Volume 275,
Issue 4,
2020
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特集 ポリファーマシー─ 解消に向けた取り組み
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医学のあゆみ 275巻4号, 317-317 (2020);
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医学のあゆみ 275巻4号, 318-322 (2020);
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高齢者のポリファーマシーは単に服用する薬剤数が多いことではなく,多いことにより服薬アドヒアランスの低下や薬物有害事象のリスク増加など問題が起こりやすい,あるいは問題が起こっている状態を指す.具体的には,6 種類以上から問題が起こりやすくなるため,多数の高齢患者に対し具体的な対策が必要だが,薬剤は患者ごとに異なるため,その対策を画一的な手法として確立するのは容易ではない.重要な視点としては,まず罹患している疾患の状況を確認することと処方される薬剤をすべて見直すことである.必要な薬剤が処方されているか,副作用のリスクが高い薬剤が処方されていないか,などとなる.リスクを増加させる薬剤,いわゆるpotentially inappropriate medication(PIM;とくに慎重な投与を要する薬剤)を可能なかぎり避け,かつ適正な薬剤を効果的に服用してもらうか,これには医師・薬剤師による医薬連携により個々の患者に経時的に指導を行っていく必要がある.
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医学のあゆみ 275巻4号, 323-328 (2020);
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ポリファーマシーは単なる数の概念だけではなく,薬物有害事象,処方の複雑化,服薬アドヒアランスの低下など,薬剤のあらゆる不適正問題を示す言葉へと変化しつつある.とくにPIMs(potentially inappropriatemedications)とよばれる高齢者に対する慎重投与薬のみを見直すといった処方見直しではなく,高齢者総合機能評価(CGA)などを用いた患者の状態を総合的に把握したうえで,処方がその患者にとって適切かどうかを考え,必要な薬と不要な薬をスクリーニングすることが重要である.そのポリファーマシー対策は多職種協働で行うことが診療報酬でも認められるなど,総合的な対策が求められる.医師・薬剤師を含め,多職種が専門性を発揮し情報を持ち寄り共有し,患者・家族を含めて治療の方向性を見据え,処方を検討することが求められている.
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医学のあゆみ 275巻4号, 329-334 (2020);
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芳珠記念病院は,急性期一般病棟と地域包括ケア病棟などを有する260 床の急性期ケアミックス型病院である.院内多職種協働の組織文化を醸成して,治し支える“生活支援型医療”を要する患者に,リハビリテーション,栄養サポート,認知症ケア,ポリファーマシー対策,アドバンスケアプランニング(ACP)を包括的に提供している.毎週月曜日に診療局研究室で行われるポリファーマシーコアカンファレンスは,ポリファーマシー対策の中核をなす.薬剤調整困難症例に対して医師,歯科医師,薬剤師,看護師がメンバーとなり,担当医に処方を提案し,病棟薬剤師や看護師などと連携を取りながら,必要時にリハビリテーション療法士,管理栄養士,介護福祉士なども交えて経過をモニタリングしている.また,本カンファレンス対象外のケースは,主に病棟で医師,薬剤師,看護師がポリファーマシーミニカンファレンスを開いて対応している.今後は,with コロナの時代に配慮しながら,地域包括ケアにおけるポリファーマシー対策を実現したい.
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医学のあゆみ 275巻4号, 335-338 (2020);
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在宅医療におけるポリファーマシー対策は,薬剤師,訪問看護師,往診してくれる専門医などの医療職との連携に加え,ヘルパー,ケアマネージャーなどの介護職や,家族,患者本人との協力体制をいかに作るかが重要である.介護者の負担を軽減するための処方を考えることも重要である.訪問したらまずは残薬のチェックからはじめ,訪問服薬管理指導(薬剤師の訪問指導)の提案を検討する.保険調剤薬局や院内の薬剤師からの処方提案にも耳を傾ける.わが国の在宅医療現場において,ポリファーマシーは45%に認めたとの報告があり,2 剤以上の減薬で日常生活動作(ADL),生活の質(QOL)の低下はなく,症例によっては減薬により大幅に改善する方もいる.
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医学のあゆみ 275巻4号, 339-344 (2020);
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多忙を極める医師が,診察の場で他の医師の処方もあわせて見直しを行うことは難しい.そこで,医師・薬剤師協働により地域全体でポリファーマシー対策に取り組む必要があるとの考えのもと,北九州市八幡地区を中心とした医師会や薬剤師会,大学・基幹病院の医師や薬剤師が世話人となって研究会を立ち上げた.また,これと並行して地域医療機能推進機構(JCHO)九州病院では,整形外科病棟を対象に医師,薬剤師,看護師による“ポリファーマシーカンファレンス”を行ってきたが,2020 年6 月からは,管理栄養士や理学療法士(PT)/作業療法士(ST)/言語聴覚士(OT)も加わった多職種での処方見直しチームを組織し,対象を全病棟に拡大した.退院時には,薬剤師が処方見直し理由なども記載した“施設間情報提供書”をかかりつけ医や保険薬局に送っているが,さらに入院時に保険薬局から薬剤部に患者情報を提供してもらう取り組みも開始した.この双方向での情報提供がシステム化すれば,病診薬連携によるポリファーマシー対策にもおおいに役立つと期待している.
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医学のあゆみ 275巻4号, 345-350 (2020);
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高齢者の医薬品適正使用の指針には,“多剤服用のなかでも害をなすものを,とくにポリファーマシーとよぶ.ポリファーマシーは単に服用する薬剤数が多いことではなく,それに関連して薬物有害事象のリスクの増加,服薬過誤,服薬アドヒアランス低下などの問題につながる状態である”と,ポリファーマシーの概念が示されている.高齢者では生活習慣病や老年症候群により,多剤服用になりやすい傾向がある1).複数の診療科・医療機関の受診により,処方薬全体が把握されない問題や重複処方・相互作用の危険性もあるため,常に不適切処方をチェックする必要がある.高齢者の有害事象増加には多くの疾患,機能,社会的な要因などが関わるが,薬物動態学/薬力学の加齢変化(表1,「サイドメモ1」参照)と多剤服用が二大要因であるといわれている2).高齢者に限らず継続したポリファーマシー対応を進めるには,病院内だけでなく地域に広げていく必要があり,医薬(病院医師と病院薬剤師)-薬薬(病院薬剤師と薬局薬剤師)-薬診(かかりつけ薬剤師とかかりつけ医師)の連携が重要である.本稿では,地域医療を担う薬局薬剤師(かかりつけ薬剤師・薬局)が取り組むポリファーマシー対応について,紹介する.
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医学のあゆみ 275巻4号, 351-355 (2020);
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“うすき石仏ねっと”(石仏ねっと)は人口40,000 人弱の臼杵市内で活用されている小さな医療・介護情報通信技術(ICT)ネットワークである.医師,歯科医師,薬剤師,看護師,保健師,社会福祉士,栄養士,歯科衛生士,ケアマネジャーなどの多くの専門職が参加し,双方向性の情報共有が行われている.市民が情報の閲覧を許可するための石仏カードは2 万2,000 枚以上(2020 年4 月現在)発行されている.加入者・利用者は年々増加し,機能も年々充実してきている.薬剤師が最も多く利用しており,薬歴情報や医科情報の共有のみならず疾患連携も活用されている.多職種による情報共有は相乗効果を生み,重複薬対策やポリファーマシー対策に明らかな成果を上げている.一方向性の情報閲覧ではない多職種による双方向性の情報共有により,ポリファーマシー対策も含めた医療の質の向上が全国で広がることが望まれる.
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医学のあゆみ 275巻4号, 356-360 (2020);
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ポリファーマシーは薬物療法上の臨床的な問題につながるだけではなく,薬剤費やその他の医療費の増加を伴い,患者や医療保険財政の経済的な負担となる.『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』では,薬剤師によるポリファーマシーへの介入として,漫然と繰り返し使用されている薬の見直しや多剤併用に対する包括的介入が推奨されている.近年の海外の報告では,薬剤師を中心とした薬物療法の見直しにより,介入にかかる費用を上回る費用削減効果が期待できることが示唆されている.また,ポリファーマシーへの取り組みの推進をめざした国の動きとして,2016 年度より新たな報酬(薬剤総合評価調整管理料など)が導入された.厳しい医療保険財政のなか,費用の削減が可能な部分は適正化していく必要があり,医療や介護従事者から政策立案者に至るまで,さまざまな関係者の一層の取り組みが期待される.
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連載
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再生医療はどこまで進んだか 17
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医学のあゆみ 275巻4号, 367-370 (2020);
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肝臓は再生する臓器として知られているが,持続的な炎症の結果,肝細胞障害,それに伴う線維化形成で,再生力が低下した肝硬変に至る.2003 年より,肝硬変症に対する自己骨髄細胞の臨床研究を開始,その後局所麻酔で少量の骨髄液を回収し間葉系幹細胞に培養し投与する方法を開発した.さらに,より多くの患者に対し治療を実行するため“他家脂肪組織由来間葉系幹細胞投与療法”の治験を行ってきた.臨床研究からは,肝線維化改善に伴う肝再生の誘導が肝機能の改善に重要であることが臨床的に明らかになった.一方で,なぜ骨髄細胞は肝硬変に効果があるのか? という疑問に関しての基礎研究は,2000 年代の技術を用いた解析では,骨髄由来細胞が肝硬変部にいきコラゲナーゼなどを出すことで線維化改善,再生誘導するという結果であった.しかし現在の二光子励起顕微鏡などを用いた解析では,投与した間葉系幹細胞は主に肺に遊走され,そこで“指揮細胞”としてエクソソームを出すことで硬変部に実働細胞として働くマクロファージなどの細胞に影響を与えて,抗炎症性マクロファージに極性変化を促したり遊走させたりして組織修復に関わっている可能性が出てきた.今になってあらためて過去のデータを見直すと,全骨髄細胞を投与した場合,肝硬変部の肝臓に定着していた細胞は主にマクロファージであった.基礎,臨床研究・治験を推進してきた現在までの結果について総括する.
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臨床医が知っておくべき最新の基礎免疫学 10
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医学のあゆみ 275巻4号, 371-378 (2020);
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神経免疫学は神経系と免疫系の相互作用を探求する新興の医学領域である.本領域は神経内科学と緊密に連携しており,神経疾患の病態を解明する学問として発展してきた.対象とする疾患は重症筋無力症,ギランバレー症候群,多発性硬化症をはじめ,アルツハイマー病やてんかんなど多岐にわたる.神経系と免疫系の直接的なクロストークについても研究が進められている.ストレスに伴い産生されるグルココルチコイドは全身性に作用して免疫系を抑制することが知られており,神経・内分泌・免疫連関として有名である.近年では特定の神経回路が特定の免疫反応を直接制御するメカニズムも注目されている.具体的には,迷走神経刺激による脾臓での免疫抑制作用,環境刺激由来の神経回路による特異血管部の炎症制御,疼痛刺激を起点とする感覚神経回路による皮膚炎誘導などである.神経免疫学はこれまで治療の困難であった病態の新たな予防法,治療法の開発につながる可能性を有しており,今後の研究の進展が待ち望まれる.
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バイオミメティクス(生体模倣技術)の医療への応用 6
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医学のあゆみ 275巻4号, 379-384 (2020);
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生物は,ナノオーダーのタンパク質からメートルオーダーの個体にわたる広い階層から構成されている.それら生物の持つ構造は,自己組織的に形成され,さまざまな機能を発現している.本稿では,セミやトンボなどの昆虫の翅に存在するナノ構造が,細菌に対して抗菌・殺菌性を示すことに着目し,ナノ構造を人工的に作製することで薬剤を使わない方法で細菌の増殖を抑える(抗菌),あるいは細菌を殺す(殺菌)ことができる新しい抗菌・殺菌材の可能性について取り上げる.注目すべきは,このナノ構造はグラム陰性菌,陽性菌にかかわらず広い抗菌スペクトルを示すことであり,メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)にも抗菌活性があることが確認された.医療分野に使われる新しい抗菌材としての利用が期待される.
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TOPICS
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神経精神医学
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医学のあゆみ 275巻4号, 361-362 (2020);
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神経内科学
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医学のあゆみ 275巻4号, 362-364 (2020);
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癌・腫瘍学
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医学のあゆみ 275巻4号, 364-365 (2020);
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FORUM
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天才の精神分析 ─ 病跡学(パトグラフィ)への誘い 5
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医学のあゆみ 275巻4号, 385-386 (2020);
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医学のあゆみ 275巻4号, 387-388 (2020);
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医学のあゆみ 275巻4号, 389-392 (2020);
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