最新医学
Volume 61, Issue 9, 2006
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特集【消化器疾患の遺伝子異常】
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アプローチ
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消化器癌の原因遺伝子研究
61巻9号(2006);View Description Hide Description消化器疾患における遺伝子異常の研究は,悪性腫瘍の分子メカニズムの解明,腫瘍マーカーの探索などを中心に多岐にわたって行われており,一部で分子標的薬の治療効果も検討されている.中でも食道,胃,肝臓,大腸,膵臓においては発癌を促進する分子病態の解析が進められており,その過程で観察されるジェネティック,エピジェネティックな変化や新たなmicro RNA 分子の関与が示唆されている.
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総論
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消化器癌と遺伝子不安定性
61巻9号(2006);View Description Hide Description染色体の構造や数の変化および遺伝子変異が起きやすい病態である遺伝子不安定性は,癌の主要な特徴であるとともに多くの癌の原因と考えられている.ヒト消化器癌は,染色体不安定性とマイクロサテライト不安定性を基盤とした発癌経路に大別される.臨床的にも予後,抗癌剤感受性などの点で両者を区別することは重要である.それぞれの発癌経路にかかわる分子異常を,エピジェネティックな異常との関連も含め解説する. -
消化器癌と DNA メチル化異常
61巻9号(2006);View Description Hide DescriptionDNA メチル化は発生・分化の基本的仕組みであり,細胞分裂時に複製され,遺伝子発現を制御する.ひとたびDNA メチル化異常が誘発されると,その異常は安定して伝達されるために,突然変異同様,発癌に関与する.消化器癌にはDNA メチル化異常が深く関与することが知られてきたが,慢性炎症が重要な誘発因子であることが分かってきた.癌の存在診断,性質診断,リスク診断への応用が始まっている. -
消化器癌転移と遺伝子異常
61巻9号(2006);View Description Hide Description癌の浸潤・転移メカニズムの解明は,癌治療の開発に必須である.癌の浸潤・転移には,原発巣からの離脱,浸潤,脈管内移行,2次臓器での浸潤・増殖といった多くのステップがあり,さまざまな因子が各ステップで重要な役割を果たしている.本稿では,癌の浸潤・転移過程で重要な遺伝子異常について,各ステップ別に最近の知見を概説した.
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各論
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胃食道逆流症と発現遺伝子異常
61巻9号(2006);View Description Hide DescriptionDNA マイクロアレイによる解析から得られた食道粘膜上皮細胞応答にかかわる遺伝子発現異常について解析した.食道扁平上皮細胞は,酸,胆汁酸,トリプシンなどに応答して種々の細胞内シグナル伝達経路を活性化させ,その結果として変動する遺伝子発現は,食道粘膜炎症反応,細胞増殖,癌化などの病態に密接に関与していることが明らかになりつつある. -
Gastrointestinal stromal tumor と遺伝子異常
61巻9号(2006);View Description Hide Description消化管間葉系腫瘍のほとんどはgastrointestinal stromal tumor(GIST)であり,カハールの介在細胞を細胞起源とする.大半のGIST の発生機構には,c-kit 遺伝子の機能獲得性変異によるc-kit 遺伝子産物(KIT)の恒常的な活性化が関与している.また一部のGIST では,PDGF 受容体α(PDGFRα)遺伝子の機能獲得性変異が関与している.メシル酸イマチニブはKIT やPDGFRα の機能を阻害し,GIST に対して抗腫瘍効果を示す. -
胃癌と遺伝子異常
61巻9号(2006);View Description Hide Description胃癌は世界で最も頻度の高い癌の1つである.大部分の胃癌はHelicobacter pyloriの感染による数十年に及ぶ慢性炎症の結果発症する.持続する炎症がinitiation,promotion,progression のすべてにかかわり,多様な遺伝子異常・増幅が積み重なった結果が胃癌である.本稿ではEカドヘリンなど,よく取り上げられる遺伝子の異常を中心に概説する. -
肝臓癌の遺伝子異常
61巻9号(2006);View Description Hide Description我が国における肝臓癌はウイルス性肝炎を発生母地とし,多段階発癌の形式をとることが多く,肝発癌の成因として肝炎ウイルスの関与や既知の癌遺伝子・癌抑制遺伝子の異常に加えて,マイクロアレイ技術の普及により肝癌関連新規遺伝子が多数報告されるようになっている.さらに肝切除や化学療法などの治療効果や予後予測のための遺伝子セットの選定も試みられ,実験室での癌の解析のみならず癌治療の臨床現場でも,包括的な遺伝子発現解析の導入による個別化医療が実現する日が近いと思われる. -
肝疾患と発現タンパク質・遺伝子発現異常
61巻9号(2006);View Description Hide DescriptionSerial Analysis of Gene Expression(SAGE)法やcDNA マイクロアレイを用いて,慢性肝炎,肝細胞癌の網羅的遺伝子解析を行っている.パスウェイ解析を通して,B型肝炎とC型肝炎のシグナルパスウェイの違いが明らかとなった.また,超微量臨床サンプルを用いて網羅的遺伝子発現解析を行うことが可能であり,日常診療への応用が期待できる.さらにプロテオーム解析を加えることにより,遺伝子発現と病態との関連,新たなバイオマーカーの同定が可能となることが期待される. -
大腸癌と遺伝子異常
61巻9号(2006);View Description Hide Description大腸癌は, APC, K-RAS, TP53 をはじめとする複数の癌関連遺伝子の異常が蓄積されて生じる.また,癌化にはマイクロサテライト不安定性と染色体不安定性という2種類の遺伝子不安定性が関与している.近年, B-RAF, PIK3CA 遺伝子変異や,B-RAF 変異と密接にかかわるhyperplastic-serrated pathway という大腸癌発生機序など新たな知見が得られており,大腸癌発生の分子機構の解明には一層の進展が見られている. -
大腸癌における発現遺伝子・発現タンパク質異常の体系的解析
61巻9号(2006);View Description Hide Descriptionヒトゲノムの完全解読に伴い,遺伝子,タンパク質の各レベルのデータベースが整理され,DNA チップや質量分析法などハイスループットな解析法の技術革新を背景に,ヒト全遺伝子を対象としたトランスクリプトーム解析,プロテオーム解析が近年の癌研究において重要な役割を担っている.大腸癌でも,発育・進展過程における遺伝子・タンパク質発現異常の体系的な研究は,新しい分子マーカーの探索,癌診断・治療への応用が期待される. -
膵癌における遺伝子異常
61巻9号(2006);View Description Hide Description膵癌は消化器癌の中でも最も予後の悪い癌の1つである.早期発見が困難であり,診断時には局所進展や遠隔転移から手術不能の場合も多い.早期診断や治療への応用を目的に,膵癌の遺伝子異常についての多数の報告がある.ここでは網羅的な遺伝子検索の結果なども含め,最近の膵癌の発生・進展に関与する遺伝子異常について代表的なものを述べた. -
膵癌におけるタンパク質・遺伝子発現の網羅的解析
61巻9号(2006);View Description Hide Descriptionヒトゲノムプロジェクトの完成に伴い,膨大なゲノム情報を利用したゲノミクス解析・プロテオミクス解析が急速に開発されつつある.これら手法を用いた膵癌の解析も報告されており,例えばDNA マイクロアレイによる網羅的遺伝子発現プロファイリングを用いて膵癌特異的発現を示す遺伝子の同定,あるいは質量分析器を利用した膵癌特異的タンパク質マーカーのスクリーニングなどが報告されている. -
炎症性腸疾患と遺伝子異常
61巻9号(2006);View Description Hide Description炎症性腸疾患は近年本邦においても増加傾向にある難治性の慢性疾患である.有効な治療法の開発が望まれているが,そのためにも発症原因,病態解明が急務と思われる.その1つの方策として家族内発症に着目し,遺伝子連鎖解析にて複数の感受性遺伝子が明らかにされてきた.遺伝子異常から機能異常まで解明されつつある領域もあり解析は進んでいるが,民族間の差異,疾患ごとの差異等いまだ解明されていない問題点も多く残るのが現状である.今後,複数の変異遺伝子の相互関係や原因遺伝子の機能解析が重要と思われる.
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【エッセー】
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- 白血病医の御礼奉公(9)
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【対 談】
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【トピックス】
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【今月の略語】
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