Volume 268,
Issue 10,
2019
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特集 顔面神経麻痺の形成外科的治療―最近の話題
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医学のあゆみ 268巻10号, 817-817 (2019);
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医学のあゆみ 268巻10号, 819-823 (2019);
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顔面神経麻痺の形成外科的治療の適応に際して,顔面表情筋の萎縮の程度は重要である.神経再支配による機能回復が期待できる場合に神経再建術を行う.ドナー神経とレシピエント神経を神経移植術などにより連続させる.近年は端側神経縫合の有効性やネットワーク型再建などの新しい概念の導入により,術式の選択が広がっている.神経再支配による機能回復が期待できない陳旧例では,静的再建術や動的再建術を行う.静的再建術では,皮膚切除術や筋膜移植による吊り上げ術によって顔面のバランスをとり,機能不全を補完する.動的再建術では,筋肉の移行や移植によって顔面の動きを再建する.筋肉移行術では側頭筋を用いたlengthening temporalis myoplasty が注目されている.筋肉移植術では,健側顔面神経と同側咬筋神経の2 つをドナーとする,筋体を2 つ用いて複数の動きを同時に再建するなど,新たな術式が報告されている.
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医学のあゆみ 268巻10号, 824-830 (2019);
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顔面神経麻痺における眼瞼の閉瞼不全の外科的治療には静的再建術がおもに用られるが,眼球保護という機能面での改善に加え,麻痺により生じた眼瞼変形に対する整容面での改善も求められる.上眼瞼への静的再建には,ゴールドプレートによるlid loading が古くから用いられてきたが,長期埋入例における露出や形態の顕在化といった合併症を高率に生じるため,短期的な使用を中心に検討すべきと考えている.眼瞼挙筋延長術(Levator L 法)は移植材料に軟骨を用いることでより効果的と考えられるものの,手術操作で得られる結果が異なるため,症例ごとの検討が必要と思われた.下眼瞼に対する再建は上眼瞼よりも重要になることも多く,麻痺の経過予測や重症度に応じた術式選択が必要になる.軽症例には簡便で低侵襲なKuhnt-Szymanowski法(K-S 法)などの施行を検討するが,重症例や再発例には筋膜や軟骨といった移植材料を用いた,より強固な再建が望ましい.上下眼瞼のバランスを踏まえた系統的な再建術の施行が必要となる.
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医学のあゆみ 268巻10号, 831-836 (2019);
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島状側頭筋移行術は,側頭筋・腱を神経血管柄つきユニットとして順行性に移行する顔面神経麻痺の動的再建法であり,失われた笑いを1 カ月以内の超早期に再現できるという利点がある.側頭筋は三叉神経支配であるため,意識して笑顔を作る(随意的笑い)には嚙む動作が必要であるが,約半数の症例で後に嚙む意識なしでも笑うことができる(不随意的笑い)ようになり,これには脳の可塑性が深く関わっていると考えられている.Labbé の原法に改変を重ね,現術式では側頭部半冠状ジグザグ切開と鼻唇溝切開または延長S 字切開からアプローチし,下顎骨筋突起を離断して側頭筋・腱ユニットを頰骨弓下でスライドさせるように移行して側頭筋腱を口角・上口唇へ固定,ドナー部の修復を兼ねて側頭筋筋体を側頭部残存筋膜へ固定する.本法はマイクロサージャリーが不要で侵襲性が低く,顔面に瘢痕を残さない術式も可能であり,リスクのある高齢者はもとより,若年者,とくに女性にもよい適応である.
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医学のあゆみ 268巻10号, 837-841 (2019);
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顔面神経麻痺の外科的治療として,麻痺した(脱神経された)表情筋へほかの神経の軸索の一部を誘導し,表情筋を支配させる術式がこれまでに報告されている.なかでも著者らは,不全麻痺に陥った顔面神経と健常な同側舌下神経との間に自家神経移植を端側神経縫合により行い,神経叢を人為的に作りだす手技を“ネットワーク型再建”と命名し,報告してきた.神経のネットワークの分岐部に相当するのは端側神経縫合であり,①流出型端側神経縫合においてはdonor 神経の軸索の分配(neural distribution)および,②流入型端側神経縫合では不全麻痺神経への軸索の付加(neural augmentation)を誘導している.これら2 種類の神経縫合と神経移植を用いて複数の神経力源(donor nerve)と支配筋群の間にネットワークを形成すると,残存する双方の機能を温存しながら損傷した神経に向かって軸索再生を促すことが期待される.①のneural distribution については,舌下神経のjump graft あるいは部分移行術として,すでに長い歴史を有する.本稿では,比較的歴史の浅いneural augmentation について紹介する.
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医学のあゆみ 268巻10号, 843-848 (2019);
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顔面神経麻痺の治癒過程が終了した後,たとえ完全麻痺の状態を脱したとしても,表情筋の筋力低下や拘縮,病的共同運動や連合運動,痙攣などの症状が残存することがある.これらは発症後1~2 年の時点で,後遺症である陳旧性顔面神経不全麻痺と診断され,自然回復の可能性はほとんどないとされる.また,その症状は多岐にわたり,病態は複雑である.従来の治療法では症例ごと,症状ごとに方法を選択せざるを得ないが,著者はこれまでに舌下神経-顔面神経クロスリンク型神経移植術(クロスリンク法)によって症状が改善する症例があることを報告してきた.電気生理学検査や基礎実験の結果から,クロスリンク法の治療機序は移植神経を介した双方向性の軸索再生でおおむね説明できると考えている.しかし一方で,“脳の可塑性”で合理的に説明できる現象も経験している.本稿ではクロスリンク法の概要について述べ,これまでの経験について報告する.
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医学のあゆみ 268巻10号, 849-854 (2019);
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顔面神経は茎乳突孔より頭蓋骨外に出た後,耳下腺内を走行しつつ多数に分枝し顔面各部位の表情筋に分布する.そのため,耳下腺悪性腫瘍などの切除に伴う広範な顔面神経欠損に対しては,1 本の本幹から多数の枝を再建する必要がある.ループ型神経移植とは,顔面神経再建において1 本の移植神経そのものの側面を神経縫合部位として利用することで,1 本の本幹から多数の分枝を再建する術式である.また,舌下神経など顔面神経以外のneural source からの再生軸索を積極的に顔面表情筋に導入する際にも有用である.本法を用いることにより,少量の移植神経で多数の分枝を効率よく再建することが可能となる.本稿では動物モデルを用いた本術式の開発ならびに検証,臨床応用,その成績について解説する.
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医学のあゆみ 268巻10号, 855-859 (2019);
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顔面神経麻痺において,笑いの表情を回復させる動的再建治療には,①表情筋に活動性が残存している麻痺後早期における治療と,②表情筋に廃用性萎縮が生じた時期における,いわゆる陳旧性麻痺に対する治療があり,それぞれ治療方法がまったく異なる.通常,前者には神経移行術や神経移植術,後者には遊離筋肉移植術が適応となる.陳旧性麻痺に対する遊離筋肉移植術は東京大学名誉教授の波利井清紀先生が1976 年に発表された画期的な術式であり,現在では世界的にスタンダードな術式となっている.この遊離筋肉移植術において,自然な笑いを再建するために健側顔面神経からの神経再支配が必須となるが,神経再生距離が長いため,しばしば移植筋肉の収縮が不足するなどの問題点が指摘されていた.近年,この問題を解決する方法として,ひとつの移植筋肉に健側顔面神経に加えて患側咬筋運動神経の二系統の神経再支配をはかる術式(dual innervation 法)が開発され,治療成績の向上が期待されている.
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医学のあゆみ 268巻10号, 860-863 (2019);
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陳旧性顔面神経麻痺の患者に対する笑いの表情の再建において,マイクロサージャリーを用いた遊離筋肉移植術は有用な方法であり,著者らは麻痺と反対側の顔面神経を力源とする一期的遊離広背筋移植術を行ってきた.本法は15 cm 長の神経柄を健常な顔面神経の分枝と直接縫合することにより1 回の手術で自然な笑いの動きを獲得でき,筋肉採取部の犠牲も少ない.しかし,一部で移植筋の収縮が不十分な症例があるため,この問題に対し神経力源として強力な三叉神経(咬筋神経)を併用する改良を加えている.顔面神経と咬筋神経を力源とする二重支配法は,顔面神経による自然な動きに加え,顔面神経単独よりも早い神経再生と強い移植筋の収縮を獲得することが可能であり,今後のさらなる発展が期待される.
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連載
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地域包括ケアシステムは機能するか 15(最終回)
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医学のあゆみ 268巻10号, 872-878 (2019);
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わが国の病院死の割合は8 割を超えている.1960 年代初頭には在宅死が8 割程度であったが,高度経済成長時代の1970 年代に在宅死5 割,病院死5 割となり,現在は病院死が圧倒的となった.その大きな要因は,長期療養の一般化である.また家族の介護力の低下により,高齢者の介護を医療機関に委ねるという構造が全国に及んだ.後期高齢者の急増と家族介護力のより一層の脆弱化への対応として,高度経済成長期に形成されたこれまでの医療介護システムの再編の必要が迫られている.この課題への対応のために,これまでの住宅政策と社会保障の切り離された関係を再構築し,住宅と社会保障の一体化を追求していく必要がある.
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医学・医療におけるシミュレータの進歩と普及 12
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医学のあゆみ 268巻10号, 879-883 (2019);
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◎近年,看護教育におけるシミュレーションの活用法が明示され,看護基礎教育から卒後教育まで幅広くシミュレーションが導入されている.看護技術の習得には,テクニカルなスキルとノンテクニカルなスキルを身につける必要があり,シミュレーション教育では,Task Training やSituation Based Training を活用してその両方を教育できる.これらに使用されるシミュレータは,身体に侵襲のある技術の習得(Task Training)を目的として発展してきた.その後,患者の異常状態や身体情報が再現できるシミュレータが出現し,手技の習得のみならずさまざまな看護の場面が想定できSituation Based Training に多用されるようになった.最新のシミュレータでは,コンピュータにより,さまざまな身体情報をマネキンに再現できると同時に,ポジショニングや移乗・吸引などの基本的なケアの提供もでき,これまでの技術が集約されている.今後も,教育目的に応じたシミュレータの活用により,さらなる看護教育の発展が望まれる.
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TOPICS
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呼吸器内科学
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医学のあゆみ 268巻10号, 867-868 (2019);
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眼科学
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医学のあゆみ 268巻10号, 868-870 (2019);
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遺伝・ゲノム学
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医学のあゆみ 268巻10号, 870-871 (2019);
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FORUM
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パリから見えるこの世界 77
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医学のあゆみ 268巻10号, 884-887 (2019);
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医師のバーンアウト(燃え尽き症候群)をふせぐためには?―脳神経内科領域の取組みから学ぶ 4
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医学のあゆみ 268巻10号, 888-890 (2019);
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