Volume 268,
Issue 8,
2019
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特集 睡眠呼吸障害の現状と治療・管理の進歩
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医学のあゆみ 268巻8号, 611-611 (2019);
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医学のあゆみ 268巻8号, 613-618 (2019);
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睡眠呼吸障害(SDB)は日中の過度の眠気などで社会生活に重要な影響を与えるばかりでなく,高血圧,糖尿病,心血管障害の発生とも関連するため,近年多くの注目を集めている.滋賀県長浜市と京都大学が共同で行った大規模疫学研究である“ながはまスタディ”において,SDB の頻度を性差,閉経前後も踏まえて7,051 人の対象者で検討したところ,とくに治療対象と考えられる中等症以上のSDB の頻度は男性で23.7%と多いこと,閉経前女性では1.5%と少ないものの,閉経後女性では9.5%と頻度が高くなることが判明した.過去の疫学研究を俯瞰しても統一された方法で計測されておらず,研究そのものを直接比較することは困難であるが,SDB の頻度が増加しているのは間違いなさそうである.SDB の頻度は民族間でも異なっており,とくにアジア人であることがSDB のリスクファクターとなることが示唆されている.さまざまな疾病と密接に関連しているSDB について,われわれはよりいっそうの注意を払う必要があるといえる.
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医学のあゆみ 268巻8号, 619-624 (2019);
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睡眠呼吸障害(SDB)や閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)とよばれる病態は,睡眠中の呼吸停止や低換気などの呼吸異常を呈し,乳幼児から成人まであらゆる年代に生じうる.SDB は小児の成長・発達不全や多動,集中力低下などの認知機能低下の原因となる.SDB のおもな発症要因は,上気道の解剖学的狭小性と神経筋機能の異常であり,国内外の小児のSDB の有病率は数%程度と推測されている.小児SDB の第1 の原因はアデノイド扁桃肥大であるが,近年は肥満に合併する症例が増加傾向にある.一般に,小児SDB の診断は終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)の所見に基づくが,より安価で侵襲性の低いさまざまな診断手法の有用性が検討されている.小児のSDB とその随伴症状の多くは治療により改善が可能であり,成人と同様に早期発見・治療が重要である.小児SDB の正確な診断を確立するために,さまざまなエビデンスの集積が求められている.
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医学のあゆみ 268巻8号, 625-628 (2019);
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高齢者が増える日本において,持続陽圧呼吸(CPAP)療法を受ける睡眠呼吸障害(睡眠時無呼吸症候群)患者も高齢化が進んでいる.高齢者に合併する認知機能低下は生活の質(QOL)に関わる重大な問題であり,CPAP 療法の治療開始,治療継続においても障壁となる.高齢者の生理的な睡眠,高齢者の睡眠呼吸障害(SDB)がきたす症状の特徴について知ることは,適切な医療提供のために重要である.SDB 自体が認知機能に及ぼす影響についても研究が進んでおり,CPAP 療法により認知機能の一部が改善する可能性も示唆されている.この領域において現状で得られる知見をまとめ,今後の検証課題を整理したい.
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医学のあゆみ 268巻8号, 629-632 (2019);
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閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)において,肥満は最も重要で,改善可能なリスク要因である.OSA に対する食事,運動といった生活習慣介入による減量療法は,無呼吸低呼吸指数(AHI)に基づいたOSA 治療の目標値まで改善するほどの効果は見込めないものの,OSA への効果だけでなく,OSA に合併する高血圧,脂質異常,心血管疾患の予防の効果も期待できる.そのため,生活習慣介入を用いた減量療法は,経鼻持続気道陽圧(CPAP)治療などの標準的な治療を行ったうえで実施することが奨められる.生活習慣に関する指導を行ったうえで効果がみられない高度な肥満のOSA 患者においては,肥満手術が治療の選択肢のひとつとなるが,患者への十分な説明と理解を得たうえで治療を選択する必要がある.
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医学のあゆみ 268巻8号, 633-637 (2019);
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閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は,多様な病型(フェノタイプ)を包含する不均一な疾患群であることが,近年わかってきた.病態生理や臨床的特徴が多様であるだけではなく,疾患を治療した後の効果発現のかたちもさまざまである.体重を例にとると,持続陽圧呼吸(CPAP)治療後数カ月は体重が増えやすい時期であるが,体重が減る患者もいる.最近の研究に基づくと,食行動の“ずれ”や“くせ”を有し,摂食量を調節することが苦手な患者は,CPAP 治療後に生じるエネルギー消費量の変化に対応できず,相対的な過食となることが体重増加の主要なメカニズムと思われる.睡眠時間に関しても同様で,治療後に睡眠時間が増加する患者と減少する患者はほぼ半々であり,睡眠時間の増減とOSA の臨床的病型や,CPAP の治療効果に関連が認められる.OSA の多様性の理解が進むにつれ,多角的な評価と個別化したアプローチが今後重要となるであろう.
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医学のあゆみ 268巻8号, 639-643 (2019);
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心不全(HF)の睡眠呼吸障害(SDB)は,上気道閉塞に起因する閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)と,HF そのものが原因で呼吸調節システムが不安定となり生じる中枢性睡眠時無呼吸(CSA)に大別される.心不全においてはSDB が予後悪化因子であり,SDB の治療によって心機能が改善することなどから,心不全自体の治療となる可能性があり,注目されてきた.心不全においてもOSA では持続陽圧呼吸療法(CPAP)が,CSA では順応性自動制御換気(ASV)などが検討されるが,大規模研究ではかならずしも長期予後改善にはつながらない結果となっている.現在進行中の大規模研究や観察研究の結果を待つとともに,あらたな研究の必要性が高い領域である.
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医学のあゆみ 268巻8号, 645-648 (2019);
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口腔内装置(OA)は口腔内に装着し,下顎または舌を前方位で維持することにより上気道閉塞を防止する歯科的装置である.おもに下顎前方移動型のOA が選択され,軽症から中等症の閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)や,持続陽圧呼吸療法(CPAP)脱落者へ用いられる.OSA 治療においては,OA とCPAP それぞれの適応や長所・短所を理解したうえで使い分けることが重要であり,CPAP の保険適用基準に満たない軽症OSA 患者を未治療の状態で放置せず,OA を用いて日中の過眠をはじめとするOSA 症状を適切にコントロールし,かつOSAを重症化させないことが肝要である.実際にOA 治療を行うのは歯科医師であるため,密接な医歯連携のもとで専門歯科医師が装置選択と治療を担当し,治療効果の確認は終夜ポリグラフ検査(PSG)により客観的に行う.
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医学のあゆみ 268巻8号, 649-654 (2019);
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持続気道陽圧(CPAP)療法は閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の主要な治療法であるが,その臨床効果を得るためには良好な治療アドヒアランスが必要である.昨今,情報技術の進歩によりCPAP 機器に通信機器を取り付け,機器内に蓄積されたアドヒアランスデータを無線で患者自身あるいは医療者が参照する遠隔モニタリングシステムの使用が可能となっており,このシステムを用いて適宜電話や電子メールなどで患者に遠隔指導を加える診療方法の効果が期待されている.遠隔モニタリングシステムを活用してCPAP 療法を管理することで,治療アドヒアランスが改善することが海外の複数の臨床研究において報告され,わが国でも現在検証されている.また,このシステムを用いた診療方法は,平成30 年度(2018)からわが国の保険診療のなかで認められることになったが,課題も多く,臨床データの蓄積と医療制度の成熟に向けた今後の取り組みが必要とされている.
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医学のあゆみ 268巻8号, 655-658 (2019);
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閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の治療法として,持続陽圧呼吸(CPAP),口腔内装置,口蓋垂口蓋咽頭形成術(UPPP)や口蓋扁桃アデノイド摘出術などの外科的治療があるが,わが国においては,OSA の重症度指標である無呼吸低呼吸指数(AHI)が20 以上の症例に対する標準的治療法はCPAP である.しかし,少なからず存在するCPAP 不耐症例に対する治療戦略が,実地臨床上での重要な課題となっている.そのなかで近年,欧米においてCPAP 不耐症例に対する植込み型舌下神経刺激療法が臨床導入され,その有用性の報告があいついでなされている.わが国においても2018 年6 月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)から植込み型舌下神経刺激療法装置が医療機器としての承認を得た.本稿では,CPAP の代替治療としての舌下神経刺激療法について概説したい.
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連載
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地域包括ケアシステムは機能するか 14
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医学のあゆみ 268巻8号, 665-669 (2019);
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長野県佐久市は,自然環境に恵まれた標高およそ700 m の内陸型気候の冷涼な地域として発展している高原都市である.新幹線で東京からほぼ80 分程度に駅を有し,高速交通網も整備されている.2005 年の合併により“(新)佐久市”として誕生し,人口98,652 人,高齢化率30.4%(2018 年4 月1 日現在)のまちである.佐久地域は,地域包括ケアシステムがわが国で議論される前から,地域の多くの機関,専門職,地域の人々が連携して地域医療を実践してきた.地域医療と農村医療の発祥の地として,佐久市立国保浅間総合病院,JA 長野厚生連佐久総合病院,佐久医師会が中心となり,住民の“自らの健康は自分で守る”という強い自負の意識を牽引してきており,それが地域包括ケアシステムに繋がっている.地域包括ケアシステムは高齢者を含めた市民すべてが安心して豊かに暮らすことにあり,市民生活の場は地域にある.一人ひとりが,地域の構成員となり,“地域の強み”“地域の繋がり”など,地域力を生かし,住みよいまちを今後も推進していくことをめざしている.
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医学・医療におけるシミュレータの進歩と普及 11
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医学のあゆみ 268巻8号, 671-676 (2019);
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◎消化器内視鏡検査の普及に伴い,その教育システムの重要性が認識されてきている.とくに初学者は患者に余計な負担をかけるばかりか安全面での問題もあることから,初期の技術的ハードルを越える方法として従来からシミュレータの利用が行われてきた.消化器内視鏡におけるシミュレータ利用は古典的な臓器模型を利用したトレーニングだけでなく,バーチャル技術を用い,模擬患者を体験できる高性能のシミュレータも登場してきている.そして,そのニーズは基本的技術だけにとどまらず,高難度治療手技の習得をめざした専門性の高いシミュレータにも広がってきている.そのようななか,当施設では産学共同研究により内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)や経口内視鏡的筋層切開術(POEM)の次世代型シミュレータを開発してきた.消化器内視鏡シミュレータは確実な手技の習得に重要な役割を担っており,今後はさらに実臨床に近いトレーニングが可能になると期待される.
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TOPICS
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公衆衛生
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医学のあゆみ 268巻8号, 659-660 (2019);
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免疫学
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医学のあゆみ 268巻8号, 661-662 (2019);
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社会医学
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医学のあゆみ 268巻8号, 662-664 (2019);
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FORUM
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医師のバーンアウト(燃え尽き症候群)をふせぐためには?―脳神経内科領域の取組みから学ぶ 3
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医学のあゆみ 268巻8号, 677-679 (2019);
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近年,日本社会では過剰な長時間労働や働き手不足による問題が噴出しており,各所で働き方改革が叫ばれている.医療界にもその波は押し寄せてきており,今後もその流れは強くなるだろう.ただ,これまで医師の場合には,結婚や妊娠,育児に伴う女性医師の離職や初期臨床研修医の働き方改革への関心が高く,専門科を決めた直後の若手(いわゆる後期臨床研修医)のバーンアウトや離職への注目度は低かった.そこで,本稿ではその後期臨床研修医の働き方について検討したい.
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医学のあゆみ 268巻8号, 680-681 (2019);
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医学のあゆみ 268巻8号, 682-684 (2019);
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