Volume 268,
Issue 6,
2019
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特集 細胞の極性化がもたらす生命現象
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医学のあゆみ 268巻6号, 467-467 (2019);
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医学のあゆみ 268巻6号, 469-473 (2019);
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高等生物はさまざまな臓器・器官を最適な条件で機能させるために,発生過程で細胞集団を身体のしかるべき場所に配置させる.最初はおおまかに区画化された細胞集団からそれぞれの運命を持った組織が高度に分化し,ダイナミックな移動や形態形成(形づくり)によって,それぞれの組織に応じた個性を獲得することが必須である.これら一連のプロセスの引き金となっているのが,一見均一に見える細胞集団やひとつひとつの細胞のなかに形態的・機能的に偏りを生じさせる“細胞極性”である.発生生物学においても,この細胞極性を制御する分子群やそれらのシグナル伝達経路は詳細に研究されてきたが,その結果起こる集団的な細胞移動やマクロな形態形成のメカニズムについては不明な点も多い.本稿では,おもにアフリカツメガエルの初期胚を用いた研究から,動物の形態形成における細胞極性の意義について,最近の知見を含めて概説する.
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医学のあゆみ 268巻6号, 474-480 (2019);
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われわれの身体には前後・背腹・左右の3 つの体軸が存在する.なかでも左右軸は背腹・前後(頭尾)軸の情報を受けて最後に決定される.左右対称性はleft-right organize(r LRO)とよばれる部位で破られる.すなわち,LRO において繊毛が回転し左向きの水流を作りだすことで,左右非対称性が生まれる.左向きの水流を作りだすには,繊毛の基部にある基底小体が後方に移動して,繊毛の回転軸が後方に傾く必要がある.このLRO の繊毛の配向性は平面内細胞極性(PCP)によって制御されており,繊毛の配向性はPCP 蛋白質同士の細胞間シグナル伝達によって安定的かつ正確に決定される.さらに,マウスでは胚の前後軸に沿ったWnt とそのアンタゴニストの分布によって,LRO の細胞の極性が決まっている.つまり,グローバルな前後情報が細胞内の前後情報へと変化し,最終的には胚の左右情報へと変換される.
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医学のあゆみ 268巻6号, 481-485 (2019);
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生体内においては器官レベル,組織レベル,細胞レベルで極性が確立されており,極性は個体の発生や生理機能に必須である.組織表面の液流や張力などの剪断応力(shear stress)に従って,組織表面には水平軸に沿った極性が存在する.組織の表面にシート状に並んだ個々の上皮細胞では,これらshear stress の軸に沿った平面内細胞極性(PCP)が現れ,細胞の運動方向・分裂方向などが決定される.また隣り合う細胞同士でPCPを共有することで,組織全体として極性を維持することができる.本稿では,生体内の液流に面する運動性多繊毛細胞のPCP を取り上げ,平面内極性化の分子機構,多繊毛細胞の極性破綻が関与する病態について紹介する.
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医学のあゆみ 268巻6号, 486-490 (2019);
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上皮組織はわれわれの体表を覆う組織であり,外環境と体内を隔てるバリアとして働くとともに,さまざまな物質輸送を担っている.上皮組織が物質輸送を行うためには,上皮細胞の細胞膜が外環境に面する頂端膜と体内に面する側底膜に区画化されることにより,さまざまな輸送体蛋白質が極性を持って局在することが重要である.上皮細胞は細胞間接着が存在しない条件であっても,極性シグナル伝達経路の働きによって細胞自律的に非対称性を獲得することができるが,細胞間接着構造が極性シグナル伝達経路や細胞内輸送の足場として働くことにより,細胞極性の配向を決めるランドマークとして働いている.本稿では上皮細胞の極性形成における細胞間接着の役割について,これまでの研究の歴史や最近の話題,疾患との関連について概観したうえで,今後の課題について論じたい.
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医学のあゆみ 268巻6号, 491-495 (2019);
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細胞膜の特定の部分に偏在し,ほかの細胞装置や構成成分の空間配置を決める役割を担う蛋白質群(極性制御蛋白質,極性蛋白質)が存在する.その最上位に位置するのがaPKC-PAR 複合体である.極性蛋白質は極性のない状態では細胞質全体に分布するにもかかわらず,細胞の極性化に伴い細胞表層(細胞膜直下)の特定の細胞膜ドメインに偏在化する.このプロセスは膜のドメイン化,小胞輸送系と細胞骨格系の再配置,細胞接着装置の形成を伴い,極性化が完了する.ここで細胞表層に偏在化する極性蛋白質はランドマークとして働き,細胞装置の極性(軸と方向)を決めているようである.極性蛋白質の研究を通じて,その偏在化の機構,それがさまざまな細胞装置の形成を制御する機構,さらに細胞極性化の生物学的な意味合い,病気との関わりなどが明らかとなりつつある.
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医学のあゆみ 268巻6号, 496-500 (2019);
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ショウジョウバエのがんモデルであるscrib,dlg およびlgl 変異体の解析は,細胞極性の崩壊が引き起こすがん化メカニズムの理解に大きく貢献した.Scrib,Dlg,Lgl は上皮細胞の側部(lateral domain)において複合体(Scrib 複合体)を形成し,頂端決定因子であるaPKC 複合体と相互抑制性の制御を行うことで上皮細胞の頂端-基底極性を形成する.Scrib 複合体の機能喪失によって起こる極性崩壊は,aPKC 複合体の活性化やJNK シグナルの活性化を介してがん抑制経路Hippo 経路を抑制し,腫瘍性増殖をもたらすことがわかってきた.またScrib 複合体の機能喪失は,JNK シグナルの活性化や紡錘体配向の破綻を介して上皮間葉転換を誘導し,浸潤能の獲得をもたらすことも明らかになった.一方で,細胞競合とよばれる細胞間コミュニケーションが極性崩壊細胞の組織からの排除を促すことも見出された.細胞競合はJNK シグナルを介して極性崩壊細胞の貪食,上皮外排除,腫瘍化抑制を行う内因性がん抑制機構として機能していると考えられる.
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医学のあゆみ 268巻6号, 501-506 (2019);
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神経細胞は,通常1 本の軸索と複数の樹状突起を有する高度に極性化した細胞である.樹状突起は神経伝達物質の受容体を介して情報を受け取り,軸索は神経伝達物質を放出することでほかの細胞へとその情報を伝える(図1).このようにひとつの方向性を持った情報の流れが神経細胞としての機能を成立させ,脳内において記憶・学習・情動などの高次脳機能を生み出している.しかし,神経細胞の極性化には依然として解決されていない基本的な疑問が残っている.どのようにして共通の未成熟な神経突起から,1 本の軸索と複数の樹状突起への運命決定がなされるのであろうか.最近になり,軸索と樹状突起の運命決定に関与する正と負のフィードバックシグナルが同定されるだけでなく,生体内での神経細胞の極性形成機構が解明されるなど,神経細胞の極性化を制御する複雑なシグナルネットワークの全容がようやく見えつつある.本稿では,神経細胞の極性形成を制御する分子機構について著者らの研究成果や最近の知見を概説する.
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医学のあゆみ 268巻6号, 507-511 (2019);
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上皮細胞は細胞間接着によってシート構造を形成する.上皮細胞のシートが体液や外気と接する面を頂端面,基底膜と接着する面を基底面とよび,上皮細胞に特有の極性構造をもたらす.胚発生時においては,上皮細胞シートが極性を維持しながら集団で運動・変形することによって,立体的な腺構造・管腔構造などさまざまな三次元の組織が形成される.しかし,このような上皮細胞による組織形成をin vitro の培養系で再現するのは難しい.著者らは,軟らかいコラーゲンゲル基質を用いて上皮細胞を培養することで,生体内に近い物理的環境を培養シャーレ内で実現し,上皮細胞シートに集団運動,シートの折返しを自律的に行わせることによって管腔構造を形成させることに成功した.本稿では,管腔構造の形成について上皮細胞の集団運動と細胞極性の観点から解説する.
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連載
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地域包括ケアシステムは機能するか 12
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医学のあゆみ 268巻6号, 519-524 (2019);
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フランスとイタリアの医療・介護制度は異なっているが,2000 年以降は地域包括ケアに舵を切った政策を打ち出し,ケアマネジメント機能を高め,介護職の量・質を拡充すべく資格再編が起こり,あらたな介護職が誕生するという共通点をもつ.フランスの地域包括ケアの取組みとして,①ケアマネジメント機関であるCLIC とMAIA のメリハリのあるケアマネジメントの実践,②在宅入院(HAD)における集中的ケアマネジメントと多職種連携,③介護職の資格再編の動向とあらたな資格“生活指導介護士(DEAES)”の誕生について紹介する.イタリアでは,①地域包括ケアを担う家庭医と看護師の概要,②PCAP におけるケアマネジメントと複雑な退院支援の実践,③介護職の資格再編の動向とあらたな資格“社会医療オペレーター(OSS)”の誕生について紹介し,最後に両国から学ぶわが国への示唆について整理する.
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医学・医療におけるシミュレータの進歩と普及 9
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医学のあゆみ 268巻6号, 525-529 (2019);
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◎ロシアでは,各大学の局所解剖・外科手術学講座が,解剖学教育とともに,学生の基本的外科手技修得に対する役割を担っており,3 年次学生に対して理論と実技からなる講義を行う.講義は献体やスケッチを用い,教員と学生の双方向性授業が中心である.外科手技は手術器具の理解,基本的な縫合,結紮法,腸管吻合などを修得する.シミュレータも活用されているが,新鮮な献体を利用することができるため欧米とは異なる医学教育の質の深化が認められる.より高度で実践的な外科手技修得を希望する学生に対しては,局所解剖・外科手術学講座の指導のもと,低学年時より学生外科サークルに所属し,病院払下げの機器やシミュレータを用いて,知識,技能を修得する環境が整えられていた.外科サークルの学生は,解剖学,外科学の知識,ならびに臨床外科的手技を競う“学生外科オリンピック”への参加を,活動へのモチベーションとしていた.専門性の高い知識・技能を低学年から修得するためのサポート体制は,シミュレーション教育の普及,進歩に寄与し,学生の能動的学習を促す効果が期待される.
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TOPICS
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リハビリテーション医学
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医学のあゆみ 268巻6号, 513-514 (2019);
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輸血学
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医学のあゆみ 268巻6号, 514-515 (2019);
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加齢医学
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医学のあゆみ 268巻6号, 516-517 (2019);
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FORUM
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NEW 医師のバーンアウト(燃え尽き症候群)をふせぐためには?―脳神経内科領域の取組みから学ぶ
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医学のあゆみ 268巻6号, 531-532 (2019);
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医師のバーンアウト(燃え尽き症候群)をふせぐためには?―脳神経内科領域の取組みから学ぶ 1
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医学のあゆみ 268巻6号, 533-535 (2019);
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パリから見えるこの世界 76
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医学のあゆみ 268巻6号, 536-540 (2019);
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