Volume 272,
Issue 4,
2020
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特集 エクソソームと疾患医学
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医学のあゆみ 272巻4号, 285-285 (2020);
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医学のあゆみ 272巻4号, 287-291 (2020);
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エクソソームは,ほぼすべての種類の細胞が分泌する小型(直径30~100 nm 程度)の膜小胞で,血液や尿,髄液,涙,唾液などの体液や細胞培養液中に数多く存在している.進化的には,不要な細胞内容物の排出機構としての生物学的意義を持つが,排出される分子(脂質,蛋白質,RNA など)が他細胞に受け渡されることで,さまざまな細胞間情報伝達を担うことが近年判明し,その機能が注目されている.また,これらの分子の発現様式が,細胞の状態や疾患の進展と関連していると考えられており,多くの研究領域(免疫,神経,癌,内分泌,循環器など)において,エクソソーム内のバイオマーカーの探索が進められている.そこで本稿では,最近のエクソソーム研究の動向について概説する.
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医学のあゆみ 272巻4号, 293-298 (2020);
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エクソソームは,エンドソームの一種である多胞体(MVB)が細胞膜と融合し,MVB 内の内腔小胞が細胞外へと分泌されることで生じる,細胞外オルガネラである.近年,エクソソームの生理機能や疾患との関連性など,細胞外に分泌された後のエクソソームに関する研究が広く行われている.一方で,生合成機構といった細胞内のエクソソームに関する研究報告は比較的少ない.本稿では,現在までに明らかになっているエクソソームの生合成機構について,とくに,エクソソームの元となる内腔小胞を含むMVB がどのように形成され,細胞膜へと輸送されるのか,そして細胞膜と融合することにより,どのようにエクソソームの分泌が起こるのかについて,最新の知見を交えて紹介したい.
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医学のあゆみ 272巻4号, 299-302 (2020);
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細胞間物質輸送担体であるエクソソームを介した生体内での情報伝達に注目が集まっており,その機能解明を目的とした研究が盛んに行われている.加えて,エクソソームを利用した診断・治療法の開発,さらにはデリバリーキャリアへの応用も期待され,研究が行われている.一方で,エクソソームの機能解明,あるいは治療応用を実現するには,エクソソームの体内動態の把握は必須の課題である.エクソソームの体内動態を解析するためには,体内におけるエクソソームの挙動の追跡を可能とする標識法の開発が必要である.そこで本稿では,まず現在までに開発されたエクソソームの標識法について紹介する.その後,これらの標識法を用いて明らかとなった,全身レベルおよび局所でのエクソソームの体内動態特性について概説し,エクソソームの体内動態の観点からその生理機能,ならびに治療応用について考察したい.
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医学のあゆみ 272巻4号, 303-307 (2020);
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先進諸国の高齢化が進むなか,わが国の平均寿命も年々延長し続け,がん,動脈硬化,肺線維症,アルツハイマー病など加齢とともに罹患率が上昇する疾患(加齢性疾患)が深刻な社会問題となっている.これらの疾患の発症要因のひとつとして,加齢とともに体内に蓄積した老化細胞が関与することが明らかになりつつある.細胞老化は,さまざまなストレスにより誘導される細胞増殖停止状態であり,重要ながん抑制機構として働くことが知られている.その一方で,老化細胞は炎症性蛋白質を分泌するSASP(senescence-associatedsecretory phenotype)とよばれる現象を引き起こし,周囲の細胞に慢性炎症やがん化を促進する危険があることが報告されている.実は老化細胞においては,炎症性蛋白質だけではなく細胞外小胞(small extracellullarvesicle:sEV)の一種であるエクソソームの分泌も亢進しており,老化細胞が分泌する細胞外小胞はがん細胞の増殖促進や正常な細胞の老化誘導に寄与することから,新たなSASP 因子として注目されている.本稿では,老化細胞が分泌する細胞外小胞に関する最新の知見を概説したい.
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医学のあゆみ 272巻4号, 309-312 (2020);
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リキッドバイオプシーは,新薬の開発コストや薬に対する患者の反応の予測など,現在の医学的問題の解決に不可欠であり,バイオマーカーとなる疾患特異的に検出・同定される生体分子を特定する必要がある.エクソソームをはじめとする細胞外小胞(EV)は,膜結合蛋白質やメッセンジャーRNA(mRNA),ノンコーディングRNA(non-coding RNA)を含むさまざまな蛋白質を含み,疾患特異的な分子を内包していることが報告されていることから,リキッドバイオプシーの理想的な標的として研究が進んでいる.本稿ではエクソソームの検出技術とともに,がんバイオマーカーとしてのエクソソームの可能性を紹介する.
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医学のあゆみ 272巻4号, 313-317 (2020);
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液性因子や神経を介する臓器連関が,個体レベルでの代謝調節や生活習慣病の病態に深く関与しているが,最近,新たな細胞間の情報伝達機構としてエクソソームが注目されており,内包するマイクロRNA(miRNA)が臓器連関を担うことが明らかになってきた.血中エクソソームmiRNA の多くは脂肪組織に由来し,実際に脂肪組織に由来するmiRNA が肝の遺伝子発現を制御することが報告された.脂肪組織炎症はインスリン抵抗性の基盤病態であるが,脂肪組織マクロファージは液性因子に加えて,エクソソームmiRNA を介してインスリン標的臓器のインスリンシグナルを阻害することも明らかにされた.また,膵β細胞量の減少はインスリン分泌不全の主要な病因であるが,著者らは骨髄細胞に由来するエクソソームmiRNA が傷害膵β細胞の複製を促進することを報告した.今後,液性因子や神経を介する機序では捉えきれなかった臓器連関機構の解明や,エクソソームmiRNA を標的とする治療薬の創出が期待される.
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医学のあゆみ 272巻4号, 319-324 (2020);
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アルツハイマー病やパーキンソン病,筋萎縮性側索硬化症,ポリグルタミン病などの神経変性疾患は,蛋白質の凝集や異常蓄積が原因となって発症する.近年,神経変性疾患の原因蛋白質がエクソソームとよばれる細胞外小胞を介して分泌・伝播し,他の細胞で凝集形成を促進する可能性が報告され,エクソソームに着目した病態分子機序の解明と治療診断法の開発が進められている.本稿では,神経変性疾患における凝集性蛋白質のエクソソーム分泌・伝播に関する報告を疾患ごとに紹介し,神経変性病態におけるエクソソームの役割やエクソソーム分泌の生理的役割について考えてみたい.
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医学のあゆみ 272巻4号, 325-329 (2020);
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脂肪組織は,白色脂肪細胞の貯蔵機能と褐色およびベージュ脂肪細胞の消費機能を介して全身のエネルギー代謝の調節に重要な役割を果たす.さらにレプチンやアディポネクチンなどのさまざまな分泌因子を産生し,全身の代謝調節に働く.最近の研究から,脂肪組織でもエクソソームの役割が注目されている.脂肪組織では,脂肪細胞およびほかの細胞からエクソソームが分泌され,全身のグルコースおよび脂質代謝調節に働くことが明らかになってきた.最近著者らは,アディポネクチンがエクソソームの生合成を促進することを報告した.これらの知見は,エクソソームが脂肪組織からの生産とアディポネクチンを介した他臓器からの産生調節を介して,脂肪組織による全身の代謝調節に重要な役割を有することを示唆する.
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連載
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地域医療の将来展望 15
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医学のあゆみ 272巻4号, 337-341 (2020);
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ソーシャルキャピタルとは,信頼,規範,ネットワークといった,社会組織の特徴と定義されており,絆とおおむね同義である.健康との関連を示す研究報告が数多く行われており,注目されている.医療機関を取り巻くソーシャルキャピタルとしては,住民や関係機関との関係性がある.地域医療機関が住民とともに健康づくりに取り組む活動や,住民が地域医療を支える会を立ち上げている例,地域包括ケアや医療介護連携など行政・介護・福祉などさまざまな関係機関との連携を密にしている例もソーシャルキャピタルが発揮されている例といえよう.患者の診療において,社会的処方が注目されている.薬物を処方する代わりに,患者の社会的リスクを診断し,地域の活動や保健医療以外を含めた行政サービス等を紹介するものである.また,地域医療に携わる者には,地域のソーシャルキャピタルの醸成,すなわち地域のさまざまな活動の活性化への貢献も期待される.
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診療ガイドラインの作成方法と活用方法 10
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医学のあゆみ 272巻4号, 343-348 (2020);
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急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン(Tokyo Guidelines:TG)は日本から発信された数少ない国際診療ガイドラインである.その成功の要因には,最新の知見にup date してきたこと以外に,①当初からそして改定時にも海外のエキスパートにも参加してもらったこと,②実臨床との間に解離がないように,それぞれの課題において多くの臨床データを用いて検証し,改定を行ってきたこと,③オープンジャーナルとしてガイドラインを自由に閲覧,入手できるようにしたこと,④GRADE システムやバンドルなど最新のガイドライン作成手法を取り入れてきたこと,⑤日本版英語版のモバイルアプリを普及させたこと,などが考えられる.これによって早期の腹腔鏡下胆囊摘出術が増加してきたが,ガイドラインによる効果のさらなる評価が必要である.今後も国際ガイドラインとして使用されつづけるように臨床知見を集約し,次回の改定にのぞみたいと考えている.
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TOPICS
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医療行政
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医学のあゆみ 272巻4号, 331-332 (2020);
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公衆衛生
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医学のあゆみ 272巻4号, 332-333 (2020);
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加齢医学
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医学のあゆみ 272巻4号, 334-335 (2020);
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FORUM
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日本型セルフケアへのあゆみ 3
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医学のあゆみ 272巻4号, 349-353 (2020);
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⃝ 充実したセルフケアの実践にあたっては,医療が適切なコストで提供されることと,正確な情報を得られることが生命線となる.しかし実際は,医療費は高騰の一途をたどっており,また患者がアクセスできる医療情報は医師・製薬企業・行政に比べ圧倒的に不足している.そういった現状を打破すべく,世界では医療以外の分野の巨大企業が新たな挑戦に取り組んでいる.⃝ 中国では,平安保険がAI 技術を利用した医療プラットフォーム「平安グッドドクター」を提供し,開始から4 年で3 億人のユーザーを獲得している.オンラインとオフラインが融合するOnlineMerges with Offline(OMO)といわれる新たな概念のもと,健康と医療の分野において劇的な変化をもたらしている.⃝ またアメリカでは,アマゾン・バークシャー・JP モルガンといった巨大企業がタッグを組み,既存の医療制度に縛られずヘルスケアを提供する企業「ヘイブン」を設立した.各社が有する情報と技術を活かして,低コストで最大の成果を得る仕組みを構築することを目標としている.こういった世界の潮流に対して,日本は完全に蚊帳の外だ.
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対話―ダイアローグのはじめかた 5
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医学のあゆみ 272巻4号, 355-359 (2020);
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今回は,診察室での医師と患者の対話(ダイアローグ)の事例をとりあげたい.私が家庭医として実際に経験したケースをもとに一部内容を改変したものである. 一見,普通の医療面接に見えるかもしれない.しかしながら,私のなかでは,ダイアローグの原則である「応答性」,「不確実性の寛容」,「ポリフォニー」,「今・ここを大事にすること」などを重視して,応答しつつも,結論を出しすぎず,その場で感じたことを重視しながら対話を進めることに注力している.また,患者のナラティブの解釈においては,一義的解釈にならないよう,医師と患者の双方の解釈をいずれも重視するという立場をとりながら,多義的な立場(ポリフォニー)を重視している.
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第56 回(2019 年度)ベルツ賞受賞論文2 等賞
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医学のあゆみ 272巻4号, 360-370 (2020);
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Philadelphia chromosome-negative myeloproliferative neoplasms( MPNs)are characterized by clonal proliferation of hematopoietic stem and progenitor cells, resulting in an increase in mature cells of one or more blood cell lineages or causing primary bone marrow fibrosis. Our knowledge about MPN pathogenesis has been greatly advanced by the identification of driver gene mutations based on elucidation of cytokine hypersensitivity of bone marrow cells in patients and molecular mechanism of cytokine receptor signal transduction, part of which has been achieved by Komatsu. Furthermore, we deciphered the molecular mechanism of development of MPNs by a novel driver gene mutation of which function was previously undefined, and proposed a novel concept in tumor biology. Because these studies have made the detection of driver gene mutations necessary for the diagnosis of MPNs, we have developed inexpensive and simple methods for the detection of driver gene mutations. Using these methods, we analyzed specimens from more than 4000 individuals suspected of having MPNs from 123 institutions and returned the data to physicians, which significantly contributed to diagnosis of MPNs in our society. Furthermore, by collecting and analyzing clinical records of patients whose specimens were analyzed, we identified characteristics of MPN patients and highlighted a series of issues regarding real-world diagnosis of MPNs, which was then feedbacked to physicians to help them improve their understanding of MPNs during diagnosis. We also provided a large amount of evidence in clinical practice about the efficacy of MPN therapeutics and advised many physicians―in the form of a second opinion―on treatment strategies for rare cases for which no consensus exists on treatment policy. Komatsu has been serving as a medical adviser representative of MPN-JAPAN for more than 6 years, where he educated MPN patients and their families. Taken together, we have greatly contributed to the advancement of the diagnosis and treatment of MPNs by elucidating pathogenesis, developing the diagnosis method, supporting the mutation analysis for diagnosis, revealing clinical evidence for treatment, and educating physicians and patients.
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医学のあゆみ 272巻4号, 371-372 (2020);
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医学のあゆみ 272巻4号, 373-375 (2020);
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