医学のあゆみ
Volume 270, Issue 5, 2019
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【8月第1土曜特集】 メタボローム解析UPDATE
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- 基礎
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老化研究とメタボロミクス
270巻5号(2019);View Description Hide Descriptionグローバルな高齢化の波のなか,老化先進国であるわが国では,ヒト老化の多様化が観察される.従来の暦年齢とは違う,高齢者・老化の再定義が必要と思われる.一方,おもにモデル動物では代謝に注目した老化仮説として,ミトコンドリア仮説やカロリー制限仮説が提唱されている.しかし,ヒトははるかに寿命が長く,多彩で複雑な因子の影響を受けるため,独自のアプローチを必要とする.ヒト血液メタボローム解析は,個人差を伴う複雑な変化を網羅的に捉えることが可能であり,広い視野での老化度評価に適していると思われる.著者らは,全血メタボローム網羅的解析により,14 個(分画した血漿,血球を含めると43 個)の老化マーカーとよべるメタボライトを発見し,ヒト飢餓時の新たな代謝応答として抗酸化,TCA 回路関連,シグナル系などのメタボライトを見出した.今後これらの技術を応用することにより,ヒト老化研究にさらなる貢献が期待できる. -
メタボロゲノミクスが解き明かす腸内細菌叢由来代謝物質の機能
270巻5号(2019);View Description Hide Descriptionわれわれの腸管内には種類にして約千種類,数にしておよそ40 兆個にも及ぶ腸内細菌が生息していると見積もられており,それらは腸内でさまざまな代謝物質を産生している.正常な腸内細菌叢が宿主の恒常性維持に寄与する一方で,腸内細菌叢のバランスが乱れると,腸管関連疾患のみならず,アレルギーや代謝疾患といった全身性疾患の発症にも関与することが報告されている.近年の研究で,それらの発症メカニズムに腸内細菌叢から産生される代謝物質が関与していることが明らかになりつつある.本稿では,腸内細菌叢の恒常性維持機構や,その破綻に伴う腸管関連疾患や全身性疾患について,腸管腔内を含む生体内の代謝物質情報を網羅的に解析するメタボロミクスと,腸内細菌叢の遺伝子情報を網羅的に解析するメタゲノミクスの統合情報から,包括的に腸内細菌叢の機能理解をめざすメタボロゲノミクスアプローチによる近年の取り組みについて紹介する. -
肥満とメタボロミクス
270巻5号(2019);View Description Hide Description21 世紀に入り肥満人口は世界的に急増し,肥満に対する有効な治療法・予防法の確立は急務である.肥満に伴いさまざまな臓器で糖・アミノ酸・脂肪酸代謝のリモデリングが生じ,血液・臓器中の代謝物の発現プロファイルが変化する.近年,メタボロミクス解析技術が著しい進歩を遂げ,これらの代謝的変容が持つ病的意義がさまざまな疾患で明らかになりつつある.本稿では,代謝リモデリングという観点から肥満の病態をとらえ,その病的意義について最新の知見も踏まえ概説したいと思う. -
リピドミクスからみえてきた酸化脂肪酸によるマスト細胞の制御機構
270巻5号(2019);View Description Hide Description先進国において,アレルギー疾患は大きな社会問題となっている.アラキドン酸(AA)に代表される高度不飽和脂肪酸は,種々の酵素による代謝を受けて多種多様な脂肪酸メディエーターへと変換され,炎症に深く関わることが広く知られている.一方で分析系の発達により,エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)といったω3 脂肪酸も酸化されて多種多様な生理機能を発揮することがわかってきたが,アレルギー疾患に深く関わるマスト細胞が産生する酸化脂肪酸の網羅的な解析はされていなかった.近年,著者らは質量分析によるリピドミクス解析を行い,マスト細胞が産生する酸化脂肪酸を網羅的に解析した.その結果,マスト細胞はエポキシ化ω3 脂肪酸の産生を介し,免疫グロブリンE(IgE)-抗原刺激依存的なマスト細胞の活性化を制御していることを発見した.さらに,エポキシ化ω3 脂肪酸は,酸化リン脂質選択的細胞内ホスホリパーゼA2(PLA2)であるPAF-AH2 を介した新しい脂肪酸メディエーター産生経路によって産生されることを見出した. -
皮膚疾患とリピドミクス
270巻5号(2019);View Description Hide Description皮膚に存在する脂質は,炭素鎖長や不飽和度,水酸基の位置や数など構造的に多様性に富んでおり,各脂質分子が独自の機能を発揮することで皮膚の恒常性維持に寄与している.アトピー性皮膚炎や乾癬などの皮膚疾患患者では,バリア機能の低下や免疫系の活性化,ケラチノサイトの増殖・分化異常などさまざまな皮膚機能異常を生じると同時に,病変部位において脂質バランスが変化していることが古くから知られており,病態との関連が疑われている.皮膚疾患の病態と脂質代謝変動との因果関係を理解するためには,リピドミクスによる包括的な脂質解析を行うことが肝要であり,これまでに行われた数多くの研究から各疾患における脂質代謝変動が明らかになりつつある.本稿では,これまで報告された主要な皮膚疾患におけるリピドミクス解析について,最近の知見も含めて概説する. -
がん幹細胞とメタボロミクス
270巻5号(2019);View Description Hide Descriptionがん幹細胞は悪性腫瘍の母核である.その役割に合わせて,エネルギーは絶え間ない増殖のみならず,環境の変化がもたらすさまざまなストレスの克服に利用される.近年のメタボロミクス解析の結果から,がん幹細胞は状況に応じて解糖系,酸化的リン酸化,さらに脂質代謝や代替基質も効率的に使い分けていることが明らかになり,柔軟な代謝像が浮かび上がってきた.代謝不均一性や可塑性が課題として見えてきた一方,分化したがん細胞との違いの解析から,がん幹細胞のおもな代謝経路,とくに酸化的リン酸化を標的とする治療が延命効果につながるがん腫が確認された.今後は,メタボロミクス解析をさらにシングルセルレベルまで広げ,がん幹細胞の成立機構に起因する代謝変化の解明と,それに基づく新規治療戦略および腫瘍形成の早期検出マーカーの開発が期待される. -
造血幹細胞とメタボロミクス
270巻5号(2019);View Description Hide Descriptionわれわれの体を構成する細胞のうち,過半は血液細胞である.この大量の血液細胞を供給するのは骨髄の造血幹細胞である.造血幹細胞がその機能を発揮する際には,細胞内の代謝プログラムを調節・利用して,必要なATP などの代謝物を得ると考えられている.造血幹細胞は,定常状態では骨髄の微小環境の低酸素分圧を利用して嫌気性解糖を活性化して細胞周期を静止期にとどめる一方,感染や移植などのストレス負荷時にはプリン体生合成経路を賦活化して増殖を開始することなどが明らかになってきている.本稿では,これらの解明に寄与したメタボロミクスの貢献と展望について紹介する. -
がん細胞の代謝とCNC 転写因子NRF1,NRF2
270巻5号(2019);View Description Hide Descriptionがんは正常細胞とは異なる特徴的な代謝状態を示し,細胞の生存や増殖におけるアドバンテージを獲得している.NRF2 は酸化ストレス応答性の転写因子として有名であるが,がん細胞においてはグルコース・グルタミンの代謝経路を変換し,がん細胞増殖に寄与する.NRF2 と同じCNC 転写因子群に属するNRF1 は,おもに酸化ストレス応答に貢献するNRF2 とは異なり,プロテアソーム・サブユニット遺伝子を活性化してプロテオスタシスの維持に貢献する.最近の著者らの研究から,グルコースとグルタミンを利用するヘキソサミン経路で産生されるウリジン二リン酸N-アセチルグルコサミン(UDP-GlcNAc)の量が,NRF1 の蛋白質量を制御する重要な鍵となっていることが明らかになった.本稿では,NRF2 によるがん細胞の代謝変換機構と,がん細胞に特徴的な代謝物であるUDP-GlcNAc と,それを基質とするO結合型β-N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)化翻訳後修飾によるNRF1-プロテアソーム活性制御について紹介する. -
メタボローム,リピドーム解析からみえてきたオートファジーの生理機能
270巻5号(2019);View Description Hide Descriptionオートファジーは一般に非選択的分解経路と考えられてきたが,可溶性蛋白質,液-液相分離した顆粒,凝集体,核酸,さらには細胞小器官をも選択的に認識・隔離・分解することが明らかになり,その生理作用が注目されている.本稿では,まずオートファジーによる選択的な基質分解機構を概説し,後半に著者らが最近見出したオートファジーによる可溶性蛋白質p62/SQSTM1 とNCoR1 の選択的分解とメタボローム,あるいはリピドーム解析からわかったその生理作用について紹介する. -
エクソソーム研究とメタボロミクス
270巻5号(2019);View Description Hide Description近年,さまざまな細胞が放出するエクソソームに注目が集まっている.とくにがんの領域においては,がん細胞由来のエクソソームが核酸や蛋白質を輸送して,がんの遠隔転移や血管新生に関与している可能性が指摘されている.これまでに,エクソソーム内に存在するDNA,メッセンジャーRNA(mRNA),マイクロRNA(miRNA),蛋白質などの分子の研究が精力的に行われてきた一方,エクソソーム内に含まれる代謝物に焦点を当てた研究はほとんど行われてこなかった.この原因のひとつは,一般的な方法で回収できるエクソソームが微量であり,さらにこのなかに含まれる代謝物を高感度に測定できる方法が未確立であることがあげられる.本稿では,エクソソーム中に含まれる代謝物を測定するために考慮すべき条件について概説するとともに,実際に異なる酸素濃度条件で培養した膵がん培養細胞が放出したエクソソームのメタボローム解析を行ったので,その結果を紹介する. -
トランスオミクス解析を用いた遺伝子発現によるインスリン依存性代謝制御の解明
270巻5号(2019);View Description Hide Descriptionインスリンは蛋白質リン酸化や遺伝子発現制御を含む複雑な細胞内ネットワークを介して,代謝をはじめとするさまざまな細胞機能を制御する.血中インスリンは摂食状態により異なる濃度を示しうるが,これらの血中インスリン濃度により細胞内ネットワークがどのように使い分けられているかは不明な点が多い.著者らは,複数濃度のインスリンで刺激したラット肝がん由来Fao 細胞からメタボロームおよびトランスクリプトームデータを取得し,これらを組み合わせることで転写制御を介して代謝を制御する多階層制御ネットワーク(=トランスオミクスネットワーク)を構築した.また,各分子のインスリンへの感受性や応答速度を推定することで,これらのネットワークが血中インスリン濃度によって,どのように選択的な制御を受けるかを検証した.これにより遺伝子発現や代謝を含むさまざまな階層の分子が,血中インスリン濃度の違いにより選択的に使い分けられていることが示唆された. - 疾患とメタボローム解析
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がん代謝とマルチオミクス
270巻5号(2019);View Description Hide Descriptionマルチオミクスは,ゲノム,エピゲノム,トランスクリプトーム,プロテオーム,メタボロームなどを対象とするさまざまな網羅的解析を組み合わせた研究手法である.次世代シーケンサー(NGS)や質量分析計(MS)を利用することにより,オミクス解析の正確性,検出感度,解析効率が飛躍的に進歩してきた.このようなマルチオミクス解析の測定技術により,がんをはじめとしたさまざまな疾患の全体像を捉えることが可能となってきている.著者らは,大腸がん患者の正常組織と腫瘍組織,大腸がん細胞株を用いたマルチオミクス解析を実施し,転写因子MYC が,がん特有の代謝が引き起こされる過程で中心的な役割を担っていることを見出した.さらに,MYC 標的の代謝酵素ががん治療の標的となりうることを明らかにした.本稿では,マルチオミクスの各分野の技術の進歩とがん代謝研究における応用について解説する. -
疲労および慢性疲労症候群のメタボロミクス研究
270巻5号(2019);View Description Hide Description現代の管理・競争社会ではストレスが蔓延しており,継続的なストレス曝露は疲労の蓄積をもたらす.慢性的な疲労状態に陥ると,注意や集中力,ひいては仕事効率の低下を生じ,休職や退職に至るケースもある.社会的・経済的損失の観点からも慢性疲労の予防,早期対処を可能にする疲労バイオマーカーの開発が求められる.本稿では,モデル動物を用いた疲労研究における知見とともに,長期間にわたる原因不明の強い全身倦怠感を主訴とし,認知機能障害や慢性的で広範な痛みを随伴することもある慢性疲労症候群(CFS)におけるメタボローム解析研究で確認された,代謝動態に関する最新知見を紹介する. -
感染症脳症とメタボロミクス
270巻5号(2019);View Description Hide Descriptionインフルエンザ脳症やヒトヘルペスウイルス6 型(HHV-6)脳症は,意識障害,痙攣などで発症する重篤な疾患である.病態の解明および早期診断マーカー開発を目的として,患者の血清メタボローム解析を試みた.インフルエンザ脳症症例の解析では,キヌレニンを含む5 種類の分子濃度が有意に変動し,病態に関与するバイオマーカー候補と考えられた.キヌレニン代謝経路の下流産物であるキノリン酸は神経毒性があるため,より多くの症例群で解析した結果,血清キノリン酸の有意な上昇も確認した.HHV-6脳症の解析では,キヌレニン,キノリン酸を含む11 種類の分子濃度に有意差があり,興味深いことにキヌレニンとキノリン酸が共通のバイオマーカー候補と判明した.In vitro 実験モデルにて検討した結果,キノリン酸が脳血流関門を傷害することが示された.キヌレニン検査キットは欧米で神経疾患への臨床応用が進められており,迅速検査が実現すればキノリン酸の代用マーカーとして脳症診療で役立つ可能性がある. -
心不全,慢性腎臓病のメタボローム
270巻5号(2019);View Description Hide Description心不全時は,不全心筋組織においてさまざまな代謝リモデリングが生じる.メタボローム解析および従来からの研究法の統合により,脂質代謝,解糖系,ミトコンドリアの代謝産物の変化が明らかになり,新たな治療標的の探索が行われている.慢性腎臓病(CKD)においては,血中・尿中の代謝産物のメタボローム解析の報告があるが,けっして十分とはいえず,本領域のさらなる発展が期待される. -
メタボロミクスを活用した職業性胆管がんの研究―トランスポーターに着目した生体外異物の体内動態制御の視点から
270巻5号(2019);View Description Hide Description職業がんは古来より知られる代表的な職業病である.近年,ヒトにおける発がん性が認識されていなかった工業用化学物質への曝露が原因と考えられる職業がんが発生し,大きな社会問題となった.そのひとつが塩素系有機洗浄剤を長年使用してきた印刷事業場における胆管がんであり,1,2-ジクロロプロパン(1,2-DCP)が原因物質であると考えられている.ところが,1,2-DCP への大量曝露と胆管がんの発症とをつなぐ分子機序は未解明のままであった.トランスポーターを起点とした物質の体内動態制御機構の研究を専門とする著者らは,1,2-DCP に由来して胆汁排泄される物質が胆管がんリスクに関与しているとの着想のもと,メタボロミクスを活用した検討を進めた.本稿では,最近の知見を交えながらその概要を記述する.本稿で紹介するアプローチは,化学物質が有する危険性を物質動態変動と代謝物構造の観点から類推することを可能とするため,今後,職業がん対策にも貢献することが期待される. -
認知症とメタボロミクス
270巻5号(2019);View Description Hide Description疾患のメタボロミクスとバイオマーカー探索が盛んである.精神・神経疾患領域においても例外ではない.高齢者が増えて認知症は身近になったが,実はその診断は簡単なものではない.心理テストやMRI 検査のほかにもいろいろな検査が行われる.それらをもとにおおむね正確な診断がなされるが,一部診断がつきにくい症例が残る.病態を反映するバイオマーカーは多いほうがよい.特発性正常圧水頭症(iNPH)という病気がある.Alzheimer 病(AD)と類似した臨床症状を示すので両者を早期に判別することは難しい.高齢になれば両方を併発していることもある.この病気の場合,脳内に貯留する脳脊髄液(CSF)を抜き取る手術で回復が見込める場合がある.早期に判別するバイオマーカーがあれば適切な介入が可能になる.本稿では,認知症のCSF のメタボローム解析から得られた両者の判別マーカーを中心に,認知症のメタボローム研究の一端を紹介する. -
生体試料の腫瘍マーカー探索
270巻5号(2019);View Description Hide Descriptionさまざまな治療方法の革新的な発展により,各がんの治療成績は飛躍的に伸びてきた.しかし,日本では超高齢社会に向かっており,さらに全体的な罹患者数の増加が懸念される.このため,低コストかつ低侵襲性な新しい検査によって早期発見・早期介入を実現することが重要である.がんにおける代謝異常を利用して血中代謝物の濃度において,がんに特異的な変化を見つけて新たな分子マーカーを探索する研究は多数行われている.網羅的に代謝物を測定する技術であるメタボロミクスの測定機器の発展により,以前よりさらに網羅的に,かつ高感度な測定ができるようになり,そのため今までに検出できなかった新たなマーカーを探せる可能性も高くなってきた.多くの変数を同時観測できるため,人工知能の機械学習なども組み合わせてより高精度な患者識別などができるようにもなってきた.しかし,低侵襲に採取できる検体であればあるほど,その検体の取り扱い,検体処理,データ解析などを慎重に厳しく評価しなければ再現性の低い結果となり,実際の臨床で利用できるレベルには到達しない.本稿では,マーカー探索時に考慮すべき注意事項を,実例を通して紹介する. -
メタボロミクスを用いた胃潰瘍の血中バイオマーカー探索
270巻5号(2019);View Description Hide Description胃潰瘍は,臨床においても前臨床においても頻繁に報告されている副作用のひとつである.しかし,臨床において胃潰瘍を鋭敏に検出する血中あるいは尿中バイオマーカーは知られておらず,客観的に検出するには胃カメラなどの内視鏡検査を行うしかない.そこで,著者らは,メタボロミクスを応用して胃潰瘍を検出できる血中バイオマーカーの探索を行った.はじめに,ラット胃潰瘍モデルを用いて,ラットにおいて胃潰瘍を検出できる低分子バイオマーカーの探索およびその変動機序の解明のためメタボローム解析を行った.次に,モデル動物で発見したバイオマーカー候補について,胃あるいは十二指腸潰瘍と診断された患者における変化を確認し,バイオマーカー候補の臨床における有用性を検討した.その結果,血中hydroxyproline 濃度の変化がラットのみならずヒトにおいても胃潰瘍の血中バイオマーカー候補として有望であることを見出した. -
メタボロームコホート研究とプレシジョンヘルス
270巻5号(2019);View Description Hide Descriptionメタボローム疫学研究は世界中の多くのコホート研究で実施されるようになり,糖尿病,腎疾患,がんの代謝プロファイリング,あるいは高血圧,肥満,食事,身体活動などのバイオマーカーの同定といった観点で,新しい成果が報告されてきている.さらに,サンプルサイズ,異なるほかの集団で結果を検証する機会,人口学的・社会経済学的な多様性を確保するため,メタボロームコホート研究のコンソーシアム形成も行われつつある.これに伴い,メタボローム測定値の精度管理とそれを実現するための標準化が重要なテーマとなっている.最近では,多層オミクス解析とセンサーリング技術の進歩を組み合わせたプレシジョンヘルス研究も報告されはじめており,今後は,プレシジョンヘルス研究の科学的知見の創出とともに,その成果を理解可能かつ実行可能な形で社会へと還元するプレシジョンヘルスコミュニケーションも重要なテーマになると考えられる.
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