Volume 270,
Issue 8,
2019
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特集 ファイトケミカルの最前線
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医学のあゆみ 270巻8号, 593-593 (2019);
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医学のあゆみ 270巻8号, 595-599 (2019);
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生薬および漢方製剤などの天然物医薬品は,複雑系成分から構成され,多様で包括的な作用を示す.また,生薬および漢方製剤は日本薬局方に収載され,国の製造販売承認を受けて有効性,安全性および品質が確保されたうえで,わが国の正規医療の一翼として機能している.一方で,医薬品開発の面では,この多様性を持つ多成分系という特徴がおおむね単一成分からなる化学医薬品の扱いを想定して構築された現行の薬事制度にうまく適合することが簡単ではないため,この30 年以上,医療用漢方製剤の新しい承認が生まれていない.本稿では,天然物医薬品を取り巻くこれらの現状とその臨床応用における留意点,そして承認申請ガイドラインの策定を含む新薬開発に向けた動きについて解説する.
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医学のあゆみ 270巻8号, 601-604 (2019);
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カンプトテシン(CPT)は,植物由来の抗がん性アルカロイドであり,その誘導体が抗がん剤として臨床使用されている.CPT はトポイソメラーゼⅠ(Top1)を阻害することにより細胞死を誘起し,抗がん活性を示す.CPT 生産植物のCPT に対する自己耐性は,標的蛋白であるTop1 のアミノ酸変異によるものであった.そして,このアミノ酸変異は薬剤耐性を獲得したがん細胞にみられる変異と同じであった.さらに,複数のCPT 生産植物のTop1 の比較から,種分化の過程でCPT 生産能とTop1 のCPT 耐性が適応共進化してきたことが推定された.
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医学のあゆみ 270巻8号, 605-609 (2019);
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認知症では,脳内の神経回路網の破綻が記憶障害に代表される中核症状や,徘徊・妄想などの周辺症状を引き起こす.神経回路網が破綻した後からの修復を可能にする活性を求めて,初代培養大脳皮質神経細胞にアミロイドβを処置して誘発する軸索萎縮・樹状突起萎縮に対する効果をスクリーニングしてきた.萎縮後からの処置で改善効果を示すいくつかの生薬エキスのなかで特筆すべきものがdiosgenin である.Alzheimer病モデルマウスにdiosgenin を投与すると,記憶障害が顕著に改善し,その際,脳内の軸索変性が抑制され,投射すべき場所への軸索再伸展も起きた.また,diosgenin のシグナルパスウェイの起始点として1,25 D3-MARRS が同定された.さらに,diosgenin を豊富に含むヤマイモエキスの服用で認知機能が向上することがヒト試験で確認された.Diosgenin の活性と薬理メカニズムを生かしたファイトケミカル創薬の展開が期待される.
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医学のあゆみ 270巻8号, 611-616 (2019);
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茶は何千年もの間,薬用として使われてきた植物で,さまざまな成分を含み,多様な機能性を有している.そのなかでも農業・食品産業技術総合研究機構(以下,農研機構)では,抗アレルギー作用,酸化低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール低下作用,血糖上昇抑制作用,眼精疲労軽減作用をもつ茶成分や茶品種を探索し,作用メカニズムを解明した.そして,ヒト介入試験を行い,最適な製造条件を解明しつつ茶産地を新興し,機能性を活用した食品や医薬部外品の開発を民間企業との共同研究で行ってきた.また,2015 年4 月から施行された機能性表示食品制度に則り,茶葉ティーバッグなどの機能性表示食品を企業と連携して開発してきた.ここでは,そのような緑茶の健康機能性,とくに抗アレルギー作用と生活習慣病予防作用の解明研究と,それを活用した製品開発について紹介する.
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医学のあゆみ 270巻8号, 617-620 (2019);
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一般的に,含硫化合物には化学反応性が高いものが多く,天然の含硫化合物のなかにも特異な生物活性を示すものが多く存在する.アブラナ科植物が含有するグルコシノレートや,ヒガンバナ科ネギ属植物が含有するアリイン類は,これらの植物の特徴的な香味の原因となる含硫化合物である.近年の研究により,グルコシノレートが癌の予防や改善に,アリイン類が癌や循環器系疾患の抑制作用に加えて加齢による認知機能低下の予防や改善に役立つことが示された.本稿では,グルコシノレートとアリイン類の健康機能発揮のメカニズムと,これら含硫化合物を含む植物の生薬やサプリメントとしての利用状況について概説する.
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医学のあゆみ 270巻8号, 621-626 (2019);
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漢方薬による副作用で頻度の高い甘草による偽アルドステロン症の原因物質について検討した.甘草に含まれるグリチルリチン(GL)は,腸内細菌によりグリチルレチン酸(GA)に代謝された後に吸収され,その後,肝でグルクロン酸抱合反応を受けて3-モノグルクロニルグリチルレチン酸(3MGA)へと代謝される.3MGAは,正常時は多剤耐性関連蛋白質(MRP)2 で胆汁排泄され血中には現れないが,MRP2 機能不全時には血中に現れ,尿細管分泌により尿中へ排泄される.このときに,尿細管細胞内にある2 型11βヒドロキシステロイド脱水素酵素(11βHSD2)を阻害することが,偽アルドステロン症の原因とされてきた.その後,著者らはMrp2 欠損ラットの尿から別のGL 代謝産物3 種を単離同定,それらの血中・尿中濃度は3MGA よりも高く,3MGA と同様の体内動態挙動を示した.甘草により横紋筋融解症を発症した偽アルドステロン症患者の血中から3MGA は検出されず,3-スルフォニルグリチルレチン酸を高い濃度で検出した.本化合物が偽アルドステロン症の真の原因物質である可能性が高いと予想される.
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医学のあゆみ 270巻8号, 627-632 (2019);
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漢方薬は多数の成分から構成され,生体内のさまざまなターゲットに作用する,多成分-多標的の薬剤である.その複雑な作用を理解するためには,漢方薬によって引き起こされる生体反応とこれに関与する成分を幅広く調べる必要がある.著者らはこれらの課題に対してメタボロミクス(網羅的代謝物分析)が有用と考え,麻黄湯を題材として基礎・臨床研究を実施した.ヒトおよびラットでの血漿メタボロミクスにより,麻黄湯が血漿中の必須アミノ酸を低下させ,ドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)といった脂質メディエーターを上昇させることが明らかとなった.必須アミノ酸への作用については麻黄の主要成分であるエフェドリンの血漿中濃度と強く相関し,両者は生体内で何らかの関連があることが示唆された.メタボロミクスは漢方薬の成分と作用の関係を明らかとし,漢方薬への科学的理解を深めるための有用なツールとなると期待される.
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医学のあゆみ 270巻8号, 633-636 (2019);
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ラフマ(Apocynum venetum)は中国薬典に収載されている生薬であり,睡眠改善作用を促すことが報告されているが,臨床報告は少なく科学的に十分に証明されているとは言い切れない.本稿では,ラフマ葉抽出物(ベネトロン®)の安全性および睡眠時の脳波や睡眠状態を評価する質問票などを指標とした睡眠の質改善効果を紹介する.安全性評価の結果から,ベネトロン®(50 mg/day)の摂取は健常人に対して安全性が高いことが示唆された.日頃の睡眠の質に不満を感じている健常な日本人成人男女を対象として,ベネトロン®(50mg/day)を含む試験食品群あるいはプラセボを用いた臨床試験を実施した.結果,睡眠状態,入眠や睡眠維持に関する自覚症状の改善,および精神的ストレスの改善によると考えられる作業効率の向上が確認された本試験で得られた知見をベネトロン® の機能性確立に役立てることで,現代人のquality of life(QOL)の向上に貢献すると期待される.
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連載
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医学・医療におけるシミュレータの進歩と普及 28
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医学のあゆみ 270巻8号, 643-647 (2019);
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◎ウエットラボは心臓血管外科医がスキルを伝え,それを磨くための手段として古くから用いられている.しかし最近では,非心臓外科医に対する教育的価値が注目されている.その理由は2 つある.ひとつは多職種で構成されるハートチームでの治療方針決定には,職種間の壁を超えた相互理解が求められ,その成功の鍵は解剖学的知識のスタッフ間ギャップを減らすことだからである.もうひとつの理由は,現在広がりつつあるカテーテル治療の進歩は,肉眼的に心疾患の異常部位を観察する機会を減らし,代わりに画像診断の役割が大きくなり,その十分な解釈には解剖を深く理解することが必要だからである.非心臓外科医スタッフに開かれた新しいウエットラボには,高い教育効果が期待され,安全で確実な循環器疾患管理に必須のアイテムとしてニーズが高まっている.
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健康寿命延伸に寄与する体力医学 16
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医学のあゆみ 270巻8号, 649-653 (2019);
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ここ15 年で,定期的・習慣的な身体活動(運動)による高齢者の認知機能の改善とともに,脳の構造と機能の変容がヒトを対象とした研究で示され,身体活動による脳の健康および認知機能の改善に関するエビデンスが蓄積されつつある.本稿では,加齢に伴う認知機能の低下に及ぼす身体活動の影響のメカニズムについて,ヒト個体レベルから動物実験での細胞・物質レベルの知見まで含めて紹介する.高齢者および認知症患者における身体活動による認知機能の改善は,ミクロ(細胞・物質)レベルでの多数のメカニズムを基盤としたマクロレベルでの脳の構造・機能への影響によると推測される.そこで,まず正常加齢および認知症の概略を述べ,次いでヒト脳機能評価法による知見,最後に齧歯類をモデル動物とした実験的研究からの知見を中心に細胞・物質レベルでのメカニズムを取り上げる.
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NEW 地域医療の将来展望
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医学のあゆみ 270巻8号, 655-656 (2019);
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地域医療の将来展望 1
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医学のあゆみ 270巻8号, 657-663 (2019);
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◎今後の地域医療政策を考える上で少子高齢化と人口減少は最も重要な要素となっている.医療提供体制の変革を進めるには,地域医療構想の実現,実効性のある医師偏在対策の着実な推進,医師の働き方改革の推進が大きな課題である.昨今の地域医療政策の動向をみると,エビデンスに基づく政策立案の姿勢,都道府県と国の役割分担の明確化などに特徴がある.今後の地域医療政策の推進が実効性のあるものとなるためには,地域医療対策協議会が実のある議論ができるかといった点などが注目される.今後わが国がどのように地域医療政策を推進していくかは,日本の将来にとってはもちろん,急速な少子高齢化が進むアジアの国々にとってもおおいに参考になることから,日本が世界に貢献できる分野のひとつであり,今後とも医療政策の動向に目が離せない.
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TOPICS
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生理学
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医学のあゆみ 270巻8号, 637-638 (2019);
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神経内科学
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医学のあゆみ 270巻8号, 639-640 (2019);
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癌・腫瘍学
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医学のあゆみ 270巻8号, 640-641 (2019);
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FORUM
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医学のあゆみ 270巻8号, 664-665 (2019);
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麻酔科医の関わる診療分野は広く,術前評価と管理,術中の麻酔管理,術後管理などの周術期管理に加え,関連領域として集中治療,救急医療,ペインクリニック,緩和医療などがある.本稿では,周術期管理の動向に焦点を当てて述べることにする.周術期管理の目的は患者の予後を改善させることにある.
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医療社会学の冒険 16
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医学のあゆみ 270巻8号, 666-669 (2019);
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医学のあゆみ 270巻8号, 670-671 (2019);
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医学のあゆみ 270巻8号, 672-675 (2019);
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