Volume 271,
Issue 3,
2019
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特集 慢性疾患とサルコペニア
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医学のあゆみ 271巻3号, 233-233 (2019);
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医学のあゆみ 271巻3号, 235-239 (2019);
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インスリン/IGF-Ⅰシグナルは,サルコペニアの病態形成を考えるうえで重要な役割を果たすと考えられている.両者のシグナルを伝達する下流分子は共通な部分が多いが,いずれも蛋白合成や筋肥大,細胞増殖を介して,骨格筋量を維持する方向に作用する.一方で,インスリン抵抗性の状態ではそのシグナル伝達が障害され,インスリンに加えてIGF-Ⅰシグナルも低下すると考えられている.加齢はインスリン抵抗性の原因となるが,とくに骨格筋におけるインスリン抵抗性を惹起する.2 型糖尿病ではインスリン分泌低下の要素も加わり,またIGF-Ⅰの血中濃度は加齢とともに低下することから,両者の量的低下がインスリン抵抗性と相まって,インスリン/IGF-Ⅰ作用の低下をきたしていることが考えられる.この観点からサルコペニアの治療として,インスリン抵抗性の改善やIGF-Ⅰ自体の補充に期待がかけられている.
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医学のあゆみ 271巻3号, 241-245 (2019);
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心不全の初期においては体重減少を伴わない筋肉の減少(サルコペニア)が起こり,その後に体重減少(カヘキシア)が起こる.NYHAⅡ度の心不全にサルコペニアは20%程度認めるが,これらの患者において最大酸素摂取量の低下を規定する因子はサルコペニアの有無であった.サルコペニアは筋肉の同化・異化のバランスの乱れで起こる.同化を促進する因子には運動,アミノ酸,テストステロン,成長ホルモン,インスリン様成長因子(IGF),インスリン,グレリンなどがあり,異化を促進する因子にはグルココルチコイド,アドレナリン,ノルアドレナリン,炎症惹起性サイトカイン(TNF-α,IL-1β,IL-6 など),アンジオテンシンⅡ,過度の運動,ミオスタチン,グルカゴンなどがある.高齢の心不全患者でもレジスタンストレーニングによって筋肉量や筋力の増加,最大酸素摂取量や6 分間歩行距離が改善するが,日常生活に必要なバランス機能や歩行機能,日常生活能力の改善もトレーニングの目標となる.
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医学のあゆみ 271巻3号, 247-252 (2019);
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慢性腎臓病(CKD)では,筋蛋白のネットバランスが負に制御されやすい状態にあるため,サルコペニアの合併することが多い.一般に,CKD の病期が進展するほどサルコペニアの合併率が上昇し,予後にも影響することが知られている.高齢CKD 患者における蛋白制限や運動療法についてはパラダイムシフトが起こっており,サルコペニア予防を目的としたエビデンスに基づいた栄養・運動療法の確立が望まれる.サルコペニア予防を考慮したCKD 患者に対する薬物療法は未確立であるが,ループ利尿薬併用によるサルコペニアへの悪影響を考慮する必要がある.
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医学のあゆみ 271巻3号, 253-257 (2019);
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認知症は大脳の疾患であり,軽度の段階では記憶力や判断力の低下などの症状にとどまるが,中期以降には摂食量の低下による低栄養,サルコペニアが生じ,歩行障害,活動量の低下,閉じこもり,転倒と悪い流れを生む.認知症患者は転倒しやすく,そこにはサルコペニア,バランス障害,注意力障害,服用薬剤,大脳皮質下虚血性病変などさまざまな要因が関与する.認知機能障害とサルコペニア(身体的フレイル)は早い段階から双方向に影響しあい,認知機能低下者は身体的フレイルになりやすいこと(とくに認知症になると),逆に,身体的フレイルは認知症,とくに血管性認知症になりやすいことが報告されている.とくに,軽度の認知機能障害があって身体的フレイルな状態を“コグニティブフレイル”とよび,注目されている.コグニティブフレイルは認知症になりやすく,また要介護になりやすいためである.コグニティブフレイルの進行予防のためには,口腔機能への介入,栄養介入,運動介入,社会的介入が必要である.
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医学のあゆみ 271巻3号, 259-263 (2019);
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サルコペニアはその原因によって,①高齢に起因する一次性サルコペニアと,②疾患に起因する二次性サルコペニア,の2 群に分類される.肝硬変患者では患者が高齢化していることに加えて,蛋白エネルギー低栄養(PEM)という特徴的な病態などのためにサルコペニアに陥りやすい.近年,わが国および諸外国からサルコペニアの判定基準が提唱され,本領域のエビデンスが集積されつつある.一方,サルコペニアは日常生活の活動度(ADL)と密接に関連し,いくつかの介入試験が行われている.本稿では,肝疾患におけるサルコペニアに照準を当てて概説をする.
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医学のあゆみ 271巻3号, 265-269 (2019);
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慢性閉塞性肺疾患(COPD)はタバコ煙の長期吸入曝露などで生じる肺疾患で,その障害は呼吸器にとどまらず,サルコペニアや心血管疾患,うつなどの全身併存症が問題となる.骨格筋量と筋力・身体機能の低下が全身性に進行し,要介護,さらに死の危険が高まるサルコペニアはCOPD 患者の呼吸機能,運動耐容能,QOL,死亡率,医療機関利用率と関連している.COPD の慢性全身性炎症は身体活動性の低下,呼吸障害に伴うエネルギー需要の増大,筋肉蛋白の異化亢進などの源流にあり,複数のメカニズムの相互作用(悪循環)がサルコペニアをはじめ全身併存症をきたす.COPD のサルコペニアからフレイル,さらに機能障害に至る軌跡を制御するためにセルフマネジメントを基礎として,全身性炎症をコントロールする薬物・栄養療法と下肢筋力を改善する運動療法を組み入れた包括的呼吸リハビリテーションプログラムが中心となる“統合ケア(integrated care)”体制の構築が課題である.
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医学のあゆみ 271巻3号, 271-274 (2019);
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2005 年より開始した,大規模住民コホートROAD スタディのデータ解析結果を用いて骨粗鬆症(OP)の有病率(40 歳以上)を求めたところ,腰椎では男性3.4%,女性19.2%,大腿骨頸部の場合,男性12.4%,女性26.5%となった.3 年間の観察後に推定された骨粗鬆症の累積発生率は,腰椎では0.76%/年,大腿骨頸部では1.83%/年となった.一方,サルコペニア(SP)の有病率(60 歳以上)は男性8.5%,女性8.0%,累積発生率は男性2.2%/年,女性1.9%/年となった.次に骨粗鬆症とサルコペニアの相互の発生への影響を解析したところ,骨粗鬆症の存在は将来のサルコペニアの発生リスクを有意に上げていることがわかった.骨粗鬆症とサルコペニアの合併した状態であるオステオサルコペニアはフレイル発生リスクを高めていることも明らかになった.
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連載
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地域医療の将来展望 6
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医学のあゆみ 271巻3号, 281-287 (2019);
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◎地域医療構想の第一の目標は,地域の医療・介護ニーズに対応するためにどのような医療提供体制が望ましいのかを考えることである.この考えに基づき,各圏域において地域医療構想の実現に向けた具体的対応方針の検討が進められている.厚生労働省から提供される標準化レセプト出現比(SCR)やDPC データは,医療提供体制の現状を可視化することが可能である.また,将来推計人口と患者調査の受療率を用いることで将来の医療需要を推計することができる.さらに,これらのデータから読み取れることを組み合わせることによって,具体的対応方針を検討することが可能となるフレームワークも開発されている.これらを活用し,全国の構想区域において,医療提供者だけではなく行政や住民を含む幅広い関係者がデータに基づいた建設的な議論が行われることを期待する.
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NEW 診療ガイドラインの作成方法と活用方法
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医学のあゆみ 271巻3号, 288-290 (2019);
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診療ガイドラインの作成方法と活用方法 1
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医学のあゆみ 271巻3号, 291-296 (2019);
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診療ガイドラインは一般的に新聞などで使われているガイドラインと異なり,明確な定義がある.そのなかで,最も利用されている定義が旧・米国アカデミー医学研究所(IOM;現・全米医学アカデミー)である1).これによると,かならずシステマティックレビューが必要となる(表1;「サイドメモ」参照).そのため,この定義に従った作成方法が提案されている.その作成方法として,いわゆるエビデンスレベルの決定方法や,推奨度の分類などは世界的な基準が存在する.しかし,わが国では学会ごとに推奨度の分類が異なるなどの混乱がある.本稿では,これらの混乱の実態を説明しながら,Grading of Recommendations Assessment,Development and Evaluation(GRADE)working group の作成した世界標準の診療ガイドライン作成方法であるGRADE アプローチを説明する2).なお,本稿は問題点を理解することが目的であり,個々の診療ガイドラインの批判ではないため,具体的な診療ガイドラインでなく,仮想例での説明を行う.
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TOPICS
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生化学・分子生物学
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医学のあゆみ 271巻3号, 275-276 (2019);
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血液内科学
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医学のあゆみ 271巻3号, 276-278 (2019);
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免疫学
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医学のあゆみ 271巻3号, 279-280 (2019);
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FORUM
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医学のあゆみ 271巻3号, 297-301 (2019);
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医療社会学の冒険己 18
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医学のあゆみ 271巻3号, 303-306 (2019);
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