology を何のために用いるのか”といった視点も含めたインストラクショナルデザインの視点が重要な意味を持ち始めている.
-
TOPICS
-
-
免疫学
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 609-610 (2018);
View Description
Hide Description
-
感染症内科学
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 611-612 (2018);
View Description
Hide Description
-
神経内科学
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 612-614 (2018);
View Description
Hide Description
-
FORUM
-
-
がん教育の現状と課題 7
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 629-631 (2018);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 632-633 (2018);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 267巻8号, 634-637 (2018);
View Description
Hide Description