最新医学
Volume 60, Issue 5, 2005
Volumes & issues:
-
特集 【脳画像の新たな展開】
-
-
-
アプローチ
-
-
脳機能画像へのアプローチ
60巻5号(2005);View Description Hide Description近年著しく進歩してきた非侵襲的な脳機能画像の測定法が,どのような生理学的信号をどのような物理的信号として計測しているか,各信号の臨床的あるいは生理学的な意義についてまとめる.また,このように多様なモダリティーによる脳機能画像がルーチンに測定される時代になり,形態画像と相互に画像を融合したり,統計学的に診断に利用するソフトウエアや,最近盛んに登場する分子イメージングのねらいなどをのぞいて見る.
-
-
基礎研究と開発
-
-
基礎研究者にとっての脳画像—神経血管結合機序を解明するイメージングの進歩—
60巻5号(2005);View Description Hide Description脳機能マッピング法は,脳血流量の変化が神経活動を忠実に示すとの前提で成り立っている.神経活動から血管運動へのメカニズムを追う研究がいろいろ行われているが,これまで生理学的に検証されていない.これを検証するためのPET 定量測定やラットでの基礎研究を積み重ねている.さらに,脳血流量の過剰供給はMRI や光計測の信号源になっており,マッピングには好都合であるが,これがたまたま偶然なのか生理学的に必然なのかまだ分かっていない. -
新世代PET の開発
60巻5号(2005);View Description Hide Description1970 年代に最初のPET が開発されてからほぼ30 年の後,空間解像度は一桁以上,感度は二桁向上してきた.さまざまな脳機能を非侵襲的に観察するためのプローブ(診断薬剤)の開発がなされる一方,装置はさらに改良され,画像データ解析技術も躍進的に進歩している.本稿では,国内外のPET 工学研究者グループが行っている先駆的技術を紹介し,脳PET 画像分野の今後の新しい展開についても概要する. -
拡散強調画像の可能性
60巻5号(2005);View Description Hide Description拡散強調画像(DWI)は組織中の水分子の微小な動き(拡散)の情報を画像化する方法であり,MRI では超高速画像法(EPI)との組み合わせで実用化された.得られる情報には,組織内の水分子の拡散の速さと方向性(異方性)がある.脳梗塞の超早期診断,脱髄疾患・脳腫瘍などでの詳細な病態解析などに用いられるほか,神経線維の走行性を画像化できる拡散テンソル画像法(DTI)にて,脳脊髄系の神経線維連絡に関する解剖学的・病理学的解析に広く用いられるようになっている.さらに,DWI 法の全身への応用によって,腫瘍などの全身疾患のスクリーニングにも用いられる可能性が開けてきた. -
高速マルチスライスCT の開発と臨床応用
60巻5号(2005);View Description Hide Descriptionヘリカルスキャンによりもたらされたボリュームデータの概念を突き詰めれば,検出器のスライス幅狭小化とマルチスライス化,およびそれにより実現される等方性ボクセル化はCT 進化の必然である.64 列マルチスライスCT は次世代面検出器CTへと向かううえでの重要なステップである.中枢神経系においても,3D-CT アンギオグラフィー,脳表表示などの形態情報に加えて,CT 灌流画像などの機能情報が得られるアプリケーションが発達しつつある.最大の問題点である放射線被曝に関しても,量子フィルタをはじめとする多くの対策がとられてきた.将来的には,面検出器を装備した「4D-CT」が実用化され,短時間1回検査での全CT 情報取得が可能となるであろう. -
分子イメージングの現状とこれからの展望
60巻5号(2005);View Description Hide Description分子イメージングとは,生体内で起こるさまざまな生命現象を体外から分子のレベルでとらえて画像化することである.生命現象は,ほとんどの場合遺伝子発現の変化を伴うため,遺伝子発現の画像化が分子イメージングの主体となっている.本稿では,核医学を中心にすでに臨床で行われている遺伝子発現イメージングや,今後の展開が期待されるレポーター遺伝子イメージングを中心に,分子イメージングの現状と将来について概説する. -
脳機能画像統計解析—SPM と3D‐SSP—
60巻5号(2005);View Description Hide DescriptionPET,SPECT やfMRI などの脳画像の解析において,今やSPM と3D-SSP は必須のツールとなっている.これらの手法は,解剖学的標準化により個体差のある脳を標準脳という同じ座標系(定位脳座標)に変換した後,ピクセルごとに統計を行うことにより研究のための解析手法として使用され,さらに臨床診断の補助に応用されている. -
脳神経伝達機能のイメージング
60巻5号(2005);View Description Hide DescriptionPET やSPECT を用いて神経伝達機能(トランスポーター,受容体,代謝および合成酵素などの機能)をin vivo イメージングすることは,脳神経疾患の病態の解明,診断,治療,医薬品開発などに有効な情報を与える.ここでは,この脳神経伝達機能イメージングのための放射性分子プローブの分子設計と機能解析の概要,およびニコチン受容体およびドーパミントランスポーターを対象とした放射性分子プローブの開発について述べる.
-
-
臨床応用とその成果
-
-
PET による精神疾患の研究
60巻5号(2005);View Description Hide Description精神疾患の病態解明のためには脳内の神経伝達機能の検討が不可欠であり,PETは生体内の神経伝達機能を測定する優れた手段の1つである.薬物の評価にも適した方法の1つであり,薬物による受容体占有率を測定することが広く行われている.占有率は,薬物の用量との関係やその経時変化を求めることで,薬物の特異結合部位での動態を評価することも可能である. -
PET,SPECT によるアルツハイマー病,レビー小体病の診断
60巻5号(2005);View Description Hide DescriptionPET,SPECT による脳血流・代謝診断においては,各個人の脳を標準脳の形態に変換してから統計解析を行う方法が汎用されている.アルツハイマー病では,帯状回後部から楔前部の血流・代謝の低下を画像統計解析にて検出する早期診断が普及している.レビー小体病は,アルツハイマー病では見られない後頭葉の血流・代謝の低下を示す.一方,レビー小体病はアルツハイマー病に比べ,内側側頭部の血流・代謝の低下の程度は少ない. -
パーキンソン病における幻覚と脳のドーパミン系および糖代謝変化
60巻5号(2005);View Description Hide Descriptionパーキンソン病の幻覚について,PET を用いたドーパミン神経系,脳糖代謝変化の解析結果を紹介した.幻覚の有無以外の臨床的条件を一致させた2群の比較では,両者の間には脳糖代謝の差が見られないが,幻覚群では腹側線条体,扁桃体,中脳での18F-DOPA 取り込み率の低下が見られた.パーキンソン病における幻覚の出現には,黒質−線条体系以外のドーパミン神経系の障害が関連しているものと考えられる. -
MRI によるてんかん焦点の同定
60巻5号(2005);View Description Hide Descriptionてんかん焦点同定において,MRI の役割は急速に増大し,頭蓋内病変の検索感度は飛躍的に向上した.特に小径の腫瘍・血管奇形や皮質異形成などの発達異常や,内側側頭葉てんかん症例での海馬硬化・萎縮像の検知により,難治例での外科治療適応が拡大した.超高磁場MRI の開発で,画質・解像度の向上からさらに詳細な検討も可能である.また,拡散・T2 強調画像を用いた解析や,fMRI の利用(発作間欠期棘波同期撮像や術前脳機能マッピング)も試みられ,集学的に行われる焦点検索の中で,MRI はますます活用されると期待される. -
近赤外線光イメージングの神経リハビリテーションへの応用
60巻5号(2005);View Description Hide Description近赤外線を用いた光イメージングは,ヘモグロビン酸素化の変化を指標として大脳皮質活動を評価することが可能である.低侵襲かつ歩行やリーチなどダイナミックな動作下で測定可能なメリットを生かして,リハビリテーションの脳活動に対する即時効果や長期的効果を機能回復と関連させて検討することができる.脳科学的に根拠のある神経リハビリテーションの方法論の確立に寄与すると考えられる. -
機能的磁気共鳴画像の計測と解析
60巻5号(2005);View Description Hide Description磁気共鳴現象を利用して生体の断層像を撮像するために開発されたMRI 装置で脳の活動を計測できることが示されたのは,1990 年代に入ってからのことである(機能的磁気共鳴画像:fMRI)1).MRI 装置自体は高価であるが,空間分解能の高さと,臨床検査用の装置をそのまま使用できることから,現在ではfMRI はヒトの非侵襲的脳機能研究にとって不可欠の計測法となっており,今後は臨床への応用が期待されている.本稿ではfMRI の原理を簡単に説明した後,実際にfMRI による計測および解析をする際の留意点について解説する. -
プロトンMR スペクトロスコピーの臨床応用
60巻5号(2005);View Description Hide DescriptionMR スペクトロスコピー(MRS)は,生体の生化学的な検査をMR 装置で行う技術である.N−アセチルアスパラギン酸(NAA)は神経細胞のマーカーと考えられ,MRS でその増減を知ることができる.我々は,両側海馬を含めた複数の関心領域を定め,高齢健常人,アルツハイマー病,ビンスワンガー病患者それぞれにおけるNAA の定量値を求め,線形判別分析用のデータセットを作成した.MRS の概略とともに,その臨床への応用,問題点などを示す.
-
-
【エッセー】
-
- 解剖学者がみたミケランジェロの彫刻(17)
-
-
【対 談】
-
-
-
【トピックス】
-
-
-
【今月の略語】
-
-