最新医学
Volume 61, Issue 2, 2006
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特集【呼吸器感染症の脅威】
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アプローチ
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呼吸器感染症に伴う致死的病態
61巻2号(2006);View Description Hide Description肺炎の重症度と治療の場は,患者の予後を規定する背景因子,合併症,身体所見,検査所見の総合判断で決定する.致死的な市中肺炎では,まず肺炎球菌性肺炎とレジオネラ肺炎を尿中抗原迅速検査で鑑別し,次に重症肺炎となる非定型肺炎群を早期に診断して適切な抗菌薬を開始することが重要である.致死的な日和見あるいは院内肺炎では,感染および発症の危険因子の理解と,早期診断および治療開始が重要である.
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ウイルス性疾患
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今の鳥インフルエンザの流行は新型インフルエンザ・パンデミックの前兆か?
61巻2号(2006);View Description Hide Description現在,アジア諸国の家禽類の間で流行している高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1 型)は,鳥からヒトに直接感染する能力を持ち,少数例ではあるがヒト−ヒト間における感染も成立することが示されている.本ウイルスが何らかの突然変異などによってヒトに対して高い感染力を獲得した場合には,新型インフルエンザとして登場してパンデミックを引き起こし,多くの人類が犠牲となる可能性が世界中で危惧されている. -
SARS の再燃はあるのか
61巻2号(2006);View Description Hide DescriptionSARS の世界的流行が2003 年7月に終息してから2年半が経過した.SARS に関するこれまでの知見と他の感染症との比較から,本疾患が再燃する可能性について検証した.特に人獣共通感染症としての側面について,最近の知見を加えて考察した.SARS が再燃するか否かは誰にも分からないが,再燃に備えることはその他の感染症の出現やバイオテロへの対策,バイオセーフティ,バイオセキュリティの向上に直結すると考えられる. -
成人の RS ウイルス感染症
61巻2号(2006);View Description Hide Description従来よりRS ウイルスは新生児および小児期の下気道疾患の重要な原因ウイルスであり,成人における感染はまれであると考えられてきた.しかしPCR 法など診断法の進歩に伴い,特に高齢者,慢性心肺疾患患者,骨髄移植後の免疫不全患者などにおいては,成人においてもしばしば重篤な肺炎の原因となることが明らかとなってきた.今後は症例の集積と,成人においても利用可能な迅速診断法とウイルス特異的な治療法や予防法の開発が待たれる.
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細菌性疾患
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肺炎球菌の耐性化はどこまで進むのか ?
61巻2号(2006);View Description Hide Descriptionペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)は1996 年頃より急激に世界中に伝播したが,1999〜2003 年におけるサーベイランスでは世界全体で40% 前後で推移し,この4年間ではほとんど変化は認めていない.しかしながら,国,地域別の耐性頻度はかなりの相違がある.一方,耐性肺炎球菌の分離頻度は頭打ちとなったが,各種薬剤に対する感受性はますます低下する傾向にあり,多剤耐性化が顕著である.耐性遺伝子を持ったクローンは国境を越えて伝播するので,グローバルな監視と対策が急がれる. -
緑膿菌の耐性化に対する対処法はあるのか?
61巻2号(2006);View Description Hide Description緑膿菌は元来耐性傾向の強い細菌であるが,メタロ-β-ラクタマーゼ産生や,薬剤排出システムによる多剤耐性化が問題となっている.カルバペネム,フルオロキノロン,アミノグリコシドの3系統の抗菌薬に耐性を示す多剤耐性緑膿菌に対しては単剤で有効なものはないが,古い薬剤であるコリスチンの再利用が米国などで行われ,実験的には耐性メカニズム阻害薬や病原因子阻害薬が耐性緑膿菌に対する対処法として注目されている.
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非定型病原体
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マイコプラズマの病原因子と炎症
61巻2号(2006);View Description Hide Descriptionマイコプラズマ肺炎の病変には,菌による直接障害よりも,宿主細胞性免疫反応による間接障害のほうが強く関与している.小葉中心性粒状陰影を呈する重症例ではTh1 細胞の過剰反応が関与している.胸部X線像による他の肺炎との鑑別は難しいが,CT 像での気管支壁の肥厚像,縦隔リンパ節の腫脹が特徴的である.2000 年以降,マクロライド系抗生物質耐性菌が臨床分離株の約2割を占めるが,臨床的には問題となっていない. -
Q熱コクシエラは市中感染するのか ?
61巻2号(2006);View Description Hide Descriptionコクシエラ肺炎は大部分が市中肺炎として発症するが,国内発症例の頻度や臨床像に関しては未解明の点も多く残されている.宮城県内の多施設調査では呼吸器感染症400 例のうち2.5% が急性Q熱と診断され,また当院では3年間にQ熱肺炎症例を7例経験した.これらの症例はいずれも日常診療の中から市中発症例として見いだされており,国内においても潜在的には相当数の症例が存在している可能性が高いものと考えられた. -
レジオネラはどうやってヒトの細胞の中で生き延びるのか ?
61巻2号(2006);View Description Hide Descriptionレジオネラは,エアロゾル感染によりヒトに急性肺炎(在郷軍人病)やインフルエンザ様の熱性疾患(ポンティアック熱)を惹起する病原性を持っている.本菌が病原性を発揮するうえで最も重要な性質は,生体防御の第一線で働くマクロファージの殺菌に抵抗し,増殖することである.本菌がどのようにマクロファージの殺菌機構からエスケープして増殖するのかについて,菌側の遺伝子(Icm/Dot)と宿主側の遺伝子Lgn1 の両側から解説した.
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抗酸菌
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結核化学療法の今後は明るいか ?
61巻2号(2006);View Description Hide Description多剤耐性結核とHIV 感染者での難治性結核の増加が結核治療をますます困難なものにしており,治療期間の短縮と多剤耐性結核への対応に欠かせない新規抗結核薬,特に休眠型の結核菌に有効な薬剤の開発が希求されている.本稿では,現在までの新規抗結核薬の開発状況と,バイオインフォーマティクスをベースにしての新しいタイプの薬剤ターゲットの探索とそれを応用しての新規抗結核薬の開発の現状について概説した. -
肺非結核性抗酸菌症は増加している—臨床からみた病原性と宿主要因の考察—
61巻2号(2006);View Description Hide Description肺非結核性抗酸菌症は年々増加しており,ありふれた疾患となった.中でも基礎疾患のない中年以降の女性に発症した肺MAC 症は急増している.その理由の探求が重要な課題となっているが,現在のところ不明である.非結核性抗酸菌の病原性には幅があり, Mycobacterium kansasii やMAC は比較的強く, M. gordonae やM. chelonaeは比較的弱い.肺MAC 症は特に難治であり,有効な抗菌薬の開発とともに宿主因子や環境因子の探求が大切である.
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真菌
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肺アスペルギルス症の病態と病原因子
61巻2号(2006);View Description Hide Description代表的な難治性呼吸器感染症である肺アスペルギルス症は,背景にある基礎疾患や全身抵抗減弱状態の程度を反映して甚だ多彩な病態や臨床像を呈する.その病態・病型に関する最近のとらえ方ならびに菌側から産生される病原因子に関する現在までの知見を概説するとともに,多彩な病態を生じる機序について,気管支・肺組織における菌体側病原因子とヒトの感染防御機構の間の拮抗した関係に注目して,私見を交えて論じた. -
ニューモシスチス肺炎はなぜ起こるのか
61巻2号(2006);View Description Hide Descriptionニューモシスチス肺炎(PCP)は真菌であるPneumocystis jiroveci による肺感染症で,細胞性免疫不全で発症する. P. jiroveci はヒト−ヒト感染で病原体が維持されていると推定され,飛沫感染によって伝播する.治療による菌体崩壊が生じると高度の免疫応答を惹起し,肺胞の破壊と線維化が進行するため予後不良となる.副腎皮質ステロイドホルモンによる過剰な炎症のコントロールが治療の要点である.
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【エッセー】
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- 白血病医の御礼奉公(2)
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【対 談】
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【トピックス】
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【今月の略語】
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