Volume 268,
Issue 11,
2019
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特集 膵癌の予後改善に向けて
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医学のあゆみ 268巻11号, 893-893 (2019);
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医学のあゆみ 268巻11号, 895-899 (2019);
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膵癌は予後不良な疾患であるが,腫瘍径10 mm 以下では良好な予後が報告されており,予後改善には早期診断が必須である.『膵癌診療ガイドライン2016』では,高危険群に腹部超音波(US)を施行し,軽微な膵管拡張,膵囊胞病変などを認めた場合は膵全体の画像を俯瞰可能な MR(I MRCP),超音波内視鏡(EUS)を行うことを提案している.腫瘤性病変の場合にはEUS ガイド下穿刺吸引法(EUS-FNA)を,腫瘤がなく膵管の異常所見がみられる場合には内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)および膵液細胞診が提案されている.Stage0,Ⅰを集積した成績ではEUS の高率な腫瘍描出率,US の高率な膵管拡張が報告され,ERCP 細胞診とEUS-FNA を補完的に用いることで,高率に正診可能である.また一部の地域から,病診連携を生かした早期診断における取組みの成績が報告されている.miRNA など各種マーカーの研究は途上であり,今後の課題である.
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医学のあゆみ 268巻11号, 901-906 (2019);
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膵癌に対する外科治療は長期生存を得る唯一の治療とされてきたが,その治療成績は不良であった.化学療法の進歩により,外科治療は集学的治療のひとつの(ただし非常に重要な)要素と位置づけられる.周術期補助療法は必須であり,補助療法と一体となった外科治療(集学的外科治療)が膵癌の治療成績を向上させる王道である.いくつもの無作為化比較試験の結果から,術後補助化学療法が確立されており,わが国ではS1単独療法が切除膵癌の標準治療である.一方で術前補助療法は多くの探索的臨床試験で有効な可能性が示唆されているが,いまだ確立されたエビデンスがない.しかし今後,比較試験の結果が公表される予定であり,術前補助療法のエビデンスが確立して,切除可能膵癌に対する治療のパラダイムシフトが起こることが期待される.
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医学のあゆみ 268巻11号, 907-912 (2019);
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切除境界(borderline resectable:BR)膵癌とは,手術先行による外科的切除を施行しても高率に癌が遺残し,生存期間延長効果を得ることができない可能性があるものと定義されている.BR 膵癌に対する治療戦略として,手術先行ではなく術前治療の有効性を示す報告が増加している.2018 年に,韓国の多施設共同無作為比較試験によって,BR 膵癌に対する術前治療の有効性が証明された.また最近では,遠隔転移を伴う切除不能膵癌の生存期間延長に効果のあったFOLFIRINOX 療法と,ゲムシタビン+ナブパクリタキセル(GnP)療法をBR 膵癌の術前治療として組み入れる臨床試験も行われている.しかし,①術前治療期間を含めた至適レジメン,②化学療法あるいは放射線化学療法の選択,③BR 膵癌において門脈浸潤のみの症例と動脈浸潤のある症例の治療方針の区別,など解決しなければならない問題は多い.
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医学のあゆみ 268巻11号, 913-916 (2019);
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近年,転移性膵癌に対して5-FU+leucovorin+irinotecan+oxaliplatin(FOLFIRINOX)療法と,gemcitabine+nab-paclitaxe(l GnP)療法の有効性が証明され,その良好な治療効果から局所進行膵癌に対しても広く使用されている.Conversion surgery は,化学(放射線)療法施行後にdown stage によって治癒切除可能となり切除を行うことであり,これまではおもに局所進行膵癌で検討されてきた.これらの腫瘍縮小効果が得られる化学療法の登場により,転移性膵癌でも遠隔転移巣が消失し,一定期間コントロールされていれば,原発巣を切除することにより長期生存,あるいは治癒が得られる可能性がある.しかし,これまで局所進行膵癌,転移性膵癌に対するconversion surgery の報告は単施設や少数例の検討でしかなく,さらに生存期間の比較は実際に切除された患者と切除できなかった患者の比較であるため,化学療法を継続することでも同等の予後が得られるかもしれない.現在,日本,韓国,中国でFOLFIRINOX 療法,GnP 療法後に切除可能と判断された患者を対象に,conversion surgery を企図して,開腹手術を施行された患者と化学療法を継続した患者を対象とした後ろ向き観察研究が計画されている.
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医学のあゆみ 268巻11号, 917-921 (2019);
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局所進行膵癌は,明らかな遠隔転移はみられないが,動脈浸潤を含む広範な局所進展のために根治切除不能と病期診断された膵癌であり,膵癌全体の約3 割を占める.標準治療は化学療法,あるいは化学放射線療法である.化学放射線療法の併用抗癌剤は,海外ではカペシタビン,日本ではS1 が主流である.しかし,国内外を問わず化学放射線療法の治療レジメンは標準化されていない.また,膵癌の化学放射線療法に習熟している医師や施設も限られている.したがって,まずは化学療法導入を考慮するとよい.化学療法のレジメン選択は遠隔転移膵癌と同様に考える.一般的に,忍容性があり,治療効果が見込める間は化学療法を継続する.しかし,治療経過によっては化学放射線療法やコンバージョン手術への移行を考慮してよい.このときの治療切り替えタイミングに関するエビデンスはなく,根治をめざした集学的治療の組み立ては,現状では医師の経験と技量に依存する一種のアートである.
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医学のあゆみ 268巻11号, 923-926 (2019);
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遠隔転移を伴う膵癌は,根治が困難で長期生存も限られているきわめて難治性のがんである.近年,FOLFIRINOX(FFX;5FU・ロイコボリン・イリノテカン,オキサリプラチン併用療法)やGemcitabine+nab-Paclitaxe(l GnP)といった新規薬剤・治療法の開発により,着実に長期予後は改善してきている.両者の使い分けについては依然重要な臨床課題である.また,さらなる治療成績改善を期待して新規薬剤開発が行われているが,現状を大きく打破する薬剤開発に至っていないのも現状である.本稿では,膵癌化学療法それぞれのエビエンスを説明し,最近の動向について概説する.
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医学のあゆみ 268巻11号, 927-932 (2019);
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進行膵癌における一次化学療法で進行した症例では,performance status(PS)など患者の状態がよければ二次化学療法を選択することとなる.2013 年のFOLFIRINOX の承認までは長らくゲムシタビン(GEM)単独療法が標準治療であり,二次化学療法レジメンはS-1 を中心としたフルオロウラシル関連レジメンが中心であった.現在では,FOLFIRINOX などフルオロウラシル関連レジメンが一次化学療法として選択された場合には,GEM ベースレジメンを選択することとなる.さらに,マイクロサテライト不安定性を有する症例ではペムブロリズマブも選択肢となる.
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連載
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医学・医療におけるシミュレータの進歩と普及 13
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医学のあゆみ 268巻11号, 939-946 (2019);
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◎近年シミュレーションによる心肺蘇生のトレーニングコースが広く開催されている.トレーニング方法の改良に伴い,心肺蘇生マネキンも簡便で,さまざまな機能を持つものが開発された.2004 年にAED の市民使用が認められて以来,心肺蘇生とAED のトレーニングはセットにして行われるようになった.心肺蘇生は1960 年代に,胸骨圧迫,口対口人工呼吸による心肺蘇生が普及したのに伴い,心肺蘇生のシミュレータが開発された.初期には人工呼吸を重視したものであったが,現在では胸骨圧迫を重視したものとなった.蘇生シミュレータは,従来からの全身のマネキンシミュレータから,講習会の進め方の変化から上半身のシミュレータが中心となった.また,簡易型シミュレータはDVD とセットとされ,学校の授業や,短時間のトレーニングで多く使用されている.さらに,胸骨圧迫の評価のためのデバイスもある.AED トレーナーは2004年以降,急速に普及した.
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NEW 健康寿命延伸に寄与する体力医学
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医学のあゆみ 268巻11号, 947-948 (2019);
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健康寿命延伸に寄与する体力医学 1
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医学のあゆみ 268巻11号, 949-954 (2019);
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肥満の原因は成人期の食生活の乱れと考えられてきた.しかし,小児肥満の8 割が成人肥満に移行することが判明し,肥満は2 歳時点から注意が必要といわれるようになったいま,成人期の肥満は「幼少期に身に着けてしまった悪い食習慣」が原因と考えられるようになった.一方,妊娠期の栄養摂取が不足すると胎児は低栄養に曝され,この環境に耐えられるように胎児はエネルギー倹約体質に変わる.このような児は小さく生まれるため,母親は大きく育てと食事をたくさん与えがちで,倹約体質ゆえにエネルギーを溜め込んで肥満,さらには生活習慣病になっていく.この考え方をDOHaD(成人病の胎児期発症起源)という.そしてその生物学的基盤が,エピジェネティクス(DNA の化学修飾を拠り所にする遺伝子の調節メカニズム)である.翻って,わが国の妊婦はダイエット志向が強く,栄養摂取不良といわれている.そのため,生まれてきた子が成人する頃には肥満者の増加と生活習慣病の蔓延が危惧されている.先天性エピジェネティクス疾患のひとつに,肥満を主徴とするPrader-Willi 症候群がある.近年,早期発見・早期介入が徹底し,肥満と生活習慣病が予防できるようになった.この先制医療戦略はわが国の肥満対策の参考になるかもしれない.その実現のためには早期発見・早期指導の担い手となる保育士の医学的高度化が必要と思われる.
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 268巻11号, 933-934 (2019);
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呼吸器内科学
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医学のあゆみ 268巻11号, 935-936 (2019);
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神経内科学
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医学のあゆみ 268巻11号, 937-938 (2019);
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FORUM
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医師のバーンアウト(燃え尽き症候群)をふせぐためには?― 脳神経内科領域の取組みから学ぶ 5
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医学のあゆみ 268巻11号, 955-957 (2019);
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燃え尽き症候群は,ヒューマンサービス業において使命感に燃える人を襲う病といわれ1),高度の対人共感性を必要とし,極度に心理的疲労を伴う援助職に多いとされる.看護師においては古くから研究が行われており,近年も燃え尽き症候群の研究は増加傾向にある.著者がバーンアウトという言葉をはじめて聞いたのも当院の看護師からであった.著者が働いている神経難病病棟は徐々に障害が重症化し,経口摂取が不能となり,人工呼吸器を装着するような患者が多数入院している病棟である.そのような病棟で働く看護師は,ケアのために体力を使うことはもちろん,患者・家族の訴えを傾聴・共感し,患者のために一生懸命になり,仕事の範囲を超えて献身的に働いているスタッフも多かった.進行性の疾患であっても寄り添い,患者・家族の力になれることは医療者の喜び・やりがいであるが,傍から見ていると,一生懸命になりすぎ,時間外もいとわず働き,今思えばバーニングアウトしている状況であった.病棟では看護師がバーンアウトしないよう,患者から病棟への感謝の手紙などを皆で共有し,仕事へのやりがいを高める工夫を行っていた.近年,医師においてもバーンアウトは半数以上にみられ,増加していることが報告されている2).とくに脳神経内科では,バーンアウト率は約6 割と,他科に比べ高率であることが報告された3).女性医師では燃え尽き症候群がどのような現況にあるのかを概説し,要因と求められる対策について私見を述べる.
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医療社会学の冒険弘 11
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医学のあゆみ 268巻11号, 958-962 (2019);
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