Volume 268,
Issue 9,
2019
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【3月第1土曜特集】 遺伝性心血管疾患のすべて
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医学のあゆみ 268巻9号, 685-685 (2019);
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心筋疾患
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医学のあゆみ 268巻9号, 688-694 (2019);
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遺伝性心血管疾患のなかで,肥大型心筋症(HCM)は有病率が高く,日常診療で遭遇することは少なくない.本症の重要な点として,①遺伝性疾患であること(familial),②臨床病型およびその病因においても多様性があること(heterogeneity),そして③生涯にわたる左室リモデリング過程(lifelong left ventricularremodeling)のなかで心血管イベントの予防を行う必要があること,があげられる.とくに,本症は若年者突然死の最も多い原因である.HCM が臨床の場で認識されるようになり約60 年が経過し,病因遺伝子変異の同定や植込み型除細動器(ICD)による治療など多くの進歩が得られた.しかし,病態形成機序の解明や突然死の一次予防としてのICD 植込み適応など,まだ確立していない点も少なからず残っているのが現状である.
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医学のあゆみ 268巻9号, 695-699 (2019);
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肥大型心筋症や拡張型心筋症との鑑別を要する二次性心筋症として,グリコーゲンやスフィンゴ糖脂質の代謝異常により心筋細胞にこれらの基質が蓄積する蓄積性心筋症があげられる.本稿ではこれらの蓄積性心筋症のうち,遺伝性が知られている代表的な疾患を解説する.PRKAG2 症候群はAMP キナーゼ(AMPK)のγ2 サブユニットの異常により,Danon 病はライソゾーム膜蛋白であるLAMP2 の異常により,Pompe 病はグリコーゲン分解酵素であるαグルコシダーゼの異常により,いずれも心筋細胞内にグリコーゲンの蓄積を生じ,肥大型心筋症類似の形態と,興味深いことにWolff-Parkinson-White(WPW)症候群を呈する.Pompe 病は成人ではきわめてまれであるが,特異的酵素補充による治療が可能である.Fabry 病はセラミドの分解酵素であるαガラクトシダーゼA の異常により,細胞内にスフィンゴ糖脂質が蓄積し肥大型心筋症類似の形態をとり,これも特異的治療が可能である.ヘモクロマトーシスは遺伝性の場合は東洋人には少ないが,昨今の国際化時代において念頭に置いておくべき疾患である.これらには特異的治療が可能な疾患もあり,症例を詳細に観察して確定診断に至ることが患者予後を左右するために非常に重要である.
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医学のあゆみ 268巻9号, 700-704 (2019);
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拡張型心筋症(DCM)は世界中で多くの患者の命を脅かしているが,発症要因・臨床的表現型がきわめて多様であり,それは遺伝的な要因やそれ以外の非遺伝的な要素により決まっている可能性がある.DCM の主要な遺伝的要因として,タイチン遺伝子(TTN)とラミンA/C 遺伝子(LMNA)の変異があげられる.これら2 つの遺伝子型は複数の臨床的表現型(浸透率,伝導障害の合併,予後,治療応答など)において大きな違いがあることが明らかとなっている.トランスクリプトーム・エピゲノム解析により,DCM心臓ではDNA ダメージ応答,代謝リプログラミング,脱分化が生じていることがわかっている.プロテオーム・メタボローム解析により,脂肪酸への顕著な依存,ストレス応答の活性化,代謝リプログラミングが生じていることがわかっている.血液プロテオーム・メタボローム解析により,特異的な免疫応答が生じ,それはDCM 特異的な腸内細菌叢と関連していることがわかっている.これらのマルチオミックス解析を直接的に統合することにより,オミックス間の関係性が詳細に明らかになるだけでなく,オミックス情報による患者層別化の実現につながることが期待される.これは心筋症の深い理解や心臓病学における精密医療の発展に貢献するであろう.
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医学のあゆみ 268巻9号, 705-710 (2019);
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ジストロフィン糖蛋白複合体は心筋細胞膜の保持に不可欠であり,筋ジストロフィー患者ではこの複合体に遺伝的異常をきたし,その結果として心筋症が惹起される.心筋病変は筋ジストロフィー患者の予後決定因子としてきわめて重要である.一方,骨格筋症状のはっきりしない一般の“拡張型心筋症”が実は筋ジストロフィー心筋症,というケースもまれでない.このような“潜在的”筋ジストロフィー心筋症に対しては,遺伝子解析により診断を確定すべきと考える.また,筋ジストロフィー心筋症は左室心筋緻密化障害のパターンを呈することも多い.いずれにせよ,筋ジストロフィー心筋症は二次性心筋病変として特発性心筋症と明確に鑑別されなければならない.筋ジストロフィー心筋症の治療は心不全の標準治療に準じて行われているのが現状である.筋ジストロフィーに対してはアンチセンスオリゴ核酸医薬を用いた新しい治療法の有効性が示されている.この新しい治療法が心筋病変に対して効果を発揮するかを検証し,無効であるとすれば心筋局所へのデリバリー方法を含めて改良しなくてはならない.
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医学のあゆみ 268巻9号, 711-714 (2019);
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周産期(産褥性)心筋症は,“妊産婦”というくくり以外に疾患特異項目がない,除外診断病名である.そのため,現時点ではheterogeneous な疾患群であると考えられる.当初,病態が拡張型心筋症(DCM)に類似していることから,妊娠・出産の循環負荷により潜在していたDCM が顕在化したもの,という説もあったが,アメリカNIH のworkshop group により,同年代女性におけるDCM の発症率よりも非常に高率に妊産婦に発症すること,予後が異なることなどから,妊娠自体が発症に関与している別な病態と結論づけられた.一方,1~2 割の周産期心筋症患者はDCM 関連遺伝子変異を持つことが明らかになり,両疾患のオーバーラップは否定できない.本稿では,heterogeneous な疾患背景のなかの“遺伝性”について,これまでの知見を解説する.
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医学のあゆみ 268巻9号, 715-721 (2019);
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不整脈原性右室心筋症(ARVC)は右心室の脂肪線維化による変性,右室由来の心室不整脈を特徴とし,若年性突然死の原因となる致死性の遺伝性疾患である.ARVC の診断は2010 年に発表されたARVC taskforce criteria によって行われ,Definite,Borderline,Possible の3 段階に分類される.好発年齢は30 歳代から40 歳代とされているが,10 歳代で不整脈を初発症状として発症し,突然死をきたすこともある.ARVC の根本的な治療薬はなく,心不全や不整脈に対する対処療法が行われる.難治性の心室不整脈に対しては,心外膜アブレーション治療や植込み型除細動器(ICD)の植込みが行われる.心不全が進行した場合,心臓移植の適応となる.このようにARVC は難治性であり,早期診断による早期介入を必要とする疾患である.
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医学のあゆみ 268巻9号, 723-729 (2019);
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左室心筋緻密化障害(noncompaction of left ventricular myocardium)は,心室壁の過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を形態的特徴とする心筋症であり,心内膜側に非緻密化層,心外膜側に緻密化層の2 層構造を有する.その臨床像は,新生児期から成人まで発症時期は幅広く,無症状の症例から高度の心機能障害を有し心移植の対象になっているものまであり,きわめて多彩である1-3).単一遺伝子異常のほかにも,染色体異常,筋疾患,ミトコンドリア病などの疾患に合併してみられることがあり,多数の原因があることがわかっている.心不全を呈した症例や学校心臓検診により心電図異常や不整脈を指摘された場合には,心エコーによる心尖部までの十分な観察が重要である.無症状例であっても経時的なきめ細かいフォローアップが必要である.
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医学のあゆみ 268巻9号, 730-736 (2019);
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ミトコンドリア心筋症は,ミトコンドリアの構造・機能に関わる遺伝子の異常によって生じる酸化的リン酸化障害を特徴とする心筋症である.近年,網羅的遺伝子検査の発展により本症の新規原因遺伝子が同定されるようになり,原因不明の心筋症の鑑別診断に重要な位置を占めるようになった.しかし,本症は臨床ではしばしば見逃されやすく,未診断例も多く存在するものと思われる.確定診断には①病理診断,②生化学診断,③遺伝子診断,の三要素が必要であり,心筋生検の際の検体の扱い方には留意が必要である.表現型は肥大型心筋症(HCM)が最も多く,その他拡張型心筋症(DCM),拘束型心筋症(RCM),左室心筋緻密化障害(LVNC)など多彩である.本稿では,心筋におけるミトコンドリアの基本的な機能と関連する遺伝子について概説し,本症の確定診断とその考え方について解説する.
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医学のあゆみ 268巻9号, 737-742 (2019);
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トランスサイレチン(TTR)アミロイドーシスには遺伝性と非遺伝性のものがあるが,いずれの病型においても心臓は重要な障害臓器である.遺伝性TTR アミロイドーシスは,以前は特定の地域に集積するまれな疾患と考えられていたが,近年,集積地以外に家族歴が明らかではない本症患者が多数存在することが明らかとなり,末梢神経疾患,心疾患を引き起こす本症の重要性が増している.従来,本症に対する治療として肝移植が行われてきたが,最近TTR 四量体安定化剤,TTR 蛋白発現を抑制する核酸医薬の開発が進み,本症の治療が大きく変わりつつある.非遺伝性(野生型)TTR アミロイドーシス,AL アミロイドーシスなどほかの心アミロイドーシスにおいても治療法の開発が進み,早期診断・早期治療の重要性がさらに増している.本稿では,遺伝性TTR アミロイドーシスを中心に,心アミロイドーシスを呈する各病型についても概説する.
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医学のあゆみ 268巻9号, 743-748 (2019);
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RAS/mitogen-activated protein kinase(MAPK)シグナル伝達経路は,細胞増殖,分化,生存,死において重要なシグナル伝達経路である1).これまでに,RAS/RAF/MEK/ERK シグナル伝達経路のさまざまな分子の生殖細胞系列での変異による先天異常症が報告され,総称してRASopathies(あるいはRAS/MAPK 症候群)とよばれてきた1).これらの疾患はそれぞれの疾患に特徴的な表現型を有するものの,心血管異常,筋骨格異常,特異的顔貌,皮膚所見,神経認知能の異常など類似する表現型を持つため,臨床的な鑑別が困難な場合も多い2).2001~2010 年にRASopathies の疾患概念が確立したが,2013 年以降には次世代シークエンサーを用いた全エクソーム解析から,さらに新規原因遺伝子が同定されてきた.本稿では,RASopathies のなかのNoonan 症候群類縁疾患〔Noonan 症候群,Costello 症候群,cardiofacio-cutaneous(CFC)症候群〕における分子遺伝学,臨床症状,疾患モデルマウスによる病態解明研究について概説する.
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先天性心疾患
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医学のあゆみ 268巻9号, 750-758 (2019);
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先天性心疾患は出生児の約1%に認められる頻度の高い先天異常である.心臓大血管の発生異常によりさまざまな構造・形態の異常を呈する疾患群であり,その発症には遺伝的因子と環境的因子が関与する.近年,染色体異常症候群の研究,先天性心疾患多発家系の解析,分子遺伝学・発生生物学とゲノム解析技術の発展により,新生遺伝子変異,遺伝子コピー数異常などの遺伝的因子が次々と解明されている.先天性心疾患の遺伝的因子を解明し,環境因子との相互作用を明らかにすることは,新たな病態の解明だけでなく,疾患の予防にもつながる可能性がある.
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不整脈
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医学のあゆみ 268巻9号, 760-765 (2019);
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心房細動(AF)は1997 年,心血管病のオピニオンリーダー,Eugene Braunwald 博士(ハーバード大学)により,「21 世紀の心臓流行病になる」と予言され,そのとおり日本を含む先進国で患者数が爆発的に増えている.AF 患者は,治療をしないと1 年間に約5%の人が脳梗塞(心原性脳塞栓)を発症し,心原性脳塞栓を起こした人の約60%が死亡あるいは要介護・要支援となる.このため,“人生100 年時代”を迎えたわが国では,その予防が緊急の課題となっている.AF は従来,高血圧,心不全,虚血性心疾患,弁膜症などの心疾患に合併し,飲酒,喫煙,肥満などの生活習慣により誘発されることから,遺伝性の低い疾患と捉えられていたが,最近の科学的な分析により,思いのほか遺伝性の高い疾患であることが明らかとなった.本稿では,AF の遺伝性に関する最新の知見を概要し,これをAF およびこれに合併する心原性脳塞栓の予防にどのように生かしたらよいのか,私見を紹介する.
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医学のあゆみ 268巻9号, 766-770 (2019);
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遺伝性不整脈はおもに心筋の活動電位を形成するイオンチャネルと,これに関連する細胞膜蛋白などをコードする遺伝子上の変異により,イオンチャネル機能障害をきたし,特徴的な心電図異常と,これに基づく致死性不整脈を発症して心臓突然死の原因となる疾患である.代表的な疾患が先天性QT 延長症候群(LQTS)であり,1996 年に最初の原因遺伝子が同定されて以来,四半世紀にわたり遺伝情報と臨床情報の関連(genotype-phenotype correlation)が詳細に検討されている.LQTS は,循環器疾患のなかでも最も遺伝子診断が臨床診療に還元されている疾患のひとつである.本稿では,2018 年に発表された日本循環器学会の「遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン」(2017 年改訂版)を紹介するとともに,先天性LQTS の遺伝子診断を含めた最新の診断と治療について概説する.
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医学のあゆみ 268巻9号, 771-774 (2019);
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Brugada 症候群(BrS)は現在23 個の関連遺伝子が報告されている.そのうち心筋ナトリウム(Na)チャネル遺伝子SCN5A が全体の10~20%を占めるといわれる.しかし,その他の遺伝子を入れても遺伝子変異の陽性率は30%程度である.BrS には23 個以外の遺伝子に有力な疾患遺伝子がある可能性や,エクソン領域以外のゲノム領域に変異がある可能性がある.またBrS は単一遺伝子疾患ではなく,多因子疾患である可能性や線維化などの後天的要因・環境要因などを含めた複雑な疾患である可能性も考えられる.これらを解明するために,網羅的遺伝子解析手法であるエクソームやゲノムワイド関連解析(GWAS)が行われており,しだいにBrS の病態が明らかになりつつある.
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医学のあゆみ 268巻9号, 775-780 (2019);
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心臓刺激伝導系は,洞結節で発生する周期的な細胞電気興奮(活動電位)を隣接する心筋細胞群に次々に伝播させ,心臓全体を拍動させるという重要な役割を担っている.心拍調節をつかさどる洞結節や房室結節などの刺激伝導系を構成する細胞の機能的破綻は徐脈性不整脈を引き起こし,心拍出量が低下することによる労作時の息切れや身体活動度の低下,脳虚血による失神などの重篤な症状をもたらす.遺伝要因と環境要因の双方の影響を受けて発症する徐脈性不整脈に対する治療は,現在外科的なペースメーカー植え込み術が標準治療であり,徐脈の病態分子機序に基づいた長期的に服用可能な治療薬は存在しない.著者らは,遺伝性徐脈性不整脈の家系において原因遺伝子変異を同定し,その分子機能解析と疾患モデル動物の作製を行い,標的分子に選択性と高親和性を有する新規化合物の薬理作用を評価した.本稿では,徐脈性不整脈に関わる分子と病態発症機序について概説し,ゲノム医療につながる研究の実例を提示する.
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血管疾患
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医学のあゆみ 268巻9号, 782-788 (2019);
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Marfan 症候群は,結合組織の主要成分のひとつであるfibrillin の質的あるいは量的異常により発症する遺伝性結合組織疾患である.①大動脈瘤・解離,②水晶体偏位,③特徴的骨格症状,の3 つが主徴とされるが,これ以外にも心臓弁,皮膚,肺を含む全身の結合組織において広範かつ多彩な臨床像を呈する.診断は,国際的診断基準であるGhent 基準に従うが,2010 年に大幅な改訂がなされ,大動脈基部病変がより重視されるように変更された.また,診断において大きな比重を占める遺伝学的検査は,わが国でも2016 年に保険診療として認められ,現在では臨床検査会社での解析が可能となっている.また内科的治療としては,2006 年にマウスモデルでアンジオテンシン受容体拮抗薬であるロサルタンの有効性が示され,β遮断薬に代わるあらたな治療薬として期待されたが,その後,この両者を比較する多施設共同の大規模無作為比較試験がなされ,両者の大動脈拡張抑制効果は同等であることが示されている.
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医学のあゆみ 268巻9号, 789-794 (2019);
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遺伝性胸部大動脈瘤・解離症(HTAAD)には,Marfan 症候群(MFS)のように大動脈以外の多系統(骨障害など)に表現型を有する症候群性のほかに,大動脈以外の症状には乏しく,外見だけでは診断や遺伝性の把握が困難な非症候群性がある.遺伝子解析技術の進歩によって,疾患関連性の高い遺伝子が次々と報告され,ゲノム情報をいかに日常臨床や遺伝カウンセリングに活用するかが重要な課題となっている.Loeys-Dietz 症候群(LDS)や血管型Ehlers-Danlos 症候群(vEDS)などでは,診断基準や病型(重症度)の判定にも利用されるようになった.その一方で,非症候群性では未発症の血縁者に対して心理的・社会的問題に十分に配慮した対応が必要となる.本稿では,HTAAD に対する遺伝医学研究の現状と最近の進歩について,遺伝学的検査前後の遺伝カウンセリングの重要性とともに概説する.
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医学のあゆみ 268巻9号, 795-800 (2019);
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肺動脈性肺高血圧症(PAH)においては,2000 年にBMPR2 遺伝子が原因遺伝子として同定されたことを皮切りに,以後次世代シークエンサー(NGS)の発展・普及とともに,複数の疾患関連遺伝子が報告されてきた.最も頻度が高いのはBMPR2 変異であり,欧米のコンソーシアムや著者らの日本人患者での解析から,BMPR2 変異には人種差を超えて共通する再発性recurrent 変異が存在することなどが明らかとなった.また2018 年には,欧米のコンソーシアムからSOX17 遺伝子を含む新規の疾患関連遺伝子も複数報告されている.著者らは,日本人患者の家族性発症例を含んだ複数症例でSOX17 変異の存在を確認した.また,欧米のコンソーシアムには認めない日本人(または東アジア人)に特徴的なPAH 関連遺伝子としてRNF213 変異の存在を同定した.本稿では,著者らの経験を含めてPAH の遺伝子解析の現状と最新の知見を含めて解説する.
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その他
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医学のあゆみ 268巻9号, 802-807 (2019);
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家族性高コレステロール血症(FH)は,一般人口の200 人に1 人程度認められる最多の遺伝性疾患のひとつである.適切な診断および治療介入(LDL コレステロール低下療法)により,良好な予後が期待できるため,早期診断はとくに重要である.また近年になり,冠動脈疾患全体のみならず,とくに早発性の冠動脈硬化症においてFH の寄与の大きさが明らかとなり,とくに若い世代における本症の早期診断が求められるようになっている.本稿ではFH について,とくに近年の網羅的遺伝子解析技術の発展に伴い得られた最新の知見を総括し,本症に対する理解を深めていただきたい.
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医学のあゆみ 268巻9号, 809-814 (2019);
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遺伝性血栓性素因としては,凝固制御系因子アンチトロンビン(AT)・プロテインC(PC)・プロテインS(PS)の欠乏症,活性化プロテインC 抵抗性(凝固第Ⅴ因子異常症),AT 抵抗性(プロトロンビン異常症)などがあり,静脈血栓塞栓症(VTE)の重要な危険因子となる.これらの疾患は若年時より繰り返して血栓症を発症するため,正確に診断し再発予防に努めたり,家系調査による保因者の血栓予防を行うことが大切である.AT・PC・PS 欠乏症の3 つの疾患は,“特発性血栓症(遺伝性血栓性素因によるものに限る)”という疾患名で2017 年4 月から指定難病として取り扱われるようになった.診断に際しては,後天性に活性が低下する病態を除外することが重要である.確定診断のために遺伝子解析を実施するが,現行の解析法ではAT 欠乏症は変異がほぼ同定できるのに対し,PS 欠乏症は半数が同定できない.