最新医学
2007, 62巻6月増刊号
Volumes & issues:
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序論
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乳癌
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術後ホルモン療法
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description術後ホルモン療法において,タモキシフェンは閉経状況にかかわらず有用で,その中心的役割を果たしてきた.閉経前乳癌には卵巣機能抑制としてのLH-RH アゴニストとタモキシフェンを併用することが多い.最近さまざまな臨床試験の結果から,閉経後乳癌にはタモキシフェンよりも第3世代のアロマターゼ阻害薬の方が優れていることが明らかとされた.長期間の投与による副次作用には注意を要するが,この主役交代はほぼ決定的となっている. -
2007年の乳癌術後補助化学療法
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description乳癌術後,補助化学療法を受けた群は,無治療群と比較して,全生存率,無再発生存率ともに優れていることが証明されてきている.化学療法の適応は,従来の解剖学的,病理学的検査に加えて,ホルモン受容体,HER2 status,遺伝子発現プロファイル解析検査で決定されるようになってきている.化学療法のプロトコールは改良が加えられ,分子標的薬剤を含めたものになってきている.今後も安全で有効な個別化治療を目指す動きは続くであろう. -
転移・再発乳癌の治療戦略
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description全身薬物治療によって転移・再発乳癌の予後は改善したが,QOL を考慮した治療選択が重要である.新たな分子標的治療がさらに予後を向上させるだろう.毒性が強いcytotoxic drug はその効果予測因子を同定することによって将来も有用な治療として存続する可能性がある.Circulating tumor cell のように分子レベルで正確に病態把握することによって,治療すべき対象を適正化させることができるであろう. -
乳癌における新規薬剤
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description乳癌の薬物療法は治療効果の高い多剤薬物療法,ヒト化モノクローナル抗体ハーセプチンや第3世代アロマターゼ阻害薬の導入により劇的な変革期を迎えている.また,現在も基礎的背景に基づいた各種の分子標的治療や内分泌治療薬の開発が進められている.新規薬剤と従来の治療法を有効に活用することにより,さらに高い治療効果,低い毒性の治療法が実現化されよう.今後新たな治療戦略の構築が望まれる.
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悪性リンパ腫
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病理学−現行WHO分類の歴史的背景とそれに必要な総合診断システム−
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description悪性リンパ腫の病理学的分類は,他の分野と同様,常にその時代における最新の医学と科学,社会情勢を反映しつつ,多くの研究者達の頭脳によって発展を続けてきた.その結果,時間軸の一断面において最善と信じられる分類方法が多々提唱され,やむをえず「悪性リンパ腫の分類はすぐ変わってしまう」と評価されてしまうようになった.そのような分類に関する背景を持つ悪性リンパ腫において的確かつ臨床的に有用な病理診断を得るには,病理組織標本の観察が最大の基盤にあることは揺るぎないにしても,フローサイトメトリー,染色体分析,遺伝子解析等を組み合わせた総合的な診断システム(READ system)の必要性が提唱され,病理側においてもこれからの「がんの医療水準の均てん化(地域格差の是正)」を目指す時代になった. -
ホジキンリンパ腫
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Descriptionホジキンリンパ腫は結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫と古典ホジキンリンパ腫に分類されるが,その組織型別に治療方針を変更することはない.限局期ホジキンリンパ腫では治療期間を短縮した化学療法(ABVD 療法4コース)と領域照射を組み合わせた治療が標準的である.進行期ホジキンリンパ腫はABVD療法6〜8コースが標準治療と考えられているが,予後不良と考えられる症例には治療強度を高めた治療(BEACOPP 療法など)の適応も考慮される. -
濾胞性リンパ腫に対する治療の進歩
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description濾胞性リンパ腫はこれまで化学療法などの効果が不十分で難治性リンパ腫とされてきた.近年抗CD20 モノクローナル抗体や放射性同位元素標識モノクローナル抗体,プリンアナログなどといった新規薬剤の開発が進み,治療成績が改善しつつある.また,リツキシマブによるin vivo purging を応用した自己造血幹細胞移植や骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植などの新しい移植法が開発されている. -
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Descriptionびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は,造血器腫瘍の中で最も発生頻度が高く,悪性リンパ腫の診療と研究における最重要疾患である.発生部位,病理組織所見,遺伝子異常,予後因子などに関するさらなる多様性の解明と層別治療対象の適切な選別,有効な新薬導入などが,リツキシマブ導入後のDLBCLの診療と研究における重要な課題である. -
マントル細胞リンパ腫−臨床的特徴,診断に際しての留意点および最新の治療戦略−
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide DescriptionCD5 陽性,CD10,CD23 陰性で,t(11;14)(q13;q32)転座が特徴的なマントル細胞リンパ腫(MCL)は,生存期間中央値は3〜5年と極めて予後不良で,従来の化学療法での治癒が最も期待できないリンパ腫の代表である.しかし,最近ではキメラ型抗CD20 モノクローナル抗体(リツキシマブ)の臨床応用研究が進み,リツキシマブと化学療法の併用療法とそれに引き続く自家造血幹細胞移植併用の大量化学療法による生命予後の改善が報告されつつある.また,骨髄非破壊的前処置での同種骨髄移植,放射免疫療法薬であるibritumomab tiuxetan,新規化学療法薬であるbendamustine,新規分子標的薬であるボルテゾミブやtemsirolimus の開発や臨床導入により,難治性リンパ腫の代表とされるMCL に対する治癒を目指した治療戦略が急速に展開されつつある. -
リンパ腫における遺伝子解析と予後予測−CD20 の点変異−
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description近年,リツキサン耐性が問題となっているが,我々はCD20遺伝子の変異解析とリツキサン抵抗性との関係について解析した.B細胞性リンパ腫50 例中CD20 の遺伝子解析により変異が認められたものは11 例で4群に分類された.C末端欠損変異はCD20 発現低下と有意に相関していた.奏効率には有意差がないものの,リツキサン投与後の無増悪期間はC末端欠損変異群では有意に短縮していた. -
造血器腫瘍に対する抗体療法の現状とこれから
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description近年の分子生物学,免疫学を始めとする科学の進歩は,がん診療の臨床の現場に大きな変革,進歩をもたらしている.その1つが,モノクローナル抗体の開発,臨床応用である.現在,複数の抗体医薬が造血器腫瘍のみならずさまざまな悪性腫瘍において従来の標準的治療の変更をもたらし,標準的治療薬として位置づけられている.今後,抗体療法はさらに進歩を続け,臨床の現場でますます多くのがん患者さんに福音をもたらしていくであろう.
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白血病
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慢性骨髄性白血病とイマチニブ耐性克服
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description慢性骨髄性白血病(CML)の病因となるBCR-ABL チロシンキナーゼを選択的に阻害するメシル酸イマチニブは,CML の標準的な治療薬となった.国際的な臨床第III相試験(IRIS Study)で,イマチニブ400 mg / 日の長期投与の安全性と有効性が確保される中,十分な効果の現れない,あるいは治療効果の喪失といったイマチニブ耐性の発現は,臨床的に問題となる.イマチニブが結合するABL キナーゼドメインの突然変異が耐性の原因として重要であり,この耐性を克服すべく開発された新規薬剤nilotinibやdasatinib も臨床的な有効性が示されてきている. -
Ph 陽性ALL に対するイマチニブ併用化学療法
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Descriptionフィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ性白血病(ALL)は通常化学療法では治癒が期待できない予後不良の疾患とされてきたが,近年開発されたイマチニブ併用化学療法により治療成績の劇的な向上が報告されている.現時点においてイマチニブ併用化学療法は,未治療Ph 陽性ALL に対する標準治療として位置づけることができよう.至適レジメンや同種移植の位置付けを明らかにしていくことが今後の課題である. -
多発性骨髄腫と新規薬剤
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description複数の新規分子標的治療薬の登場によって,骨髄腫の標準療法は変わりつつある.移植不能の初発多発性骨髄腫の標準治療は,海外ではサリドマイドを含む併用療法であるMP-T 療法またはTD 療法となりつつある.ボルテゾミブは2006 年12 月日本でも市販され,難治性骨髄腫への効果が期待されている.しかし,末梢神経障害や急性肺障害など特有の非血液毒性があり,使用にあたっては十分注意を払わなければならない. -
慢性骨髄増殖性疾患(CMPD)−Jak2 遺伝子変異と現在の治療−
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description真性多血症の90 % 以上,本態性血小板増多症,原発性骨髄線維症の約半数に,サイトカインのシグナル伝達に必須なチロシンキナーゼであるJak2 の遺伝子変異がみられる.血栓や出血の予防を目的に真性多血症では瀉血療法と抗血栓療法が,本態性血小板増多症では抗血栓療法が行われる.タンパク同化ホルモン,サリドマイドは原発性骨髄線維症の血球減少に有効であるが,治癒的治療法は同種造血幹細胞移植である. -
骨髄異形成症候群(MDS)に対する新規治療薬−5q31 欠失染色体異常とlenalidomide−
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description骨髄異形成症候群(MDS)に対する新規治療薬として,lenalidomide の臨床開発が行われている.米国で実施された臨床試験では,5q31 欠失の染色体異常を伴う輸血依存性MDS 患者の約8割で貧血が改善し,約7割の患者で輸血不要となった.また,4〜5割の患者で細胞遺伝学的完全寛解が得られ,正常造血の回復が認められている.5q31 欠失を伴うMDS は日本ではまれであるが,臨床試験の実施が待たれている. -
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide DescriptionヒトレトロウイルスのヒトTリンパ球好性ウイルス1型(HTLV-1)が病因であるATL は,その発見から4半世紀を越えて多段階のウイルス発癌の機序が明らかになりつつある.ATLの病態はindolent からaggressive まで多様であるが,層別化しての適切な治療法の開発が進みつつある.一方,HTLV-1 感染の予防法は確立したが,HTLV-1 キャリアからのATL 発症予防法はその頻度が数% と高くないこともありいまだ確立されていない. -
凝固障害
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description造血器腫瘍に併発する凝固障害,特に播種性血管内凝固(DIC)に対する治療の適否は生命予後に大きな影響を及ぼす.白血病細胞による凝固系の病的活性化とともに,フィブリン血栓形成を介さないプラスミン産生や,タンパク分解酵素による凝固因子の分解が生じるため,造血器腫瘍に併発する凝固障害は,多くの場合において出血症状が主症状となる.造血器腫瘍に対する化学療法の際にはDIC が増悪,顕性化することや,感染症を併発すると止血栓の難溶化による臓器障害を来すことなど,個々の病態に応じた凝固障害の早期診断と適切な治療が必要となる. -
造血幹細胞移植の現状
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Descriptionこれまでの造血幹細胞移植の治療成績から,各種の白血病について主に同種移植方法別に適切と考えられる移植適応病期を示した.急性骨髄性白血病(AML)では第2寛解期を中心にして,特に高齢者では第1寛解期の移植,非破壊的前処置の移植が勧められる.急性リンパ性白血病(ALL)はより早期の同種移植が望ましく,血縁・非血縁で成績の差は少ないので積極的なドナー検索を行うべきである.慢性骨髄性白血病(CML)の移植はイマチニブ耐性もしくは不応性の慢性期症例に良い適応となる.
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分類不能のがんなど
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頭頸部癌治療における最近の進歩
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description頭頸部癌に対する治療は,手術,放射線治療,化学療法による集学的治療が臨床試験という形で実施され,エビデンスの構築,ガイドラインの整備が進められてきた.しかしながら,微細な点においてはいまだに意見の一致が得られていない部分も多く,また分子標的薬剤を通じた新しい治療アプローチの登場もあり,研究すべき点は多い分野である.頭頸部癌における化学療法,化学放射線療法の現状と,頭頸部癌領域における分子標的薬剤の動向について述べていく. -
原発不明癌
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description転移組織の病理診断によりがんが確定したものの,全身的検索にもかかわらず原発部位が特定できない場合は,原発不明癌と診断する.原発不明癌はさまざまながんが含まれる不均一な症候群であり標準的治療も確立していないが,縦隔から後腹膜の原発不明未分化癌,頭頸部の原発不明扁平上皮癌,腋窩リンパ節転移のみの女性の原発不明腺癌,癌性腹水のみの女性の原発不明腺癌などは,適切な治療により十分な効果が期待できるグループである. -
骨転移の治療
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Descriptionがんは高頻度に骨転移を合併し,骨痛,病的骨折,神経麻痺などの骨合併症のために患者のQOL を著しく低下させることが多く,骨合併症を減らすことが進行がん治療の重要な課題の1つとなっている.適切なタイミングで放射線治療,外科的治療を行うとともに,骨転移の形成・進行には破骨細胞による骨吸収活性の亢進が重要であることが明らかになり,破骨細胞を抑制する骨特異的薬物治療がビスホスホネートを中心に発達してきている. -
Oncologic Emergency
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description一般的には,がんの進行はそれほど急速ではないが,その発生部位や進行の程度により,緊急対応を必要とするOncologic Emergency と言われる病態があり,上大静脈症候群,気道狭窄,頭蓋内圧亢進,脊髄圧迫,大量胸水,心タンポナーデ,高カルシウム血症などが挙げられる.腫瘍内科医には,がん診療に関連して緊急対応が必要な病態を正しく理解・認識し,正確かつ迅速に診断できる能力が求められる.また,緊急対応が必要な場合には,適切な治療を迅速に実施するとともに,必要に応じて放射線科医および外科医など他科の専門医へ適切な診療依頼をすることが重要である.
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がん化学療法の課題と展望
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がん薬物療法専門医
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医は126 人となった.本邦死亡率の第1位はがんであり,社会的にもがんに対する関心は高く,がん薬物療法の重要性が増している.しかし,米国に比べ専門医数は不足しており,1.薬物療法に関する基礎知識があり,2.標準的治療が正しく実施でき,3.副作用に適切な対応ができ,4.EBM 創生のための臨床試験が実施でき,5.緩和医療ができる,質の高い専門医が量産されることにより,がん医療均てん化が望まれる. -
未承認薬使用問題検討会議の役割と課題
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description混合診療に関する基本的合意に基づいて設置された『未承認薬使用問題検討会議』は,患者の切実な要望に応えるために,疾患の緊急性と重篤性を考慮して必要な未承認薬の確実な治験実施と迅速な承認審査を促すとともに,承認までの期間に保険診療との併用で使用できるように働きかけている.これまでに35 品目をこのスキームで対応した.本検討会議は海外と周回遅れを解消するために一定の成果を上げているが,あくまでも対症療法である.国内における治験環境,審査体制の強化などの抜本的な対策が急務である. -
日本の薬剤承認制度の現状−世界と比較してなぜ遅いのか−
62巻6月増刊号(2007);View Description Hide Description日本の臨床試験は治験として行われると,遅い,高い,質が悪いと3拍子そろっていると長く言われてきた.なぜ遅いのかをファクターごとに分類して問題点を総括した.
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【今号の略語】
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