最新医学
Volume 63, Issue 1, 2008
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特集【肺癌分子標的療法−最近の展開−】
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アプローチ
63巻1号(2008);View Description Hide Description肺癌に対する臨床試験は数多く行われ,標準的治療が確立されつつあるものの,その成績はプラトーとなり,さらなる治療成績の向上には新しい分子標的治療薬の導入に期待がかけられている.しかし,肺癌に対する分子標的治療の成績は必ずしも好ましいものではなく,予想とは異なる結果も多く報告されている.アプローチでは,分子標的治療と殺細胞性抗癌剤の特性の違いに基づき,今後の臨床試験で考慮すべき点を論じた. -
EGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ)の基礎—効果,副作用規定因子—
63巻1号(2008);View Description Hide DescriptionEGF 受容体チロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)は,腺癌,女性,非喫煙者,東洋人に高い感受性を持ち,EGFR 遺伝子変異と高い相関を持つことが明らかとなった.さらに耐性の機序として,2次的変異(T790M)の存在やMET 遺伝子の増幅が報告された.これらの知見や同薬の致死的な有害事象である間質性肺炎の予測因子の探求により,個別化医療の実現に向けた研究努力がなされている. -
EGFR-TKI(ゲフィチニブ,エルロチニブ)の臨床— 臨床試験の動向—
63巻1号(2008);View Description Hide Description化学療法歴を有する進行非小細胞肺癌に対し,エルロチニブはプラセボと比較して有意に生存期間を延長していたが,ゲフィチニブはプラセボに対し生存期間に有意差がなかった.ただし東洋人に限ったサブセット解析では,ゲフィチニブはプラセボに対し有意に生存期間を延長していた.化学放射線治療後の局所進行非小細胞肺癌を対象としたゲフィチニブとプラセボの比較試験では,ゲフィチニブで有意に生存期間が劣っていた. -
抗 EGFR 抗体による抗腫瘍効果— EGFR-TKI との作用機序の違い—
63巻1号(2008);View Description Hide Description近年,EGFR を標的としたモノクローナル抗体の開発および臨床導入が進められている.抗EGFR モノクローナル抗体は,EGFR の細胞外領域においてリガンドであるEGF やTGFα などの増殖因子と競合する.本稿では抗EGFR 抗体の作用機序について,EGFR-TKI との違いを中心に最新の知見を含めて解説した. -
抗 EGFR 抗体の非小細胞肺癌における臨床動向— セツキシマブを中心に—
63巻1号(2008);View Description Hide DescriptionEGF 受容体(EGFR)は高頻度に非小細胞肺癌組織で過剰発現している.EGFRのシグナル活性は,細胞増殖,アポトーシス阻害,細胞浸潤,血管新生調節など重要な役割を果たす.抗EGFR 抗体薬は,腫瘍の増殖を阻害し,放射線治療や抗癌剤治療の効果を強めることが分かってきた.現在,セツキシマブ,パニツムマブ,マツズマブ,ニモツズマブの4種類が日本において臨床試験中であり,セツキシマブを中心に臨床応用されつつある. -
血管新生阻害薬の作用機序と臨床開発— 抗 VEGF 抗体・VEGF trap・VEGF-TKI など—
63巻1号(2008);View Description Hide Description腫瘍の増殖には血管新生が重要な役割を果たしており,VEGF 経路を標的とした血管新生阻害作用を有する分子標的治療薬が開発されている.特に抗VEGF 抗体であるベバシズマブは,生存期間の延長効果が第 III 相臨床試験で証明されている.我が国でも切除不能進行再発大腸癌で承認されており,他癌種への適応拡大が図られている.現在,血管新生阻害薬に関する臨床試験が各種進行中である. -
抗 VEGF 抗体(ベバシズマブ)の臨床効果・副作用
63巻1号(2008);View Description Hide Description血管新生阻害薬であるベバシズマブ(アバスチン)は,未治療進行非小細胞肺癌の初回治療において,標準的治療との併用による上乗せ効果を示した.化学療法による延命効果が限られ,予後不良である進行非小細胞肺癌の新たな治療戦略として期待されるが,致死的な出血を含む有害事象の問題をはじめ,検討すべき課題が多く残されている. -
多標的分子標的治療の可能性
63巻1号(2008);View Description Hide DescriptionEGF 受容体チロシンキナーゼ阻害薬ゲフィチニブの登場以後,進行肺非小細胞癌においても長期生存例を経験するが,その著効例も1年前後で獲得耐性現象を示す.また, RAS 遺伝子などの活性化による肺癌に対して有効な分子標的治療は開発されていない.肺癌細胞を根絶するために,複数の分子標的薬の組み合わせによる複数の生存・増殖に必須の経路を遮断,あるいは2つ以上の分子標的を同時に阻害できる薬剤の開発は必須である. -
肺癌分子標的治療のバイオマーカー
63巻1号(2008);View Description Hide Descriptionバイオマーカー研究は,特に分子標的治療において重要である.肺癌領域においても,現在開発が進行しているEGFR-TKI,抗EGFR 抗体,血管新生阻害薬などに関するバイオマーカー研究が盛んになっている.物の薬力学的作用を証明する目的と効果予測ひいては薬物選択のために,バイオマーカー研究は進められる.有害事象のハイリスクを予見するバイオマーカー研究も重要と考えられる.これらを通じて,分子標的薬による個別化医療が進展すると期待される. -
切除不能局所進行非小細胞肺癌に対する分子標的治療の現状— 胸部放射線療法との併用—
63巻1号(2008);View Description Hide Description切除不能局所進行非小細胞肺癌に対する標準的治療は,現在のところシスプラチンを含む化学療法と同時胸部放射線療法であることがほぼコンセンサスとなっているが,まだまだ十分な治療成績とは言えない状況である.近年,分子標的薬が非小細胞肺癌の治療薬として注目され,放射線療法との併用で相乗効果も報告されている.これを踏まえ,切除不能局所進行非小細胞肺癌に対して分子標的薬と化学・胸部放射線療法を併用する臨床試験が行われている.今後のさらなる治療成績向上において,分子標的薬は非常に重要な治療戦略と言える. -
小細胞肺癌と分子標的治療
63巻1号(2008);View Description Hide Description小細胞肺癌に対する分子標的薬剤は,化学療法や放射線化学療法後の維持療法として開発されることが多い.最初に試された分子標的薬剤はマリマスタットであったが,現在のところ,小細胞肺癌患者の生存率を有意に向上させる分子標的薬剤は開発されていない.血管新生阻害薬などが有望視されているが,小細胞肺癌は従来の抗癌剤に対する感受性が高いため,分子標的薬剤の有用性を評価するのが困難である. -
肺癌の遺伝子治療
63巻1号(2008);View Description Hide Description非小細胞肺癌に対する遺伝子治療で,予後の改善に寄与する治療法はまだ確立されていない.全身性に抗腫瘍効果を発揮する方法として,患者由来の腫瘍細胞にGM-CSF 遺伝子を導入し,再び腫瘍ワクチンとして投与する免疫遺伝子療法(GVAX ワクチン療法)が期待されている.本法を用いた臨床試験では完全寛解を示す症例も認めているが,ワクチン投与の最適化には課題も多く残されている. -
肺癌の免疫療法の現状と展望
63巻1号(2008);View Description Hide Description肺癌は免疫療法が効きにくい癌と考えられていたが,近年,ヒト肺癌抗原の同定や新しい免疫療法の臨床試験結果から,予想以上に肺癌でも免疫療法の意義がある可能性が示されてきた.癌の免疫療法では最先端を行く悪性黒色腫では,最近,担癌生体の免疫抑制環境の解除による免疫療法の効果増強など新たな展開があり,根治が難しい肺癌においても,今後さらなる改良により免疫療法が貢献できる可能性が示唆されている. -
分子標的治療臨床試験の方法論
63巻1号(2008);View Description Hide Description臨床試験のデザインという点から考えた場合,分子標的治療薬開発の臨床試験はこれまで開発されてきた薬剤,特にがん分野以外の薬剤開発と比べてそれほど新しいものではない.しかし,がん分野ではこれまでcytotoxic drug が中心だったために,cytotoxic drug 開発と比べると用いる研究デザインに若干違いがある.Cytotoxicdrug の場合と比べながら,第 I 相臨床試験から第 III 相臨床試験まで順を追って議論したい.
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【エッセー】
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- 代謝病の周辺(1)
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【対 談】
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【トピックス】
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【今月の略語】
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