Volume 270,
Issue 13,
2019
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特集 Glymphatic system
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医学のあゆみ 270巻13号, 1181-1181 (2019);
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医学のあゆみ 270巻13号, 1183-1187 (2019);
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近年,脳実質からの脳脊髄液を介した老廃物排泄に関与する経路が複数提唱された.これまで,中枢神経系においてはリンパ管が存在しないとされ,脳実質からの老廃物のクリアランスは脳室内で産生された脳脊髄液が脳室や脳槽を通過することで生じるsink 効果によると考えられてきた.しかし近年,この排泄系で新しい発見が相次いでいる.Alzheimer 病をはじめとする蛋白蓄積性の神経変性疾患では,脳内での蛋白の産生とクリアランスの不均衡が異常蛋白蓄積の要因とされ,これまでクリアランス系では分解機構に主眼が置かれていたが,近年,その排泄系に注目が集まっている.それらはglymphatic system,intramural peri-arterialdrainage pathway(IPAD),髄膜リンパ管(meningeal lymphatic vessel)である.これらの発見は,蛋白蓄積性の神経変性疾患の排泄系を介した病態理解や,新たな治療ターゲットとして期待されている.
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医学のあゆみ 270巻13号, 1189-1192 (2019);
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脳の老廃物排泄機構はglymphatic system とよばれ,近年,実験動物で発見されAlzheimer 型認知症の発症に深く関与するアミロイドβやタウの排泄に関与するといわれている.また,緑内障や正常圧水頭症との関連も示唆されている.著者らはglymphatic system のヒトでの可視化にいち早く取り組み,成果を報告してきた.この以前より,Ménière 病にみられる内耳の内リンパ水腫の画像化も長年取り組み,世界ではじめてMénière 患者において成功し,方法を確立した.内リンパ水腫の画像化成功から約12 年が経過した現在,世界中で著者らが開発した方法での内リンパ水腫の画像検査が行われるようになってきた.さらに最近,著者らは,内リンパ水腫の体積とglymphatic system の入口である基底核周囲の血管周囲腔の経静脈ガドリニウム造影剤投与4 時間後での造影効果の間に負の相関があることを報告した.著者らの示した結果はまだglymphatic system 解明の端緒にすぎないが,今後研究をさらに進め,ヒトにおいて非侵襲的に脳の老廃物排泄機構を画像で解析できるようにすることは,神経変性疾患の病態解明において大きな一歩となるであろう.
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医学のあゆみ 270巻13号, 1193-1198 (2019);
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近年,脳脊髄液(CSF)は循環しているという定説は覆され,毛細血管が産生と吸収の中心であり,脳脊髄液は心拍や呼吸により拍動と局所的な移動を繰り返していることが明らかとなった.脳脊髄液と脳組織間液(ISF)は相補的に液体交換し,脳のホメオスタシスを維持していると考えられている.脳組織間液(=脳リンパ液)の排泄経路は,1992 年にWeller らにより血管周囲排出路(perivascular drainage pathway)が提唱され,その後,IPAD pathway 仮説に発展した.一方,2012 年にNedergaard らにより,glymphatic pathway仮説が提唱された.近年,この2 つの仮説をめぐって活発な論争が展開されている.両仮説ともリンパ排泄の駆動力は解明されておらず,また後者では,静脈周囲腔での排泄が証明されていないことが大きな課題である.血管の老化により,脳リンパ排泄機能が低下するとアミロイドβ蛋白の蓄積がはじまり,Alzheimer 病の発症に関与すると考えられ,今後の研究の発展が期待されている.
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医学のあゆみ 270巻13号, 1199-1201 (2019);
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脳脊髄液の産生と循環は,諸説あるものの実はよくわかっていない.古典的に,脳脊髄液は脈絡叢で産生され,脳室から中脳水道などを経由してくも膜下腔に流出し,脳実質に浸潤した後に静脈に吸収されると考えられてきた.この説に対して,脳内毛細血管からの間質液の産生および吸収の可能性や,流動経路が古典的経路とは逆である可能性が指摘されてきた.そして数年前に蛍光イメージング法で脳脊髄液の動体を可視化した実験から,脳脊髄液循環にグリア細胞の関与を提起したglymphatic 説が発表された.Glymphatic 説では,脳細胞が産出する老廃物の排出機構として,脳脊髄液の循環がリンパ的な機能を担うとしている.その後に発表された脳リンパ管の存在とその機能の検証の研究と合わせて,脳の老廃物の蓄積はAlzheimer 病に代表される神経変性疾患の発症につながることから,脳脊髄液の動態は神経医科学において大きな注目を集めている.
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医学のあゆみ 270巻13号, 1203-1209 (2019);
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脳脊髄生理学において脳脊髄の循環動態,とくにその吸収機序を理解することは重要である.中枢神経系(CNS)は脳の水収支バランスが重要にもかかわらず,脳実質にはリンパ管が欠如している.脳レベルでは脳脊髄液(CSF)は間質液も含めて脳くも膜顆粒のほか,脳微小血管系ならびに血管周囲腔を介するglymphaticsystem,新たに発見された脳硬膜内リンパ管などからCSF や神経代謝蛋白が排出されると考えられている.一方,脊髄レベルでは上位髄節に顕著に発達する硬膜外リンパ管を介する髄液排導システムがCSF 圧に依存して稼働するが,上位または下位中枢レベルに関係なく髄膜関連リンパ管を介する髄液吸収には,髄膜-脈管外通液路(リンパ管前通液路)が髄膜に形成される必要がある.通常,神経根鞘から脊髄神経節近位境界部に至る領域にCSFは自然貯留するが,その液性成分はMR(I STIR)でも容易に観察できる.脊髄レベルでのCSF吸収には,髄膜-脈管外通液路を介する硬膜外リンパ管網の発達状況が吸収動態を左右する.
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医学のあゆみ 270巻13号, 1210-1213 (2019);
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脳内環境維持には脳脊髄液やイオン,蛋白質の循環が不可欠であり,その経路として脳内の血管周辺に存在する空間が着目されている.近年,血管周辺スペースを介した脳脊髄液の循環経路として,“perivascularpathway”や“glymphatic system”など複数の仮説が提唱され,盛んに研究が行われている.二光子顕微鏡を用いた単一血管レベルのイメージングからMRI,PET-CT による脳全体のイメージングなど,さまざまなスケールのアプローチにより,血管周辺スペースの形態および生理動態が明らかになりつつある.さらに,Alzheimer や脳卒中などの疾患モデルマウスにおいて,血管周辺スペースの形態や細胞外液の循環効率の変化が示唆されている.今後,より詳細な研究が行われることで,血管周辺スペースという新たな視点から脳細胞外液の循環機構や脳疾患の病態の解明が期待される.
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連載
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医学・医療におけるシミュレータの進歩と普及 31
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医学のあゆみ 270巻13号, 1219-1222 (2019);
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◎わが国ではまだ普及していないが,骨髄穿刺および骨髄生検シミュレータを紹介する.骨髄穿刺・骨髄生検シミュレータが普及することにより,医療安全が確実なものとなる.
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健康寿命延伸に寄与する体力医学 19
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医学のあゆみ 270巻13号, 1223-1229 (2019);
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身体活動にはさまざまな健康効果が報告されているが,活動的な人口は少なく,日本人の身体活動はむしろ減少傾向である.その要因として,自動車依存的な都市構造を含めた社会環境の変化があげられる.都市環境と身体活動との関連はよく研究されており,密度が高く,土地利用が混在し,道路ネットワークが整備された地域は,住民の歩行量が多い“walkable な環境”と表現されている.Walkability は,都市計画,交通計画領域においても重要な指標となっている.社会的環境については,地域や組織のソーシャルキャピタルと身体活動との関連が報告されており,ソーシャルキャピタルの醸成が健康にもたらす効果が期待される.このような地域社会環境の整備は保健医療の領域のみでは困難で,他部門との連携が必要である.WHO は健康の社会的決定要因を重視しており,Health in All Policies を健康づくり対策の戦略に掲げている.また,身体活動領域ではGlobal Action Plan on Physical Activity 2018-2030 が策定され,多部門アプローチの重要性が強調されている.
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地域医療の将来展望 4
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医学のあゆみ 270巻13号, 1231-1237 (2019);
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◎地域医療を確保するためには,医療関係者や行政だけでなく,住民と認識を共有し,地域全体で取り組むことが必要である.地域医療への住民参加により,地域医療に関心を持つ住民が増え,住民も地域医療の当事者として,限りある共有財産としての地域医療を支えていく役割があることが認識された.今後は,人口減少,少子高齢化が一層進展するなか,地域に見合った医療体制づくりへの参画や,自治体の枠組みを超えた医療の将来ビジョンについて検討し,医療者,行政とともに広域的な地域医療づくりに取り組むことが望まれる.地域医療への住民参加は,地域の医療を変え,地域そのものを変えていく力を秘めている.地域医療の現在,そして将来の困難な課題に,地域一丸となって地道に取り組み,課題を克服することが期待される.
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TOPICS
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公衆衛生
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医学のあゆみ 270巻13号, 1214-1215 (2019);
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消化器内科学
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医学のあゆみ 270巻13号, 1215-1216 (2019);
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輸血学
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医学のあゆみ 270巻13号, 1217-1218 (2019);
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FORUM
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医学のあゆみ 270巻13号, 1239-1240 (2019);
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地平線まで真っ白な平原が続くウユニ塩湖の存在により,日本でもようやく馴染みのある国となりつつある南米の国,ボリビア.ここでは,わが国の援助機関である国際協力機構(JICA)によって,2001 年から約20 年にわたり母子保健プロジェクトが展開されてきた1).①保健医療従事者によるケアの質向上と,②住民自身が生活習慣と生活環境の改善をめざすヘルスプロモーション活動,そして③地方行政のマネジメント機能の強化を3 本柱とした技術協力である.このような包括的プロジェクト形態は,数多くあるJICA の保健医療支援でも稀有な存在として異彩を放ってきた. さらに,過去20 年間にボリビアにある全9 県のうち7 県をカバーしてきた歴史を有し,一国の地域を変えて連綿と継続してきたプロジェクトもJICA 的には特異といえる.そんなプロジェクトは“母子に焦点を当てた保健ネットワーク強化”のスペイン語の頭文字をとって“FORSA”(フォルサ)の愛称でボリビアの人びとに親しまれてきた.
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医療社会学の冒険治 17
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医学のあゆみ 270巻13号, 1241-1245 (2019);
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NEW 対話-ダイアローグのはじめかた 1
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医学のあゆみ 270巻13号, 1247-1250 (2019);
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医学のあゆみ 270巻13号, 1251-1252 (2019);
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医学のあゆみ 270巻13号, 1253-1255 (2019);
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