Volume 272,
Issue 2,
2020
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特集 ラミノパチーとはなにか
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医学のあゆみ 272巻2号, 141-141 (2020);
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【基礎】
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医学のあゆみ 272巻2号, 143-146 (2020);
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ラミン変異体の一種であるプロジェリンは,核内膜直下に凝集して核膜機能を破綻させる.また,DNA 損傷や酸化ストレスなどでも核膜構成分子の品質劣化や変性を起こし,核膜構造の崩壊や核輸送破綻を招く.このような核膜障害が起源となって核機能低下を誘発するストレスのことを“核膜ストレス”とよぶ.DNA損傷により誘導される膜貫通型転写因子OASIS は,核膜破綻部に速やかに集積し,p21 などの細胞周期抑制因子やSASP 関連遺伝子の転写を促進する.このOASIS を基軸とする一連のシグナル経路は,核膜ストレスから生じる細胞老化を正に制御する.本稿では,核膜ストレスの概略,それに応答して活性化するOASIS の働き,核膜ストレスに関連する疾患などについて概説する.
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医学のあゆみ 272巻2号, 147-151 (2020);
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力学刺激を細胞の生化学反応に変えるメカノトランスダクションに対する細胞核の関与が注目されはじめている.核の変形で内部のクロマチンの配置や分散状態が変化し,これにより転写が影響を受ける可能性などが考えられている.実際,細胞膜に付着した磁性ビーズを動かして細胞核を刺激すると,DNA の脱凝縮が促進され,転写も盛んになるとの報告がある.一方,繰返引張刺激を細胞に加えると,逆にDNA の凝縮が促進するという報告もある.著者らは,細胞核に数10%の大きなひずみを加えることによりクロマチン凝集塊が減少することを観察しているが,基板に付着した細胞を圧縮するよりも単離細胞を微細流路に通して変形させるほうがクロマチン凝集塊の減少度が高いという結果を得ている.核の力学刺激とクロマチン分布の関係は不明な点が多いが,将来的にはこのメカニズムを明らかにして,力学刺激によるクロマチン分布の制御,ひいては細胞機能の制御に結びつけていきたい.
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医学のあゆみ 272巻2号, 152-156 (2020);
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実年齢よりも極端な老化現象が全身に進行してしまう疾患,いわゆる早老症が注目を浴びている.老化と老化に随伴する慢性・急性疾患は,超高齢化社会に突入した先進諸国,とくに日本の喫緊の問題となり,老化研究は基礎・応用の両面でますます重要になっている.そして,早老症を切り口とするアプローチも活発化している.とくに,ハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(HGPS)の病態の理解は,さまざまな知見をわれわれにもたらしてくれる.本稿では,ラミンA の変異,核(クロマチン)・核膜を中心に,メカノバイオロジーの視点から早老症について考えてみる.
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医学のあゆみ 272巻2号, 157-161 (2020);
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細胞内でDNA を収納し,遺伝情報の維持・継承に重要な役割を担う核は,細胞の収縮や接着,組織への浸潤などに伴い,さまざまな力学的ストレスを受けている.核に生じる構造的・機能的歪みは,がんや細胞死と関連する重要な形質である.核は,力学的ストレスにいかに対抗してそのインテグリティを維持しているのであろうか.本稿では,核が備えた物理特性について,その測定方法から興味深い硬さや粘膜性的性質,分子実体の解析に至るまで,最新の知見を交えて紹介する.核の力学特性と構造・生化学動態の関係を定量的かつ分子的に明らかにすることで,関連する疾患に新たな治療の戦略を与える一助となることが期待される.
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【臨床】
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医学のあゆみ 272巻2号, 162-167 (2020);
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ラミンは中間径フィラメントの線維構造蛋白質であり,核膜の内側の核ラミナを形成する.A 型ラミンのラミンA とラミンC は,LMNA 遺伝子転写後の選択的スプライシングにより生成される.遺伝性早老症ハッチンソン・ギルフォード症候群(HGPS)はLMNA 遺伝子異常が原因であるが,これはLMNA 遺伝子内の特定の点突然変異が特殊なスプライシング異常を起こし,150 塩基(50 アミノ酸)欠失の変異型プレラミンA(プロジェリン)が生成されることによる.プロジェリンは核内クロマチンリモデリングやテロメアのダイナミクスに異常を引き起こし,DNA 損傷によるp53 誘導依存性に遺伝子発現調節が変化する結果,細胞のセネセンスやアポトーシスが引き起こされる.このプロジェリンは加齢に伴い健常人でも出現し,老化のメカニズムとしても注目されている.ファルネシルトランスフェラーゼ(FT)阻害薬やヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害薬はプロジェリンによる細胞老化から可逆的な回復が可能であり,老化による臓器障害の治療薬の候補となる.さらにプロジェリアiPS 細胞は,プロジェリン発現量もリセットされ病的表現型が回復するため,遺伝子修復したプロジェリアiPS のHGPS 患者への臨床応用も期待されている.
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医学のあゆみ 272巻2号, 168-172 (2020);
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ラミン遺伝子(LMNA)の変異で引き起こされるラミノパチーではしばしば心臓が侵され,不整脈や心不全をきたす拡張型心筋症(DCM)を発症し,致死的な経過をとる.DCM 全患者のなかで,LMNA 変異が陽性となる患者群は約6~8%程度であるが,これらの患者群は既存治療に応答せず予後不良であることが判明している.しかし現時点では変異特異的な治療法は存在しておらず,より深い基礎的な疾患メカニズムの理解が期待される.核膜の裏打ち蛋白であるラミンは,①細胞のメカニカルストレス応答,②クロマチン制御を介した遺伝子発現調整,③細胞内シグナル伝達の制御に関与しており,その変異が心機能異常をもたらす機序が少しずつ明らかになってきている.本稿では,LMNA 関連DCM の疫学と病態についての最近の知見を概説する.
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医学のあゆみ 272巻2号, 173-177 (2020);
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A 型ラミンやエメリンなどの核膜関連蛋白質の遺伝子変化が,エメリー・ドレフス型筋ジストロフィー(EDMD)や肢帯型筋ジストロフィー,先天性筋ジストロフィー(L-CMD)など,臨床病型の異なる筋疾患の原因となることが明らかになっている.骨格筋は最も機械的ストレスのかかる臓器であることから,核膜蛋白質の異常によって生じる脆弱な核膜によって,容易に核の形態変化や核膜蛋白質の局在異常が生じ,遺伝子発現にも変化をきたすことが考えられるが,まだ未解明の部分が多い.これまで複数の核膜病モデルマウスが作製されているが,いずれもヒト核膜関連筋疾患の病態を十分に反映しているとはいいがたい.最近著者らは,エメリン欠損マウスとA 型ラミンH222P 変異導入マウスの重複欠損マウスを作製し,EDMD の病態にきわめて近いモデルマウスを作製したことから,今後,詳細な筋障害メカニズムの解明が期待される.
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連載
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地域医療の将来展望 13
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医学のあゆみ 272巻2号, 183-187 (2020);
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地域医療は,医学生物学の視点と,その地域の文化的要素を含む生活の視点を合わせて実践されている.文化人類学的アプローチでは,生物学的な存在と文化的な存在の両面から人間を捉え,また自らを省みながら他者から学ぶ姿勢が重視される.地域医療は文化人類学とよい相性を示すことが認知されるようになり,教育-研究-診療-地域活動において,文化人類学的視点を導入する動きが出はじめている.こうした歩みは地域医療の進化と深化の一助になると期待される.
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診療ガイドラインの作成方法と活用方法 8
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医学のあゆみ 272巻2号, 188-193 (2020);
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精神科医療においては薬物療法と心理社会的療法がその両輪であるが,その実践については臨床家ごとのばらつきが大きく,よりよい標準的な医療を普及させることが必要とされている.そこで,精神科治療ガイドラインの普及・教育・検証活動であるEGUIDE プロジェクトが2016 年に発足した.その目的は,治療ガイドラインを用いた講習を全国で行うことにより,よりよい精神科医療を普及させ,精神科医療を向上させることであり,全国43 大学146 医療機関が参加するプロジェクトに発展している.統合失調症薬物治療ガイドラインとうつ病治療ガイドラインの講習を行うことにより,医師と患者が話し合って治療の方針を決定する共同意思決定(SDM)の理解が深まり,講習後に受講者のガイドラインの理解度が顕著に向上する成果が得られている.EGUIDE プロジェクトは患者QOL の向上という最終目標への達成に向けて一歩ずつ着実に進んでいる.
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TOPICS
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神経精神医学
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医学のあゆみ 272巻2号, 178-179 (2020);
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医療行政
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医学のあゆみ 272巻2号, 179-180 (2020);
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癌・腫瘍学
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医学のあゆみ 272巻2号, 181-182 (2020);
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FORUM
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パリから見えるこの世界 87
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医学のあゆみ 272巻2号, 194-197 (2020);
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