Volume 274,
Issue 13,
2020
-
特集 冠動脈疾患とステント治療
-
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1241-1242 (2020);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1243-1247 (2020);
View Description
Hide Description
現在,国内で使用できる薬物溶出ステント(DES)はXIENCE®,SynergyTM,OnyxTM,UltimasterTM,Orsiro,COMBO®(PROMUS ElementTM,NOBORI®)の6 つ(8 つ)が使用可能である.新世代のDES では,シロリムス(またはエベロリムス,ゾタロリムス,バイオリムス,ノボリムスなど,構造,分子量,効力および親油性の点で互いに異なる類似体)が主に使用される.ステントポリマーは,ステント表面の血栓形成性を最小限にするため,生体適合性ポリマー(durable)と生分解性ポリマー(biodegradable)が主流になり,一部には,再内皮化を過度に抑制しないよう血管壁側のみに薬剤コーティングを施すなどの工夫が開発されている(abluminalcoating).第二世代DES では,コバルトクロム,プラチナクロムをベースにしたステントが開発され,radial force を失うことなく50~90μm まで薄くなり,ステントのリンク数を少なくすることなどで,より分岐部病変や屈曲病変などに適したものに改良された.本稿では,ステントを形成する3 つの重要な因子となる,薬剤,ポリマー,プラットフォーム性能についてまとめた.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1248-1252 (2020);
View Description
Hide Description
急性心筋梗塞は冠動脈が血栓閉塞することにより心筋壊死を起こす病態である.急性期に再灌流療法が推奨されており,以前は血栓溶解療法が行われていたが,近年はステント留置を行う経皮的冠動脈インターベンションが従来の血栓溶解療法に比較して格段に予後を改善している.さらに現在では,薬剤溶出性ステント(DES)の使用により,慢性期にも再狭窄,ステント血栓症を減らすことが報告されている.DES はさらなる改良のため新しいステントがでてきており,第一世代DES に比較し第二世代DES は良好な成績を示している.本稿では,急性心筋梗塞に対する治療の変遷とステント治療の現状ならびに今後の課題について概説する.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1253-1258 (2020);
View Description
Hide Description
左主幹部病変に対するステント治療は,ステントテクノロジーやカテーテル技術の向上とともに,その臨床データが蓄積され,かつて無条件に第一選択とされた冠動脈バイパス術(CABG)に対するalternative therapyの選択肢として考慮されるに至り,現在,日常診療において広く行われている.しかし,左主幹部病変の治療は生命予後に大きく関わる重要なものであり,デバイスや技術が成熟しつつある現在においても,その患者や病変に応じて,ステント治療を最大限に至適化(optimization)することが,われわれカテーテル治療医の使命である.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1259-1264 (2020);
View Description
Hide Description
慢性完全閉塞(CTO)病変に対するステントを用いた経皮的冠動脈形成術(PCI)の適応や予後は,いまだ議論がつきないところである.冠動脈バイパス術や至適薬物療法(OMT)にさえ劣るとされる報告もあるが,各種デバイスの進化,薬剤溶出性ステントの開発や改良に加え,手技自体の発展により経皮的冠動脈形成術の治療成績は向上してきている.予後改善効果については観察研究による報告が主であったが,近年,EXPLORE, DECISION-CTO, EURO-CTO といった,経皮的冠動脈形成術と薬物療法を比較したランダム化試験の結果が報告されている.OMT よりPCI のほうが優れるといえるのはまだEXPLORE 試験でのサブグループ解析のようにLAD-CTO に対してのみとされているが,RCT 対象患者における不十分な虚血の評価や成功率の低さなど,日本国内における現状との解離もある.心血管疾患のハイリスク患者や若年患者における将来のST 上昇型心筋梗塞(STEMI)発症の可能性,また低心機能の虚血性心不全患者の予後改善いう面を考慮すると薬剤溶出ステントを用いたCTO-PCI のメリットに期待したい.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1265-1273 (2020);
View Description
Hide Description
冠動脈分岐病変に対してはone-stent technique(provisional stenting)を標準的治療法とする.第二世代以降の薬剤溶出性ステント(DES)を用いても非主幹部分岐部病変に対する経皮的冠動脈形成術(PCI)はいまだ治療成績に課題があり,急性期および慢性期の治療成績を向上させるためには,冠動脈本管(MV)に対しDES 留置した後の側枝(SB)閉塞を予防し,長期開存に導く必要がある.MV へのDES 留置時には不完全圧着の残存を予防するとともに,DES の変形も予防する必要がある.MV へのDES 留置に伴うSB 閉塞の予測には,血管造影上法を用いたRESOLVE score および血管内イメージングを活用する.予防にはmodifiedjailed balloon technique やjailed corsair technique を積極的に行う.さらに長期的な予後改善をめざして,SB に向けた薬剤溶出性バルーン(DCB)を用いた治療もよい成績を上げつつある.急性期にSB の血流障害を伴う血管障害をきたした際には,SB に向けたDES 留置を考慮する必要がある.DES の追加留置方法にはT-stenting,TAP stenting,Culotte stenting があり,それぞれに利点と注意点がある.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1274-1283 (2020);
View Description
Hide Description
石灰化病変そのものはステント留置に対して邪魔になるわけではない.植込みは可能である.しかし,植込み後にさまざまなデバイス(高圧拡張バルーン,Shockwave バルーン,レーザー治療)を使ってもステントの完璧な血管への圧着はいつもうまくはいくわけではない.やはり,ステント植込み前の前処置(vesselpreparation)が最も重要になる.この前処置に必要な第一ステップは,画像診断としての血管内超音波(IVUS)と光干渉断層法(OCT)である.冠動脈CT は,術前診断としてはその重要性を否定はしないが,IVUS,OCT の代わりはつとまらない.われわれは現在,石灰化病変をいろいろな形でモディファイできる道具を多数所持している〔たとえばOPN バルーン,Rotational Atherectomy(ROTA),Orbital atherectomy(OA),Shockwave システム,Laser coronary atherectomy(LCA),Cutting balloon(CB),Scoring balloon(SB)など〕.そのため,石灰化病変があることがステント植込みの至適化のリミテーションにはならない.最近,その有効性を報告されている薬剤溶出性バルーン(DCB)を使用するときも,十分な病変の前処置(vesselpreparation)はとても重要である.そして,術前の冠動脈造影の評価だけでなく,血管内イメージング,冠生理学的評価もとても重要である.“十分な事前の準備がその後の結果のすべてを決める”.いつもどこかで聞いている言葉であろうが,この一文にすべてが表現されている.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1284-1292 (2020);
View Description
Hide Description
冠動脈ステントの出現が虚血性心疾患に対するカテーテル治療を格段に改善させたことは周知の事実である.冠動脈カテーテル治療の進歩において,冠動脈ステント自体の進化,抗血小板薬療法の改善,カテーテル手技自体の発展が寄与しているが,血管内イメージングデバイスの果たす役割も非常に大きい.血管内イメージングデバイスを使うと,病変性状を評価することで必要な前処置を追加することができ,冠動脈の正確なサイズを計測できることで適切なステントサイズの選択ができる.また,ステント植込み後も冠動脈ステントの圧着状態や冠動脈解離の程度の確認もできる.このようにイメージングデバイスを使いカテーテル治療を最適化することで急性期および慢性期の治療成績の向上が望める.本稿では血管内超音波(IVUS),光干渉断層装置(OCT/OFDI)を中心に,血管内イメージングデバイスを使用したステントの正しい植込みを解説する.
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1293-1298 (2020);
View Description
Hide Description
冠動脈ステント留置後の抗血小板療法はステント血栓症とステントと関連しない血栓性イベントの予防のために行われ,ある期間は抗血小板薬2 剤併用療法(DAPT)が必要とされてきた.第一世代薬剤溶出性ステントでは超遅発性ステント血栓症の懸念から,ステント留置後1 年以後のDAPT を考慮しないといけない場合があったが,現在の第二世代以後の薬剤溶出性ステントではより短いDAPT 期間が推奨されている.また実際に,抗血小板療法を行うに際しては,患者側の要因としての血栓性イベントと出血性イベントのリスクを踏まえた対応が重要である.このようななか,わが国において冠動脈疾患患者における抗血栓療法のガイドラインが発表されており1),このガイドラインを踏まえた薬剤溶出性ステント留置後の抗血小板療法についての現状と,今後について概説する.
-
連載
-
-
再生医療はどこまで進んだか 14
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1304-1309 (2020);
View Description
Hide Description
ヒトの生体内で角膜内皮細胞は通常は増殖しないため,広範に障害されると角膜は混濁し水疱性角膜症に陥る.現在の水疱性角膜症に対する唯一の治療法は角膜移植であるが,侵襲的な手術手技,移植術後の角膜内皮細胞の持続的減少,移植後の角膜形状の不整などが問題となっている.筆者らは角膜移植に代わる再生医療としてドナー角膜由来のヒト角膜内皮細胞を生体外で拡大培養し,その細胞懸濁液を前房内に移植する「培養ヒト角膜内皮細胞注入療法」を開発してきた.その開発過程では細胞移植に有用な培養ヒト角膜内皮細胞の品質を本移植治療の有効性および安全性と照合できるレベルまで絞り込んだ.さらにその品質を具備した高品質細胞の安定かつ安全な産生法を確立した.2013 年に本細胞注入療法のfirst inhuman 試験を世界ではじめて実施し,現在までに38 例の臨床研究,27 例の医師主導治験を実施し,その有効性と安全性を確認している.
-
臨床医が知っておくべき最新の基礎免疫学 7
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1310-1316 (2020);
View Description
Hide Description
iNKT 細胞とMAIT 細胞は,特定のT 細胞受容体(TCR)を発現し,非古典的抗原提示分子に結合した非ペプチド抗原を認識する細胞である.腸管や呼吸器系など侵入物に対する免疫応答の最前線に位置し,自然免疫と同じくらいのスピードで機能を発揮する.自然免疫,獲得免疫系のさまざまな細胞の機能を調整するため,感染,自己免疫,抗腫瘍免疫など多くの病態への関与が報告されている.MAIT 細胞については,ここ10 年で検出法確立や抗原の発見がなされ,その理解が飛躍的に進んだ.iNKT 細胞についても臨床応用に向けた臨床試験が行われており,どちらも目が離せない分野である.
-
バイオミメティクス(生体模倣技術)の医療への応用 3
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1317-1323 (2020);
View Description
Hide Description
小物体の運動誘起とそのタイミング,および運動方向・速度の制御は,ソフトアクティブマターの分野で注目を集めている研究であり,ドラッグデリバリー,マイクロマシーン,マイクロ流路,ソフトロボットなどへの応用が期待されている.小物体の運動制御に関する研究は,非接触で物体を目的地まで運搬し,望みのタイミングで物体に含まれる物質を放出することを最終目標のひとつにしているが,これまでに小物体の運動と物質の放出を同一系中で制御する方法はほとんど検討されてこなかった.本稿では,筆者らが開発した粒子安定化気液分散体であるリキッドマーブル(LM)およびアーマードバブル(AB)をキャリアーとする,外部刺激による物体運動と物質放出の制御を同一系で実現する技術について紹介する.
-
TOPICS
-
-
神経内科学
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1299-1300 (2020);
View Description
Hide Description
-
腎臓内科学
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1300-1301 (2020);
View Description
Hide Description
-
膠原病・リウマチ学
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1302-1303 (2020);
View Description
Hide Description
-
FORUM
-
-
日本型セルフケアへのあゆみ 7
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1324-1328 (2020);
View Description
Hide Description
⃝ 新型コロナウイルスは,一時期収まったかと思われたが依然として感染拡大が続いており,経済・社会的にも大きな打撃を与えている.このウイルスは一定速度で塩基変異が進行しており,3 カ月前の「武漢型」「欧州型」からすでに6 塩基の変異が認められている.6 月末からこの「東京・埼玉型」は軽症または無症状の感染者のなかで拡大し,全国に湧き出していった.感染拡大を食い止めるには,無症状の感染者を同定して隔離するほかない.⃝ しかし,わが国のPCR 検査数は遅々として増えず,100 万人当たりの検査数は世界215 の国・地域のうち150 位台である.保健所や医療機関のPCR 検査にかけられるリソースは限られているため,大幅な拡充は難しい.そこで世田谷区の保坂展人区長は,大学や民間企業のリソースを活用し,検査数の規模を従来の10 倍まで拡大することを目標とする“世田谷モデル”の開始を決断した.
-
天才の精神分析 ─ 病跡学(パトグラフィ)への誘い 2
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1329-1331 (2020);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1332-1333 (2020);
View Description
Hide Description
-
Source:
医学のあゆみ 274巻13号, 1334-1335 (2020);
View Description
Hide Description