最新医学
Volume 58, Issue 2, 2003
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特集 【アレルギー疾患— 最近の動向—】
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アプローチ
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アレルギー疾患における最近の話題—オーバービュー—
58巻2号(2003);View Description Hide Description近年,喘息をはじめアレルギー疾患の頻度は急速に高まり,我が国や他の先進諸国における深刻な健康問題となっている.一方で,ゲノム解析の目覚ましい進歩を受け,アレルギー疾患の病因・病態の解明,治療法の開発に向けた研究が精力的に行われている.今後の有効な予防法・治療法の進展に期待を寄せながら,ここでは主に,本特集で取り上げられたアレルギー研究における最近の話題について簡単に概説する.
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遺伝学
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SNP を用いた気管支喘息関連遺伝子の解明
58巻2号(2003);View Description Hide Description近年,SNP を高速に大量にタイピングする技術が確立され,迅速に多数の疾患候補遺伝子のSNP 解析が行えるようになり,全ゲノム領域にわたる体系的関連解析が可能となった.これにより機能未知の新しいアレルギー関連遺伝子の単離が期待されている.患者対照関連解析は,臨床の現場で検体収集が比較的行いやすく,今後,病態を解析する手法としてますます重要となるであろう.その結果,個別化されたオーダーメード医療の実現が期待される. -
遺伝子相互作用の新しいアプローチ
58巻2号(2003);View Description Hide Description喘息は多因子遺伝子病であり,1つの遺伝子を調べただけではその発症した理由を説明することはできず,複数ある疾患感受性遺伝子とその相互作用がどうなっているのか統合的に考えなければならない.多変量解析の手法であるロジェスティック回帰とニューラルネットワークは,候補遺伝子の多型から,喘息のなりやすさ,疾患の有無を推定する手法として有用であると思われる.
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細胞
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遺伝子の網羅的な発現解析法を用いたアレルギー研究の新展開
58巻2号(2003);View Description Hide Description遺伝子の網羅的な発現解析は,アレルギー研究において① 未知の分子の探索,②未知の副作用の予見,③ 新しい分子生物学的な機序の同定もしくは活性化の経路の解析などの検討において,驚くほど強力なスクリーニング結果をもたらし,従来の方法とは別次元のスピードで研究を推進する原動力となる可能性がある.今後,アレルギー性炎症反応に関与していると考えられる分子の数は間違いなく飛躍的に増加すると思われる. -
アレルギー病態における好酸球の役割
58巻2号(2003);View Description Hide DescriptionIgE 抗体,マスト細胞を中心に理解されてきたアレルギー疾患に好酸球性炎症の概念が持ち込まれて以来,臓器過敏性の獲得,リモデリングといった慢性の側面の解明が進められてきた.近年,ヒト型化抗IL-5 抗体など新たな分子標的薬の登場により,好酸球が部分的にではあるものの制御できるようになった.予想とは異なる結果がもたらされ,慢性アレルギーの病因は再び混迷のさなかにある.気道炎症と喘息の重症度,過敏性は,関連するとの報告とそうでないとの報告が相半ばする現状である.本稿では好酸球と喘息病態の関連についてレビューした.
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分子
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IL−13 研究の新展開
58巻2号(2003);View Description Hide Description最近Th2 サイトカインの1つであるIL-13 の気管支喘息の発症機序における重要性が明らかになってきた.我々は,IL-13 受容体α2 鎖がIL-13 シグナルに対して負のフィードバック機構として働くこと,IL-13 変異型が機能的に気管支喘息の遺伝要因となることを明らかにした.IL-13 シグナルを制御することは気管支喘息の治療につながると考えられる. -
アレルギー疾患の薬理遺伝学の新展開
58巻2号(2003);View Description Hide Descriptionアレルギー疾患治療薬の作用・副作用の個体差には遺伝的要因が重要な役割を果たしているが,これは薬物代謝を規定する因子と一定の血中濃度下での薬物反応性を規定する因子に分類される.ここでは,ロイコトリエン合成酵素遺伝子と抗ロイコトリエン薬の喘息治療効果についての研究を紹介する.薬理遺伝学では家系解析が使えず,症例対照研究に頼らざるをえないためさまざまな方法論上の問題があり,今後の研究の進展には良質の臨床データと対になった遺伝子サンプルの集積が必須である. -
気道リモデリング研究の新展開
58巻2号(2003);View Description Hide Description喘息の気道リモデリングは,気道の傷害に対する修復の過程である.基底膜部の線維化は,細胞外マトリックスを分解するプロテアーゼ(MMP)とそのインヒビター(TIMP)のバランスがTIMP 優位になっている.また,PDGF やTGFβが線維化と平滑筋の肥大に関与し,システイニルロイコトリエンには平滑筋の増殖を高める効果がある.気道リモデリングは喘息の難治化の原因にもなり,今後もその発現機構を分子レベルで解明することが重要である. -
アスピリン喘息の新展開
58巻2号(2003);View Description Hide Descriptionアスピリン喘息は,30〜50 歳代に発症することが多い後天的過敏体質であり,成人喘息の約10% を占める2〜4).本症では,シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用が強い非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)ほど発作が生じやすいことが知られていた5)が,近年開発が進むCOX2 阻害薬では誘発されないことが明らかとなった6).すなわち現在では,アスピリン不耐症=COX1 阻害薬過敏と考えられている.本症では,特にNSAID 誘発時にシステイニルロイコトリエンの過剰産生が起きることが特徴である1)14).プロスタグランジンE2(PGE2)は特異的にNSAID 誘発反応を阻害する1)7〜9).また,クロモリンは特異的気管支拡張を示す24).しかしそれぞれの特徴的病態の接点はなく,不明な点も多い.
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疫学
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ウイルス感染と喘息発症の謎
58巻2号(2003);View Description Hide Descriptionある種のウイルス感染が喘息の発症について抑制的に働くという仮説があり,A型肝炎ウイルスなどは喘息の有病率を低くすると報告されている.その一方で,RS ウイルスとライノウイルスの呼吸器感染は喘息症状の悪化と関連する.また免疫系の成熟と関連して,これらの感染が乳幼児期から学童期のどの時期であるかも影響するが,Th1 細胞とTh2 細胞のバランスがTh2 細胞優位になることが,喘息の発症や症状の悪化に関連する. -
微量金属元素の動態から見たアレルギー
58巻2号(2003);View Description Hide Descriptionアレルギーの病態解明にはさまざまな手法がとられてきた.現在,最も注目を集めているのは遺伝子の探索である.しかし,アレルギーには遺伝要因だけではなく環境要因も大きく影響している.生体の働きを制御している各種酵素の活性中心には微量元素が含まれている.また,環境中の金属は生体に大きな影響を及ぼす.微量でも生体に大きな影響を及ぼす金属の動態という面からアレルギーをとらえることは,新たな知見を得るのに役立つであろう.
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治療
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Th1 誘導物質を用いたアレルギー治療と予防の試み
58巻2号(2003);View Description Hide Description増加しつつあるアレルギー疾患は,その治療法や予防対策についての社会的関心が高まっている.抗ヒスタミン薬や局所ステロイドを中心とする薬物治療がアレルギー疾患の治療の今日までの主流であったのが,ここ数年来アレルギーの病態解明に伴い,治療・予防の面では新たな試みが進められている.そのターゲットの1つとして,種々の細菌製剤やワクチン,いわゆるTh1 誘導物質に注目が集まり,臨床応用段階にまで進んできている. -
プロバイオティクスによるアレルギー予防の試み
58巻2号(2003);View Description Hide Descriptionアレルギー疾患は現在増加の一途をたどり,早期発見,予防に努めることが重要である.アレルギー疾患が先進諸国で特に増加していることから,生活水準の向上や予防接種による感染症低下が原因の1つと考えられている.本稿では,その原因に基づいた調査,腸内細菌叢と免疫能のアレルギー疾患発症へのかかわり,プロバイオティクスによるアレルギー疾患予防の可能性についての研究の概略と,筆者らの取り組みを紹介する. -
気管支喘息に対する吸入ステロイド治療の最近の動向
58巻2号(2003);View Description Hide Description我が国においてはここ数年の間にCFC-BDP pMDI 以外にFP-DPI ディスクヘイラーおよびディスカス,ブデソニドタービュヘイラーDPI,HFA-BDP(QvarTM)などの吸入ステロイド薬が導入されたが,日本における薬剤剤型,デバイスの選択肢はいまだ欧米と比較して非常に限られている.体質や喘息重症度などが異なる患者個々に適した吸入ステロイド治療は,その粒子径,デバイス,薬剤剤型の種類ならびに薬剤力価などを基準とした多くの選択肢があって初めて,きめの細かい喘息治療が可能になる.さらにまた,適切な喘息治療のためには患者の薬剤に対する嗜好性を考慮した吸入ステロイド薬選択が必要と考える.
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【エッセー】
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- 生活習慣のはなし(10)
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【対 談】
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【 トピックス】
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【特報】
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- 第39回 ベルツ賞受賞論文 佳作賞 *著作権の関係で本文PDFは閲覧できません
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【今月の略語】
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