Volume 36,
Issue 12,
2015
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総説
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Therapeutic Research 36巻12号, 1171-1176 (2015);
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原著
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Therapeutic Research 36巻12号, 1177-1182 (2015);
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目的:虚血性脳血管障害の慢性期再発予防には,スタチンによる脂質プロファイルの改善が有用であることが知られている。スタチンの脳梗塞再発予防効果として血管内皮機能の改善を評価した。対象と方法:脳卒中専門外来を受診した虚血性脳血管障害慢性期症例およびハイリスク症例を対象に血流介在血管拡張反応(FMD)を施行した。このうち,高コレステロール血症を有し新たにロスバスタチン5 mg を投与した症例については,投与後にFMDを行い前値と比較した。結果:病型別には,心原性塞栓症に比較して,ラクナ梗塞(p=0.02)およびアテローム血栓性脳梗塞(p=0.009)で有意に%FMD が低値であった。リスク別には,脂質異常症あり群はなし群と比較して有意に%FMD が低値であった(p=0.05)が,高血圧,糖尿病と%FMD に相関は認めなかった。ロスバスタチン5 mg を投与した15 例のうち内服前に%FMD がすでに良好であった症例を除いた11例では,ロスバスタチン投与後に%FMDは有意に改善した(p=0.04)。考察:FMD は脳梗塞の病型別,リスク別の血管内皮障害の程度を鋭敏に評価できる検査であることが改めて示された。ロスバスタチンはこの血管内皮機能を改善することが明らかとなり,脳梗塞予防効果の一機序である可能性が示唆された。
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Therapeutic Research 36巻12号, 1183-1187 (2015);
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背景:喘息と慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併する,喘息とCOPDオーバーラップ症候群(ACOS)患者は疾患の増悪リスクが高く,呼吸機能の低下速度が速く,治療介入の必要性が高いが,ACOS患者で薬剤の臨床効果を検討した報告はほとんどない。目的:喘息およびCOPDに適応症を有する吸入薬のブデソニド/ホルモテロール配合薬をACOS患者に1年間投与し,有効性および安全性を検討する。方法:当院外来通院中の成人ACOS患者13例を対象に,ブデソニド/ホルモテロール配合薬を1 日2 回,1 年間にわたって吸入投与した。投与前(ベースライン時)および投与1 年後に,%1 秒量(%FEV1.0)の測定および喘息コントロールテスト(ACT)を実施してその1 年間の推移を有効性の指標とした。安全性は試験期間中の副作用発現を評価した。結果:患者背景は平均年齢が71.3 歳と高齢であり,閉塞性換気障害の指標である%FEV1.0が50%未満の患者が約半数を占め,重症患者が多く含まれていた。%FEV1.0 の平均値(±標準偏差)は,ベースライン時の60.2±30.3%から1年後に62.8±33.6%と維持され,わずかではあるが上昇していた。また,患者ごとの推移でも%FEV1.0 が著しく低下した患者はいなかった。ACTスコアは,ベースライン時の18.1±5.2から1 年後に18.5±5.1 に推移し,著しくスコアが低下した患者もいなかった。試験期間中にブデソニド/ホルモテロール配合薬投与による副作用発現を認めず,本剤1 年間投与時の忍容性が認められた。結論:実地臨床での検討により,気管支喘息合併COPD患者におけるブデソニド/ホルモテロール配合薬長期投与の有用性が示唆された。
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Therapeutic Research 36巻12号, 1189-1197 (2015);
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目的:DPP‒4 阻害薬シタグリプチンの日本人2 型糖尿病患者に対する血糖改善効果およびそれ以外の作用,安全性について検証した。方法:外来受診した新規あるいは通院中の2型糖尿病患者のうち,血糖コントロール不十分な患者を対象とした。食事・運動療法のみで治療中の患者にはシタグリプチン50 mg/日を新規投与(単剤)し,他の糖尿病治療薬を使用中の患者にはシタグリプチン50 mg/日を追加投与(併用)した。結果:HbA1c,血圧,LDL コレステロール(LDL‒C),中性脂肪(TG),プロインスリン/インスリン比は,投与開始時(0 ヵ月)から投与3 ヵ月後に有意に低下した(p<0.05)。糖尿病罹患期間や併用糖尿病治療薬の種類によってHbA1c の変化に有意差は認められなかった。結語:患者背景や併用する糖尿病治療薬の有無,種類にかかわらず安定した血糖降下作用を示すシタグリプチンは,長期の血糖コントロール維持への有用性が期待される。
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Therapeutic Research 36巻12号, 1199-1203 (2015);
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Therapeutic Research 36巻12号, 1205-1211 (2015);
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目的:ナトリウム・グルコース共役輸送担体2(sodium glucose co –transporter 2:SGLT2)阻害薬は,2014 年に次々と上市され約1 年が経過したが,副作用の報告や患者選択などの問題から実臨床では処方への慎重傾向がみられており,適正使用の報告が待たれている。そこで,SGLT2 阻害薬の一つであるダパグリフロジンについて,短期使用における血糖と体重への影響について検討した。方法:当院に通院する2型糖尿病患者のうち,2013 ~ 2014年の年末年始にHbA1cが悪化したことから,2014年5 ~ 10月にダパグリフロジン5 mgの単独投与に切替え,または追加投与を開始した患者26例を対象に,ダパグリフロジンの投与前(2013~2014年)と投与後(2014~2015年)の年末年始のHbA1c,体重,血圧およびその他臨床検査値についての変化を比較検討した。結果:HbA1cの変化量は,投与前0.38±0.07%から投与後- 0.04±0.04%へと有意な減少がみられ,投与前後おのおのの解析期間(11 ~ 2月)におけるHbA1cの推移は,投与後で低下傾向が認められた。体重の変化量は,投与前は0.50±0.40 kg の増加,投与後では0.42±0.25 kg の減少がみられた。また,中性脂肪の変化量は投与前に9.7±15.9 mg/dL上昇,投与後17.5±19.5 mg/dLの低下,総コレステロールの変化量は投与前に8.6±4.0 mg/dL上昇,投与後に1.3±3.9 mg/dLの低下がみられ,中性脂肪および総コレステロールともに変化量に減少傾向が認められた。結論:SGLT2阻害薬ダパグリフロジンは,年末年始のような食生活の乱れやすい時期に短期的に投与し,血糖と体重のコントロールの悪化を抑制するという使い方もできる薬剤である可能性が示された。
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Source:
Therapeutic Research 36巻12号, 1213-1221 (2015);
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目的:肥満合併2 型糖尿病患者にSGLT2 阻害薬ダパグリフロジンを投与するにあたり減量指導目的で行動修正療法を施行し,血糖改善効果,体重推移およびQOL に及ぼす影響を検討した。方法:当院にてダパグリフロジンを投与開始する際に行動修正療法を施行し,本剤を24週以上服用した20 例(男性:14 例/ 女性:6 例,平均年齢:50.3 歳,平均HbA1c:7.8%,平均BMI:29.4 kg/m2)を解析対象とした。行動変容が比較的良好に達成できた群10 例(行動変容群)と,行動変容が不十分であった群10 例(非変容群)に分けてHbA1c および体重の推移を検討するとともに,本剤投与後のQOL スコア(DTSQ改編)も評価した。当院にて各患者に生活習慣の改善指導を行いながら,患者に食事日記,生活活動日記および週間自己評価表を配布して患者自身が記録を取ることでも行動修正を促した。結果:解析対象の全例において,HbA1c は投与前の7.8±0.7%から投与開始後12 週で7.4±0.7%に有意に低下し(p<0.05),24 週でも7.4±0.8%と有意な低下が持続していた(p<0.05)。行動変容群では,投与開始後12 週から24 週まで経時的にHbA1c が有意に低下したが(p<0.05),非変容群では,12 週で有意な低下を認めたものの(p<0.05),24 週においては投与前と比較して有意差を認めなかった。体重の推移もHbA1c と類似した結果であった。行動変容群では,非変容群よりも治療の満足度を含めたQOLスコアが高かった(満足度:平均4.2 点vs 3.3点)。安全性については,試験期間中にダパグリフロジン投与に関連する有害事象の発現を認めず,すべての患者で24 週間の投与を継続できた。結語:ダパグリフロジン投与後に行動変容が達成できた患者において,長期的な血糖および体重への影響が良好であり,さらにはQOL スコアも高いことが実臨床でのデータとして示された。