Volume 270,
Issue 6,
2019
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特集 てんかん:診断と治療の現在
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 517-517 (2019);
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 519-524 (2019);
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てんかんは,有病率が約0.5~0.8%と報告される慢性神経疾患であり,病態解明や治療の進歩に伴いその定義や分類が変遷してきた.近年,国際抗てんかん連盟(International League Against Epilepsy:ILAE)が順次発表した2014 年てんかん実用的臨床定義,2017 年てんかん発作型・てんかん症候群分類は,より実臨床に即した診療体制の整備を促すものである.疾患概念・病態に加え,疫学・医療経済も見据えた幅広い視点から,包括的なてんかん診療のあり方を考慮する必要がある.
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 525-528 (2019);
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患者が何らかの発作性エピソードを訴えている場合,問診により詳細な病歴を聴取することが最も重要である.聴取された病歴をもとに,まずそのエピソードがてんかん発作なのか非てんかん発作なのかを考えなければならない.非てんかん発作のなかで,とくに重要な鑑別疾患として,心因性非てんかん発作(PNES)がある(表1).てんかん発作は,①症状がステレオタイプで,毎回同じ症状を同じパターンで繰り返す,②発作のはじまり(オン)および終わり(オフ)がはっきりしている,③発作の持続時間は秒~分単位である,といった特徴がある.てんかん発作が疑われたら,病歴聴取で得られた発作症候からてんかん発作型を分類する.発作型分類は,1981 年に国際抗てんかん連盟(ILAE)から提唱された旧分類が長年にわたり実臨床で使われてきたが,2017 年にILAE から改訂された新分類が発表された.今後,新分類が用いられるようになる可能性がある.
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 529-536 (2019);
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てんかんの確実な診断や,部分てんかんの難治症例などに対する外科的手術の成績向上のための焦点同定と脳機能評価の必要性を背景として,てんかん診断における検査法はめざましい発展を遂げている.侵襲的・非侵襲的検査を問わず,従来の脳波検査が対象としていた周波数帯域以外も解析するwideband EEG の臨床応用も進み,新たな画像解析技術やてんかん遺伝子の発見も次々と加わっている.非侵襲的検査法として,硬膜下電極以外に定位的深部脳波がわが国でも拡大していくことが予想される.また,電気生理学的線維追跡法として発達した皮質・皮質間誘発電位が腫瘍切除時の大脳白質温存のために利用されるようになってきた.さらに,てんかんを神経ネットワーク病と捉える観点から,神経科学研究領域で発達した数学的・工学的な検査・解析手法を応用した研究も盛んであり,今後の一般臨床への還元が期待されている.
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 537-542 (2019);
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てんかんの薬物治療を開始するにあたっては,まず“てんかんかどうか”,“全般てんかんか部分てんかんか”を診断しておくことが重要である.2018 年,てんかん診療のガイドラインが8 年ぶりに改訂された.部分てんかんの治療薬は2010 年のガイドラインではカルバマゼピン(CZB)が第一選択薬であったが,2018年のガイドラインではラモトリギン(LTG),レベチラセタム(LEV)が第一選択薬に加わっている.全般てんかんの第一選択薬がバルプロ酸(VPA)であるのは2010 年のガイドラインと変わらないが,妊娠可能年齢女性ではバルプロ酸の代わりとして,ラモトリギン,レベチラセタムが選択薬にあげられている.2018 年のガイドライン作成時の検討には間に合わなかったが,2016 年に上市されたペランパネル(PER)は部分てんかんや強直間代発作の併用薬として,ラコサミド(LCM)は部分てんかんの第一選択薬として使われはじめている.ガイドラインに沿って投薬しても薬剤抵抗性を示す場合は,診断が正しかったかどうかに立ち返る必要がある.
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 543-547 (2019);
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海馬硬化を伴う内側側頭葉てんかん,器質病変が検出された部分てんかん,および片側半球の広範な病変による部分てんかんでは,根治術による発作消失率が高いので薬剤抵抗性であれば積極的に外科治療を考慮する.てんかん治療初期の段階で,脳波検査だけでなく高解像度のMRI を行って器質病変の有無を確認することが重要である.外科治療の適応のある人では早期の外科治療を勧める.とくに小児では,発達の停止や退行を防止する観点からも早期の外科治療を考慮する.てんかんの外科治療が奏効するためには術前評価がたいへん重要である.緩和術としては脳梁離断術や迷走神経刺激療法があり,今後,脳深部刺激,反応性発作起始領域刺激(RNS)などの導入に期待が寄せられている.てんかんの外科治療は究極的には生活の質(QOL)の向上をめざすものであり,てんかん包括医療の枠組みのなかで行われることがのぞましい.
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 549-553 (2019);
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高齢者てんかんは,人口の高齢化に伴い増加傾向にある.運動症状が目立たない意識減損発作が多く,認知症との鑑別が必要な場合もある.また近年,原因疾患としての認知症との関連性が注目されてきている.再発率は若年者より高いが,少量の薬剤で有効なことがあり,若年者に比べて発作抑制率は高い.抗てんかん薬の服用開始時は少量から緩徐に増量する.抗てんかん薬は長期に服用する必要があり,副作用が少なく忍容性が高い抗てんかん薬を選択する.
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 555-561 (2019);
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てんかんの原因は多岐にわたり,腫瘍,頭部外傷,周産期脳障害,脳卒中,認知症などが知られているが,原因が明らかでないてんかんも多数存在する.一方,自己免疫性脳炎の原因として電位依存性K チャネル(VGKC)複合体やN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体など,神経細胞表面抗原に対する自己抗体が2000 年以降発見され,これらの抗体が一部のてんかん患者の病態に関与していることが明らかとなった.これらの症例では抗てんかん薬による治療に抵抗性でも,免疫療法により発作を抑制できることが特徴とされ,“自己免疫性てんかん(autoimmune epilepsy)”の存在が知られることとなった.本稿では自己免疫性てんかん,および自己免疫性脳炎の症状や検査所見,治療について概説する.また,代表的な抗神経抗体として抗VGK 複合体抗体と抗NMDA 受容体抗体と,近年注目される抗gamma-aminobutyric acid(GABA)受容体抗体について紹介する.
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 563-566 (2019);
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てんかん重積状態(SE)は,①痙攣を伴うてんかん重積と,②痙攣を伴わない脳波上の発作重積,すなわち非痙攣性てんかん重積,に分けることができる.その持続時間については,痙攣を伴う場合には5 分以上,非痙攣性の場合には10 分以上と,国際抗てんかん連盟(ILAE)の2015 年の新基準では定義されている.てんかん重積は早急に止めないと頓挫しづらくなり,さらに脳への不可逆的な変化をもたらす.その対応として,呼吸循環を安定させたうえベンゾジアゼピンを用い,その後,抗てんかん薬を使用する.60 分以上継続する場合には脳波モニタリングのうえ,麻酔薬の使用を考慮する.
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連載
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医学・医療におけるシミュレータの進歩と普及 27
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 572-575 (2019);
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◎中心静脈カテーテル(CVC)留置術は,医療を行う上で重要な手技である.しかし.合併症の危険性が高く,従来より合併症を減らすため,多くの論文が発表されている.重大事例の多発に対応して,CVC 穿刺挿入に伴う合併症とその要因の分析を行った.その結果,合併症は10.9%で,気胸0.9%,動脈穿刺8.2%,感染症1.8%であった.試験穿刺3 回以上,本穿刺3 回以上,総穿刺5 回以上で合併症発生率は有意に高かった.医師の臨床経験年数では,2~5 年目の医師13.5%と常勤医師2.9%と有意の差が認められた解剖学的指標から穿刺する“ランドマーク・ブラインド法”の手技向上のため,CVC 留置ファントムを製作した.財団法人日本医療機能評価機構の認定病院患者安全推進協議会のCVC 検討会による「CVC に関する指針(2004 年)」でも推奨されている.
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健康寿命延伸に寄与する体力医学 15
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 576-581 (2019);
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免疫系は加齢に伴って機能が低下し,とくに獲得免疫系でその変化が顕著に現れる.獲得免疫の加齢変化の主な要因として,胸腺の萎縮によるT 細胞数の減少,T 細胞やB 細胞の機能低下などが考えられている.粘膜面の獲得免疫として主要な役割を担っている抗体についても,加齢に伴う分泌量の低下がみられ,風邪やインフルエンザなどの上気道感染症の罹患リスクと関連している.とくに高齢者では,介護予防や健康寿命延伸の観点から,これらの感染症の予防は重大な課題である.免疫老化の程度は人によって個人差があるが,適度な身体活動や運動を継続的に行うことによって,免疫機能低下の軽減または改善が可能であることが,多くの研究で報告されている.本稿では,身体活動や運動が獲得免疫系に及ぼす影響やその運動効果のメカニズムについて,最新の知見を踏まえて紹介する.
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TOPICS
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免疫学
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 567-568 (2019);
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神経精神医学
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 568-569 (2019);
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循環器内科学
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 570-571 (2019);
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FORUM
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 582-585 (2019);
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パリから見えるこの世界 82
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医学のあゆみ 270巻6・7号, 586-590 (2019);
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