最新医学
Volume 59, Issue 4, 2004
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特集 【ケモカインの役割と病態】
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アプローチ
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自然免疫と獲得免疫におけるケモカイン系の役割 —炎症性ケモカインと恒常性ケモカイン—
59巻4号(2004);View Description Hide Descriptionケモカインは当初,主に好中球や単球に作用し,急性や慢性炎症における白血球浸潤を誘導する因子として研究されてきた.しかし近年,新しいケモカインが次々と発見され,リンパ球や樹状細胞を主な標的細胞とするケモカイン群の存在が明らかになった.そして,リンパ球や樹状細胞の体内での移動や局在の制御に関する分子レベルでの理解が急速に進んでいる.さらに,ケモカインは炎症や免疫応答での細胞遊走にとどまらず,発生,自然免疫,癌,ウイルス感染などのさまざまな分野でも重要な役割を果たしていることが明らかにされつつある.
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基礎
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粘膜免疫とケモカイン
59巻4号(2004);View Description Hide Description腸管や気道の粘膜固有層や粘膜上皮細胞間には,リンパ球,形質細胞,マクロファージ,樹状細胞などの数多くの免疫担当細胞が集簇している.これらの細胞の粘膜組織へのホーミングにはケモカイン系が重要な役割を果たしている.粘膜免疫を担当するさまざまな細胞の移動と局在を理解し,それによって細胞移動を制御することができるようになれば,将来炎症性腸疾患などの治療が可能となると期待される.本稿では,粘膜組織における免疫担当細胞の移動と局在の制御機構について紹介する. -
樹状細胞とケモカイン
59巻4号(2004);View Description Hide Description樹状細胞は骨髄由来の抗原提示細胞で,血中,末梢組織,リンパ節をコンスタントに,侵襲時には大量に動員されて遊走し,免疫寛容,応答を司令,調節する.その遊走はケモカインにより厳密かつ柔軟に制御されており,ケモカインや樹状細胞遊走の異常そのものが病態形成に密接に関与していることが判明しつつある.最近同定された形質細胞様樹状細胞も含めた生体内遊走機能の解明は,新たな疾患治療戦略につながると期待できる. -
自己免疫疾患におけるケモカイン
59巻4号(2004);View Description Hide Description全身性エリテマトーデス(SLE)モデルマウスでは,発症に伴い,樹状細胞により産生されるB細胞ケモカインBLC の異所性発現が認められる.BLC はB1 細胞により強い細胞走化性を示し,加齢BWF1 マウスではB1 細胞の遊走異常が起きている.さらにB1 細胞は強力な抗原提示能を有し,胸腺の禁止クローンを活性化することから,ケモカインの異所性発現がB1 細胞の遊走異常をもたらし,自己免疫疾患の発症機序に直接関与する可能性が考えられる. -
新規膜型ケモカイン SR-PSOX/CXCL16 の生物機能
59巻4号(2004);View Description Hide Description新規膜結合型ケモカインSR-PSOX/CXCL16 は,スカベンジャー受容体活性とケモカイン活性という異なる2つの活性を持つ興味深い分子である.この両機能の併用により,自然免疫ならびに獲得免疫の両方で機能できる分子であると考えられている.この分子の多様な機能を解析することは,さまざまな免疫疾患や動脈硬化の病態理解に役立つだけでなく,今後の新しい治療法を開発するために重要な役割を担うと考えられている. -
ケモカインとケモカイン捕捉分子
59巻4号(2004);View Description Hide Descriptionケモカインは,リンパ球ホーミングや炎症細胞の血管外移動に関与することが知られている.しかし,低分子分泌タンパク質であるケモカインがどのようにして局所に保持され,濃度勾配を維持しながら細胞の移動に関与するかについては不明な点が多い.我々はこれまでの解析から,局所にはケモカイン捕捉分子が存在し,これがケモカインの局所保持や濃度勾配の維持に寄与し,免疫細胞を特定の方向へと移動させるための特異的な微小環境を形成する役割を果たすと考えている.特に,リンパ球ホーミングを媒介する血管である高内皮細静脈(HEV)の周囲には,mac25/AGM,グリコサミノグリカン(GAG),フィブロネクチンやラミニンなどの細胞外基質成分が発現して,ケモカイン捕捉分子として機能することが強く示唆される.ケモカイン捕捉分子は単純にケモカインを提示するだけではなく,細胞遊走活性を制御するのかもしれない. -
CXCL12 (SDF-1/PBSF) 研究の新展開
59巻4号(2004);View Description Hide DescriptionCXCL12 は,体発生に重要なケモカインであり,造血臓器内でのB細胞造血において最も早期の前駆細胞の発生に必須である.最近,造血臓器間では,血管内皮周囲のCXCL12 が,発生過程における末梢血管から骨髄への造血幹細胞および骨髄球系細胞のホーミングに必須であることが明らかとなった.したがって,CXCL12 発現細胞は造血幹細胞ニッチである可能性がある.一方CXCL12,CXCR4 は,魚類,哺乳類において発生過程における始原生殖細胞の移動にも関与することが明らかとなった.CXCL12 は,これの発生現象における細胞の臓器へのホーミングに関連して,癌の転移などの病態への関与も注目されている.
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臨床
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皮膚疾患とケモカイン
59巻4号(2004);View Description Hide Description皮膚は,表皮,真皮,皮下脂肪組織からなる臓器である.中でも表皮は,人体の最外層をなしており,外界からの刺激に対しての反応が起こる部位である.この表皮の主たる構成細胞はケラチノサイト(角化細胞)である.ケラチノサイトは多数のサイトカイン類を産生することが明らかになっている.ここでは,主としてケラチノサイトが産生するケモカインと皮膚疾患について述べる. -
気管支喘息とケモカイン
59巻4号(2004);View Description Hide Description気管支喘息におけるアレルギー炎症の病態にもケモカインシステムがかかわっている.エフェクターである好酸球,好塩基球にはエオタキシンサブファミリーをリガンドとするCCR3 が,またレギュレーターであるTh2 にはTARC,MDC をリガンドとするCCR4 が特異的に発現されている.これら分子を標的として,特異的な免疫制御が可能になることが期待されている. -
関節リウマチとケモカイン
59巻4号(2004);View Description Hide Description関節リウマチ(RA)の滑膜組織では著明な炎症細胞浸潤が見られるが,その細胞浸潤には滑膜組織で産生されるケモカインと炎症細胞上に発現するケモカイン受容体が関与している.また,ケモカインはT細胞,滑膜細胞の活性化,血管新生なども誘導することより,RA の病態形成に深く寄与していると考えられている.そのため,ケモカイン阻害剤はRA の治療に有用である可能性がある. -
慢性炎症性疾患とケモカイン
59巻4号(2004);View Description Hide Description炎症とは「刺激による細胞傷害に対して引き起こされる血管反応を伴う結合組織の反応」である.ヒト病態の場合,慢性炎症は炎症の持つ組織傷害の面が前面に立つ.その病態における細胞反応にケモカインの関与が示される.今回は胃炎をモデルにして,慢性炎症の中での活動性炎症を担う好中球浸潤にCXCL8/IL-8 とその受容体CXCR1 が関与し,リンパ球浸潤に対しCCL5/RANTES とその受容体の1つであるCCR5 が積極的に関与していることを述べる. -
成人T細胞白血病とケモカイン
59巻4号(2004);View Description Hide Description成熟リンパ球は全身のリンパ組織で免疫反応を行うが,その組織指向性はケモカイン受容体によって決定されている.したがって特定のリンパ球サブセットが腫瘍化した場合,そのサブセットに特有な受容体に準じて増殖の場を求めると思われる.成人T細胞白血病(ATL)細胞の場合,Th2 エフェクターメモリーT細胞類似のケモカイン受容体発現パターンをとり,そのCCR4 発現が皮膚浸潤に利用されていることが明らかになった. -
ヘルペスウイルス感染症とケモカイン
59巻4号(2004);View Description Hide Descriptionヘルペスウイルスは宿主の免疫応答を回避するために,多くの宿主遺伝子をウイルスゲノムに取り込んでいる.近年,ヘルペスウイルスから複数のケモカインおよびケモカイン受容体のホモログが同定され,ウイルスによるケモカイン系を標的とした新たな免疫制御機構の存在が明らかにされた.さらに,これらのホモログを保有しないEpstein-barr ウイルスの場合は,代わりに宿主B細胞のケモカインおよびケモカイン受容体の発現を制御することが明らかとなった. -
ケモカイン受容体を標的とした低分子化合物開発の現状と展望
59巻4号(2004);View Description Hide Descriptionケモカイン受容体は魅力的な創薬標的として多くの製薬企業から注目を集めており,低分子アンタゴニスト,抗体,遺伝子治療などさまざまな取り組みが数多く報告されている.まだいずれも実用段階にはないものの,臨床試験が盛んに行われており,近い将来実用化されるものと期待される.本稿では低分子アンタゴニストを中心として,標的受容体ごとに簡単に開発の現状をまとめ,今後の展望について述べる.
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【エッセー】
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- 解剖学者がみたミケランジェロの彫刻(4)
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【対談】
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【トピックス】
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【総説】
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【今月の略語】
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