Volume 272,
Issue 6,
2020
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特集 ALS(筋萎縮性側索硬化症)治療の最前線
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医学のあゆみ 272巻6号, 501-501 (2020);
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医学のあゆみ 272巻6号, 503-510 (2020);
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筋萎縮性側索硬化症(ALS)は全身の上位および下位運動ニューロンが進行性に変性し,脱落することを特徴とする代表的な神経難病であり,病態抑止療法の開発は喫緊の課題である.そのため,大部分を占める孤発性ALS の病態関連遺伝子やバイオマーカーを同定し,病態解明と治療薬探索を推進する必要がある.その基盤として,わが国では多施設共同ALS 患者レジストリであるJaCALS が構築された.このレジストリでは,前向き臨床情報や生存期間などの多彩な臨床情報と,遺伝子検体,不死化リンパ球などの生体試料が結びつけられていることが特徴であり,ALS の発症に関わる遺伝子のみでなく,経過などの臨床像と関連する遺伝子やバイオマーカーの探索同定が行われている.JaCALS で収集した臨床情報や生体試料を用いて,高齢発症や頸部屈筋の筋力低下が予後不良因子となりうること,急速進行型のALS 患者はTitin の発現低下をきたす遺伝子多型と関連していること,髄液中のADMA/L-arginine 比が予後予測のためのバイオマーカーとなりうることが示されてきた.
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医学のあゆみ 272巻6号, 511-516 (2020);
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筋萎縮性側索硬化症(ALS)は運動ニューロン選択的な変性・脱落が生じる変性疾患であり,人工呼吸器を装着しない場合,発症から2~5 年で死に至る.ALS の90%は孤発性であり,残りの10%が家族性である.これまで家族性ALS(FALS)の原因遺伝子として20 種類以上が同定されており,これらは治療のターゲットとして期待されている.また2006 年に,RNA 結合蛋白質(RBP)であるTDP-43 がALS 患者に特徴的な細胞質封入体の主要成分と報告された.さらに,2008 年にTDP-43 をコードするTARDBP 遺伝子がALS10の原因遺伝子であることが報告されて以降,その他のRBP 遺伝子の異常がALS の原因遺伝子・疾患修飾因子として相次いで報告され,RNA 代謝異常の側面も病因として盛んに議論されている.現在,治療薬としてリルテック®(一般名:リルゾール),ラジカット®(一般名:エダラボン)があるが,疾患修飾薬(DMT)は存在しない.本稿では,まずALS の根本治療として期待されている核酸医薬の基本的なコンセプトとして,アンチセンス核酸(ASO),siRNA,ヘテロ二本鎖核酸,アプタマー,デコイに関して概説する.その後,遺伝子ごとにALS 治療法開発の現状と今後の展望に関して概説する.
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医学のあゆみ 272巻6号, 517-521 (2020);
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高用量メコバラミンは臨床経験を通して筋萎縮性側索硬化症(ALS)に対する有効性が示唆され,第Ⅱ/Ⅲ相試験(E0302-J081-761)において部分解析ではあるが,発症1 年以内のALS 患者に対して生存期間延長とALS Functional Rating Scale Revised(ALSFRS-R)合計点数の進行抑制効果が認められた.しかし,ALS は早期に診断されないことも多く,その結果として早期治療がなされていない場合がある.その理由のひとつとして,世界的に汎用されているEl Escorial 改訂Airlie House 診断基準の診断感度が高くないことがあげられる.今回著者らは,診断感度がより高い新しい診断基準であるupdated Awaji 基準を用いて,発症1 年以内のALS 患者に対する高用量メコバラミンの有効性・安全性の検証を目的として医師主導治験(JETALS)を開始した.被験者登録は,2019 年10 月で治療期130 例を登録でき,目標症例数128 例を期限内に達成できた.
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医学のあゆみ 272巻6号, 523-527 (2020);
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サイボーグ型ロボットHAL®(CYBERDYNE Inc. 製)を用いた歩行運動療法は,医師主導治験NCY-3001試験(研究代表者:中島孝)の結果に基づき,2015 年3 月25 日に“新医療機器”として医療機器製造販売承認申請がなされ,同年11 月25 日に厚生労働省が承認した.2016 年4 月25 日,運動療法として世界ではじめて,一般の公的医療保険の償還価格(J118-4)が決定し,同年9 月2 日から,指定難病の神経筋8 疾患〔脊髄性筋萎縮症(SMA),球脊髄性筋萎縮症(SBMA),筋萎縮性側索硬化症(ALS),シャルコー・マリー・トゥース病,筋ジストロフィー,遠位型ミオパチー,先天性ミオパチー,封入体筋炎)について治療が開始された1,2).現在までに,公表された導入医療機関は62 施設(2019 年10 月28 日,CYBERDYNE による)となり,順調に施設数が増えている.また,製造販売後に課せられる長期の使用成績調査も現在行われている3).さらに,HTLV-1 関連脊髄症(HAM),遺伝性痙性対麻痺などの痙性対麻痺に対する治験(NCY-2001試験)も終了し,現在,適応拡大申請準備中である.両者は歩行機能障害に対する運動療法であるが,運動単位(motor unit;下位運動ニューロンと対応する筋線維からなる)より上位の中枢病変における可塑性に注目するのがNCY-2001 試験であり,運動単位病変における可塑性に対するものがNCY-3001 試験である.この2 つの臨床試験(RCT)で,脳神経筋病変の基本的領域が網羅され,運動機能改善効果に関するHAL の性能を証明することができると考えた(表1).
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医学のあゆみ 272巻6号, 529-534 (2020);
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筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含めた神経変性疾患では,モデル動物を用いた研究が必要不可欠である.家族性ALS でCu/Zn superoxide dismutase 1(SOD1)遺伝子の変異が報告されて以来,数々のALS モデルマウスが作製されてきたが,ALS の病態解明,根本的な治療方法の確立には至っていないのが現状である.とくに,ALS の病態において最も重要な分子と考えられるTAR DNA-binding protein 43(TDP-43)を標的としたモデルマウスでは,ALS の特徴を十分再現できておらず,従来の手法のみでは病態をマウスに正確に再現することは困難なようである.一方,C9ORF72 を標的としたモデルマウスは,アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを利用した優れた研究手法により病態が明らかになりつつある.さらに,近年のゲノム編集技術の著しい進歩により,疾患モデル動物の作製効率は劇的に向上した.とくに新しい技術であるbase editing,prime editing は,疾患研究において強力なツールとなることが期待される.
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医学のあゆみ 272巻6号, 535-540 (2020);
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ショウジョウバエは簡便,安価,迅速な個体レベルでの遺伝学的解析に適したモデル動物であり,筋萎縮性側索硬化症(ALS)の病態・治療研究においても強力なツールとして利用されている.現在,ALS の原因遺伝子として20 種類以上が報告されているが,ショウジョウバエはその多くのオルソログを持ち,数多くのALS モデルショウジョウバエが樹立されている.これらを用いて,ALS 病態にRNA 代謝やストレス顆粒形成,核-細胞質輸送などの異常が関与することが示された.本稿では,ALS 関連遺伝子のうちTDP-43,FUS,C9orf72 の3 種類を取り上げ,ショウジョウバエモデルを用いて明らかになりつつある病態について概説する.
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医学のあゆみ 272巻6号, 541-544 (2020);
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人工多能性幹細胞(iPS 細胞)を用いた研究では,疾患モデルを利用した病態解明と創薬研究への応用が期待されている.これまで,疾患特異的iPS 細胞を用いて多くの疾患モデルが構築され,その病態解析と治療薬シーズ探索が進められてきた.筋萎縮性側索硬化症(ALS)においても,ALS 患者の体細胞から作製されたiPS 細胞を用いてさまざまな病態解析研究が進められている.創薬研究では,患者由来のiPS 細胞から作製した疾患病態モデルを用いた化合物スクリーニングにより同定された,いくつかの薬剤が臨床試験に進んでいる.本稿では,疾患特異的iPS 細胞を用いたALS の病態解析と創薬研究について述べる.
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連載
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地域医療の将来展望 16(最終回)
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医学のあゆみ 272巻6号, 551-555 (2020);
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今後の超高齢社会および人口減少に向け,在宅医療を含む地域における医療を安全かつ適切に提供し続けることに寄与する看護人材育成のために,特定行為に係る看護師の研修制度が創設された.へき地を含む地域医療に従事する看護師には,時に他職種の役割まで含めた,包括性の高い看護実践が求められる.そこで期待されるのが,特定行為研修修了看護師である.医師と研修修了看護師のタスクシェアリングにより,医療従事者が不足しがちな地域医療現場であっても医療の隙間を埋め,患者・家族に及ぼす負の影響を低減することができる.また,研修修了看護師は,訪問看護師との同行訪問,所属施設外の医師や看護師からの相談対応や勉強会等を行っており,当該地域の医療や看護の向上にも寄与している.◎今後の課題として,地域医療に従事する看護師の研修受講を促進するために,地域医療現場に研修修了看護師を増やすことのインセンティブおよびへき地医療領域に特化したパッケージ研修の検討が考えられる.
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診療ガイドラインの作成方法と活用方法 11
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医学のあゆみ 272巻6号, 556-560 (2020);
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EBM とは“よりよい患者ケアのための意思決定のために,現時点の最良の臨床研究によるエビデンス,療者の熟練,患者の価値観,状況(患者の個別性と医療を行う場)の4 要素を統合すること”である.エビデンスとしては,人間集団を対象とする疫学研究が重視される.診療ガイドラインはEBM の延長線上にあり,“診療上の重要度の高い医療行為について,エビデンスのシステマティックレビューとその総体評価,益と害のバランスなどを考量して,患者と医療者の意思決定を支援するために最適と考えられる推奨を提示する文書”とされる.国内では,日本医療機能評価機構Minds が診療ガイドラインの作成・普及・適正利用の基盤を提供しており,日本医学会連合の診療ガイドライン委員会もMinds と連携して活動を進めている.診療ガイドラインが,限られた資源のなかでの最良の医療の実現に向けて,医療者の拠って立つところのひとつとなり,臨床家と患者の意思決定を支え,社会からの信頼の構築に役立つことが期待される.
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TOPICS
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医療行政
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医学のあゆみ 272巻6号, 545-546 (2020);
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神経内科学
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医学のあゆみ 272巻6号, 546-547 (2020);
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消化器内科学
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医学のあゆみ 272巻6号, 548-549 (2020);
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FORUM
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医学のあゆみ 272巻6号, 561-562 (2020);
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パリから見えるこの世界 88
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医学のあゆみ 272巻6号, 563-566 (2020);
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